投稿者「PhD」のアーカイブ

グルコース-アラニン回路(Cahill cycle; Glucose-alanine cycle)とは:筋肉と肝臓とが作る代謝ネットワーク

人間は栄養源となる食べ物を食べて、それを分解することによりエネルギーとなるブドウ糖を得ています。しかし、食事と食事との間、あるいは長い間食べることがなくて飢餓状態になると、体の中に蓄えておいたエネルギー源を使わなければなりません。

筋肉は、貯めておいたグリコーゲンを分解してグルコースをつくり、解糖系でATPを産生します。飢餓が長く続くと、筋肉を構成するタンパク質を分解してエネルギー源にします。

筋肉で分岐鎖アミノ酸が代謝されるとき、アミノ酸のアミノ基がピルビン酸に転移されてアラニンが生じ、アラニンが血中を通って肝臓に運ばれ、そこでアミノ基は尿素へと変換され、アラニンは再びピルビン酸になって糖新生の経路でグルコースになり再び血中に入って筋肉にグルコースが届けられるという代謝サイクルがあり、グルコース-アラニン回路あるいはCahill cycleと呼ばれるようです。

マークス臨床生化学の教科書におけるグルコース-アラニン回路の説明

マークス臨床生化学(第5版)の541ページの図32-8をみると、筋肉でアミノ酸からアミノ基が外れてα-ケト酸になり、そのアミノ基はα-ケトグルタル酸に転移されてグルタミン酸を生成します。今度はそのグルタミン酸からピルビン酸にアミノ基が転移して、グルタミン酸は再びα-ケトグルタル酸に戻り、ピルビン酸はアラニンになります。そのアラニンは肝臓に運ばれて、グルコースに変換され再び血中に放たれて、筋肉で取り込まれて解糖系に入るので、回路が完成します。マークス臨床生化学の説明はわかりやすいと思いました。ちなみに肝臓の方の経路は、簡単に、

アラニン→窒素→尿素→尿、

アラニン→炭素→グルコース

としか書かれていません。マークスは同じ541ページの図32-9では、筋肉を含めた末梢組織でのグルタミン産生の経路の説明もされています。そこでは由来は明示していませんがアンモニウムイオンNH4+をαケトグルタル酸が取り込んでグルタミン酸となり、さらにもう一度アンモニウムイオンNH4+を取り込んでグルタミンになることが説明されています。αケトグルタル酸はアンモニア分子を2分子取り込めるわけです。グルタミンもまた血中に出て肝臓に行きます。ここでアミノ基がアンモニアとして遊離して尿素になり尿中に排泄されます。

ハーパー生化学の教科書におけるグルコース-アラニン回路の説明

Harper’s Illustrated Biochemistry 30th Editionの邦訳、イラストレイテッド ハーバー・生化学原書30版(丸善出版)の337ページ図28-6にグルコース-アラニン回路の説明があります。それによると、アミノ酸から由来するアミノ基 -NH2がピルビン酸に転移されてアラニンが生成しています。ただこの教科書はグルコース-アラニン回路の肝臓の経路でも、アラニン→ -NH2 →尿素 と描いているので、アンモニアは表立って表現されていません。

コリ回路(乳酸回路)との関連でいうと、筋肉においてピルビン酸ができるところが共通で、コリ回路の場合は解糖系でできたピルビン酸が乳酸にまで代謝されて、乳酸が血流を通じて肝臓に運ばれます。一方、グルコース-アラニン回路では、筋肉でピルビン酸がアミノ基受容体として働きアラニンに変換され、アラニンが血流にのって肝臓にいきます。似た回路はまとめて覚えたほうがよいのですが、ハーパーの教科書の222ページ図19-5では2つの回路がひとまとめに描かれていて、理解を助けます。

  1. Exercise-induced changes in amino acid levels in skeletal muscle and plasma J Phys Fitness Sports Med, 2(3): 301-310 (2013) DOI: 10.7600/jpfsm.2.301 この論文にもグルコース-アラニン回路の図がありますが、Amino acid  → -NH2  → Alanine と描かれています。

レーニンジャーの生化学の教科書グルコース-アラニン回路の教科書による説明(?)

レーニンジャーの生化学の教科書には、ヌクレオチドの分解などにより多くの組織において遊離アンモニアが生成アンモニアはグルタミンの形で血液中を通って肝臓に送られて、肝臓で尿素の形になることが説明されています。

アンモニアがグルタミンの形になるのは、二段階の反応を経由します。まずL-グルタミン酸 -OOC-CH2-CH2-CH(NH3+)-COO-  が酵素グルタミンシンテターゼの働きによってリン酸化されてγ-グルタミルリン酸 (PO4 2-)-C(=O)-CH2-CH2-CH(HN3+)COO- になります。このときリン酸を供与したATPがADPになります。次に同じく酵素グルタミンシンテターゼの働きによってアンモニアNH4+がγ-グルタミルリン酸に結合し、L-グルタミン NH2-C(=O)-CH2CH2CH(NH3+)COO- が生成します。

さて、アンモニアの運び手としてグルタミンがまず紹介されましたが、グルタミンだけでなく、アラニンもアンモニアの運び手になります。筋肉と肝臓の間にできるグルコース-アラニン回路においては、アンモニアの運び手はアラニンなのです。

アミノ酸のアミノ基はα-ケトグルタル酸に転移され、このアミノ基転移の結果グルタミン酸が生成します。このグルタミン酸は、上で説明した反応によってアンモニアを取り込んでグルタミンになることもできますが、酵素アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase; ALT)の働きで、α-アミノ基がピルビン酸に転移されてアラニンを生成します。α-アミノ基が抜けることでグルタミン酸はα-ケトグルタル酸になります。

この教科書(レーニンジャーの新生化学[下]第7版 廣川書店)の977ページにグルコース・アラニン回路の説明がありその項目タイトルは「アラニンはアンモニアを骨格筋から肝臓へと運ぶ」となっています。また図18-9では、筋肉タンパク→アミノ酸→NH4+ →グルタミン酸 という流れが示されています。項目タイトルおよび図中のこのアンモニアもしくはアンモニウムイオンNH4+はどこから来たのでしょうか。本文の説明を読んでも、このような流れは書かれていなかったと思います。アミノ酸のα-アミノ基はα-ケトグルタル酸に転移されてその結果グルタミン酸が生成すると説明されていたわけです。

アミノ酸をエネルギー源として分解する筋肉やある種の他の組織では、アミノ基はアミノ基転移によってグルタミン酸として集められる(図18-2(a))。(977ページ)

図18-2(a)の図は肝臓の例として化学反応が紹介されていますが、同じ反応が筋肉でも起きるといっています。なのでこの977ページ図18-9の図の「筋肉タンパク→アミノ酸→NH4+ →グルタミン酸」は、本文と合わないように思います。

 

ストライヤーの生化学の教科書グルコース-アラニン回路の教科書による説明(?)

ストライヤーの教科書『ストライヤー基礎生化学第4版』(東京化学同人)の411ページ図30-1をみると、「筋肉」の側での化学反応の経路において、

分岐アミノ酸⇒NH4+ ⇒ アラニン

という流れが示されています。しかしこれも、レーニンジャーと同様、本文を読む限りそのような説明は見当たりません。哺乳類でアミノ酸分解に関わる主要な部位は肝臓であると前置きしたうえで、アミノ酸のα-アミノ基が2-オキソグルタル酸に転移され、グルタミン酸ができ、つぎに酸化的脱アミノ反応によってアンモニウムイオン(NH4+)ができることが説明されています。これは肝臓を念頭に置いた話。

次のセクションで、末梢組織に関する説明があります。肝臓では分岐アミノ酸(ロイシン、バリン、イソロイシン)の脱アミノ化ができないこと、筋肉においては長時間の運動や飢餓時にはこれら分岐アミノ酸をエネルギー源として使うこと、アミノ基転移反応によりグルタミン酸が作られ、窒素がピルビン酸に転移してアラニンができて血中に出ることが書かれています。

そのあと、窒素がアラニンだけでなくグルタミンを使って輸送されることもできるという説明があります。その場合は、グルタミン酸とアンモニウムイオンからグルタミンができます。この段落の説明が、まだ筋肉を念頭においたものなのか、末梢全般の話としているのかは不明瞭です。

いずれにしても図30-1のように アンモニウムイオン⇒アラニン という反応は本文中にはありませんので、図と本文が合わないように思います。

 

レーニンジャーとストライヤーという2つの大教科書に書かれた内容がしっくりこないので、もやもやしますね。本文を読むだけなら何も問題はないのですが。

 

医学書院の畠山『生化学』の教科書による説明(?)

畠山『生化学』第14版148ページ図8-8を見ると、筋肉における代謝経路の図で、アミノ酸→NH3→グルタミン酸 と描かれています。一方、147ページ図8-7では、アミノ酸のアミノ基がα-ケトグルタル酸に転移されてグルタミン酸を生じており、筋肉中でアンモニアが産生されるのかどうかのはっきりした説明がないように思います。図はレーニンジャーの教科書と似ているので、レーニンジャーなどの図を参考に描かれたのかもしれません。

 

医学書院の三輪・中『生化学』第13版の教科書による説明

三輪・中『生化学』第13版(2014年)にはグルコース-アラニン回路という名前を出しての説明はありませんが、筋肉でアミノ酸のアミノ基がピルビン酸に渡されてアラニンが生成し、そのアラニンが血中を通って肝臓に入り最終的にアンモニアが尿素として処理される反応の説明はありました。また、アミノ酸から受け取ったアミノ基は骨格筋ではアンモニアにはならないという説明もありました。

肝臓では、アミノ酸からアミノ基を受け取って生じたグルタミン酸は、グルタミン酸脱水素酵素glutamate dehydrogenaseによる酸化的脱アミノ反応の作用を受けて、受け取ったアミノ基がアンモニアNH3のかたちで遊離する(219ページ)

肝臓筋肉以外の多くの組織では、アミノ酸からアミノ基を受け取ってできたグルタミン酸からまずアンモニアが遊離する(図14-8)。(220ページ)

「と」が何と何を結ぶのかがこの文自体からは断定できませんが、その前に肝臓では遊離アンモニアがせいせいすると書いてあるので、「筋肉以外の多くの組織」という意味が決まります。筋肉以外のと書いてあるので、筋肉ではアミノ酸由来のアンモニアは存在しないのでしょう。

 

筋肉中でアンモニアが産生されるのか-

三輪・中『生化学』第13版(2014年)には、「肝臓筋肉以外の多くの組織では、アミノ酸からアミノ基を受け取ってできたグルタミン酸からまずアンモニアが遊離する」と書いてあったので、筋肉でアミノ酸由来のアンモニアは生じないと理解したのですが、生じるとする文献もどうやらいくつもあるようです。混乱させられますね。結局は、文献をひとつひとつ見ていくほかなさそう。

  1. Hungry for your alanine: when liver depends on muscle proteolysis J Clin Invest . 2019 Nov 1;129(11):4563-4566. doi: 10.1172/JCI131931. Theresia Sarabhai, Michael Roden この論部の図1を見ると、aa + NH4+ → Glutamate と読み取れる図があります。このアンモニアイオンはどこから来たのかは描かれていません。
  2. 運動時のアンモニア代謝 グルタミン酸脱水素反応 glutamate- + NAD+ + H2O → 2-oxoglutarate2- + NADH +H+ + NH4+ 反応場所は肝、脳、筋肉、腎 アンモニアの上昇は筋肉での産生の増大 Errikson LS et al., Ammonia metabolism during eercise in man. Clin.Physiol.1985:5:325-336.

他の関連論文

  1. Muscle amino acid metabolism at rest and during exercise: role in human physiology and metabolism A J Wagenmakers Exerc Sport Sci Rev . 1998;26:287-314. PubMed

 

その他の参考記事

  1. 骨格筋におけるアミノ酸代謝調節の分子機序 アミノ酸研究 Vol 14,No l.(2020)

コエンザイムA(Coenzyme A; CoA; 補酵素A)とは

CoAの構造は結構複雑です。CoAが反応してアセチルCoAなどになるときに使われるのはシステアミンのSH(チオール基)の部分です。全体の構造はというと、3’-ホスホアデノシン(3′-Phosphoadenosine リボースの3位の炭素にリン酸が結合)に二リン酸が結合して(つまりは3’-ホスホアデノシン-5′-二リン酸)、さらにパントテン酸(pantothenic acid)、システアミン(cysteamine)HSCH2CH2NH2が結合したものです。

パントテン酸はβ‐アラニンの構造を含んでいます。β‐というのは、通常のアミノ酸がα‐位の炭素にアミノ基がついているのにたいして、β‐位の炭素にアミノ基がついている構造。

α‐アラニンの構造は、  (COOH)CH(NH2)CH3 太字にしたのはα‐位の炭素。最後のCH3は側鎖のメチル基。それに対して

β‐アラニンの構造は、  (COOH)CH2CH2NH2  太字にしたのがβ‐位の炭素。

パントテン酸は、β‐アラニンとパントイン酸とが結合した構造をしています。パントイン酸のIUPAC名は(R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン酸。構造式は、

(COOH)-CH(OH)C(CH3)2CH2OH

炭素4つつながっているので「ブタン」で、カルボキシ基から1位、2位、3位、4位の炭素ですが、3位の炭素にはメチル基が2つ結合しています。また、2位と4位の炭素にはそれぞれ水酸基が結合しています。

もう一度おさらいをすると、CoAの構造は、

システアミン + パントテン酸 + 3ホスホアデノシン5二リン酸

と覚えるのが良いのではないでしょうか。パントテン酸はビタミンB5と呼ばれることもあります3ホスホアデノシン5二リン酸 は、ADP(アデノシン二リン酸)の3位の水酸基にリン酸がついた構造。

Coenzyme A Chemistry Molecular Memory

 

酸の名称

なんとかic  acidとなんとかateとの違いはというと、acetic acid はCH3COOH(酢酸)のことであり、それがイオン化したCH3COO- がacetateと呼ばれるようです。今まで混同していて、そういう違いがあることを知りませんでした。

The main distinction between acetate and acetic acid is that acetic acid is a neutral compound, while acetate is an anion with a net negative electric charge. https://byjus.com/chemistry/acetate/

クエン酸とは?レモンが酸っぱい理由

レモンが酸っぱい理由

このサプリにはビタミンCが檸檬何個分入っていますという広告が氾濫しているため、レモン(檸檬;Citrus limon)と聞くとビタミンCがすぐ思い浮かびます。しかし、レモンのあの酸っぱい理由は、クエン酸が多量に含まれているせいなのだそうです。

一般消費者の中にはレモンの酸味の主成分はビタミンCと思われている方もおり、それは梅と同じでクエン酸であることを聞いて驚く方もいる。(レモン類に含まれる健康機能性成分について 愛知淑徳大学 健康医療科学部 健康栄養学科 教授 三宅 義明 食品分析開発センターSUNATEC)

Lemon is sour due to the presence of citric acid. (Questions & Answers CBSE Biology Grade 12 Kreb’s cycle)

レモンのクエン酸含有量

クエン酸は、レモンから初めて単離精製されました。レモンは柑橘類(Citrus)なので、その名前からCitric AcidあるいはCitrateと命名されています。クエン酸はレモンやライムなど柑橘類に多く含まれる化合物です。

  1. What Is Citric Acid, and Is It Bad for You? (HealthLine)

レモン1個にビタミンCは20mg(果汁)もしくは120mg(皮も含めたまる1個)含まれるのだそうですが、クエン酸は4gも含まれているそうです。

  1. レモン1個に含まれるビタミンCはレモン?個分 全農ET研究ブログ
  2. レモンからクエン酸(citric acid)の分離 : 酸をより身近に感じるために(<特集>天然物を素材とする化学実験) 山本 道雄 化学と教育/43 巻 (1995) 4 号/

クエン酸の構造

クエン酸は炭素数が6で、トリカルボキシ酸と呼ばれるとおり、カルボキシ基が3つあります。炭素3つの鎖にそれぞれカルボキシ基(-COOH)が結合しており、真ん中の炭素には水酸基も結合しています。構造式は、CH2(COOH)C(OH)(COOH)CH2(COOH)になります。このように一列で表示するとわかりにくいですが、構造式を普通に書くと、覚えやすい構造だということがわかります。

クエン酸回路

生化学では、クエン酸と言えば、エネルギー代謝で解糖系の次に習う「クエン酸回路」が有名です。クエン酸回路は、クエン酸がトリカルボキシ酸(tricarboxy acid)であることからTCA回路とも呼ばれます。発見者の名前にちなんでクレブス(Krebs)回路と呼ばれることも多いです。

脂肪酸合成の出発材料

クエン酸はミトコンドリア内では、クエン酸回路の構成要素であり、クエン酸シンターゼという酵素の働きによって、アセチルCoAからアセチル基をもらって、オキサロ酢酸がクエン酸になります。このようにクエン酸回路で活躍するクエン酸ですが、脂質合成においても重要です。

クエン酸はミトコンドリアを出て細胞質に運ばれて、別の酵素の働きによって、そこでクエン酸回路のときとは逆にオキサロ酢酸になり、アセチルCoAが作られます。このアセチルCoAが、脂肪酸合成の出発材料になります。

  1. 畠山『生化学』p120
  2. 脂肪酸の合成  生化学の知識 脂質と血栓の医学
  3. 生化学 管理栄養士国家試験徹底解説

フレイル(frailty)とは

最近よく耳にするフレイルという言葉、これは一体何でしょうか。「要介護」になる一歩手前の危険な状態を指すようです。

フレイルとは

フレイル(frailty)とは、高齢で虚弱になった状態です。フレイルの英語はfrailty(名詞!)、英語のfrailは形容詞で、「虚弱な」という意味です。日本語と英語が一見対応していないので、最初、戸惑いました。

フレイルの基準

Friedさんが提唱した基準では、5項目のうち3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だとフレイルの前段階であるプレフレイルと判断されます。

  1. 最近痩せてきた・体重減少・意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
  2. 外出するのが億劫・疲れやすい・何をするのも面倒だと週に3-4日以上感じる
  3. 歩行速度の低下
  4. 握力の低下
  5. 走るとすぐ息切れする・疲れやすくなった・身体活動量の低下

自分は最近、歩くのが遅くなったと感じます。若い人の歩く速さについていけません。1項目当てはまっているので要注意ですね。健康診断のときの問診票に、歩くのが普通より早いかふつうか遅いか記入する欄がありますが、あれはフレイル予備軍かどうか調べるためだったのかと気付きました。

フレイルという概念は身体(physical frailty)だけでなく、心と脳(cognitive frailty)、社会的(social frailty)なものまで含めて広い意味で使われることもあるようです。

参考

  1. 3分でわかるフレイル 東京医師会
  2. フレイルとは 長寿科学振興財団

論文

  1. Screening for Frailty With the FRAIL Scale: A Comparison With the Phenotype Criteria J Am Med Dir Assoc . 2017 Jul 1;18(7):592-596. doi: 10.1016/j.jamda.2017.01.009. Epub 2017 Mar 6.
  2. A SIMPLE FRAILTY QUESTIONNAIRE (FRAIL) PREDICTS OUTCOMES IN MIDDLE AGED AFRICAN AMERICANS J Nutr Health Aging. 2012 Jul; 16(7): 601–608. doi: 10.1007/s12603-012-0084-2 PMCID: PMC4515112 NIHMSID: NIHMS709065 PMID: 22836700

幸せの条件とは

何が幸せな人生を作るのでしょうか。ハーバード大学の70年以上におよぶ研究によれば、「良好な人間関係」だそうです。家族、友人、社会とのつながりが大事だそう。孤立は幸せに感じることを難しくさせます。また、配偶者との人間関係が悪いのは、非常に健康に悪いそう。

一言でまとめると、Good life is built on good relationships.(良い人生は、良い人間関係の上に作られる) だそう。

Robert Waldinger: What makes a good life? Lessons from the longest study on happiness | TED

  1. The secret to happiness? Here’s some advice from the longest-running study on happiness
  2. Harvard’s longest study of adult life reveals how you can be happier and more successful Mar 20 2018
  3. Good genes are nice, but joy is better April 11, 2017
  4. WHAT MAKES US HAPPY? Is there a formula—some mix of love, work, and psychological adaptation—for a good life? By Joshua Wolf Shenk JUNE 2009 ISSUE

幸せを得る秘訣は、良い人間関係を持っていることだそうです。例えば下の7つの質問に対して当てはまる人が自分にいるかどうか。配偶者や友達で、これに該当する人がいる人は幸せですね。

seven keystones of support

  1. Security: Who would you turn to in a moment of crisis?
  2. Growth: Who encourages you to try new things?
  3. Confiding: Who knows everything about you?
  4. Identity: Is there someone in your life who helps you strengthen your sense of who you are?
  5. Intimacy: Do you feel satisfied with the amount of romantic intimacy in your life?
  6. Help: Who do you turn to if you need some help.
  7. Fun: Who makes you laugh? 

An 85-year Harvard study found the No. 1 thing that makes us happy in life: It helps us ‘live longer’ Feb 10 2023

逆に他人に対してこれができる人は、他人を幸せにすることが出来る人なんだと思います。

Happiness is love. Full stop. ー George Vaillant

https://en.wikipedia.org/wiki/Grant_Study

 

幸せとは何かと言うことに関していえば、人それぞれに考えがあると思います。

現実ー期待=幸福

Tom Magliozzi, co-host of NPR’s “Car Talk” show, described the formula for happiness as reality minus expectations. https://www.knoxnews.com/story/money/columnists/david-moon/2020/10/08/happiness-reality-minus-expectations-david-moon/3636720001/

“If You Want To SUCCEED In Life, DEVELOP THESE SKILLS!” Yuval Noah Harari & Jay Shetty Jay Shetty Podcast チャンネル登録者数 200万人

α-リポ酸 (alpha-lipoic acid)の強力な抗酸化作用

α-リポ酸は、ビタミン様の物質であり、エネルギー代謝において、解糖系の産物であるピルビン酸からアセチルCoAを作る際に働く酵素「ピルビン酸脱水素化酵素複合体」の補酵素として重要です。また、強い抗酸化作用を持つことから、他の抗酸化作用を持つビタミンCなどの物質を還元してリサイクルする役割も担います。

  1. 1,2一ジチオラン環を持つ天然抗酸化物質,リボ酸の科学 オレオサイエンス第1巻第1号(2001) 1951年,これらの研究に終止符を打つ形でReedらにより酸化型α一リボ酸が単離同定 リボ酸はリポアミドとして生体中に存在しているが,常にリジンのε一アミノ基と共有結合をなしている。リボ酸は5員環状の1,2一ジチオラン環を分子内に有するオクタン酸の誘導体であり,これが二電子還元を受けるとジヒドロリポ酸に変化する。ジヒドロリポ酸はFADとの相互作用によりリボ酸に酸化され,この際にNADHがNAD+に酸化される。 ジヒドロリポ酸(DHLA)は,その還元電位が-0.32Vであり,酸化型グルタチオン(GSSG)を還元型(GSH)に戻す能力をもっている(GSSG→GSH,-0.24V)。
  2. リポ酸 日本微量栄養素情報センター ライナスポーリング研究所 リポ酸は特定のタンパク質に共役結合しており、それらはミトコンドリアのエネルギーおよびアミノ酸代謝に関わる必須多酵素複合体の一部として機能する。タンパク質に結合したリポ酸の生理学的機能に加えて、薬理学的用量の遊離(非結合性)リポ酸を治療に使用する可能性に科学的および医学的関心が高まっている。
  3. The Amazing Benefits of Alpha-Lipoic Acid Dr. Eric Berg DC (YOUTUBE)
  4. α-リポ酸の効果 オーソモレキュラー栄養医学研究所 α-リポ酸はチオクト酸ともよばれ、抗酸化作用を持つ硫黄を含んだビタミン様物質です。α-リポ酸の還元型がジヒドロリポ酸で、この両方に強い抗酸化作用があります。α-リポ酸には、ビタミンCビタミンECoQ10グルタチオンなどの抗酸化力をリサイクルする働きがあります。
  5. アルファリポ酸とは 札幌麻酔クリニック

α-リポ酸はビタミンか

  1. α-リポ酸に関するQ&A 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課新開発食品保健対策室 文献によってはα-リポ酸をビタミンと記載しているものもありますが、α-リポ酸はビタミンではなく、ビタミン様物質として扱われています。

参考

  1. 酸化還元電位とは 水問屋 酸化させる力と還元させる力の差を電位差で表した数値のことです。この数値がプラスなら酸化力が高く、マイナスなら還元力に優れていることを表します。 物質が電子を失うことを酸化電子が獲得することを還元

化合物の命名法 IUPAC,慣習

化合物の構造式があったときに、炭素鎖が一番長くなるような炭素鎖を主鎖として、炭素数によって接頭語が与えられます。

アルカンの命名法

飽和脂肪族(alkane)の場合は語尾が-aneになりますので、

炭素数1のCH4は、methane メタン

炭素数2のCH3CH3は、ethane エタン

炭素数3のCH3CHCH3は、propane プロパン

炭素数4のCH3CHCHCH3は、butane ブタン

炭素数5のCH3CHCHCHCH3は、pentane ペンタン

炭素数6は、hexane ヘキサン

炭素数7は、heptane へプタン

炭素数8は、octane オクタン

炭素数9は、nonane ノナン

炭素数10は、decane デナン

となります。

アルケン

二重結合がある脂肪族はアルケン(alkene)と呼ばれます。

CH3CH=CH2CH3CH=CH-CH2CH3 であれば、octa-2,5-diene オクタ-2,5-ジエン。

炭素の位置の呼び方

官能基がついている炭素を1とするが、官能基の優先順位としてはカルボキシ基が最優先。例えば、

CH3CHCH(CH3)CH2COOH は、右側から1位なので、3位にメチル基がついていることから、

3-methylpentanoic acid となります。-oic acidはカルボン酸に対する名称です。

CH3CH=CHCH2COOH であれば、3位の炭素に二重結合があるので、3-en であり、炭素数5のカルボン酸なので、pent-3-enoic acid になります。

IUPACの命名には従わない慣習的な呼び方として、官能基の隣から順にα炭素、β炭素、最後がω炭素となる呼び方があります。タンパク質を構成するアミノ酸は、α‐アミノ酸ですが、例えばアラニンの場合には、β位の炭素にアミノ基が結合した、β‐アラニンという化合物が考えられます。脂肪酸のβ酸化というものも有名ですが、これもカルボキシ基の炭素が1位で、2位の炭素がα炭素、3位の炭素がβ炭素ということになり、β位の炭素 -CH2- が酸化されて -C(=O)- となるので、β酸化と呼ばれているわけです。

参考

  1. 有機化合物の名称 sci.kanagawa-u.ac.jp
  2. α炭素(ウィキペディア)
  3. 有機化合物の命名法 scc.kyushu-u.ac.jp
  4. 有機化合物のIUPAC命名法 まちがった命名をしないための要点 畑一夫 置換命名法は,母体炭化水素名に接尾語-olをつけ,異性体を区別するのには,OHの結合している炭素原子の位置番号を付記する。例:1-propanol  基官能命名法は,OHの結合している基名の後に官能名alcoholを書き,英語の場合,基名と官能名とは別語として別けて書く。異性体を区別するには,基の異性を表わす記号を付記する。例:propyl alcohol  置換命名法は炭化水素名から導かれるので, isopropanol,t-butanolといえば,isopropane, t-butaneという炭化水素が存在しなければならないことになる。これらの誤名が一般に広く通用してしまった
  5. 多重命名法 2000-11-04 貞廣知行 

筋肉はどうやってエネルギーを得ているのか:ATP産生の3つの経路

生体内でエネルギー通貨と呼ばれているのがATP(Adenosine Triphosphate;アデノシン三リン酸)です。しかし、筋肉の細胞内には1秒足らずの筋収縮を可能にする量のATPしか存在しないそうです。そこで消費したATPをすぐに元にもどすために、筋肉に多量に存在するクレアチンリン酸が使われます。クレアチンキナーゼという酵素の働きにより、クレアチンリン酸からリン酸基が取られてクレアチンになり、そのリン酸基はADPに移されてATPが再生します。このクレアチンリン酸を利用したエネルギー供給は、クレアチンリン酸が枯渇する10秒程度しか持続しないようです。酸素の供給がない場合には、解糖系と合わせて、このようなエネルギー供給経路が働くそうです。酸素が十分あれば、解糖系の産物であるピルビン酸はアセチルCoAに変換されて、クエン酸回路がまわりますが、酸素が少ない場合には、ピルビン酸は乳酸にまで変換されます。

  1. Presentation on theme: “Tymoczko • Berg • Stryer © 2015 W. H. Freeman and Company”— Presentation transcript:
  2. ATP-CP系とは?(運動とエネルギー供給) 陸上競技の理論と実践~Sprint & Conditioning~ 当サイトについて For visitor
  3. 5分でわかる「有酸素系エネルギー供給機構」身体の中でエネルギーを作る仕組みを現役理系大学院生が解説 スタディーZ

筋肉に乳酸が溜まるとよくいう、あれですね。昔は、乳酸が溜まることが筋肉疲労の原因と考えられたそうですが、今は、この「乳酸=疲労物質」説は否定されているそうです。乳酸は筋肉からは排出されて、肝臓で再びグルコースに変換されます。そうしてできたグルコースが再び筋肉に運ばれて、取り込まれて使われるわけで、循環するのですね(コリ回路と呼ばれる)。

筋肉で産生された乳酸(lactic acid; lactate 化学式:C3H6O3、 構造式:CH3CH(OH)COOH)は血中を通って肝臓に取り込まれ、乳酸デヒロゲナーゼという酵素の働きで水素原子が2つとれて、ピルビン酸(CH3(C=O)COOH)に変換されます。乳酸は、一つの炭素にメチル基-CH3と水酸基-OHとカルボキシ基-COOHが結合したものと覚えれば、覚えやすいですね。

解糖系の最後のステップで、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸ができる過程は不可逆反応であるため、糖新生においては、このステップを逆行できません。そのためピルビン酸はミトコンドリアに入って、ピルビン酸カルボキシラーゼの働きで(二酸化炭素とATPを用いて)オキサロ酢酸を作ります。このオキサロ酢酸は、クエン酸回路を逆行してリンゴ酸になり、ミトコンドリアから外にでて再びオキサロ酢酸に変換され、さらにホスホエノールピルビン酸に変換されます。あとは解糖系を逆行していき、最後、フルクトース1,6-ビスリン酸からフルクトース6リン酸になるステップと、グルコース6リン酸からグルコースになるステップは、、フルクトース1,6-ビスフォスファターゼ、グルコース6ホスファターゼという、肝臓にしかない酵素によって触媒されます。

  1. 畠山『生化学』p91
  2. 乳酸(にゅうさん)  e-ヘルスネット

強度がそれほど強くない、持久走などの有酸素運動の場合は、ATP産生に酸素を使うのが主要な経路になります。

このように、筋肉を使う運動の場合は、酸素がどれくらい豊富に使えるかとタイムコースによって、3つのATPを供給する経路が使われているということになります。(1)クレアチンリン酸、(2)解糖系(乳酸にまで至る代謝系)、そして、(3)「解糖系および脂肪酸のβ酸化ークエン酸回路ー電子伝達系」の3つです。クエン酸回路に入る物質はアセチルCoAであり、アセチルCoAは、解糖系においてピルビン酸から作られる経路と、脂肪酸のβ酸化によって作られる経路とがあります。(1)と(2)の代謝経路は、酸素を必要としません。(3)は電子伝達系において酸素が消費されます。解糖系の出発材料であるグルコースは、グリコー ゲンの分解によって作られます。

  1. 1-3.筋肉を動かす3つのエネルギー供給系 DNSZONE
  2. 呼吸と筋収縮で捉える「ATP」 ZKAI

 

運動が頭に良いわけ:筋肉と脳との関係

運動をしたほうが頭がボケにくいと言われますが、一体どんな根拠があるのでしょうか。あるいは、運動をすればするほど、頭が良くなると言えるのでしょうか。筋肉と脳はどのように関係しているのでしょうか。

Wendy Suzuki: The brain-changing benefits of exercise | TED TED

Effects of Exercise on the Brain, Animation Alila Medical Media

骨格筋が分泌するマイオカイン

筋肉の役割は、単に体を動かすだけではないのだとしたら驚きです。運動すると骨格筋の細胞はインターロイキンー6(IL-6)をはじめとする「マイオカイン」を分泌することがわかっています。マイオカインというのは、骨格筋が分泌するシグナル分子の総称です。

  1. 骨格筋のバイオロジーからみた身体活動性の重要性 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2021 年 30 巻 1 号 p. 1-7 加齢減少による筋肉のやせは遅筋の減少によると言われている一方,サルコペニアでは速筋の減少が知られている1

レビュー論文

  1. How does the skeletal muscle communicate with the brain in health and disease?(無料要旨) Neuropharmacology Volume 197, 1 October 2021, 108744 Neuropharmacology Invited review  Alinny R.IsaacRicardo A.S.Lima-FilhoMychael V.Lourenco
  2. Physical activity and muscle–brain crosstalk(無料要旨) Bente Klarlund Pedersen Nature Reviews Endocrinology volume 15, pages383–392 (2019) Published: 05 March 2019 Cathepsin B is an exercise-induced myokine required for exercise-induced improvement in memory and adult neurogenesis. Exercise enhances neuronal gene expression of FNDC5, the protein product of which might stimulate brain-derived neurotrophic factor in the hippocampus.

その他の参考記事

造血の場所?成体の血液は骨髄で作られ、胎児期は肝臓で作られる

血液(赤血球)は骨髄で作られると理解していますが、胎児の発生の早い時期には骨髄ではない違う器官で血液が作られていると知り驚きました。造血の場所が発生にともなって変わっていくというのです。

image

https://oncohemakey.com/hematopoiesis-2/

マウスと人では呼び名なども多少異なるみたいです。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006497120478036

  1. Embryonic origins of mammalian hematopoiesis January 2004Experimental Hematology 31(12):1160-9 DOI:10.1016/j.exphem.2003.08.019 https://www.researchgate.net/publication/8971238_Embryonic_origins_of_mammalian_hematopoiesis

一次造血(卵黄嚢)と二次造血(それ以降)の違い

  • 初期の造血は,(マウス)胎生 7~ 8日に胚体外組織である卵黄嚢(yolk sac)の血島で発生し,これを一次造血(primitive hematopoiesis)という.
  • 中期以降の造血を担うことになる二次造血(definitive hematopoiesis)は,(マウス)胎生10日頃の胚体内の AGM 領域(AGM region :大動脈(aorta),性腺(gonad),中腎(mesonephros)を含む領域)に出現し 4, 5),その後造血の場を胎仔(fetal liver)に移す6).そこで造血細胞は劇的に増幅した後,最終的には骨髄脾臓へと移動し,その後一生にわたって血液細胞を供給する
  • 造血幹細胞やリンパ球造血は一次造血には存在しない。二
    次造血において初めて出現する。
  • 一次造血で作られる赤血球(胚型赤血球)は成熟しても脱核することはなく有核のまま

再生医学と赤血球造血 辻 浩一郎 膜(MEMBRANE),32(3),155­162(2007) https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane/32/3/32_155/_pdf

 

体の中でどの臓器で作られているのか?知識を整理したいと思います。

骨髄が造血の場所

赤血球は骨髄で作られます。骨髄には、「造血幹細胞」という、赤血球に限らずさまざまな血液細胞に分化するもとになる細胞が存在しています。骨髄は造血の場所だったわけですね。

  1. 血球はどこで作られるの? 看護roo!

腎臓がエリスロポエチンを産生して造血を指示

血液中の赤血球の量が少なくなると、腎臓でそれが感知されて、腎臓からはエリスロポエチンというホルモンが分泌されますエリスロポエチンは骨髄に働きかけて赤血球の増産を促します。

  1. 血はどのようにしてつくられる?
  2. 血液細胞の発生と分化 仲 野 徹 化学 と生物 Vol. 38, No. 2, 2000 赤血球生のホルモンともいうべきエリスロポエチンを欠損するマウスでは,後述する一次造血は正常であるが,二次造血において赤血球がまったく生されずに子宮で貧血により死亡してしまう.
  3. 腎臓の構造と働き 日本腎臓学会 腎臓の間質で作られるエリスロポエチンは、赤血球の前駆細胞に働きかけ赤血球の産生を亢進させます。慢性腎臓病が進行すると、エリスロポエチンの産生が不十分となり、貧血になります。これを腎性貧血と言います。

脾臓でのヘモグロビンの分解

  1. ヘモグロビン

胎児期の造血のメカニズム

人間の体は不思議なもので、生体と胎児ではメカニズムが異なることがあります。造血もその例の一つ。

血液の細胞は、造血幹細胞から作られます。造血幹細胞は、その前駆細胞である血管内皮細胞から作られます。造血幹細胞は胎生期に、大動脈の血管内皮細胞から、プレ造血幹細胞を経て発生してきます。プレ造血幹細胞から造血幹細胞への発生には、stem cell factor (SCF)と、トロンボポエチン(TPO)の2つの因子が必要で、プレ造血幹細胞にはそれぞれに対する受容体があります。トロンボポエチン(TPO)は、肝芽細胞が産生しており、プレ造血幹細胞大動脈内腔SCFシグナルに曝されたのち、肝臓に移動して今度はTPOシグナルに曝されて、造血細胞へと分化していくのです(胎生12日頃)。

  1. 科学新聞2024年8月30日 「造血幹細胞の発生過程 試験管内で再現に成功」(熊本大学)PNAS7月23日付

髄外造血について

  1. 髄外造血とは,骨髄以外の部位での異常な造血であり,造 血能の低下をみとめる疾患に合併することがある.髄外造血 のおこる部位としては脾臓や肝臓が主であるが,その他の部 位でも髄外造血巣をみとめることがある 1)2) .https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054010027.pdf

 

以下の通り、造血に関してclaude.aiにまとめてもらいました。

造血細胞の最上流に位置する細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する「多能性幹細胞」です。この細胞から始まり、段階的に分化して最終的に造血幹細胞が形成されます。以下に、その系譜を示します:

  1. 多能性幹細胞(胚性幹細胞) |
  2. 中胚葉 |
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト) |
  4. 造血内皮細胞 |
  5. 造血幹細胞

この過程の詳細は以下の通りです:

  1. 多能性幹細胞: 胚盤胞の内部細胞塊に由来し、すべての胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に分化する能力を持つ。
  2. 中胚葉: 胚発生の過程で形成される3つの胚葉の1つ。血液系を含む多くの組織の起源となる。
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト): 血管と血液細胞の両方に分化できる共通の前駆細胞。
  4. 造血内皮細胞: 血管内皮の特徴を持ちながら、造血能力も有する特殊な細胞。主に卵黄嚢や大動脈-生殖腺-中腎領域で観察される。
  5. 造血幹細胞: すべての血液細胞系統に分化する能力を持つ、成体の造血システムの基盤となる細胞。

この過程は主に胚発生期に起こり、その後、造血幹細胞は自己複製能を獲得し、成体の骨髄で維持されます。

造血細胞系譜の発生過程に関する参考文献

  1. 多能性幹細胞(胚性幹細胞)
    • タイトル: “Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts”
    • 著者: Thomson JA, et al.
    • 雑誌: Science
    • DOI: 10.1126/science.282.5391.1145
  2. 中胚葉
    • タイトル: “Mesodermal commitment and differentiation: from foxes to hedgehogs”
    • 著者: Kimelman D.
    • 雑誌: Nature Reviews Molecular Cell Biology
    • DOI: 10.1038/nrm2009
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト)
    • タイトル: “In vitro generation of lymphohematopoietic cells from endothelial cells purified from murine embryos”
    • 著者: Nishikawa SI, et al.
    • 雑誌: Immunity
    • DOI: 10.1016/s1074-7613(00)80165-x
  4. 造血内皮細胞
    • タイトル: “Runx1 is essential for hematopoietic commitment at the hemangioblast stage of development in vitro”
    • 著者: Lacaud G, et al.
    • 雑誌: Blood
    • DOI: 10.1182/blood-2002-04-1024
  5. 造血幹細胞
    • タイトル: “Identification of a novel hierarchy of endothelial progenitor cells using human peripheral and umbilical cord blood”
    • 著者: Asahara T, et al.
    • 雑誌: Blood
    • DOI: 10.1182/blood.V100.9.3527

造血の場の移動

血液を作る場所(臓器)が発生の時期で異なるというのは自分にはかなりの驚きでした。最初は卵黄嚢で作られるそうで、血液や血管をつくることになる細胞の凝集は「血島」と呼ばれます。造血の場が移動するのは、造血幹細胞が次の場へと移動することにより起こるそうです。異なる臓器が造血を始めるというわけではないというのもまた面白味があります。造血幹細胞がさすらい人のように旅をするんですね。

胎生期造血の最大の特徴は,造血臓器が胎児の発育に伴い移動することである.但し,最近まで,造血細胞自身が実際に造血臓器間を移動するのか,あるいは,各々の造血臓器で新たな造血が発生するのかについては,厳密に検証されてきたわけではなかったが,解析技術の進歩により,胎生期造血においては実際に造血細胞が造血臓器を移動することが明らかになってきた.https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane/32/3/32_155/_pdf

胎生期の造血の場所

  1. 卵黄嚢(Yolk sac)
    • 時期:胎生初期(ヒトでは約2~3週)
    • 特徴:原始造血と呼ばれ、主に赤血球を産生
  2. 大動脈-生殖腺-中腎領域(AGM region: Aorta-Gonad-Mesonephros region)
    • 時期:胎生中期(ヒトでは約3~6週)
    • 特徴:最初の定住性造血幹細胞が出現する場所とされる
  3. 胎盤(Placenta)
    • 時期:胎生中期から後期
    • 特徴:造血幹細胞の増幅や維持に重要な役割を果たす
  4. 肝臓(Liver)
    • 時期:胎生中期から後期(ヒトでは約6週から出生まで)
    • 特徴:胎児期の主要な造血器官。造血幹細胞の増幅と分化が活発に行われる
  5. 脾臓(Spleen)
    • 時期:胎生後期
    • 特徴:補助的な造血器官として機能
  6. 胸腺(Thymus)
    • 時期:胎生中期から後期
    • 特徴:T細胞の発生・分化に特化
  7. 骨髄(Bone marrow)
    • 時期:胎生後期から生後(ヒトでは妊娠後期から)
    • 特徴:出生後の主要な造血器官。胎生期後期から造血が始まり、徐々に肝臓からの造血の場の移動が完了する