用途発明とは?特許・実用新案審査基準で説明

問:用途発明とは?

Gemini 2.5 Pro:

「用途発明(ようとはつめい)」ですね。承知いたしました。

これは特に医薬品や化学の分野で非常に重要になる特許の考え方です。

一言でいうと、用途発明とは**「既知のモノ(物質)から、未知の新しい使い道(性質・効能)を発見する発明」**のことです。

「モノ」自体は新しくなくても、「その使い道」に発明としての価値を認める、という点が特徴です。

1. 用途発明の典型例:医薬品

用途発明が最もよく使われるのが「医薬品」の分野です。これは**「医薬用途発明」**と呼ばれます。

【例:既存の「胃薬」から「がん治療薬」が生まれたケース】

  1. 前提:ある会社が「成分X」を発見し、「胃の痛みを抑える効果(効能)」を見つけました。そして、「成分Xを含有する胃腸薬」として特許を取り、販売していました。

    この時点で、**「成分X」という物質自体は、すでに世の中に知られている「既知の物質」**となります。

  2. 新しい発見:その後、別の研究者が「成分X」を研究し直していたところ、偶然にも「成分Xには、特定のがん細胞の増殖を強力に抑える効果」があることを**“初めて”**発見しました。
  3. 特許の成立:「成分X」という物質自体は既知(公知)です。しかし、「がん治療に使える」という**新しい使い道(効能=用途)**は、誰も知りませんでした。

    この「新しい効能の発見」には発明としての価値があるため、この研究者は以下の特許を取得できます。

【請求項1】

成分Xを有効成分として含有する、抗がん剤。

(または「~がん治療用医薬組成物」など)

この特許は「物質」そのものではなく、「抗がん剤」という特定の「用途」に限定された権利となります。


2. なぜこれが特許として重要なのか?

もし用途発明が認められないと、どうなるでしょうか。

「成分X」はすでに胃薬として知られているため、物質特許は取れません。

もし「抗がん作用」という素晴らしい発見をしても特許で保護されなければ、製薬会社は莫大な費用がかかる臨床試験(治験)を行ってまで、その薬を「抗がん剤」として国に承認申請(薬事申請)しようとはしなくなります。

つまり、「既知の物質の新しい効能を発見した」という努力と投資を特許で保護することで、新しい治療法の開発(創薬)を促進する、という重要な役割があるのです。


3. 医薬以外の例

  • 農薬: 既知の「殺虫剤A」に、実は「特定の雑草だけを枯らす効果(除草効果)」があることを発見した場合。→ 「殺虫剤Aを有効成分とする除草剤」として特許が取れる。
  • 化学物質: 既知の「プラスチック添加剤B」に、実は「金属のサビを強力に防ぐ効果(防錆効果)」があることを発見した場合。→ 「プラスチック添加剤Bを含有する防錆剤」として特許が取れる。

結論

用途発明とは、

  • モノ(物質): 既知(新しくない)

  • コト(使い道・効能): 未知(新しい)

この「コト(使い道)」の発見に価値を見出して特許権を与える仕組み、とご理解いただくと分かりやすいかと思います。

質問:用途特許が特許として認められるということは、特許法かなにか法律の条文になってる?なってない場合、なにかしら公的文章の記述ある?

Gemini 2.5 Pro:

いいえ、実は「用途発明」という言葉や、それが特許になるという規定は、特許法の条文(法律本文)には直接書かれていません

特許法は、非常に大枠のルールだけを定めています。

  • 特許法の第2条第1項で「発明」とは何か(自然法則を利用した技術的思想の創作)を定義し、

  • 同条第3項で、発明には「物」の発明と「方法」の発明の2種類がある、と定めているだけです。

「用途発明」は、これら法律の条文をどのように解釈・運用するかという実務上のルール(解釈論)として確立されてきたものです。


📚 公的な記述は「審査基準」にあります

ご質問の「法律ではない、公的な文章」として、まさにそのものがあります。

それは、特許庁が公開している**「特許・実用新案審査基準」**です。

これは、特許審査官が特許法という法律を具体的にどのように解釈し、審査を運用するかを定めた**公式のガイドライン(マニュアル)**です。

この「審査基準」の中に、用途発明の取り扱いが明記されています。

審査基準における「用途発明」の扱い

審査基準では、「用途発明」という独立したカテゴリーを設けているわけではありません。

その代わり、例えば医薬の用途発明(医薬用途発明)は、以下のように扱うと定めています。

特定の効能(例:抗がん作用)に基づいて特定された医薬は、「物の発明」として扱います。

【解説】

これは非常に重要なポイントです。

  • 「成分X」という物質そのものは、すでに胃薬として知られているため、「物」としては新規性がありません。

  • しかし、「抗がん剤」(=抗がん作用という”用途”に限定された物)というくくりで見れば、それは新しい「物」(の発明)として扱いましょう、というルールを定めたのです。

このように、用途発明は「新しい使い道(用途)によって限定された**『物の発明』**」として、特許法第2条第3項の「物の発明」に当てはめて解釈・運用されています。


結論

  1. 法律(特許法)には書かれていない:「用途発明」という言葉も、それを特許とするという直接の条文もありません。
  2. 公的文書(審査基準)に書かれている:特許庁の「特許・実用新案審査基準」が、用途発明を「(用途によって限定された)物の発明」として取り扱う、という具体的な運用ルールを定めています。

この「審査基準」こそが、用途発明の特許性を実務上支えている最も重要な公的文書となります。

特許戦略 会社Aがa, b, cの技術特許をもつとき、会社Bがa’, b, cで特許を取るのはアリ? 組み合わせの発明

質問:「ある会社がA, B, Cという3つの技術で特許を出したときに、競合他社がA’、B,Cで特許をとるというのはありえる?」

Gemini 2.5 Pro:

はい、それは十分にあり得ます

これは特許戦略において非常に重要なポイントで、「特許が取れること」と「その特許を自由使えること」は別問題である、という典型的な例です。

競合他社が (A’ + B + C) で特許を取れるかどうかは、主に「進歩性」があるかどうかで決まります。

1. 特許が「取れる」理由(特許性)

特許庁の審査官は、競合他社の発明 (A’ + B + C) が、先行技術(A, B, Cなど)を知っている専門家にとって「容易に思いつく」ものかどうかを判断します。

  • 特許が取れるケース(進歩性あり)

    • 技術AをA’に置き換えたことによって、A, B, Cを単純に組み合わせただけでは予測できない、優れた効果(顕著な効果)が新しく生まれた場合。

    • (例:A’ + B + C にしたら、A + B + C よりも耐久性が10倍になった、など)

    • A’ 自体が、Aとは全く異なる画期的な新技術である場合。

  • 特許が取れないケース(進歩性なし)

    • A’ が、Aの単なる設計変更や、同業者なら誰でも思いつくようなありふれた代替手段(例えば、Aが鉄ネジなのに対し、A’がステンレスネジである、など)にすぎない場合。

    • この場合、「A, B, C の知識があれば、AをA’に置き換えることは容易に思いつけたはず」と判断され、拒絶されます。

したがって、(A’ + B + C) の発明に進歩性があると審査官が判断すれば、特許は成立します。


2. 特許は取れても「使えない」理由(権利の抵触)

ここからが本題です。

競合他社が (A’ + B + C) の特許を取れたとしても、その製品を製造・販売しようとすると、A社の特許権を侵害する可能性が極めて高いです。

  • 競合他社の製品: (A’ + B + C)

  • A社の特許権:

    • 特許権①(技術B)

    • 特許権②(技術C)

競合他社の製品 (A’ + B + C) は、A社の特許発明である「B」と「C」を無断で利用(実施)しています。

これは「利用発明」(または「抵触関係」)と呼ばれます。競合他社は、自分の特許 (A’ + B + C) を実施(使う)するために、A社が持つ特許(BとC)の実施許諾(ライセンス)をもらわなければなりません。

もしA社が「BとCの使用は認めない」と拒否すれば、競合他社はせっかく特許を取っても、その製品を販売できないことになります。


💡 結論:なぜ競合はそんな特許を取るのか?

では、なぜ競合他社は(A社の許可がなければ使えない)特許をわざわざ取るのでしょうか?

それは、「クロスライセンス」という交渉を有利に進めるためです。

  • 競合他社(B社)の思惑:「我々は (A’ + B + C) という素晴らしい発明の特許を持っています。御社(A社)も、我々のA’の技術を使いたいでしょう? 我々がA’の技術を使う許可を出す代わりに、御社も我々にBとCの技術を使う許可をください」

このように、お互いの特許を人質に、お互いが自由に技術を使えるように交渉(クロスライセンス契約)に持ち込むのが、特許戦略の定石です。

したがって、ご質問の「(A’, B, C) で特許をとる」という行為は、A社を潰すためというよりは、A社と交渉するための強力なカードを手に入れるための行動として、現実のビジネスで頻繁に行われています。

質問:「競合他社が単に技術A’の特許だけを出すのでなく、A’,B,Cとセットで明細書に書く理由は?そもそもBやCは請求項に書けないのでは?」

Gemini 2.5 Pro:

そこは非常に鋭いご指摘です。

しかし、結論から言うと、ユーザーさんのご認識とはで、「BやCも請求項(クレーム)に書かなければならない」のです。

そして、「なぜA’単独で出願しないのか」という点については、それが「最も効果的な発明」ではない可能性があるからです。

詳しく解説します。


1. 請求項にはBとCも書く(書かなければならない)

これが最大のポイントです。競合他社(B社とします)が取りたいのは、(A’ + B + C) という「組み合わせの発明(コンビネーション発明」の特許です。

そのため、B社の特許請求の範囲(請求項1)は、以下のようになります。

【請求項1】

構成要件Bと、構成要件Cと、構成要件A’とを具備することを特徴とする〇〇装置。

【なぜこれが許されるか?】

特許庁の審査官は、「B社はA社の特許(BやC)を使っているからダメ」とは判断しません。

審査官が見るのは、「(A’ + B + C) という組み合わせ全体が、世の中にすでにある技術(A社のA+B+Cを含む)と比べて、新しく(新規性)、簡単に思いつかないか(進歩性)」という点だけです。

B社は「B」や「C」そのもので特許を取ろうとしているのではなく、「BとCとA’を組み合わせたこと」に発明の価値があると主張しているのです。


2. なぜA’単独で出願しない(できない)のか?

ユーザーさんのおっしゃる通り、もしA’という技術単独で特許が取れるなら、B社はA’単独で出願するはずです。その方が、A社を含む他社がA’技術を一切使えなくなるため、権利として非常に強力です。

では、なぜ(A’ + B + C)という「セット」で出願するのでしょうか。

理由1:A’単独では「進歩性」がない(特許が取れない)

これが最も多い理由です。

技術A’という部品自体は、実はすでに世の中に存在していたり(新規性なし)、AをA’に変えること自体は、専門家なら簡単に思いつく(進歩性なし)可能性があります。

しかし、「A’とBとCを組み合わせた時だけ、A + B + C に比べて、予期せぬほど素晴らしい効果(例:効率が5倍になる、など)が生まれた」

のであれば、その「組み合わせ」自体に「進歩性」が認められます。

つまり、発明の核心はA’単独ではなく、(A’ + B + C) というセット(組み合わせ)にあるのです。

理由2:戦略的にA社を狙い撃ちするため

B社は、A’技術を他の分野で売りたいのではなく、明らかにA社の製品(BとCを使っている)の市場に参入し、交渉(クロスライセンス)を仕掛けたいと考えています。

その場合、A’単独の特許よりも、A社の主力製品の構成(BとC)をあえて取り込んだ (A’ + B + C) の特許の方が、「あなたの会社が将来このA’技術を使いたくなったら、うちの特許に抵触しますよ」という、より直接的で強力な交渉カードになるのです。


3. 明細書にセットで書く理由(サポート要件)

これは特許法のルールに基づいています。

  • 請求項(クレーム): 権利として欲しい「範囲」

  • 明細書: その権利の裏付けとなる「発明の説明書・実験データ」

特許法では、「請求項は、明細書に記載された発明の範囲内でなければならない」というルールがあります(サポート要件)。

もしB社が (A’ + B + C) の組み合わせで特許を請求するならば、明細書には当然、A’とBとCを組み合わせて実験した結果や、それによって「いかに素晴らしい効果が生まれたか」を詳細に記載し、その発明が確かに機能することを証明(サポート)する必要があるのです。

結論

競合他社は、「A’単独では特許にならないが、B, Cと組み合わせることで初めて顕著な効果が生まれ、進歩性が認められる」と判断した場合、(A’ + B + C) という「組み合わせ」で請求項を書きます。

その結果、A社の特許(B, C)を「利用」する形となり、クロスライセンス交渉に持ち込むための強力な武器を手に入れることができるのです。

質問「全てが既存の技術でも「組み合わせ」が特許になるんだ?」

Gemini 2.5 Pro:

はい、その通りです。

これは特許の世界で非常に重要な概念で、「コンビネーション発明(組み合わせ発明)」と呼ばれています。

すべての部品や技術(構成要素)が既存のものであっても、その「組み合わせ方」に新しさ進歩性があれば、立派な特許になります。

ただし、非常に重要な条件があります。

1. 単なる「寄せ集め」は特許にならない

例えば、「鉛筆」と「消しゴム」はどちらも既存の技術です。

これらをくっつけて「消しゴム付き鉛筆」を作ったとします。

この発明の効果は、「鉛筆の機能+消しゴムの機能」の単純な足し算にすぎません。

このような、誰でも思いつくような単なる寄せ集め(専門用語で「集合的発明」と呼ぶこともあります)は、進歩性がないとして拒絶されます。

2. 「相乗効果」が生まれれば特許になる

一方、個々の技術を組み合わせることで、それぞれの技術が持つ効果の単純な足し算からは予測できない、全く新しい効果や、著しく優れた効果(=「相乗効果」または「顕著な効果」)が生まれる場合、特許になる可能性が格段に上がります。

具体例(医薬品のケース)

  • 既存の薬A(成分A)は「頭痛」に効く。

  • 既存の薬B(成分B)は「胃を守る」効果がある。

  • これらを単に混ぜただけ(A+B)では、「頭痛に効き、胃にも優しい薬」となり、これは単純な足し算(寄せ集め)なので進歩性がありません。

しかし、もし

  • 「成分Aと成分Bを 3:7 の特定の比率で 混合した場合に限り、成分Aの頭痛を抑える効果が 10倍 に増強される」という現象が発見されたらどうでしょうか。

これは、A単独、B単独の効果からは全く予測できない「相乗効果」です。

この場合、「成分Aと成分Bを3:7の比率で含有する医薬組成物」という「組み合わせ」の発明が特許として成立します。


前回のケースへの当てはめ

ユーザーさんが前回質問された (A’ + B + C) のケースもこれと同じです。

  • A’, B, C がすべて既存の技術であっても、

  • (A + B + C) や (A’ + B) といった既知の組み合わせと比べて、

  • (A’ + B + C) という特定の組み合わせにした場合にのみ、予期せぬ顕著な効果(例:耐久性が5倍になる、消費電力が1/10になる等)が生まれる

のであれば、その「組み合わせ」自体に「進歩性」が認められ、特許になるのです。

特許は「誰も見たことがない新しい物質や機械」だけでなく、「既存のものの新しい関係性(組み合わせ)を見つけ出す」というアイデアも保護の対象としている、ということです。


特許法は、このような「アイデア」のどの部分を保護するかという点で、非常に興味深いですよね。

 

弁理士とはどんな職業か

技術と法律という異なる領域を往来しながら、発明者が創作した技術的思想を制度の枠組みの中で「権利」として具現化していく

弁理士業務の中心は出願書類の作成:発明の本質に迫り、発明者の意図を汲み取りながら、特許請求の範囲や明細書を論理的に構築していく

https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/4687

弁理士がどんな仕事をするのかは、弁理士法に定められており知財検定でも出題されます。

下の動画、めちゃくちゃわかりやすいです。子のYOUTUBEチャンネルを一通り視聴すれば、知財検定2級までは合格できそう。

【毎回出題】弁理士法の出るトコ完全マスター【知的財産管理技能検定】 村井PのYouTube大学 チャンネル登録者数 5540人

特許をすべき旨の査定 (特許法第51条)

質問:特許をすべき旨の査定 (特許法第51条)ってあるけど、つまり特許審査官は、特許を出す人じゃなくて、特許を出すかどうかの決定をしているだけってことね。「特許をする」人は、特許庁長官ってことになるわけかな?

Gemini 2.5 Pro:はい、そのご理解でほぼ間違いありません。審査官と特許庁長官の役割、そして「特許権が発生する」までの流れを整理すると、次のようになります。

1. 審査官の役割 = 「決定(査定)」

ユーザーのおっしゃる通り、特許審査官の主な仕事は**「特許をすべきか否かの決定(査定)」**をすることです。

  • 特許査定(第51条): 出願された発明が特許の要件(新規性、進歩性など)を満たしていると判断した場合、「特許をすべき」という決定(査定)を出します。

  • 拒絶査定(第49条): 要件を満たしていないと判断した場合、「拒絶すべき」という決定(査定)を出します。

審査官はこの「決定」をする人であり、審査官が決定した時点ではまだ特許権は発生していません。


2. 特許庁長官の役割 = 「登録と交付」

では、誰が「特許をする」のかというと、最終的な手続きの責任者は特許庁長官です。

特許査定が出た後、出願人が特許料(登録料)を納付すると、以下の手続きが行われます。

  1. 特許権の設定登録(第66条): 特許料の納付をもって、特許庁(の長官の権限)が「特許原簿」という公的な台帳に「この発明に特許権を設定しました」と登録します。

  2. 特許権の発生: この**「設定の登録」がなされた瞬間に、特許権が発生**します。

  3. 特許証の交付(第28条): 設定登録が完了すると、特許庁長官は、特許権者に対して「特許証」を交付します。


結論

まとめると、以下のようになります。

  • 審査官: 特許にするかどうかの「決定」をする人。

  • 特許庁長官: 審査官の決定と出願人の特許料納付に基づき、特許権の「設定登録」を行い、「特許証」を交付する人(=「特許をする」最終的な手続きの主体)。

したがって、「特許をする人は、特許庁長官」というご認識は正しいと言えます。

拒絶理由通知とは?拒絶理由通知を受け取ったときの対応方法

下の動画の説明がわかりやすかったです。またここの弁理士事務所のホームページには特許その他の知的財産権に関するわかりやすい説明がたくさんありました。

特許出願の拒絶理由通知への対応 小山特許事務所 チャンネル登録者数 1030人

特許公報と公開特許公報との大きな違い

グーグル検索などしていて、特許関連の文書にぶちあたることが時々あります。読みにくい独特の日本語なのであまり気に留めてなかったのですが、なにやら特許の文書らしいと自分が思っていたものには、「特許公報」と「公開特許公報」の2種類があるようです。名前は似ていますが、大きな違いがあります。

公開特許公報」は、出願されて1年6か月後に公開された文書のことです。まだ特許が取れたわけではありません。

原則として出願日から1年6ヶ月経過後、出願内容が一般に公開されます(出願公開)。https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html#02

それに対して、「特許公報」とは、出願され、審査を経て無事特許が取れたものに関する文書です。

 

参考サイト

  1. 公開特許公報・特許公報とは?小学生にもわかる違い category: 特許 BLOG update: August 03, 2020 https://iproom.jp/blog/patent-document-difference/

遺伝子破壊マウスは特許になるか?

質問:遺伝子Aの機能も不明だとして、遺伝子Aをノックアウトしたマウスを作ったときに、表現型が何も出なくても、そのマウスで特許とれる?

Gemini 2.5 Pro:結論から申し上げますと、その条件(表現型なし、機能不明)では、特許を取得するのは極めて困難です。主な理由は、特許が認められるための重要な要件である「産業上の利用可能性」を満たせない可能性が非常に高いためです。


🚫 なぜ困難なのか? (産業上の利用可能性)

特許制度は、単なる「新しい発見」や「新しく作った物」を保護するものではなく、「産業(工業、農業、商業など)で利用できる発明」を保護するものです。

ご提示いただいたケースでは、以下の2点が最大のネックとなります。

  1. 遺伝子Aの機能が不明

  2. ノックアウトマウスに表現型が(何も)ない

この状況は、そのマウスが「何に使えるのか(=用途)」が全く不明であることを意味します。

例えば、そのマウスは…

  • 特定の疾患モデルとして使えません(表現型がないため)。

  • 薬剤のスクリーニング用に使えません(何に効く薬を探せばよいか不明なため)。

  • 特定の物質を生産する工場として使えるわけでもありません。

特許を出願する際には、その発明の「技術的な詳細」だけでなく、「この発明(マウス)が、何の役に立つのか」という「有用性(用途)」を明細書に具体的に記載する必要があります。

機能も表現型も不明な状態では、そのマウスの「有用性」を客観的に説明することができず、「産業上の利用可能性」がない、と判断されて拒絶される可能性が極めて高いです。


💡 もし特許が取れるとしたら? (逆のケース)

もし仮に、遺伝子Aをノックアウトした結果、何らかの予期せぬ表現型(例えば、異常に毛が濃くなる、特定の病気にかからない、記憶力が非常に良い、など)が観測されたとします。

その場合、そのマウスには以下のような明確な「用途」が生まれます。

  • 疾患モデルとして: 「多毛症の研究用モデルマウス」

  • 薬剤スクリーニング用として: 「脱毛症治療薬のスクリーニング方法(このマウスを使って、毛が抜ける薬を探す)」

  • 基礎研究用ツールとして: 「記憶増強メカニズム解明のための研究用マウス」

このように明確な「用途」が生まれれば、それは単なる「物」ではなく「産業上利用可能な発明」となり、特許の審査の土俵に乗ることができます。(もちろん、その上で「新規性」や「進歩性」なども審査されます。)


まとめ

特許の世界では、「作っただけ」では不十分で、「それが何に使えるか」という実用的な価値(用途)が示せることが非常に重要です。

遺伝子の機能や表現型が不明なノックアウトマウスは、「用途不明の道具」とみなされてしまうため、特許取得は困難、というのが結論になります。

質問:機能も不明の遺伝子Bを破壊したマウスをつくったら、やはり表現型が出なかったとするよ。そして、遺伝子A破壊マウスと遺伝子B破壊マウスとを掛け合わせて、遺伝子A遺伝子Bダブルノックアウトを作ったところembryonic lethalになったとするね。その場合、遺伝子A遺伝子Bダブルノックアウトで特許が取れる?

Gemini 2.5 Pro:はい、その場合、特許が取れる可能性は格段に高くなります前回の「表現型なし・機能不明」のケースと決定的に違うのは、「胎生致死(embryonic lethal)」という明確な表現型(結果)が出た点です。これにより、前回は満たせなかった「産業上の利用可能性」と、審査で重要になる「進歩性」の双方を主張できる可能性が非常に高くなりました。


1. 🔬 「産業上の利用可能性」の明確化

前回は「何に使えるかわからない」ことが問題でした。しかし今回は、「AとBを両方ノックアウトすると胎生致死になる」という事実そのものに、明確な「用途(使い道)」が生まれます。

これは一般的に「合成致死(Synthetic Lethality)」と呼ばれる関係性を示しており、産業的(特に医薬品開発)に非常に価値のある情報です。

  • 用途①:創薬スクリーニングのツールとして

    • この「AとBが欠損すると死ぬ」という仕組みは、新しい薬剤(特に抗がん剤など)を探すための強力なツールになります。

    • 例えば、「この胎生致死を回復させる(レスキューする)薬剤」を探すスクリーニング系を構築できます。

    • あるいは、がん細胞でAが既に変異している場合に、Bの機能を阻害する薬剤(=がん細胞だけを殺す薬)を探すためのモデルとして利用できます。

  • 用途②:基礎研究用モデルとして

    • 「AとBが、発生段階において生命維持に必須の相補的な機能を持っている」ことを証明する研究モデルとして使えます。


2. 💡 「進歩性」が認められる可能性

特許審査では「その発明は、専門家が簡単に思いつけたか?」という「進歩性」も問われます。今回のケースは、進歩性が認められやすい典型的なパターンです。

  • (前提1) 遺伝子AのKOマウス → 表現型なし

  • (前提2) 遺伝子BのKOマウス → 表現型なし

  • (予測) → AとBのDKOマウスも、おそらく表現型はないだろう。

  • (実際の結果)胎生致死(Embryonic Lethal)

このように、個々の要素(A欠損、B欠損)からは全く予測できない、顕著な(しかも致死という)効果が出たことは、「予測外の顕著な効果」として進歩性を強く裏付ける論拠となります。


3. 📝 何が「発明」になるか?

この場合、特許として権利を主張(請求項に記載)するのは、以下のようなものが考えられます。

  1. 物(マウス)の発明:

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bが共にノックアウトされた、非ヒト動物(マウス)」

    • (実用面を考慮し)「遺伝子Aと遺伝子Bのヘテロ接合体マウス同士を掛け合わせることを特徴とする、胎生致死モデル動物の生産方法

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bがノックアウトされた、胚性幹細胞(ES細胞)」

  2. 方法の発明:

    • 「遺伝子Aおよび遺伝子Bが共にノックアウトされた細胞または胚を用い、その致死性を回復させる化合物を選択することを特徴とする、薬剤のスクリーニング方法

結論

「単一のKOでは表現型が出なかったが、ダブルKOにしたら致死性を示した」という発見は、単なる現象の発見を超え、「合成致死を利用した創薬スクリーニングツール」という明確な産業上の価値を持つ「発明」となる可能性が非常に高いです。

特許の明細書の書き方が今の形式(項ごと)になったのはいつから?1995年の改正から

特許の明細書をみると、段落ごとに番号が振ってあったり、項目立てがなされていたり、かなり形式的な印象を与えます。このような書き方になったのは1995年の法改正がきっかけだそうです。

質問:明細書の書き方で、項目だてるようになったのはいつから?それまではだらだら文章を書いていたの?

Gemini 2.5 Pro:これは非常に鋭いご質問です。特許実務の歴史における重要なポイントです。結論から言うと、現在のような項目立てが義務化・様式化されたのは、1994年(平成6年)の特許法改正(1995年1月1日施行)からです。そして、それ以前の明細書についてのあなたの「だらだら文章」という表現は、まさにその通り、と言ってよいでしょう。


1. いつから項目立てが始まったか?

1994年(平成6年)の特許法改正が決定的な転換点です。

  • 改正の理由:この改正は、WTO(世界貿易機関)の設立に伴うTRIPS(トリップス)協定への対応、つまり「国際的なハーモナイゼーション(調和)」が最大の目的でした。
  • 改正の内容:それまでの日本の明細書は、欧米の様式と大きく異なり、国際的に理解されにくいものでした。そこで、米国や欧州の様式(PPH, EPCなど)に合わせ、発明の内容を論理的に理解しやすくするため、以下の項目を立てて記載する様式が導入されました。
    • 【発明の名称】

    • 【図面の簡単な説明】

    • 【発明の詳細な説明】

      • 【産業上の利用分野】

      • 【従来の技術】

      • 【発明が解決しようとする課題】

      • 【課題を解決するための手段】

      • 【発明の実施の形態】

      • 【発明の効果】

    • 【特許請求の範囲】

2. それまでは「だらだら文章」だったのか?

はい、その認識でほぼ間違いありません。

1994年の改正以前(旧特許法)の明細書は、現在の様式とは全く異なっていました。

  • 項目立ての義務がなかった:「課題」や「解決手段」といった決まった項目立てで書く法的な義務がありませんでした。
  • 「特許請求の範囲」が文章に埋まっていた:最大の違いは、「特許請求の範囲(クレーム)」が独立したセクションとして存在していなかった点です。明細書の本文(まさに「だらだら文章」)で、発明の背景や構成を説明し、**その文章の最後に「特許請求の範囲は、…である。」**という形で、文章の一部としてクレームが記載されていました。
  • 読みにくさ:この形式では、どこまでが発明の説明で、どこからが権利を主張するクレームなのかが非常に分かりにくく、まさに「連続した文章(prose)」でした。発明が解決しようとする課題も、文章全体を読んで解釈する必要がありました。

🗂️ 変更のまとめ

時期 明細書の様式 特徴
~1994年 旧様式(一体型)

* 項目立ての義務なし。

 

* 「だらだら文章」で発明を説明。

 

文章の最後にクレームが埋め込まれて*いた。

1995年~ 現行様式(項目立て)

* TRIPS協定対応(国際調和)のため改正。

 

【課題】【解決手段】等の項目立てが義務化*された。

 

* 【特許請求の範囲】が明細書本体とは別のセクションとして明確化された。(※さらに2002年の改正で、明細書と特許請求の範囲は別個の書類として扱われるようになり、分離が徹底されました)

したがって、あなたが現在学んでいる項目立ての書き方は、国際基準に合わせるために比較的「最近」(1990年代半ば)導入されたものであり、それ以前は全く異なる書き方だった、というのは事実です。

【法律用語】応当する日とは?

応当する日(おうとうするひ)」とは、法律上の期間を計算するときに使う言葉で、**「(翌月や翌年などの)対応する同じ日」**という意味です。


📅 A Simple Example (The “Easy” Case)

「1ヶ月後」や「1年後」を計算するとき、単純にその日付に対応する日のことです。

  • 起算日(スタート): 4月10日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 5月10日
  • 「1年後の応当日」: 翌年の4月10日

⚠️ The Important Legal Rule (The “Hard” Case)

この言葉が本当に重要になるのは、「その日に対応する日付が存在しない場合」です。

その場合、「その月の末日(最後の日)」が「応当日」になります。

  • 起算日(スタート): 1月31日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 2月には31日が存在しません。
  • → この場合、2月の末日である 2月28日(うるう年の場合は29日)が「応当日」となります。

【別の例】

  • 起算日: 8月31日
  • 「1ヶ月後の応当日」: 9月には31日が存在しません。
  • → 9月の末日である 9月30日 が「応当日」となります。

💡 Why This Matters (Context)

このルールは、特許出願の優先権(「1年以内」)や、契約の更新、時効の計算など、法律上の**「期間の満了日(デッドライン)」**を正確に計算するために非常に重要です。

例えば、「1月31日に出願した場合、優先権の期限(1年後)はいつ?」といった計算で、この「応当日」のルールが使われます。

(Gemini 2.5 Pro)