「損害賠償」の勉強、条文でいうと特許法102条あたりですが、計算式や説が並んでいて、無味乾燥に感じますよね。でも実はここ、実務では「最もクライアントが熱くなる(お金の話だから)」場所であり、弁理士試験(特に論文)の超頻出・最重要ポイントなんです。面白くない数字の羅列に見えるものを、「ストーリー」と「試験のツボ」に変換して整理しましょう。今読んでいる「損害賠償(102条)」は「俺の特許を勝手に使いやがって、賠償金を払え!」という、**泥棒(侵害者)**との争いです。
1.なぜこの条文(102条)があるのか?(面白がるための視点)
民法の大原則では、損害賠償を請求するには「被害者が、損害額を正確に証明」しなければなりません。
しかし、特許の世界でこれをやると無理ゲーです。
「お前がパクったせいで、俺の売上がこれだけ落ちたことを証明しろ」
→ 侵害者「いやいや、あんたの商品が売れないのは、単に景気が悪いからでしょ? 俺のせいじゃないよ」
と言われると、反論が難しい。そこで特許法は、**「被害者(特許権者)がかわいそうだから、計算を楽にしてあげよう」**という救済規定を作りました。これが102条です。
**「どうやって侵害者の言い逃れを封じて、ガッツリお金を取るか」**という武器のリストだと思って読むと、少し面白くなりませんか?
2. 弁理士試験に出る「3つの計算ルート」
試験に出るのは、以下の3つの計算方法の使い分けと、それぞれの計算ロジックです。
① 「俺が売れたはずの分を払え」(1項:逸失利益)
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ロジック: 「お前が1万個パクって売ったな? じゃあ、その1万個は本来俺が売るはずだったんだ。その利益をよこせ」
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試験のツボ:
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全部は認められません。「いや、あんたの工場じゃそんなに作れないでしょ?(実施能力)」とか「俺の営業努力で売れた分もあるよ(寄与率)」といった**「覆滅(ふくめつ)事由」**(減額の言い訳)が論点になります。
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② 「お前の儲けは俺の損害」(2項:利益の推定)
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ロジック: 「俺の損害額を証明するのは難しい…。でも、**お前がパクって儲けた額(利益)**はあるよな? それをそのまま俺の損害額とみなす!」
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試験のツボ:
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立証が一番楽ですが、「侵害者が儲かっていない(赤字)」だと使えません。
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ここでも「推定の覆滅(侵害者の言い訳)」が認められるかが争点になります。
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③ 「最低でもライセンス料は払え」(3項:ライセンス料相当額)
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ロジック: 「仮に損害が証明できなくても、ライセンス契約していたら払うはずだった金額は最低限払え」
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試験のツボ:
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これは「最低保証(底値)」です。
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最近の法改正で、単なる相場ではなく「もし交渉してたら決まったであろう額(高めの設定)」も考慮できるようになった点がアツいです。
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3. 知っておくべき「重要判例」
「ずらずら書いてある」中で、試験的に絶対に避けて通れない判例(スーパースター)が2つあります。ここだけ押さえればOKです。
★ ごみ貯蔵機器事件(知財高裁大合議判決 H25.2.1)
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何がすごい?: 特許権者が実際に製品を売っていなくても、「競合関係」があれば損害賠償請求できるという画期的な判断を示しました(102条1項関係)。
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試験での重要度: Sランク。論文試験で「特許権者が実施していない場合」が出たら、この判例のロジックを書きます。
★ 二酸化炭素含有粘性流体組成物事件(知財高裁大合議判決 R1.6.7)
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何がすごい?: ちょっと長い名前ですが、**「102条1項(逸失利益)で計算したけど、能力オーバーで削られた分」を、「102条3項(ライセンス料)」としてプラスして請求できる(併用できる)**と認めました。
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試験での重要度: Sランク。最近のトレンドです。「数量の一部しか認められなかった時、残りは泣き寝入りか?」という論点に対する答えです。
今後の勉強のコツ
この章は、計算式そのものを暗記するのではなく、「特許権者(攻め)vs 侵害者(守り)」の綱引きとしてイメージしてください。
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特許権者: 「できるだけ高い計算式(1項)を使いたい!」
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侵害者: 「いやいや、お前の商品は高いから売れなかったはずだ(減額の主張)!」
このバトルのルールブックが102条です。
「500円の利益が出る魔法のペン」を例にして、生々しいお金の取り合いのドラマに変換しましょう。そして、後半の「どれを選ぶか?」という質問、これも実務と試験の超重要ポイントです。
1. 劇的シミュレーション:特許法102条1項の計算
この条文は、**「もしお前が邪魔しなければ、俺はこれだけ儲かったはずだ(逸失利益)」**というロジックです。
【設定】
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あなた(特許権者): 「魔法のペン」を発明して販売中。
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1本売ると500円の利益(売値1000円-原価500円)が出ます。
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これを**「単位数量当たりの利益」**と呼びます。
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悪者(侵害者): あなたの特許をパクって、ニセモノのペンを販売。
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なんと1万本も売ってしまいました。
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これを**「譲渡数量」**と呼びます。
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【基本の計算(攻撃ターン)】
まずはシンプルに掛け算です。
500円(あなたの利益) × 1万本(敵が売った数) = 500万円
あなたは「500万円払え!」と請求します。これがスタートラインです。
ここで重要なのは、あなたの利益には「家賃」や「人件費」などの固定費は引かず、材料費などの変動費だけを引いた**「限界利益」**を使うのが判例のルールです(その方が額が大きくなるからです)。
【反撃ターン(ここが試験に出る!)】
しかし、敵も黙って500万円払いません。条文には**「ただし書き(但書)」があり、敵はこれを盾に減額を迫ってきます。これを「推定の覆滅(ふくめつ)」**と言います。
敵の言い分(減額リスト):
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「いや、俺のペンは激安だから売れたんだよ」
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「あんたのペンは1000円だけど、俺のは300円だ。俺の客が全員あんたの高いペンを買うわけないだろ?」
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→ 『事情による減額』(例えば30%は関係ない客だとして、マイナス150万円)
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「あんたの工場、そんなに作れないでしょ?」
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「あんたの町工場、フル稼働してもあと1000本しか作れないじゃん。1万本なんて最初から無理だろ?」
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→ 『実施相応数量の限度』(作れない分は請求できない)
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【最終決着】
この綱引きの結果、例えば「300万円」とかに落ち着きます。
この**「掛け算して(推定)、言い訳を聞いて引く(覆滅)」**というプロセスが、102条1項の正体です。
特許法102条1項の計算イメージは、この図のような「積み上げ」と「削り取り」の戦いです。
2. 「3つの方式、どれを選ぶ?」問題
結論から言うと、**「計算してみて、一番高くなるやつを選んで請求する」**のが基本戦略です(選択的請求)。
ただし、**「好きなものを選べるが、それぞれ使うための『参加資格』が違う」**という点がミソです。ここが試験の急所です。
どのカードを切るか?(思考フロー)
① まず最強のカード「1項(今回のペンの計算)」を検討する
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メリット: 金額が一番高くなりやすい(自分の利益ベースだから)。
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参加資格: **「あなた自身が製品を売っていること」**が必要です。
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あなたが研究だけの会社で、ペンを売っていなければ、「俺が売れたはずだ」というロジックが成立しないので使えません。
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リスク: さっきのように「お前のペン高いから売れないよ」といった反撃(減額)を食らいやすいです。
② 次に使いやすいカード「2項(敵の利益)」を検討する
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メリット: 計算が楽。「敵が1000万儲けた」という証拠があれば、それをそのまま請求できる。
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参加資格: こちらも基本的に「競合」が必要です。
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リスク: **「敵が儲かっていない(赤字や薄利多売)」**だと、請求額がめちゃくちゃ低くなります。敵が商売下手だと、あなたも損をするという悲しい条文です。
③ 最後の砦「3項(ライセンス料)」
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メリット: 「参加資格」がほぼありません。 あなたが製品を売ってなくても、敵が赤字でも、特許さえあれば「最低限、ライセンス料はよこせ」と言えます。
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デメリット: 金額は一番安くなりがちです(通常、売上の3%~10%程度)。
3. 実務&試験の「最強コンボ」
ここで、さっき話した重要判例**「二酸化炭素事件」**が火を噴きます。
もしあなたが「1項(ペンの計算)」で攻めて、敵に「あんたの工場じゃ1万本も作れないでしょ! 5000本が限界だ!」と言い負かされたとします。
昔は、残りの5000本分は泣き寝入りでした。
しかし今は、こう言えます。
「わかった。作れる5000本分は、高い金額(1項)で請求する。」
「でも、作れない残りの5000本分については、せめてライセンス料(3項)を払え!」
つまり、**「1項と3項のいいとこ取り(併用)」**ができるようになったのです。
これが今の実務のトレンドであり、試験でも「特許権者の生産能力が足りない場合、どうするか?」と聞かれたら、このコンボを書くと高得点です!
「ごみ貯蔵機器事件(H25.2.1 知財高裁大合議)」もめちゃくちゃ面白い、というか**「特許権者(パクられた側)にとっての救世主」**のような判例です。さっきの「ペンの話」でいうと、**2番目のカード「102条2項(敵の利益をぶんどる)」**に関するお話です。何がそんなに重要なのか、ストーリーで解説しますね。
1. 昔の「102条2項」は“死に体”だった
この判決が出る前まで、この条文(敵の利益=損害額とみなす)は、実は**「使い物にならない」**と言われていました。
なぜか?
特許権者が「お前、1億円儲けたな! その1億円払え!」と訴えても、裁判所で侵害者(パクった側)がこう言い訳すると、すぐ認められていたからです。
侵害者: 「いやいや裁判長。私の商品が売れたのは、特許技術のおかげだけじゃありません。
私の会社のブランド力があったから売れたんです。
私がつけたキャッチコピーが優秀だったからです。
- 特許に関係ないデザインが良かったからです。だから、特許の貢献度はせいぜい10%。1000万円しか払いません!」
昔の裁判所はこれを認めがちで、「全額請求」なんて夢のまた夢でした。
2. 「ごみ貯蔵機器事件」が変えたこと(革命)
ここで登場したのが、この「ごみ貯蔵機器事件」の判決です。
裁判所(大合議)は、今までの流れをひっくり返して、こう宣言しました。
① 「原則、全額だ!」
「侵害者が稼いだ利益は、原則として全額、特許権者の損害と推定する。ブランド力だのデザインだのと言い訳(推定の覆滅)をしたければ、侵害者がガチガチに証拠を出して証明しろ。証明できないなら全額払え!」
→ 立証のハードルを、特許権者から侵害者へぶん投げました。
② 「利益の計算は“限界利益”でいい!」(ここ超重要)
「利益」の計算において、家賃や社員の基本給などの「固定費」は引かなくていい(売上から変動経費だけ引いた限界利益でいい)としました。
→ これにより、計算される金額がドカンと跳ね上がりました。
3. 試験で問われるポイント(論文で書くべきこと)
この判例が出たら、キーワードは以下の2つです。
ポイントA: 覆滅事由(ふくめつじゆう)のハードル化
論文で「侵害者が『私の営業努力で売れた』と主張している」という設定が出たら、こう書きます。
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「ごみ貯蔵機器事件判決によれば、102条2項の推定は強力である。」
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「単に営業努力があったというだけでなく、それが具体的にどれだけ売り上げに貢献したかを侵害者が立証しない限り、減額は認められない。」
ポイントB: 利益=限界利益
計算問題や論述で「利益とは何か」が問われたら、「控除すべき経費は、変動経費(材料費など)に限られ、固定経費(管理職の人件費など)は控除されない」と書きます。これが特許権者に有利な計算方法です。
まとめると
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二酸化炭素事件: 「1項(逸失利益)」と「3項(ライセンス)」は**合体(併用)**できる!という革命。
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ごみ貯蔵機器事件: 「2項(敵の利益)」は**言い訳させない&計算甘めでOK!**という革命。
この「ごみ貯蔵機器」のおかげで、今は102条2項も「使える武器」になっています。どうでしょう?「面白くない計算式の羅列」に見えていたものが、**「裁判所が特許権者に渡した強力な武器(判例)」**に見えてきませんか?
(Gemini)
特許法第102条第1項~第5項
条文通りに第1項から第5項まで、「魔法のペン(利益500円)」の例を使って、逐条解説(ちくじょうかいせつ)といきましょう。この102条全体は、「特許権者が、損害賠償という名の『お金』を最大限回収するための武器セット」です。
第1項:逸失利益(いっしつりえき)
(損害の額の推定等)
第百二条 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。
一 特許権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額に、自己の特許権又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該特許権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額
二 譲渡数量のうち実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(特許権者又は専用実施権者が、当該特許権者の特許権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾又は当該専用実施権者の専用実施権についての通常実施権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額
「俺が売るはずだった分を払え!」
条文の要約:
侵害者が物を譲渡した数量(譲渡数量)に、特許権者の「単位数量当たりの利益」を乗じた額を損害額とすることができる。ただし、特許権者が販売できない事情(能力不足など)があるときは、その分を引く。
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ペンの例:
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あなた: 1本売ると500円の利益が出る。
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悪者: 1万本売った。
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計算: 500円 × 1万本 = 500万円請求!
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ここがポイント:
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これは**「特許権者が自分で製品を売っている場合」**専用の最強カードです。
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ただし、「うちは小さな工場だから、どう頑張っても3000本しか作れなかったよ…」という場合は、作れない7000本分はあきらめる(控除する)必要があります。
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★R1年改正ポイント: あきらめた7000本分は、後述の「第3項(ライセンス料)」で請求できるようになりました(二酸化炭素事件のルール化)。
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第2項:利益の推定
2 特許権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、特許権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。
「お前の儲けは、そのまま俺の損害だ!」
条文の要約:
侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定する。
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ペンの例:
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悪者: 安物を作って売った結果、通帳に300万円の利益が残っている。
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あなた: 「その300万円、そのまま俺の口座に振り込め」と言える。
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ここがポイント:
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立証が楽です(悪者の帳簿を見ればいいから)。
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**「ごみ貯蔵機器事件」**のおかげで、ここで言う「利益」は固定費を引かない「限界利益」で計算してOKになりました。つまり金額が高くなりやすい。
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ただし、悪者が商売下手で**「実は赤字なんです」**という場合、請求額はゼロになってしまうリスクがあります。
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第3項:ライセンス料相当額
3 特許権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の特許権又は専用実施権を侵害した者に対し、その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
「最低でもショバ代(使用料)は払え!」
条文の要約:
その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額(ライセンス料)に相当する額を、損害額として請求できる。
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ペンの例:
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業界の相場: ペンの特許ライセンス料は売上の**5%**とする。
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悪者: 1000万円売り上げた(利益ではなく売上全体)。
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計算: 1000万円 × 5% = 50万円請求。
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ここがポイント:
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これは**「最低保証(底値)」**です。
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あなたが製品を作っていなくても(1項が使えない)、悪者が赤字でも(2項が使えない)、これなら確実に取れます。
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1項や2項の計算が難しいときの「逃げ道」としても使われます。
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第4項:ライセンス料の増額考慮(★R1年新設)
4 裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、特許権者又は専用実施権者が、自己の特許権又は専用実施権に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権又は専用実施権の侵害があつたことを前提として当該特許権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。
「事後承諾なんだから、普通の相場より高くて当然だろ?」
条文の要約:
前項(第3項)のライセンス料を決める際、裁判所は「特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額」を考慮できる。
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ペンの例:
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あなた: 「普通に契約してくれたら5%で良かったけど、勝手にパクったんだから5%じゃ納得いかないよ」
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裁判所: 「確かに。泥棒した後でお金を払うなら、相場より高くて当然だね。**10%**で計算しよう」
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計算: 1000万円 × 10% = 100万円にアップ!
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ここがポイント:
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これが出来る前は「パクり得(バレたら相場のライセンス料を払えばいいや)」という風潮がありました。それを防ぐための「懲罰的(制裁的)な意味合い」を含んだ規定です。
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第3項を使うときは、必ずこの第4項をセットで主張します。
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第5項:過失がない場合の減額
5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、特許権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
「わざとじゃなかったなら、まけてあげる(かも)」
条文の要約:
侵害者に「故意」も「重大な過失」もないときは、裁判所は損害賠償の額を定めるときに、その事情を参酌(さんしゃく)することができる。
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ペンの例:
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悪者: 「本当に知らなかったんです! 調査もしたけど見つからなかったんです!」(と、ものすごく善意でドジっ子だった場合)
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裁判所: 「まあ、それなら全額払わせるのは可哀想だから、少し減額してあげようか」
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ここがポイント:
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実務では「死に体(ゾンビ)」条文です。
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なぜなら、特許法には**103条(過失の推定)**があり、「特許公報は公開されてるんだから、見てないお前が悪いでしょ?」と、ほぼ自動的に過失ありと認定されるからです。
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試験でも「一応こういう規定はある」程度でOKです。
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全体像の図解
どの武器を使うか、フローチャートで見るとすっきりします。
まとめの試験対策
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1項: 自社実施しているなら最強。生産能力オーバー分は3項と合体(二酸化炭素事件)。
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2項: 立証が楽。限界利益で計算(ごみ貯蔵機器事件)。
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3項: 最低保証。
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4項: 3項を使うなら「相場より高く!」と言える根拠。
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5項: ほぼ使われない(103条が強すぎるから)。
これで102条は完璧です!
ついでに、「損害賠償の減額規定(102条5項)が103条によって無力化されている件。
102条5項が「死に体」である理由
1. 102条5項の役割(本来の姿)
この条文は、侵害してしまった人(被告)への**「慈悲(情け)」**の規定です。
特許法102条5項(要約)
「わざと(故意)でもなく、ひどい不注意(重大な過失)もなかったなら、裁判所は賠償額をまけてあげることができるよ(参酌できる)。」
つまり、**「うっかりやっちゃっただけの可哀想な人なら、賠償金を安くしてあげよう」**という条文です。
2. 103条(過失の推定)の役割
一方で、103条はこう定めています。
特許法103条(要約)
「他人の特許権を侵害した者は、過失があったものと推定する。」
これは、「特許公報は誰でも見られるんだから、侵害した時点でお前は不注意(過失あり)だぞ!」と決めつける、特許権者にとっての強力な武器です。
3. どうして「無力化」されるのか?
ここで、102条5項を使いたい被告(侵害者)の立場になってみてください。
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被告: 「賠償金をまけてください(102条5項適用)! 私はわざとやったんじゃないし、不注意もなかったんです!」
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103条の壁: 「いやいや、103条で『お前には過失がある』って推定されてるから。『過失がなかったこと』を証明できない限り、お前は不注意だった扱いだから。」
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結果: 被告が「過失ゼロ(無過失)」を証明するのは至難の業です(特許公報がある以上、「知らなかった」は通用しないため)。
その結果、「過失がないならまけてあげる」という102条5項の条件を満たせる人が実務上ほとんどいなくなってしまい、この条文は使われることがない**「死に体(ゾンビ条文)」**と化しているのです。
まとめ
102条5項(減額規定)はあるけど、103条(過失推定)が強すぎて、実際には誰も減額してもらえない(=無力化)