言語で複雑な現象を説明するのはなかなか難しいものです。ユビキチン化を英語でうまく説明している文章をいくつか紹介します。
論文1
Targeting the UPS as therapy in multiple myeloma 21 October 2008 BMC Biochemistry
ここでUBIQはubiquitinの略。
- In the first reaction, the E1 ubiquitin enzyme activates UBIQ
- and attaches it to the ubiquitin-conjugating enzyme E2 in an ATP-dependent manner.
- The E3 ubiquitin ligase then links the UBIQ molecule to the target protein or to a previously attached UBIQ moiety.
- Sequential cycles of this process lead to the formation of polyubiquitylated proteins
- that are eventually degraded by the proteasomes into small peptides,
- with re-cycling of free UBIQ.
- Importantly, E3 ubiquitin ligases confer specificity in the UBIQ signaling pathway by selectively targeting potential protein substrates for ubiquitylation and subsequent proteasomal degradation.
- Three proteasomal activities that regulate proteolysis are chymotrypsin-like (CT-L), trypsin-like (T-L) and caspase-like (C-L), also known as β5, β2 and β1, respectively; all of these reside within the 20S proteasome core.
文献2
Biochemistry, Ubiquitination Last Update: January 24, 2022.
- It is a three-step process involving three enzymes:
- ubiquitin-activating enzyme (E1),
- ubiquitin-conjugating enzyme (E2),
- and ubiquitin-protein ligase (E3).
- The result of this cascade of reactions is the linkage of one molecule of ubiquitin to a protein, known as mono-ubiquitination.
- Additional molecules can be attached to any of the seven lysine residues or the N-terminus of the ubiquitin molecule to form ubiquitin chains, resulting in polyubiquitination.
- Polyubiquitination subsequently leads to the initiation of proteolysis of the substrate by serving as the recognition signal for the 26S proteasome.
ユビキチンの活性化とは
E1はユビキチン活性化酵素と呼ばれますが、「活性化」とは具体的にどうなった状態なのでしょうか。多くのレビュー記事では、そこまで細かく具体的に説明していません。
まずATP依存的にUbのC末端のグリシンとE1の活性中心のシステイン残基の間に高エネルギーチオエステル結合が形成され, ユビキチンが“活性化”される. 活性化されたユビキチンはさらにATP依存的にE2の活性中心であるシスティン残基に転移される. (ユビキチンシグナリングとその生物学的意義)
Canonical Ub/Ubl conjugation cascades entail adenosine 5′-triphosphate (ATP)-dependent Ub/Ubl adenylation by an E1 activating enzyme (AE), formation of a high-energy thioester bond between a Ub/Ubl and AE, thioester transfer to an E2 conjugating enzyme, and formation of an amide bond after an amine substrate attacks the E2∼Ub/Ubl thioester. This last step can be catalyzed by E3 protein ligases either noncovalently or by formation of an E3∼Ub/Ubl thioester bond before conjugation. Adenylate-forming enzymes that use ATP to activate carboxylic acid substrates for subsequent conversion to thioesters and other metabolic intermediates are widely distributed outside the Ub/Ubl pathway(Structural basis for adenylation and thioester bond formation in the ubiquitin E1 2019年)E1とユビキチンがチオエステル結合を作る前の中間体として、ユビキチンがアデニル化されています。化学構造式あり。
ポリユビキチン鎖形成のナゾ
ポリユビキチン鎖が伸長するにつれて,活性中心が空間的に移動するという生化学反応の根幹を逸脱する現象が生じる.(直鎖状ポリユビキチン鎖の発見とその機能 生化学 第84巻 第11号,pp.920―930,2012)
ユビキチンの発見
1970年代後半から,HershkoとCiechanoverは網状赤血球系を対象に一連の独創的な研究を行い,その集積としてユビキチン仮説を提出した。この仮説はエネルギーを要求するタンパク質分解系という意外性のために当時は疑いの目で見られ,発表後4年もの間競争相手が全く出現しなかったという。(ユビキチン:タンパク質分解の多彩な役割 新潟大学大学院医歯学総合研究科 顎顔面再建学講座硬組織病態生化学講座織田公光)
ユビキチンは,当初,ヒストンに共有結合している普遍的な修飾分子として報告されていたが,のちにATP依存性タンパク質分解系の必須因子として再発見された.(変異型ユビキチンによるユビキチン化タンパク質の網羅的解析 〔生化学 第84巻 第6号,pp.479―487,2012)
ユビキチン鎖の多様性
ユビキチン化に関する参考論文・参考記事
- ユビキチンシグナリングとその生物学的意義 村田茂穂 田中啓二 日老医誌 2004; 41: 254-262) 非常にわかりやすい解説記事
- チューブリン翻訳後修飾酵素による繊毛の構造・運動制御 生物物理52(4),178-181(2012) ノーベル賞の対象にもなったリン酸化(1992年授与)やユビキチン化(2004年授与)をはじめ,これまでに多くの翻訳後修飾が報告されている(表1).
- 小さな働き者SUMO(スモ) 2005.6.23 ~ 大きな構造変化でタンパク質の機能をスイッチング ~ SUMOはユビキチンに構造がよく似た小さなタンパク質としてSmall Ubiquitin-like Modifier「小さなユビキチン様修飾因子」と名付けられました。ユビキチンは、その名前がubiquitous(ユビキタス、広く存在する)から来ているように、ヒトから酵母菌まで広く存在していますが、SUMOも同じようにいろいろな種にわたって存在しています。SUMOは、ユビキチンのようにタンパク質の分解のシグナルとしての働きはありませんが、SUMOが他のタンパク質に結合し、そのタンパク質の機能をコントロールしているさまざまな例がわかってきました。
- ユビキチン修飾系とは ユビキチン修飾系は1978年にエネルギー依存的タンパク質分解系の一部として発見されたタンパク質翻訳後修飾系であり、細胞周期・シグナル伝達・転写調節など数多くの生命現象を制御しています(図1)。
- タンパク質の目印が様々な病気と関係することを世界で初めて発見!徳永文稔 不良タンパク質を識別して選択的にユビキチン修飾するメカニズムは、アブラム・ハーシュコ(Avram Hershko)やアーロン・チカノバー(Aaron Ciechanover)らのイスラエルの研究者らによって発見され、そのユニークな分子反応機構と生理的な重要性から2004年にノーベル化学賞を受賞しました。また、プロテアソームは田中啓二博士(東京都医学総合研究所・所長)らが発見した重要なタンパク質分解酵素です。‥ 今回の研究で私たちは、「直鎖状ユビキチン鎖」という全く新しい真っ直ぐなタイプのユビキチン鎖を作る酵素を見出し、この直鎖状ユビキチン鎖が炎症応答や免疫制御に重要なNF-κB(エヌ・エフ・カッパー・ビー)というシグナル伝達を制御することを発見しました(図1b)。さらに、この酵素の構成因子が遺伝的になくなったマウスでは、重篤な皮膚炎を発症することを明らかにしました。
その他の参考記事
- チオエステル(コトバンク)クリスチャン・ド・デューブ(ノーベル生理学・医学賞受賞者)は、ATPがエネルギー通貨として登場する以前の生命の誕生するプロセスで、チオエステルに基づいた反応系からなるチオエステル・ワールドがあったのでは チオエステルはカルボン酸 (RCOOH) とチオール (R−SH) とが結合して形成 チオエステル結合は生化学者が高エネルギー結合と呼ぶもので、アデノシン三リン酸 (ATP) のピロリン酸結合と等価