(取消しの判決があつた場合における訂正の請求)
第百三十四条の三 審判長は、特許無効審判の審決(審判の請求に理由がないとするものに限る。)に対する第百八十一条第一項の規定による取消しの判決が確定し、同条第二項の規定により審理を開始するときは、その判決の確定の日から一週間以内に被請求人から申立てがあつた場合に限り、被請求人に対し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求するための相当の期間を指定することができる。
疑問:
- 第百三十四条の三のの条文の意味が全くわからないんだけど?
- (審判の請求に理由がないとするものに限る。)ってどういうこと?
- 理由がないって、なんの理由の話をしているの?
- 理由があるときってどういう理由?
- 「判決」って何?「審決」との違いは?
- 取り消しの判決が確定しているのに、なぜ審理を開始するの?なんの審理?
- 「その判決の確定の日から一週間以内に被請求人から申立てがあつた場合に限り」って、なぜ被請求人は、判決が確定した日を知ることができるの?
- 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面って、「最初の」じゃなくてもいいの?(もしあった場合)補正後のとか?
Gemini 3:
特許法第134条の3は、弁理士試験や知財検定でも頻出の「キャッチアップ訂正」に関する規定ですね。言葉が難解ですが、「特許庁で一度勝ったのに、裁判所でひっくり返されそうになった特許権者への救済策」だと考えるとスッキリします。ご質問いただいた疑問点を、試験でそのまま使える知識として順番に解説します。
1. 「審判の請求に理由がない」とはどういう意味?
結論から言うと、「特許が無効だという訴え(理由)には、根拠がない=つまり特許は有効だ」という審判官の判断のことです。
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審判の請求に理由がある: 請求人の勝ち(=特許は無効)。
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審判の請求に理由がない: 被請求人(特許権者)の勝ち(=特許は維持)。
なぜこの限定があるのか?
134条の3は、特許庁が一度「この特許は有効だ(理由がない)」と言ったのに、裁判所がそれを「いや、無効の疑いがあるからやり直し!」と取り消した時に発動します。特許権者からすれば、「有効だと言われたから訂正しなかったのに、今さら無効扱いされるのは困る。最後に訂正させて!」という言い分を認める条文なのです。
2. 「判決」と「審決」の違いは?
試験対策として、出す場所と呼び方の違いをセットで覚えましょう。
| 呼び方 | 出す場所 | 内容 |
| 審決 | 特許庁 | 審判官による最終的な行政判断 |
| 判決 | 裁判所 | 裁判官による司法判断(審決の取り消しなど) |
3. なぜ取消判決の後に「審理」を開始するのか?
裁判所(知財高裁)ができるのは、あくまで「特許庁の出した審決が間違っていたから、これを取り消す」という判断までです。裁判所が自ら特許を無効にすることはできません。
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裁判所が「この審決(有効判断)はダメだ」と判決を出す。
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審決が消滅し、ボールが特許庁に投げ返される(これを「差し戻し」と呼びます)。
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特許庁は、もう一度審理をやり直す(特許法181条2項)。
この「やり直しの審理」の中で、特許権者に「最後の訂正のチャンス」を与えるのが134条の3の役割です。
4. 被請求人はなぜ「判決の確定日」を知ることができる?
被請求人(特許権者)は、裁判(審決取消訴訟)の当事者だからです。
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判決が出ると、裁判所から「判決書の正本」が送達されます。
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その判決に対して上告(最高裁への不服申し立て)などがされず、期間が経過した日が「確定日」です。
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実務的には、自分の弁護士を通じて、あるいは裁判所に確認することで、正確な確定日を知ることができます。
5. 「願書に添付した明細書等」は、最初のものでなくていい?
はい、「現時点での最新の状態」を指します。
もし、この審理が始まる前にすでに別の訂正(126条の訂正審判や、134条の2の訂正請求)をしていたなら、その訂正後の内容が対象になります。
条文上の「願書に添付した…」という表現は、特許法のテンプレート的な言い回しで、「今、特許庁にある最新の書類」を指していると考えて差し支えありません。
まとめ:試験対策のポイント
この134条の3を理解するコツは、以下のストーリーを頭に入れることです。
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特許庁: 「この特許は有効だ!(審理に理由なし)」→ 特許権者の勝利。
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相手方: 納得いかず、裁判所に訴える(審決取消訴訟)。
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裁判所: 「いや、特許庁の判断は間違い。この特許はダメそうだぞ。審決を取り消す!(取消判決)」→ 特許権者の逆転負け。
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救済策: 特権庁に戻って審理再開。特許権者は「それならダメな部分を直させて!」と1週間以内に申し立てる(134条の3)。
[!IMPORTANT]
試験での注意点:
134条の3による訂正の機会は、「申し立て」があった場合に「審判長が期間を指定する」という2ステップになっています。自動的に期間がもらえるわけではないのが、ひっかけポイントです。
プロンプト:「判決」の一語しか出てこなかったから気づかなかったけど、これ「裁判」の後の話だったのね!?
Gemini 3:
その通りです!特許法で「判決」という言葉が出てきたら、それは特許庁の中の話ではなく、その外側にある「裁判所(知財高裁)」が絡んでいるサインです。試験対策として、この「特許庁と裁判所のキャッチボール」の流れを視覚的に整理しておきましょう。これがわかると、134条の3の存在理由が完璧に理解できます。
特許庁と裁判所の「キャッチボール」の流れ
この条文が発動するまでのストーリーは、以下の3ステップです。
① 特許庁での「審決」(第1ラウンド)
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内容: 無効審判が行われ、審判官が「この特許は有効!」という審決を出します。
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特許権者の心理: 「勝った!今のままで大丈夫だ。訂正(修正)なんて必要ないな」と安心します。
② 裁判所での「判決」(第2ラウンド)
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内容: 負けた相手方が「今の審決(有効判断)はおかしい!」と裁判所に訴えます。
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結果: 裁判所が「特許庁の判断は間違い。この特許には無効理由があるぞ」として、審決を取消す判決を下します。
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特許権者の心理: 「えっ!有効だと思ってたのに!だったら負ける前に直させてよ!」と焦ります。
③ 特許庁での「再審理」(第3ラウンド:ここが134条の3)
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内容: 判決によって審決が消されたので、特許庁で審理をやり直します。
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134条の3の役割: ここで特許権者が「1週間以内」に申し立てることで、裁判所で指摘されたダメな部分を直すための「キャッチアップ(追いつき)訂正」のチャンスがもらえるのです。
なぜ「1週間以内」に「申立て」が必要なの?
ここが試験でよく狙われる応用ポイントです。
- なぜ「申立て」が必要か?裁判で負けたからといって、全員が訂正したいわけではありません。「もうこの特許は諦める」という人もいます。だから、特許庁が勝手に期間を決めるのではなく、特許権者の「直したいです!」という意思表示(申立て)をトリガーにしているのです。
- なぜ「1週間」という短期間なのか?裁判ですでに結論(判決)が出ている以上、そこからダラダラ時間をかけるのは相手方にとって酷だからです。「やるならスグ言え!」というのがこの1週間の趣旨です。
試験で間違えやすい「用語の罠」
短答式試験などでよく出る「ひっかけ」を整理しました。
| 用語 | 意味・場所 | 134条の3でのポイント |
| 判決の確定 | 裁判の結果がもう動かない状態 | この「確定日」から1週間がカウントダウン開始! |
| 被請求人 | 特許権者のこと | 「請求人(無効にしたい人)」ではないので注意! |
| 相当の期間 | 訂正請求のための準備期間 | 審判長が「いつまでに書類を出してね」と指定します |
この条文の「存在意義」をひとことで
「裁判所で手のひらを返された特許権者への、敗者復活のためのラストチャンス」
これが134条の3の本質です。