研究医や研究者のための海外研究留学助成情報:HFSP、JSPS海外学振、武田、内藤、上原、アステラス、第一三共、早石ほか

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研究者業界では、海外でポスドクを行うことを一般的に「海外留学」と呼んでいます。海外の大学に進学するのも海外留学ですが、それとはことなり学ぶためにというよりも仕事しにいくわけです。しかし多くの場合は、日本で得られるよりも、より良い研究環境に身をおいて優れた研究成果を挙げてキャリアアップにつなげることが目的なので、そういう意味では学びに行くともいえます。

さて仕事にいくといっても、先方の受け入れ研究室が給与を払ってくれるとは限りません。これは先方の懐事情によります。一般論としていうと、人気の高い研究所、研究室ほど、ほっといても希望者が殺到するので給与を出してくれることは少ないです。逆に地理的に不人気だったり、ラボがまだ名声を確立していなくてなかなか人が集まらないようなラボだと給与は払うから是非来てくださいということもあります。相手先のボスが給与を出せないというからといって、「ケチなボスだ」などというのはとんでもない勘違いです。ポスドクに応募してくる研究者がフェローシップをとれるように、研究計画などで相談に乗ってくれるボスであれば、非常に良いボスだと言えます。

実際に聞く話ですが、給与を払うといってくれて留学したけれどもそのあとボスが次の研究費を獲れなくてポスドクをクビにされるという悲劇も起こります。ですから、自分の給料としてのフェローシップを自分で獲得してから研究留学するのは、自分と自分の家族の生活を守るためなのです。ボスが給与を出してくれると言っているときには、その財源が向こう何年間分確保されているのかを確認したほうが無難です。

海外への研究留学を計画している研究者むけのフェローシップを出してくれる財団はどんなところがあるか紹介します。フェローシップは当然のことですが希望者が殺到するので厳しい競争になります。応募者の論文業績、先方の業績、研究計画の妥当性などが問われます。申請書の書き方がまずいと折角、本人にある程度の論文業績があったとしても採択されにくくなります。

また、多くの場合若手重視で年齢制限を設けています。海外へ武者修行に行きたければ、若ければ若いほど良いのです。

以下に、海外での生活費を想定した数百万円程度の助成を行う財団とプログラムを紹介します。多くは1年間の生活費のみですが、複数年にわたってサポートしてくれる財団もいくつかあります。

複数年の海外研究留学をサポートするフェローシップ

HFSP Postdoctoral Fellowships

ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムは、非常にステータスの髙い助成です。HFSPの助成を受けた研究者がその後、何人もノーベル賞を受賞していると言えば、そのレベルの高さがわかるでしょう。手当も厚いですが、競争率も高いです(応募者のレベルや受け入れ先のラボのレベルが極めて高い)。もともと日本の元首相、中曽根氏が提言してつくられたものであり日本が一番たくさん拠出金を出しています。日本人で生命科学者を志す若者は是非チャレンジしてほしいと思います。

  1. 2023年3月21日:申請者登録番号(compulsory initiation: 7桁のLoI ID番号)の取得期限
  2. 2023年3月30日:研究概要申請(Letter of Intent)の提出期限
  3. 例年2023年9月中旬頃までに、招待された申請者のみ、ProposalCentralを通じて、詳細申請書(Full Proposal)を提出
  4. AMEDによるHFSP紹介サイト https://www.amed.go.jp/news/program/20221228.html

 

日本学術振興会 海外特別研究員(海外学振)

  • 対象分野:人文学、社会科学及び自然科学の全分野
  • 学位取得後5年未満
  • 職歴 2024年4月1日現在、大学等研究機関の任期の定めの無い常勤研究職の職歴が過去通算して5年未満の者(令和6年度(2024年度)採用分)
  • 海外留学先からの応募の可否:すでに海外等の大学で研究を行っている人の海外からの応募もOK
  • 助成金額:留学する国により異なるが、年額約450万円~約620万円 *年額の上限を甲地方の額(約620万円)から、指定都市相当区分の額(約750万円)に変更
  • 派遣期間:2年間
  • 採用予定数:約130名
  • 併願:海外特別研究員―RRA・特別研究員―PD・特別研究員―RPDいずれも併願可能
  • 応募時期:令和6(2024)年度採用分 令和5年3月中旬~5月15日
  • 過去の採択者:海外特別研究員 新規採用者一覧
  • ウェブサイト:https://www.jsps.go.jp/j-ab/index.html

 

武田科学振興財団 海外研究留学助成

  • 趣旨:海外に研究留学する若手MD&PhDに最長4年間の留学助成
  • 年齢制限:日本国籍保持者、または永住者で、留学出立年度末に37歳以下の者。
  • 助成金額:海外渡航費往復40万円+滞在費480万円x最長4年間
  • 収入制限:留学中の年間収入が本奨学金を除いて600万円以下の者。
  • 採択件数:毎年新たに10件
  • 選考基準:業績のみでなく、信条、留学中の研究予定内容など、多様な観点で選考
  • 海外留学先からの応募の可否:募集する留学出立年度内(4月1日~翌年3月31日)に海外へ出立できる者(海外からは応募できません。FAQ
  • ウェブサイト:https://www.takeda-sci.or.jp/fellowship/study-abroad.php

 

第一三共生命科学研究振興財団 海外留学奨学研究助成

  • 日本国内在住の若手研究者(35歳以下(申請年度4月1日現在)6年制学部卒業者は37歳以下)
  • 過去に海外留学の経験がなく、かつ助成採択後(翌年度4月以降)に出国する研究者
  • 海外留学先からの応募の可否:不可
  • 特に疾病の予防と治療に関する諸分野の基礎的研究並びに臨床への応用的研究
  • 助成金額:年額750万円x2年間
  • 助成件数:5件程度(うち2割程度は女性優先枠)
  • 留学期間2年以上
  • 応募期間:2023年6月1日~7月31日
  • 重複制限:他財団等からの重複受給は、渡航費用等の小額助成を除き原則認められない
  • 過去の採択者:助成実績
  • ウェブサイト:https://www.ds-fdn.or.jp/support/studying_abroad.html 

 

国際医学研究振興財団

  • 年齢制限等:書類締切日に満40歳未満の者(女性研究者は45歳未満)あるいは、学位取得後5年未満の者
  • 出立時期:翌年1月から12月末までに出立し、2年以上の海外留学を予定している者
  • 応募時期:2022年度の例 2022年6月10日~2022年8月19日、結果の通知:11月上旬
  • 助成金額:1年あたり最大600万円/名 (税金、保険料は個人負担) x 2年間
  • 採択件数:5名
  • 過去の採択者:2022年度 海外留学助成対象者(PDF)
  • 2022年度 海外留学助成 募集要項 http://ifpmr.or.jp/abroad/
  • 国際医学研究振興財団ウェブサイト:http://ifpmr.or.jp/ 

 

以上は、複数年をサポートしてくれるフェローシップ。

1年間の海外研究留学をサポートするフェローシップ

以下は、1年間分(1件)の助成。この場合は、1年後の生活のために、海外からも応募可能な別のフェローシップに応募するか、所属ラボのボスから給料をもらえるならもらうということになります。

内藤記念科学振興財団 内藤記念海外研究留学助成金

内藤記念海外研究留学助成金 (700万円/件) 若手研究者が海外の大学等研究機関に長期間留学する渡航費、留学に伴う経費ならびに研究費を補助する助成金です。博士号を取得し8年未満もしくは出発日までに博士号取得見込でかつ1982年4月1日以降出生の研究者を対象としています。留学期間は、1年以上とします。(2022年度助成金事業の紹介)

2021年度からは一件あたり700万円と大幅に増額されています(これまでの受領者)。40歳未満という年齢制限があるようです。

 

上原記念生命科学財団 海外留学助成

若手向けと、ある程度実績がある研究者向けとに分かれています。

リサーチフェローシップ (1件 600万円以内) 博士号または同等以上の業績を有する若手研究者。 当年3月31日時点で37歳未満。(6年制学部卒の場合、39歳未満)

ポストドクトラルフェローシップ (1件 600万円以内) 博士号を有するか、翌年4月までに取得見込みの若手研究者。 当年3月31日時点で33歳未満。(6年制学部卒の場合、35歳未満)

東洋紡バイオテクノロジー研究財団 長期研究助成(留学、招聘)

  • 年齢制限:応募時8月31日現在満39歳以下
  • 応募期間:毎年7月1日~8月31日
  • 助成金額:550万円x1年間
  • 海外からの応募の可否:翌年4月以降新たに海外留学に出立する者、但し、応募年9月~翌年3月末に出立する者については、事情によっては助成の対象とする
  • 過去の採択者:東洋紡バイオテクノロジー研究財団 2021 年度研究助成
  • 参考:2022年度 長期研究助成(留学、招聘)募集要項 https://www.toyobo.co.jp/biofund/recruit/

日本生化学会 早石修記念海外留学助成

 

アステラス病態代謝研究会

  • 年齢制限なし
  • 海外留学先からの応募の可否:留学開始日が募集開始日以降の場合は可(応募要領
  • 推薦不要
  • 助成状況:2021年度の海外留学補助金 応募142件(男性111名、女性31名)、採択者11名(男性4名、女性7名)へ200万円から450万円(総額3,666万円)
  • 留学先及び日本の所属機関から得られる給与・手当、日本国内で活動する助成機関等(日本学術振興会を含む)からの海外留学助成など、収入の総額が1,000万円を超えない範囲で補助
  • https://www.astellas-foundation.or.jp/assist/abroad.html
  • 募集期間の例:2022年4月1日(金)9時 ~ 5月31日(火)(2022年度 海外留学補助金応募要領)
  • 2022年度募集要領:https://www.astellas-foundation.or.jp/uploads/2022/04/yoko2022_kaigai.pdf
  • 過去の採択者:海外留学補助金交付対象者 一覧
  • ウェブサイト:https://www.astellas-foundation.or.jp/assist/abroad.html

中谷医工計測技術振興財団 技術交流助成留学プログラム【海外留学】

  • 年齢制限:留学者本人が募集締切日に40歳以下の方で、日本国籍または永住権を有する方。
    海外留学先からの応募の可否:既に留学中の方は除きます。
  • 助成金額:滞在費 月額25万円 + 渡航費 上限30万円
  • 助成期間:1ヶ月以上〜1年未満(11ヶ月間)
  • 過去の採択者:助成実績
  • ウェブサイト:https://www.nakatani-foundation.jp/business/grant_exchange_04/

山田科学振興財団 海外研究援助

  • 助成金額:<個人B>研究者個人が海外の研究機関を拠点として6カ月~1年間、研究活動を行うための滞在費・渡航費・研究費等を援助します。援助額は200万円/件を上限とします。
  • 助成件数:個人・グループに関わらず6件程度(女性研究者2名以上を含む)
  • ウェブサイト:https://yamadazaidan.jp/requirements/grant-bosyu_kaigai/

 

少額(150万円以下)の助成金額のフェローシップ

さて、海外にいくには生活費だけでなく渡航費もかかります。以下では、おそらく渡航費用を想定していると思われる比較的少額100万円以下のものを紹介します。

持田記念医学薬学振興財団 留学補助金

  • 助成額:1件50万円 x 20件
  • 研究期間:1年以上
  • 公募時期:2022年度の例 2022年3月1日~2022年5月11日、採否通知:2022年9月12日
  • ウェブサイト https://www.mochidazaidan.or.jp/ryugaku.html

安田記念医学財団 海外研究助成

  1. 各150万円 x 3件以内
  2. 募集時期:令和4年度の例  締切日令和4年 6月30 日
  3. 参考 令和4年度(2022年度)安田記念医学財団応募要項 海外研究助成

細胞科学研究財団 育成助成

  • 国内外において更に高度の育成を受けようとするもの
  • 公募開始時9月1日現在 満40才以下の研究者
  • 助成金額:1 件120万円/年 x 10 件
  • 公募時期:令和5年度の例 令和4年9月1日(木) より 10月31日(月)
  • 参考 令和5年度 公募要項 https://www.shionogi.com/content/dam/shionogi/jp/sustainability/society/social-contribution-activities/foundation/zaidan/pdf/bosyu/R5bosyu-ikusei.pdf
  • ウェブサイト:https://www.shionogi.com/jp/ja/sustainability/society/social-contribution-activities/foundation/zaidan/bosyu/bosyu2.html

 

地域限定のフェローシップ

三越厚生事業団 三越海外留学渡航費助成

  1. 申請資格:(1)東京都並びに東京都近隣4県(千葉、埼玉、山梨、神奈川)に所在の大学医学部・薬学部、 医学研究施設(他県に本校のある東京都内所在の附属研究機関を含む) に所属する職員 (2)東京都内の病院に所属する職員 (3)東京都近隣4県(千葉、埼玉、山梨、神奈川)に所在する300床以上を有する病院等に所属する職員
  2. 助成金額:渡航費
  3. 応募時期:2022年度の例 2022年6月30日
  4. 参考:令和4(2022)年度 第23回  申請要領 https://www.mhwf.or.jp/research-assist/overseas-assist/application-99916-16101/
  5. 三越厚生事業団ウェブサイト https://www.mhwf.or.jp/
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