結論から申し上げますと、TACの『枝別過去問題集』は非常に優れた教材ですが、「それだけ」で合格するのは、不可能ではありませんがリスクが高いというのが正直なところです。短答試験(特に弁理士試験)は非常に難易度が上がっており、過去問を「解ける」だけでなく、「なぜその答えになるのか」という条文の深い理解が求められるからです。効率的に合格ライン(39点以上)を突破するための考え方を整理しました。
1. TAC枝別過去問集の「強み」と「限界」
この教材は、一問一答形式でサクサク進められるため、学習初期から中期にかけての知識定着には最高のツールです。
| 特徴 | メリット | 懸念点(限界) |
|—|—|—|
| 体系別・一問一答 | 分野ごとに集中して解けるため、苦手科目を潰しやすい。 | 実際の試験(5肢択一式)の「解き方のテクニック」が身につきにくい。 |
| 厳選された問題 | 効率よく頻出論点を網羅できる。 | 掲載されていない「重箱の隅をつつくような問題」や「最新の改正事項」に弱くなる。 |
| 解説の簡潔さ | 短時間で回せる。 | 解説だけでは「条文の文言」そのものに触れる機会が減り、記憶が薄れやすい。 |
2. 「これだけ」だと不十分になりやすい3つの理由
① 5肢択一の「判断力」が養われない
本番は5つの選択肢から1つの正解を選びます。「1つ1つはわかるけど、5つ並ぶと迷う」「消去法が使えない」という事態に陥ることがあります。
② 条文(四法対照等)への立ち返りが不足する
短答試験の正体は「条文の文言の正確な記憶」です。過去問の解説だけを読んでいると、条文の全体像や、他の条文とのつながり(準用関係など)を見落としがちです。
③ 法改正と最新トレンドへの対応
弁理士試験は法改正が頻繁です。過去問集は「過去に出た問題」の集大成ですが、試験委員は「今年新しく変わったところ」を狙ってきます。
3. 合格確実圏に入るための「プラスアルファ」
もしあなたが「最短で、確実に」合格したいのであれば、TACの枝別を軸にしつつ、以下の3点を組み合わせることを強くおすすめします。
* 四法対照(法文集)の読み込み
* 問題を解いたら、必ずその根拠条文を法文集で確認してください。特に「主語」「語尾(できる/しなければならない)」「期間」に注目してマークします。
* 年度別の過去問(直近3〜5年分)
* 直前期(3月〜)には、実際の試験形式(5肢択一)で時間を測って解く練習が必要です。これで「時間配分」と「現場での集中力」を養います。
* 模試(LecやTACなど)
* 最新の法改正や、過去問にはない新傾向の問題に触れる唯一の機会です。
アドバイス
TACの枝別は**「知識の筋肉を作る筋トレ」です。筋トレだけでも戦えますが、「ルールブック(条文)」を読み込み、「練習試合(模試・年度別)」**をこなすことで、合格率は劇的に上がります。まずはTACの枝別を3周〜5周して、正答率を9割以上に持っていくことを第一目標にしましょう!
TACの枝別を3周〜5周って、いったい何か月あればできるの?
結論から言うと、**専業受験生か社会人かにもよりますが、一般的には「3ヶ月〜6ヶ月」**が目安になります。
弁理士試験の「枝別過去問」は、四法(特・実・意・商)+下三法(条・著・不)を合わせると、延べ3,500枝〜4,000枝以上という膨大な量があるからです。
無理のない現実的なスケジュール感をシミュレーションしてみました。
1. 枝別3周〜5周にかかる期間(目安)
1日あたりの勉強時間別に、どのくらい期間が必要かまとめました。
※1周目は「理解」に時間がかかり、周回を重ねるごとにスピードが上がると想定しています。
| 学習スタイル | 1日の勉強時間 | 3周完了の目安 | 5周完了の目安 | 特徴 |
|—|—|—|—|—|
| 超特急型 | 4〜6時間 | 約2ヶ月 | 約3ヶ月 | 専業受験生や直前期の追い込み。 |
| 標準型 | 2〜3時間 | 約4ヶ月 | 約6ヶ月 | 仕事と両立する社会人の王道ペース。 |
| コツコツ型 | 1時間 | 約8ヶ月 | 約1年 | 長期スパンでじっくり基礎を固める。 |
2. 周回ごとの「時間配分」と「目的」の変化
「何ヶ月かかるか」以上に大事なのが、周回を重ねるごとに1周のスピードを劇的に速めることです。
1周目:じっくり(全体の60%の時間を投入)
* 目的: 理解すること。
* やり方: 解説を読み込み、条文を引き、制度の趣旨を理解する。一番苦しく、時間がかかります。1日50枝進めば上出来です。
2周目:確認(全体の25%の時間の投入)
* 目的: 記憶の定着。
* やり方: 1周目で間違えた問題を重点的に。解説を読んですぐ思い出せるレベルを目指します。
3周目:選別(全体の10%の時間の投入)
* 目的: 「解けない問題」の炙り出し。
* やり方: 瞬時に判断できるものは飛ばし、迷うものだけを解く。1日の処理数が200〜300枝と加速します。
4〜5周目:仕上げ(全体の5%の時間の投入)
* 目的: 穴をゼロにする。
* やり方: 何度も間違える「苦手な枝」だけを潰す作業です。ここまで来ると、全範囲を数日で回せるようになります。
3. 期間を短縮するための「3つのコツ」
「5周もできない!」という不安を解消するためのテクニックです。
* 「×(バツ)」の肢を優先する
* 弁理士試験は「正しいものはどれか」より「誤っているものはどれか」を問う問題が多いため、どこが間違っているか(理由)を答える練習が一番効率的です。
* 正解した問題に「○△×」をつける
* 2回連続で「○(余裕で正解)」だった問題は、3周目以降は解かなくてOKです。解く対象を減らしていくのがコツです。
* 完璧主義を捨てる
* 1周目で100%理解しようとすると挫折します。「2周目でわかればいいや」くらいのスピード感で回す方が、結果的に記憶に残りやすくなります。
アドバイス
もし、あなたが今から学習を始めて、来年の短答試験を目指すのであれば、**「最初の2ヶ月で無理やりにでも1周目を終わらせる」**ことをおすすめします。そこを越えれば、2周目以降は驚くほど楽になりますよ。
特許法って全部で何条ある?
特許法の条文番号は、最後が第204条となっています。
しかし、「全部で204個だけ覚えればいいのか」というと、実はそうではありません。特許法には「第34条の2」や「第34条の3」といった**枝番号(えだばんごう)**の条文がたくさんあるからです。
短答試験に向けて、特許法の全体像を整理しましょう。
1. 条文の「実数」と「構造」
現在、枝番を含めた実際の条文数は、おおよそ260〜270条ほどになります(法改正によって多少増減します)。
特許法は、大きく10の「章」に分かれています。短答試験で特によく出る章を太字にしました。
| 章 | 区分 | 内容の要約 | 重要度 |
|—|—|—|—|
| 第1章 | 総則 (1-28条) | 定義、期間、手続き、代理人など | ★★★ |
| 第2章 | 特許権 (29-105条の7) | 特許要件、出願、優先権、効力、実施権 | ★★★ |
| 第3章 | 審査 (106-120条) | 審査官による審査、拒絶理由通知など | ★★☆ |
| 第3章の2 | 異議申し立て (120条の2-120条の8) | 特許異議の申し立て手続き | ★☆☆ |
| 第4章 | 審判 (121-170条) | 拒絶査定不服審判、無効審判など | ★★★ |
| 第5章 | 再審 (171-177条) | 確定した審決に対する再審 | ★☆☆ |
| 第6章 | 訴訟 (178-184条の2) | 審決取消訴訟、対価の額の訴訟 | ★★☆ |
| 第7章 | 国際出願 (184条の3-184条の20) | **PCT(国際出願)**に関する国内特例 | ★★★ |
| 第8章 | 雑則 (185-195条の4) | 公報、手数料、特許表示など | ★☆☆ |
| 第9章 | 罰則 (196-204条) | 侵害罪、詐欺罪、過料など | ★☆☆ |
2. なぜ「204条」より多くなるのか?(枝番の正体)
法律を改正して新しいルールを追加するとき、既存の条文番号をずらしてしまうと、他の法律からの参照がすべて狂ってしまいます。そのため、**「番号と番号の間に差し込む」**という手法をとります。
* 例: 第34条(承継)の後に、新しいルールを追加したい!
* → 第34条の2、第34条の3…と増やしていく。
あなたが今使っているTACの『枝別過去問』の「枝別」という言葉も、一問一答形式という意味ですが、この「条文の枝番」を隅々まで攻略することが合格への近道になります。
3. 短答合格のための「条文攻略」優先順位
260以上の条文をすべて同じ熱量で覚えるのは不可能です。試験対策としては、以下の順序で攻めるのが定石です。
* 第29条(特許要件): 新規性・進歩性などは絶対に落とせません。
* 第30条(例外): 先ほど質問された「新規性喪失の例外」です。
* 第39条(先願): 同一発明の重複を避けるルール。
* 第41条(国内優先権): 先ほど確認した「遡及」のルール。
* 第123条(無効審判): 特許を潰すための手続き。
アドバイス
「200条以上もあるのか…」と圧倒されるかもしれませんが、実は**「よく出る条文」は全体の3割程度**に集中しています。
まずはその「3割」を完璧にすることで、短答試験の合格ラインである39点(全科目合計)が見えてきます。特許法で高得点が取れると、実用新案法もほぼ同じ内容なので、一気に楽になりますよ!
でも枝別過去問って、条文の番号順にずらーっと並んでるからね。気が遠くなるね。
確かに、第1条から順に「1条…2条…3条…」とページをめくっていくのは、まるでゴールの見えないマラソンをしているようで、気が遠くなりますよね。その気持ち、痛いほどよくわかります。
でも実は、合格者ほど**「最初から順番に解く」ことはしていません**。
枝別過去問を「ただの苦行」から「効率的なトレーニング」に変えるための、戦略的な進め方を伝授します。
1. 「1条から順に」を捨てる:山場から攻める
特許法は、全ての条文が均等に出るわけではありません。まずは**「試験の配点が高い山場」**から攻略して、合格に必要な「得点源」を先に作ってしまうのがコツです。
おすすめの攻略順序(クラスター学習)はこちらです:
| 攻略順位 | 対象条文 | テーマ | 理由 |
|—|—|—|—|
| 1位 | 29条〜39条 | 特許要件・出願 | ここだけで特許法の得点の約3〜4割を占めます。 |
| 2位 | 41条〜44条 | 優先権 | 毎年必ず出ます。計算問題も多いので慣れが必要。 |
| 3位 | 121条〜130条 | 審判(拒絶・無効) | 論文試験にも直結する超重要項目です。 |
| 後回し | 1条〜28条 | 総則・代理人 | 細かくて退屈な割に、配点が低いです。最後でOK。 |
2. 「四法対照」を横に置く
枝別過去問を解くとき、その問題集だけを見ていると「点」の知識になりがちです。
* 四法対照法文集を横に開き、今解いている枝が「条文のどの文言」を問うているのかを確認します。
* 枝別過去問は、いわば**「条文をバラバラにしたパズル」です。法文集という「完成図」**を常に見ることで、記憶の定着率が格段に上がります。
3. 「解かない枝」を決める(2周目以降)
「気が遠くなる」原因は、全問題を全力で解こうとしているからです。
* 1周目: 全部の枝に触れる(でも、深追いせず「×」の理由が分かれば次へ)。
* 2周目: 1周目で間違えた問題、自信がなかった問題(△)だけを解く。
* 3周目: それでも間違える「苦手な枝」だけを解く。
このように、**「周回を重ねるごとに問題集を薄くしていく」**感覚で進めると、精神的にかなり楽になります。
4. 1日あたりの「ノルマ」を枝数で決める
「今日は3時間やる」という時間目標ではなく、「今日は100枝進める」という量(枝数)の目標に切り替えてみてください。
* 1日100枝なら、特許法の約1,000枝も10日で1周できます。
* 「10日で1周できる」という見通しが立つだけで、心の負担は半分以下になります。
知財勉強ノートからのアドバイス
枝別過去問は、最初から完璧にしようとすると必ず挫折します。最初は**「5回読み飛ばすうちに、なんとなく顔見知りになる」**くらいの軽い気持ちで回し始めるのが、実は一番の近道だったりします。
今、枝別問題集のどのあたり(何条付近)で足が止まっていますか?もしよければ、そこにある「特にややこしい1枝」を教えてください。一緒に読み解いて、その「壁」を壊しましょう!
1日100枝???無理っしょ!
「100枝」という数字だけ聞くと、たしかに**「正気か?」**と思いますよね。最初からそのペースで進めようとすると、間違いなくパンクします。
でも、安心してください。合格レベルに到達する受験生も、「最初から100枝」できているわけではありません。
100枝という数字の「正体」と、無理なくそこへ持っていくための**「スピードの三段活用」**を解説します。
1. 最初は「1日30枝」で合格点!
最初(1周目)から100枝やろうとするのは、重機を使わずに手掘りでトンネルを作るようなものです。
| 周回数 | 1日の目安 | 1枝にかける時間 | 状態 |
|—|—|—|—|
| 1周目 | 20〜30枝 | 5分〜10分 | 「何これ?」「日本語なの?」と格闘する時期。 |
| 2周目 | 50枝 | 2分〜3分 | 「あ、これ前に見たな」という既視感が出てくる。 |
| 3周目以降 | 100枝〜 | 30秒〜1分 | 瞬時に「×」の理由がわかる。作業ゲー化する。 |
2. なぜ「100枝」が可能になるのか?
実は、枝別問題集の中身には**「からくり」**があります。
* 似たような問題のオンパレード:
一つの条文に対して、少し言い回しを変えただけの「似た問題」が何問も並んでいます。3問目くらいからは、問題文を最後まで読まずに「はいはい、これね」と0.5秒で判定できるようになります。
* 「瞬殺」できる枝が増える:
「特許を受ける権利に質権を設定できるか?」のような、結論がハッキリしている暗記項目は、考える時間がゼロになります。
* 解説を読まなくなる:
正解して、かつ理由も完璧にわかっている枝は、解説を1文字も読まずに次へ進みます。これで1枝5秒です。
3. 「無理っしょ!」を「いけるかも」に変えるコツ
もし今、あなたが10枝進むのも苦痛なら、以下の**「ズルい解き方」**を試してみてください。
* 「答え」を先に見てしまう(1周目限定):
考えても分からないなら、30秒で答えと解説を見ます。1周目は「解く」のではなく、**「どういう風にひっかけてくるかのパターンを知る」**作業だと割り切りましょう。
* 「×」の枝だけを解く:
「〇(正しいもの)」の枝は、条文そのままでひねりがないことが多いです。「×(誤り)」の枝は「どこをどう変えて間違えさせているか」の宝庫。ここだけ集中してやると、効率が倍になります。
* スキマ時間を「1枝」で使う:
「さあ勉強するぞ!」と机に座って100枝は地獄です。でも、「電車を待つ間に3枝」「カップラーメンを待つ間に2枝」。この積み重ねで、1日40〜50枝は意外と消化できてしまいます。
知財勉強ノートからのアドバイス
今の「無理っしょ!」という感覚は、あなたが真面目に一文字一文字理解しようとしている証拠です。それは素晴らしいことですが、短答試験は「慣れ」の要素も大きいです。
まずは**「1日15分だけ、何枝いけるかゲーム」**だと思って、ハードルを地面まで下げてみませんか?
(Gemini)