mesoderm中胚葉や、endoderm内胚葉という言葉は、発生学を勉強するとお馴染みの用語になります。しかし、発生学を少し細かく勉強していると、mesendodermという言葉に出くわします。これは一体何でしょうか?
mesendodermは、中胚葉と内胚葉を併せたものではありません。特定の組織を指す言葉でもありません。mesendodermを理解するためには、哺乳類の発生は両生類の発生とはことなり、中胚葉も内胚葉も外胚葉から分化するということを押さえておく必要があります。つまりもともと外胚葉の細胞だったものが、細胞シグナルの影響により中胚葉または内胚葉に分化できる状態になったおきにその細胞の状態のことをmesendodermと呼ぶのです。肺の一部の組織を指し示して、ハイ、この部分がmesendodrmですよと呼べるわけではないのです。
mesendoderm(メゼンドダーム)とは?
- 定義(機能的)
原始線条/原口周辺でNodal/Activin系シグナルにより誘導され、**中胚葉(mesoderm)と内胚葉(endoderm)のいずれにも分化し得る“前駆細胞集団”**を指します。まだ最終運命が固定していない段階の「中+内胚葉の共通祖先」です。
⇒ 胚葉そのものの名前ではなく,“発生段階での運命潜在性”を表す用語。 - なぜこの言い方をするのか(用語の必要性)
胚の初期(陥入/ingression直後)には、中胚葉と内胚葉を分ける前の共通誘導・共通転写ネットワークが働く時期があり、形態学的にも分子的にも両者が未分化で連続しているから。
研究上、- 共通の誘導信号(高〜中強度のNodal/Smad2/3)、
- 共通の転写因子ネットワーク(Eomes, Foxa2, Mixl1 など)、
- 共通の位置(原始線条/オーガナイザー周辺)
をまとめて扱う必要があるため、「mesendoderm」という操作的・発生学的カテゴリーが便利です。
- 実務的な使い分け
- mesendoderm:まだ中/内の両方へ行ける前駆段階。
- definitive endoderm(最終内胚葉):Sox17, Foxa2高発現などで内胚葉としてコミットした後。
- mesoderm(中胚葉):T(Brachyury), Mesp1 などで中胚葉へコミットした後。
- 除外:外胚葉は含まない。**栄養内胚葉(ビテリン/卵黄嚢由来のextraembryonic endoderm)**も通常は含まない。
- シグナル強度と運命のざっくり対応(古典的モデル)
- 高いNodal/Activin → 内胚葉(Sox17, Foxa2)
- 中等度Nodal + Wnt/Fgf → 中胚葉(T/Brachyury, Mesp1)
- その境界・前段階がmesendoderm。
- 種をまたぐ概念
ゼブラフィッシュ・アフリカツメガエル・ニワトリ・マウス・ヒトで観察される普遍的な発生“段階”の概念。名称やマーカーは種で少し違いますが、「中/内の共通前駆」という中身は同じ。 - よくある誤解
- 「中胚葉+内胚葉の混ざり」ではなく、分かれる前の共通母集団。
- 厳密な組織学名というより、運命決定のタイミングを切り取った研究用語です。
- 「軸性mesendoderm(axial mesendoderm)」という言い方は、前脊索板(prechordal plate)や脊索内胚葉のような“軸沿いの中/内胚葉由来組織”を指す解剖学的サブセットで、文脈により意味が狭くなります。
(ChatGPT 5)