ジェネリック generic とバイオシミラー biosimilar の概念とそれらの違いついて

「バイオシミラー」という言葉、一般的にはまだ馴染みが薄いかもしれません。しかし、医療費抑制の切り札として、現在製薬業界で最もホットなトピックの一つです。

一言で言うと、以下の違いがあります。

  • ジェネリック: 化学合成で作る薬(低分子)のコピー版。**「完コピ(全く同じもの)」**です。
  • バイオシミラー: 生き物を使って作る薬(バイオ医薬品)のコピー版。**「完コピは不可能なので、限りなく似せたもの(シミラー)」**です。

なぜ「シミラー(似ている)」止まりなのか?という点を含めて解説します。


1. ジェネリック医薬品(後発医薬品)

=「設計図のコピー」

アスピリンやロキソニンなどの「低分子医薬品」は、化学式という明確な設計図があります。特許が切れれば、他のメーカーがその設計図通りに化学合成を行うことで、**先発品と全く同じ成分(同一物質)**を簡単に作ることができます。

  • 開発: 非常に簡単。数百人の患者さんで効き目を確かめるような大規模な試験(治験)は不要です。「血液中の薬物濃度が先発品と同じになるか」を確認する試験だけで承認されます。
  • 価格: 開発費が安いので、先発品の4〜5割、時にはそれ以下の価格になります。

2. バイオシミラー(バイオ後続品)

=「名店の味の再現」

インスリンや抗体医薬などの「バイオ医薬品」は、先ほど解説した通り、巨大で複雑なタンパク質であり、細胞(生き物)に作らせています。

ここに「シミラー」である理由があります。

なぜ「完コピ」できないのか?

  1. 細胞が違う: 先発メーカーが使っている「マスター細胞(親株)」は最高機密であり、コピーメーカーは入手できません。自分の手持ちの細胞から、似たような抗体を作る細胞を選び出すところから始めます。
  2. プロセスが違う: 培養タンクの微妙な条件の違いで、タンパク質の形や糖鎖のつき方が変わります。

結果として、**「有効成分の構造が、先発品と完全に同一ではない」薬ができあがります。しかし、品質・効き目・安全性が「先発品と同等である」**と科学的に証明されたものが、バイオシミラーとして承認されます。

開発のハードルが高い

「成分が完全に同じではない」ため、国(規制当局)はジェネリックのように簡単には認めてくれません。

  • 臨床試験(治験)が必要: 患者さんに投与して、「先発品と同じくらい効くか?」「副作用が増えていないか?」を確認する臨床試験(フェーズ3試験)が原則として必要です。
  • 価格: 莫大な設備投資と臨床試験の費用がかかるため、ジェネリックほど安くできません。先発品の7〜8割程度の価格設定になることが多いです。

わかりやすい例え:料理

  • ジェネリック(化学合成)は「印刷」
    • 先発品は「オリジナルのPDFファイル」。ジェネリックはそれを「家のプリンターで印刷したもの」。紙質は違うかもしれませんが、書いてある文字(成分)は100%同じです。
  • バイオシミラー(生物製剤)は「カレー作り」
    • 先発品は「有名ホテルのカレー」。
    • バイオシミラーの開発者は、ホテルのシェフ(先発メーカー)からレシピ(特許情報)は見せてもらえますが、「秘伝のルー(細胞)」はもらえません。
    • そこで、自分の家にある材料と鍋を使って、試行錯誤しながらホテルの味を再現します。
    • 最終的に、食通(審査当局)が食べて**「これはホテルのカレーと同等の味と品質だ」**と認めたら、バイオシミラーとしてデビューできます。

まとめ:比較表

ジェネリック(後発品) バイオシミラー(BS)
元の薬 低分子医薬品(飲み薬など) バイオ医薬品(注射・点滴)
同一性 同一(同じ物質) 同等(高度に類似)
製造難易度 低い(化学合成) 超高い(細胞培養)
開発費・期間 数千万円~数億円(3年程度) 数十億~百億円以上(7~10年)
必要な試験 生物学的同等性試験(小規模) 臨床試験(大規模)が必要
価格 先発品の約30~50% 先発品の約70%

なぜ今、注目されているのか?

がん治療薬やリウマチ治療薬などのバイオ医薬品は、1人の患者さんあたり年間数百万円かかることもザラです。医療財政を圧迫している最大の要因の一つであるため、国は少しでも安いバイオシミラーへの切り替えを強力に推進しています。

 

タンパク質の一次構造が同じでもsimilarでしかない理由

「cDNA(設計図)さえ同じなら、同じタンパク質ができるはず」というのは、分子生物学の基本(セントラルドグマ)としては正解です。

実際、バイオシミラーメーカーも、特許情報などからアミノ酸配列を特定し、先発品と全く同じcDNA配列を使って薬を作っています。

しかし、それでも「ジェネリック(完全同一品)」にはならず、「シミラー(類似品)」にしかならないのです。

ここには、DNAの設計図には書かれていない、**「生物ゆえのブラックボックス」**が存在するからです。


1. DNAが決めるのは「骨組み」だけ

抗体(タンパク質)を「クリスマスツリー」に例えてみましょう。

  • cDNA(遺伝子): これは**「モミの木(アミノ酸の並び順)」**を決めます。
    • おっしゃる通り、同じcDNAを使えば、幹や枝の形(タンパク質の一次構造)は全く同じものができます。
  • 翻訳後修飾(糖鎖など): これが**「オーナメント(飾り付け)」**です。
    • 抗体医薬において、効き目や安全性に大きく関わるのが、タンパク質の表面にくっついている**「糖鎖(とうさ)」**という飾りです。
    • 実は、この飾りの付け方は、DNAには書かれていません。

2. 「飾り付け」をするのは細胞の気分次第

この「糖鎖の飾り付け」を行うのは、cDNAではなく、宿主細胞(CHO細胞など)の中にある酵素たちです。そして、この酵素の働きは、以下のような環境要因でコロコロ変わります。

  • 細胞の株(Cell Line)の違い:
    • 先発メーカーは「マスターセルバンク」というオリジナルの細胞を持っていますが、これは門外不出です。
    • バイオシミラーメーカーは、自分で別のCHO細胞を買ってきて、それに同じcDNAを入れます。「作り手(細胞)」が違うので、飾りのセンス(糖鎖のパターン)が微妙に変わってしまいます。
  • 培養環境の違い:
    • タンクの温度が0.1度違うだけ、あるいは撹拌するスピードが少し違うだけで、細胞へのストレスが変わり、糖鎖の付き方が変わります。

3. 糖鎖が違うと何が困るのか?

「飾りがちょっと違うくらいなら、中身は同じだし良いのでは?」と思われるかもしれませんが、抗体医薬ではこれが致命的になることがあります。

  • 効き目が変わる: 抗体ががん細胞を攻撃する際、**「ADCC活性」**というメカニズムを使いますが、これには特定の糖鎖(フコースなど)の有無が強烈に影響します。
  • アレルギーの原因になる: 人間が持っていないタイプの糖鎖がついてしまうと、体が異物と判断してアナフィラキシーを起こす可能性があります。
  • 体内からすぐ消える: 糖鎖の形によっては、肝臓で分解されやすくなり、薬の効果が長続きしなくなります。

結論

「cDNA(楽譜)」は同じでも、「演奏者(細胞)」と「ホール(培養タンク)」が違うため、全く同じ「演奏(医薬品)」を録音することはできない。

これが、抗体医薬において「ジェネリック(完全コピー)」が存在せず、「バイオシミラー(限りなく似せた再演)」しか作れない理由です。

この**「cDNAだけでは決まらない部分(翻訳後修飾)」**を、先発品に限りなく近づけるために、CMCの研究者たちは何年もかけて培養条件を検討し続けているのです。


この「翻訳後修飾」の壁があるため、バイオ医薬品は参入障壁が非常に高いのです。

(Gemini 2.5 Pro)

製薬会社の薬事部門の機能と役割

製薬会社の**薬事(Regulatory Affairs: RA)は、一言で言えば「当局(国)との交渉人」**であり、製薬ビジネスの根幹を握る非常に重要な部門です。

MA(メディカルアフェアーズ)が「医療現場」を相手にするのに対し、薬事は**「規制当局(厚生労働省やPMDAなど)」**を相手にします。

ご質問の「そもそも薬事とは?」という基本から、その実態まで解説します。


1. そもそも「薬事」とは?

製薬ビジネスにおいて、薬を作る(研究・開発)だけでは販売できません。国の審査を通り、**「製造販売承認」**という免許をもらって初めて、薬を患者さんに届けることができます。

  • 定義: 医薬品の開発から承認、そして販売後の安全対策に至るまで、薬事法規(法律)に則って適正に進められているかを管理し、国(規制当局)と折衝して承認を勝ち取る仕事です。
  • なぜ重要か: 薬事の戦略ミスは、承認の遅れ(=数十億円〜数百億円の機会損失)や、最悪の場合は承認申請の却下(=開発中止)に直結するからです。

2. 薬事部門の機能と役割

薬事の仕事は、製品のライフサイクルに合わせて大きく3つのフェーズに分かれます。

① 開発薬事(Development RA)

**「どうすれば最短・最良の条件で承認されるか?」**を戦略的に考えます。

  • 治験相談: 臨床試験(治験)を始める前や途中で、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)と面談し、「この試験デザインで承認をくれますか?」と事前の合意形成を行います。
  • 開発戦略: 海外データは使えるか? 日本人のデータはどれくらい必要か? といったロジックを組み立てます。

② 申請・承認(Submission & Approval)

最大の山場です。

  • 申請資料作成: 膨大な治験データや品質データをまとめ、**CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント)**と呼ばれる申請書類を作成します。
  • 審査対応: 当局からの「このデータの解釈はおかしいのではないか?」「副作用のリスクが高すぎるのではないか?」といった無数の照会事項(質問)に対し、論理的かつ科学的に反論・回答し、納得させます。

③ ライフサイクルマネジメント(Post-approval)

承認を取った後も仕事は続きます。

  • 一部変更承認申請: 新しい効能(別の病気にも使えるようにする)や、新しい剤形(錠剤から注射剤へなど)を追加するための申請を行います。
  • 添付文書の管理: 最新の副作用情報などを反映して、薬の説明書(添付文書)を改訂します。
  • 広告審査: プロモーション資材が法規制(薬機法)に違反していないかチェックします。

3. 日本や世界における実態

薬事業務は、かつては「国内ローカル」な仕事でしたが、現在は完全に**「グローバル」**な仕事に変貌しています。

  • グローバル同時開発:
    • かつては「ドラッグ・ラグ(海外より日本での発売が遅れること)」が問題でしたが、現在は世界中で同時に治験を行い、同時に申請する手法が主流です。
    • そのため、日本の薬事担当者も、米国(FDA)や欧州(EMA)の動向をリアルタイムで把握し、海外本社の薬事チームと英語で戦略を練る必要があります。
  • PMDA(日本)の特徴:
    • 日本の審査機関であるPMDAは、世界的に見ても審査スピードが速く、科学的な議論を重視する傾向があります。
    • 日本の薬事担当者は、PMDAとの信頼関係を築くことが非常に重要です。

4. 働く人達の経歴(バックグラウンド)

薬事は「法律」と「科学」の両方の知識が必要なため、高度な専門性が求められます。

  • 薬剤師:
    • 日本では圧倒的に多いバックグラウンドです。薬学の知識と薬事法規の知識をベースにキャリアを積みます。
  • 理系修士・博士(薬学以外):
    • 生物学、化学などのバックグラウンドを持つ人も多いです。特にバイオ医薬品などは高度な科学知識が必要なため、博士号取得者も増えています。
  • 英語力:
    • 必須です。外資系はもちろん、内資系企業でも海外展開のために英語での交渉や資料作成が日常的に発生します。
  • 他部門からの異動:
    • 開発(CRAなど)や研究職から、より戦略的な業務を求めて薬事に異動するケースもよくあります。

まとめ:薬事とMAの違い

整理すると、以下のようになります。

MA(メディカル) 薬事(RA)
主な相手 医師、研究者(KOL) 規制当局(PMDA、厚労省)
目的 科学的価値の最大化、エビデンス構築 製造販売承認の取得・維持
武器 論文、学会発表、医学的議論 法律(薬機法)、申請資料、ロジック
性質 攻め(新たな可能性を探る) 守り兼攻め(ルールの中で最短ルートを描く)

薬事は、企業の利益に直結する「承認」というゴールキーパー兼ストライカーのような役割であり、非常にプレッシャーがかかりますが、**「世の中に新しい薬を出す最後の扉を開ける」**という大きなやりがいがある仕事です。

CMC薬事とは

CMC薬事は、薬事職の中でも特に**「モノづくり(製造・品質)」**に特化したスペシャリスト集団です。

一般的な薬事(クリニカル薬事)が「ヒトでの有効性と安全性(治験データ)」を扱うのに対し、CMC薬事は**「その薬が、いつ、どこで、誰が作っても、常に同じ品質であることを保証する」**ために存在します。

詳細を解説します。


1. そもそもCMCとは?

CMCは、以下の3つの英単語の頭文字をとった言葉です。

  • Chemistry(化学):薬の化学構造、物理的化学的性質。
  • Manufacturing(製造):薬をどうやって作るか(製造工程、設備)。
  • Control(品質管理):できた薬が正しい品質かどうやって確かめるか(試験方法、規格)。

つまり、**「どんな物質を、どうやって工場で作り、どうやって合格判定を出すか」**という、薬の「実体」に関するすべてを指します。

2. CMC薬事の役割:なぜ必要なのか?

薬は「発明」しただけではダメで、「工業製品」として大量生産できなければなりません。しかし、実験室のビーカーで作るのと、工場の巨大タンクで作るのでは勝手が違います。

CMC薬事のミッションは、「工場の現場」と「規制当局」の通訳となり、以下のことを証明することです。

  • 恒常性: 「1錠目も、100万錠目も、全く同じ成分・品質です」
  • 安定性: 「製造してから3年間は、品質が劣化しません」
  • プロセス管理: 「不純物はここまで取り除いています」

3. 具体的な業務内容

① 申請資料(CTD モジュール3)の作成

新薬承認申請において、最もページ数が多く膨大になるのが、この品質パート(モジュール3)です。研究部門や工場のデータを集め、論理的なストーリー(QOS: Quality Overall Summary)を構築して当局に提出します。

  • 難所: 特にバイオ医薬品(抗体医薬など)は構造が複雑で、「同じものを作る」こと自体が難しいため、CMC薬事の腕の見せ所になります。

② 変更管理(ライフサイクルマネジメント)

CMC薬事が最も忙しくなるのは、実は**「承認を取った後」**かもしれません。

薬の製造プロセスは、コストダウンや設備の老朽化、原材料メーカーの変更などで、頻繁に変更が入ります。

  • 判断: 「製造タンクの大きさを変えたい」→「それは品質に影響しますか?」→「影響するなら、国に承認を取り直す(一部変更承認申請:一変)必要があります」
  • 軽微変更: 「ラベルのフォントを変えるだけ」→「それは届出だけでOKです」この**「一変(いっぺん)」か「軽微変更」かの判断**を誤ると、法違反で業務停止命令(回収騒ぎ)に発展するため、非常に責任重大です。

4. CMC薬事の難しさと面白さ

「プロセスがプロダクトである」

特に最近主流のバイオ医薬品では、製造工程(温度、培養時間、撹拌速度など)が少し変わるだけで、薬の効き目や副作用が変わってしまうことがあります。そのため、「作り方(プロセス)」そのものを厳密に管理し、当局と合意形成する交渉力が求められます。

グローバル対応(ICHガイドライン)

日本、アメリカ、ヨーロッパで「品質の基準(不純物の許容量など)」が異なると、国ごとに別々の製品を作らなければならず、コストが跳ね上がります。

CMC薬事は、世界共通のガイドライン(ICH)を熟知し、**「世界中のどの工場で作っても、世界中で売れる」**ような品質戦略を立てます。

5. 働く人達の経歴(バックグラウンド)

CMC薬事は、法律知識以上に**「化学・工学の深い知識」**が不可欠です。

  • 分析化学・有機化学の研究者:
    • 元々研究所で化合物の分析をしていた人が、その知識を活かしてCMC薬事に異動するケースが多いです。
  • 製造・生産技術職:
    • 工場のライン管理やプロセス開発をしていた人が、現場を知る強みを活かして活躍しています。
  • 薬剤師:
    • 物理化学や製剤学の知識があるため、適性が高いです。

まとめ:クリニカル薬事との違い

特徴 クリニカル薬事(一般の薬事) CMC薬事
主役 患者、臨床データ 物質、製造プロセス、工場
キーワード 有効性、副作用、臨床試験 不純物、安定性、規格、試験法
申請資料 CTD モジュール5(臨床) CTD モジュール3(品質)
日常業務 開発戦略、適応拡大 製法変更の対応、原材料変更の対応

CMC薬事は、派手さはありませんが、**「薬という『モノ』の品質を担保し、安定供給を守る」**という、エンジニアリングとレギュレーションが融合した、非常に専門性が高く市場価値の高い職種です。

 

バイオ医薬品のCMC薬事の特徴

バイオ医薬品(特に抗体医薬)と低分子医薬品(従来の飲み薬)の製造・品質管理の違いは、例えるなら**「自転車の製造」と「ジャンボジェット機の製造」ほどの違い**があります。

あるいは、「化学合成(工場での組み立て)」と「醸造・農業(生き物を育てる)」の違いと言ってもよいでしょう。

CMC薬事の視点から見ると、この違いが「難易度」と「規制の厳しさ」に直結します。主な違いを3つのポイントで解説します。


1. 構造の複雑さとサイズ

まず、モノとしてのサイズと複雑さが桁違いです。

  • 低分子医薬品(アスピリンなど):
    • サイズ: 分子量は数百程度。
    • 構造: シンプルで安定的。設計図(化学式)通りに100%同じものを作れます。
    • 例: 自転車。部品点数が少なく、誰が組み立てても同じものができる。
  • バイオ医薬品(抗体医薬など):
    • サイズ: 分子量は約15万。低分子の数百倍~数千倍の大きさ。
    • 構造: 非常に複雑なタンパク質。3次元に折り畳まれており、表面には「糖鎖(とうさ)」という飾りがついています。
    • 例: ジャンボジェット機。部品点数が数百万個あり、微細な調整が必要。

2. 製造プロセスの違い:「合成」か「培養」か

これが最大の違いであり、CMC薬事の最重要ポイントです。

低分子:「化学合成」

  • フラスコやタンクの中で、Aという薬品とBという薬品を混ぜ、温度を上げればCができる、という化学反応です。
  • 再現性が高い: レシピ通りにやれば、いつどこでやっても同じ物質(純度100%に近いもの)ができます。

バイオ:「細胞培養」

  • 生き物(細胞)に作らせます。 遺伝子組み換え技術を使って、チャイニーズハムスターの卵巣細胞(CHO細胞)などに、抗体を作らせます。
  • 生き物は気まぐれ: 細胞は非常にデリケートです。培養タンクの「温度」「pH」「撹拌(かきまぜる)スピード」「栄養分」がわずかに変わるだけで、細胞の機嫌が変わり、出来上がる抗体の品質(糖鎖のつき方など)が微妙に変わってしまいます。

【重要概念】The Process is the Product(プロセスこそが製品である)

バイオ医薬品では、完成品の分析だけでは品質を保証しきれません。そのため、「製造プロセスそのもの」を厳密に管理することが、製品の品質とみなされます。

3. 品質管理の難しさ:「同一性」か「同等性」か

製造した薬が「合格」かどうかを判定する基準も異なります。

  • 低分子: 「同一性(Identity)」
    • 不純物がなく、設計図通りの化学構造であればOK。「これはアスピリンです(Yes/No)」が明確に判定できます。
  • バイオ: 「同等性(Comparability)」
    • ここが非常に難しい点です。バイオ医薬品は巨大なタンパク質なので、数兆個の分子の中に、糖鎖の形が微妙に違うものが混ざっています(不均一性)。
    • そのため、「前回作ったバッチと、今回作ったバッチは、完全に同一ではないが、品質・有効性・安全性に影響がない範囲で『同等』である」という証明をしなければなりません。

特有のリスク:免疫原性(Immunogenicity)

バイオ医薬品特有の怖いリスクとして**「免疫原性」**があります。

製造工程のミスでタンパク質の形(折り畳み)が少し崩れると、患者の体がそれを「異物(ウイルスなど)」と認識し、攻撃してしまう(抗体ができて薬が効かなくなったり、アナフィラキシーショックを起こしたりする)現象です。

CMC薬事は、このリスクがないことを証明するために膨大なデータを扱います。


まとめ:一覧比較表

低分子医薬品(飲み薬など) バイオ医薬品(抗体医薬など)
作り方 化学合成(組み立て) 細胞培養(育成・醸造)
サイズ 自転車レベル ジャンボジェット機レベル
品質の特徴 均一(100%同じ) 不均一(多様性がある)
CMCの肝 不純物の管理 プロセスの管理、ウイルスの除去
コピー薬 ジェネリック(後発医薬品)

※全く同じものが作れる

バイオシミラー(バイオ後続品)

※「似ている」ものしか作れない

このように、バイオ医薬品のCMCは、**「生き物をコントロールする」**という不確実性との戦いであるため、高度な技術と規制対応力が求められます。

(Gemini 2.5 Pro)

製薬会社のMA(Medical Affairs)部門の機能と役割

製薬業界において、メディカルアフェアーズ(Medical Affairs: MA)は、近年その重要性が劇的に高まっている部門です。かつては「学術部」として営業支援の側面が強かったものの、現在は「研究開発(R&D)」と「営業・マーケティング(Commercial)」の間に立つ第3の柱として独立しています。


1. MA部門の機能と役割

MAの最大の役割は、**「自社医薬品の医学的・科学的価値を最大化すること」**です。営業(MR)が「売上」を目標とするのに対し、MAは「適正使用と科学的エビデンスの構築・発信」を目標とします。

  • エビデンスの創出: 治験(Phase 1-3)では分からなかった、実臨床でのデータ(リアルワールドデータ)や、新たな適応の可能性を探る臨床研究を企画・推進します。
  • 科学的情報の交換: 医師に対し、高度な科学的情報を提供し、議論を行います。これは販促活動(プロモーション)とは明確に区別されます。
  • アンメット・メディカル・ニーズの把握: まだ満たされていない医療上の課題を現場の医師から収集し、開発部門へフィードバックします。

2. 日本や世界における実態

日本とグローバル(欧米)では、歴史的背景により立ち位置が少し異なっていましたが、現在はグローバルスタンダードに近づいています。

  • 世界(特に欧米):
    • 以前から「プロモーション(販売)」と「メディカル(科学)」の分離が厳格です。
    • MAは非常に権限が強く、製品戦略の中核を担います。
  • 日本:
    • かつては「学術」として営業部の下部組織であることが一般的でした。
    • しかし、**ディオバン事件(臨床研究不正)**などをきっかけに、販売活動と臨床研究の癒着を防ぐための法規制やガイドライン(臨床研究法、販売情報提供活動ガイドライン)が厳格化されました。
    • これにより、営業部門から完全に独立した組織としてのMAが確立され、現在では外資・内資問わず、組織体制の強化が急ピッチで進んでいます。

3. キーオピニオンリーダー(KOL)との関係

KOL(最近では TLE: Thought Leader Liaison や単に Expert と呼ぶことも増えています)との関係構築はMAの最重要業務の一つです。

  • 対等なパートナー: MRが顧客として接するのに対し、MA(特にMSL: メディカル・サイエンス・リエゾン)は**「科学的なパートナー」**として接します。
  • インサイトの収集: 「先生、この薬を使ってください」ではなく、「この疾患の治療における最新の知見について議論させてください」「先生はこのデータの解釈をどう考えますか?」というアプローチを行います。
  • アドバイザリーボード: 専門医を集めた諮問委員会を主催し、開発戦略やデータ解釈について助言を求めます。

4. メディカルプランとは?

メディカルプランとは、MA部門が年単位あるいは製品のライフサイクル全体を通して実行する**「戦略計画書」**です。

  • 構成要素:
    1. 現状分析: 対象疾患の治療環境や競合品、自社品の強み・弱み。
    2. ギャップ分析: 「あるべき医療の姿」と「現状」の差(ギャップ)は何か。
    3. 戦略目標: そのギャップを埋めるために何をすべきか(例:特定の副作用への懸念を払拭する、新しい患者層への有効性を示す)。
    4. 戦術(アクション): 具体的にどのような臨床研究を行うか、どの学会でシンポジウムを共催するか、どのような論文を発表するか。

このプランは、マーケティング部門の「ブランドプラン」と連携しつつも、あくまで非営利・科学的妥当性に基づいて策定されます。

5. 働く人達の経歴(バックグラウンド)

MA部門は高度な専門知識が求められるため、高学歴・専門職の集まりです。

  • 医師 (MD):
    • 役割: 部門長(Medical Director)や、トップKOLとの対話、安全性評価の最終判断など。
    • 傾向: 臨床経験を持つ医師が、製薬企業へ転職するケースが増えています。希少疾患やがん領域では特に重宝されます。
  • 博士号取得者 (PhD):
    • 役割: MSL(現場担当)やメディカルリード。
    • 傾向: 基礎研究のバックグラウンドを持ち、論文を読み解く力や論理的思考力が高いため、MAの主力層です。
  • 薬剤師:
    • 役割: 日本では伝統的に多く、MSLや学術情報担当として活躍しています。
    • 傾向: 薬学の知識に加え、日本の医療制度に明るい点が強みです。
  • その他(知財・開発など):
    • 開発(Clinical Development)出身者: 治験の知識が豊富なので、MAへ異動するケースは多いです。
    • 知財(IP): 知財部門からMAに直接異動するケースはです。知財は特許戦略に関わるため、法務や知財部として独立していることがほとんどです。ただ、MAが生成したデータを知財部が特許化するために連携することはあります。

まとめ

現在の製薬企業において、MAは**「科学的公正さを守る砦」であり、同時に「次なる治療戦略を生み出す頭脳」**でもあります。営業偏重だった日本の製薬業界において、今最も変革と投資が進んでいるエキサイティングな領域と言えます。

(Gemini 2.5 Pro)

特許出願における「補正」amendmentとは

特許出願における「補正」amendmentとは

特許申請における「補正」とは、出願人が特許庁に提出した出願書類(明細書、特許請求の範囲、図面など)の内容を修正・訂正する手続のことです。

審査官から拒絶理由が通知された場合、その理由を解消するために行われることが多いですが、出願人が自発的に行うことも可能です。


📅 いつ補正できるか?

補正は、出願が特許庁で審査中である限り可能ですが、時期によって許される補正の範囲(内容)が異なります

主な補正のタイミングは以下の通りです。

  1. 自発補正
    • 時期: 出願してから、特許庁から最初の審査結果(拒絶理由通知など)が来るまでの間。
  2. 拒絶理由通知への応答時
    • 時期: 審査官から「拒絶理由通知」を受けた後、指定された応答期間内。
    • 最初の拒絶理由通知か、最後(2回目以降)の拒絶理由通知かによって、補正できる範囲がさらに制限されます。
  3. 拒絶査定不服審判の請求時
    • 時期: 審査の結果、「拒絶査定」が出た場合、それを不服として審判を請求する時。

⚠️ 補正の重要なルール(制限)

補正は自由に行えるわけではなく、守らなければならない厳格なルールがあります。

1. 新規事項の追加の禁止(最重要)

最も重要なルールは、「新規事項(New Matter)」を追加してはならないという点です(特許法第17条の2第3項)。

  • 補正は、あくまで出願当初に提出した明細書、特許請求の範囲、図面(=「当初明細書等」)に記載されていた事項の範囲内で行わなければなりません。
  • 当初明細書等に書かれていなかった新しい技術情報、発明の課題、効果などを後から追加することは認められません。
  • 理由: もし後から新しい内容を追加できてしまうと、他者より早く出願した「先願」としての地位を不当に利用することになるためです(先願主義の原則に反します)。

[例]

  • 許される補正: 当初明細書に「A、B、Cから選ばれる」と記載されていたものを、「A」に限定する補正。
  • 許されない補正(新規事項): 当初明細書にAのことしか書かれていなかったのに、拒絶理由を回避するために「Dという新しい要素」を追加する補正。

このルールに違反した補正は、拒絶理由や特許無効の理由となります。

2. 時期による補正目的の制限

審査が進むにつれて、認められる補正の範囲は狭くなります。

特に、「最後の拒絶理由通知」の後や**「拒絶査定不服審判」の請求時**に行う補正は、その目的が以下のように厳しく限定されます。

  • 請求項の削除: 特許請求する項目(請求項)を削除する。
  • 特許請求の範囲の減縮: 発明の範囲を狭める(例:構成要素を追加して権利範囲を限定する)。
  • 誤記の訂正: 明らかな書き間違いを直す。
  • 不明瞭な記載の釈明: 意味が分かりにくかった部分を明確にする。

(Gemini 2.5 Pro)

 

理解を深めるために

疑問:こんなシナリオ、「特許を取った商品を自社が販売しているとする。他者が類似商品を発売した。その類似点を含めた補正を、もとの特許に対して行った。この新たな特許権を用いて、類似商品の販売差し止めを求めた。」ってありえる?ナシ?

Gemini 2.5 Pro:

ご質問のシナリオは、基本的に「ナシ」(不可能)です。

その中核となる理由は、一度成立した特許権の範囲を、後から「補正」や「訂正」によって広げることは法律で固く禁じられているからです。


🚫 なぜ不可能なのか?

ご提示のシナリオには、特許実務上の重要な誤解が含まれています。ポイントは「補正」という言葉の使い方です。

  1. 「補正」 (審査中)
    • 補正」は、主に出願してから特許になる(審査段階)に行う手続きです。
    • この段階であっても、出願当初の明細書に書いていなかった新しい内容(新規事項)を追加することはできません。
  2. 「訂正」 (特許成立後)
    • ユーザーのシナリオ(特許を取った後)で行う手続きは、正確には「補正」ではなく「訂正」(訂正審判や訂正請求)と呼びます。
    • この「訂正」で認められているのは、以下の3つの目的に限られます。
      1. クレーム(特許請求の範囲)を狭くする(減縮
      2. 誤記や誤訳を直す
      3. わかりにくい記載を明確にする
    • そして最も重要なルールが、特許法第126条第6項に定められています。それは、「訂正は、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない」というものです。

第百二十六条6 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_6-At_126

🎯 シナリオの問題点

ユーザーのシナリオは「他者の類似商品が出てきた」→「その類似点を含むように特許の内容を広げる」というものです。

これは、まさに法律が禁止している「クレーム(権利範囲)の実質的な拡張」に該当します。したがって、そのような「訂正」は特許庁に絶対に認められません。

もしこれが認められてしまうと、他社は「この特許はここまでだから、この範囲を避けて新商品を開発しよう」と判断したのに、後から特許権者が「やっぱりお前の商品もウチの権利範囲に入れる」と”後出しジャンケン”ができてしまいます。

これでは安心して事業ができなくなるため、権利範囲を後から広げることは厳しく禁止されています。


💡 では、どう戦うのか?

その類似商品に対しては、「補正」や「訂正」で権利を広げて対抗することはできません。

もし戦うのであれば、元の(補正・訂正する前の)特許権で勝負するしかありません。

その際、主な争点となるのは以下の2つです。

  1. 文言侵害(直接侵害)
    • 類似商品が、あなたの元の特許のクレームに書かれた構成要件をすべて満たしているかどうか。
    • 満たしていれば、差し止めを求めることができます。
  2. 均等侵害(均等論)
    • たとえクレームの文言通りではなく、一部が異なっていたとしても、「実質的に同じ」と判断されれば侵害とみなされる可能性があります。(これが均等論です)
    • 均等論が認められるには厳しい要件がありますが、クレームの文言をわずかに変えただけの模倣品に対しては有効な手段となり得ます。

結論

  • 特許成立後に、他社の類似品をカバーするために権利範囲を広げる「補正(訂正)」は不可能です。
  • 類似品と戦うには、元の特許権の範囲(または均等論)で勝負する必要があります。

 

質問:補正 の場合は、拡げるのもアリ?

Gemini 2.5 Pro:

いいえ、ご質問の意図するような「拡張」は、「補正」であってもできません。

ここでも法律の厳格なルールがあります。


🚫 「新規事項の追加」の禁止

「補正」は、おっしゃる通り特許になるの審査段階で行う手続きです。

しかし、この「補正」で許されるのは、出願当初に提出した明細書、特許請求の範囲、または図面に書かれている事項の範囲内での修正だけです。

これを「新規事項(しんきじこう)の追加の禁止」といい、特許法第17条の2第3項で定められています。


🕵️ シナリオに当てはめると

最初のシナリオ(他社の類似商品)に当てはめてみましょう。

  1. あなたの元の出願に「A+B」という技術が書かれていたとします。
  2. 審査中に、他社が「A+B+C」という類似商品を出してきました。
  3. あなたが「C」という特徴をご自身の出願に追加しようと「補正」を考えます。

この時、もし「C」という特徴が、あなたの出願当初の書類(明細書や図面)のどこにも書かれていなかった場合、それを追加する「補正」は「新規事項の追加」とみなされ、法律違反として絶対に認められません。


⚖️ 「補正」と「訂正」のルールの違い

ここでルールを整理します。どちらにしても、他社の後発品を見てから権利を広げることはできないようになっています。

  • 1. 特許になる前(=補正)
    • ルール: 新規事項の追加はダメ
    • (出願時に書いていなかったことを追加できない)
  • 2. 特許になった後(=訂正)
    • ルール: 権利範囲の拡張はダメ
    • (たとえ出願時に書いていたことでも、一度確定した権利を広げることはできない)

結論:

他社の類似品を見てからその特徴(=類似点)を取り込もうとする行為は、特許前なら「新規事項の追加」として、特許後なら「権利範囲の拡張」として、いずれにせよ法律で禁止されています。

 

質問:明細書に書かれているところまでは、拡げられるよね。

Gemini 2.5 Pro:

はい、その理解は非常に重要です。

ただし、どの段階での話かによって、答えが「はい」と「いいえ」に明確に分かれます。


1. 特許になる前(審査段階)の「補正」の場合 → はい(条件付き)

おっしゃる通り、特許になる前の「補正」の絶対的な限界は、「出願当初の明細書、特許請求の範囲、または図面に書かれていた事項の範囲内」です。

これを「新規事項(しんきじこう)の追加の禁止」(特許法第17条の2第3項)と呼びます。

  • 例:
    • 元のクレーム: 「AとBからなる装置」
    • 元の明細書: 「本発明はAとBからなる装置である。なお、Aだけでも良いし、AとCを組み合わせても良い。」
    • 補正: クレームを「Aからなる装置」に変更する。

この場合、クレームの範囲は「A+B」から「A」へと『拡張』していますが、その「A」は元の明細書に書かれていたため、「新規事項の追加」にはあたりません

⚠️ ただし、実務上の重大な注意点があります

このような「拡張」的な補正が自由にできるのは、原則として「審査官からの最初の拒絶理由通知(きょぜつりゆうつうち)を受け取る前まで」です。

一度、拒絶理由通知を受け取った後は、補正は原則として「特許請求の範囲を狭くする(減縮)」「誤記を訂正する」「分かりにくいのを明確にする」ことなどに制限されます(特許法第17条の2第5項)。

したがって、審査官が「A+B」で審査した後で、クレームを「A」に『拡張』する補正は、この制限に違反するとして認められない可能性が非常に高いです。


2. 特許になった後(権利発生後)の「訂正」の場合 → いいえ(絶対不可)

これが、前回の回答(シナリオは「ナシ」)の核心です。

一度特許権が成立した後は、「訂正」(訂正審判や訂正請求)という手続きになります。

この「訂正」では、たとえ元の明細書に書いてあったとしても、特許請求の範囲(クレーム)を実質的に拡張することは法律で固く禁止されています。(特許法第126条第6項)

  • 例:
    • 成立した特許: 「AとBからなる装置」
    • 元の明細書: 「Aだけでも良い」と書いてあった。
    • 訂正: クレームを「Aからなる装置」に『拡張』する。
    • 結果: これは絶対に認められません。

特許になった後の「訂正」で認められるのは、あくまで権利範囲を「狭める(減縮する)」ことだけです。


結論

  • 理論上の限界: 「明細書に書かれているところまで」が補正の限界です。
  • 実務上の運用:
    • 特許前 (補正): 権利を『拡げる』補正は、拒絶理由通知を受ける前なら可能。受けた後は原則不可。
    • 特許後 (訂正): 権利を『拡げる』訂正は、明細書に書いてあっても絶対に不可

したがって、最初のシナリオ(他社の類似品が出てきたから、それに合わせて権利を拡げる)は、

  • 特許「前」であれば、タイミング(拒絶理由通知の前)次第では可能かもしれません。
  • 特許「後」であれば、100%不可能です。

 

参考

  1. 特許法第 126 条第 6 項の意義 ―訂正 2016-390005号について― 小宮山 聰 パテント 2017 Vol. 70 No. 2 page 91- https://jpaa-patent.info/patent/viewPdf/2864

知財関連の日本の法律

知的財産基本法 https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000122

第二条 2 この法律で「知的財産権」とは、特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう。https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000122#Mp-Ch_1-At_2

Tunneling Nanotubeの発見(1999年)とその後の進展について

細胞の基本的な構造に関しては十分調べられ尽くしたと思っていました。今頃(といっても最初の発見は1999年ですが)になって新しい構造が発見されるとは夢にも思いませんでした。

トップジャーナルに掲載されたナノチューブ論文

  1. Ramírez-Weber FA, Kornberg TB. Cytonemes: cellular processes that project to the principal signaling center in Drosophila imaginal discs. Cell. 1999 May 28;97(5):599-607. doi: 10.1016/s0092-8674(00)80771-0. PMID: 10367889. 
  2. Amin Rustom et al. , Nanotubular Highways for Intercellular Organelle Transport. Science 303,1007-1010(2004).DOI:10.1126/science.1093133 https://www.science.org/doi/10.1126/science.1093133
  3. Inaba, M., Buszczak, M. & Yamashita, Y. Nanotubes mediate niche–stem-cell signalling in the Drosophila testis. Nature 523, 329–332 (2015). https://doi.org/10.1038/nature14602
    1. https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v14/n12/細胞をつなぐナノチューブ/90179 遺伝子操作した細胞内で生産された一部のタンパク質が、全く異なる細胞群に「テレポート」したように見えた  彼女らはこの現象が現実のものだと確信したが、どのような仕組みでそうなるのか突き止められなかったため、このプロジェクトをひとまず棚上げした。1年以上経ったある日、山下のところへ稲葉が細胞の画像を何枚か持ってきた。そこには、1個の細胞から別の細胞へと伸びる微小な管が写っていた。これらの微細な構造が、例の謎の輸送を担っているとも考えられた。
    2. 幹細胞に特異的な細胞突起である微小管依存性ナノチューブはニッチからのシグナルの受容を促進する 稲葉真弓・山下由起子 (米国Michigan大学Life Sciences Institute) https://first.lifesciencedb.jp/archives/10476

 

Consensusによる総説。

Tunneling Nanotubes: Direct Intercellular Communication and Molecular Exchange

Tunneling nanotubes (TNTs) are thin, actin-based membranous structures that form direct cytoplasmic bridges between cells, enabling the exchange of a wide variety of molecules and organelles. This form of intercellular communication is distinct from other mechanisms like gap junctions or extracellular vesicles, as TNTs allow for long-range, bidirectional, and targeted transfer of cellular cargo, playing crucial roles in both normal physiology and disease.

Mechanisms and Types of Cargo Transferred

TNTs facilitate the direct transfer of diverse cellular components, including ions (such as Ca2+), proteins, nucleic acids (DNA, mRNA, miRNA, viral RNA), organelles (mitochondria, lysosomes), vesicles, and even pathogens between connected cells. This transfer can modulate gene expression, metabolism, and cell survival, and is observed in many cell types, including neurons, immune cells, and cancer cells (Driscoll et al., 2022; Khattar et al., 2022; Turos-Korgul et al., 2022; Ariazi et al., 2017; Kolba et al., 2019; Jansens et al., 2020; Marzo et al., 2012; DuPont et al., 2018; Lou et al., 2018; Chakraborty & Zurzolo, 2022; Zhu et al., 2021; Mittal et al., 2018; Wittig et al., 2012; Yamashita et al., 2018).

Functional Roles in Health and Disease

TNT-mediated communication is essential for tissue homeostasis, immune responses, and development. In the brain, TNTs contribute to neural development, calcium signaling, and the spread of protein aggregates linked to neurodegenerative diseases. In cancer, TNTs enable the transfer of survival signals, drug resistance factors, and mitochondria, supporting tumor progression and therapy resistance. Pathogens, including viruses and prions, can hijack TNTs for cell-to-cell spread (Driscoll et al., 2022; Khattar et al., 2022; Turos-Korgul et al., 2022; Ariazi et al., 2017; Kolba et al., 2019; Jansens et al., 2020; Marzo et al., 2012; DuPont et al., 2018; Lou et al., 2018; Chakraborty & Zurzolo, 2022; Mittal et al., 2018; Yamashita et al., 2018).

Comparison with Other Communication Pathways

Unlike gap junctions (which are limited to small molecules and require close cell proximity), TNTs can bridge distant cells and transport larger cargo. TNTs are also structurally and functionally distinct from cytonemes and extracellular vesicles, offering a unique, direct, and dynamic mode of intercellular exchange (Driscoll et al., 2022; Ariazi et al., 2017; Marzo et al., 2012; Nawaz & Fatima, 2017; Wittig et al., 2012; Yamashita et al., 2018).

Timeline of Key Research Developments

  • 2008
    • 1 paper: (Gerdes & Carvalho, 2008)- 2012
    • 2 papers: (Marzo et al., 2012; Wittig et al., 2012)- 2013
    • 2 papers: (Schiller et al., 2013; Suhail et al., 2013)- 2015
    • 1 paper: (Abounit et al., 2015)- 2017
    • 2 papers: (Ariazi et al., 2017; Nawaz & Fatima, 2017)- 2018
    • 4 papers: (DuPont et al., 2018; Lou et al., 2018; Mittal et al., 2018; Yamashita et al., 2018)- 2019
    • 1 paper: (Kolba et al., 2019)- 2020
    • 1 paper: (Jansens et al., 2020)- 2021
    • 1 paper: (Zhu et al., 2021)- 2022
    • 4 papers: (Driscoll et al., 2022; Khattar et al., 2022; Turos-Korgul et al., 2022; Chakraborty & Zurzolo, 2022)- 2024
    • 1 paper: (Gong et al., 2024)| Year | Key Focus/Discovery | Citation | |——|———————|———-| | 2004 | First description of TNTs and their role in vesicle/organelle transfer | (Gerdes & Carvalho, 2008; Marzo et al., 2012; Yamashita et al., 2018)| | 2012–2018 | TNTs in disease, immune function, and cancer; comparison with other pathways | (Ariazi et al., 2017; Marzo et al., 2012; DuPont et al., 2018; Lou et al., 2018; Nawaz & Fatima, 2017; Mittal et al., 2018; Wittig et al., 2012; Yamashita et al., 2018)| | 2019–2024 | TNTs in therapy resistance, neural modulation, and advanced imaging | (Kolba et al., 2019; Jansens et al., 2020; Gong et al., 2024; Chakraborty & Zurzolo, 2022; Zhu et al., 2021)|

Figure 1: Timeline of tunneling nanotube research and major discoveries. Larger markers indicate more citations.

Summary

Tunneling nanotubes are specialized cellular structures that enable direct, long-distance exchange of molecules and organelles between cells. They play vital roles in development, immune function, neural communication, and disease progression, distinguishing themselves from other intercellular communication mechanisms by their ability to transfer large and diverse cargo over significant distances. Understanding TNTs opens new avenues for therapeutic intervention in cancer, neurodegeneration, and infectious diseases.

These papers were sourced and synthesized using Consensus, an AI-powered search engine for research. Try it at https://consensus.app

References

  1. Driscoll, J., Gondaliya, P., & Patel, T. (2022). Tunneling Nanotube-Mediated Communication: A Mechanism of Intercellular Nucleic Acid Transfer. International Journal of Molecular Sciences, 23. https://doi.org/10.3390/ijms23105487
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  3. Khattar, K., Safi, J., Rodriguez, A., & Vignais, M. (2022). Intercellular Communication in the Brain through Tunneling Nanotubes. Cancers, 14. https://doi.org/10.3390/cancers14051207
  4. Turos-Korgul, L., Kolba, M., Chrościcki, P., Zieminska, A., & Piwocka, K. (2022). Tunneling Nanotubes Facilitate Intercellular Protein Transfer and Cell Networks Function. Frontiers in Cell and Developmental Biology, 10. https://doi.org/10.3389/fcell.2022.915117
  5. Ariazi, J., Benowitz, A., De Biasi, V., Boer, M., Cherqui, S., Cui, H., Douillet, N., Eugenin, E., Favre, D., Goodman, S., Gousset, K., Hanein, D., Israel, D., Kimura, S., Kirkpatrick, R., Kuhn, N., Jeong, C., Lou, E., Mailliard, R., Maio, S., Okafo, G., Osswald, M., Pasquier, J., Polak, R., Pradel, G., De Rooij, B., Schaeffer, P., Skeberdis, V., Smith, I., Tanveer, A., Volkmann, N., Wu, Z., & Zurzolo, C. (2017). Tunneling Nanotubes and Gap Junctions–Their Role in Long-Range Intercellular Communication during Development, Health, and Disease Conditions. Frontiers in Molecular Neuroscience, 10. https://doi.org/10.3389/fnmol.2017.00333
  6. Kolba, M., Dudka, W., Zaręba-Kozioł, M., Kominek, A., Ronchi, P., Turos, L., Chrościcki, P., Włodarczyk, J., Schwab, Y., Klejman, A., Cysewski, D., Srpan, K., Davis, D., & Piwocka, K. (2019). Tunneling nanotube-mediated intercellular vesicle and protein transfer in the stroma-provided imatinib resistance in chronic myeloid leukemia cells. Cell Death & Disease, 10. https://doi.org/10.1038/s41419-019-2045-8
  7. Jansens, R., Tishchenko, A., & Favoreel, H. (2020). Bridging the Gap: Virus Long-Distance Spread via Tunneling Nanotubes. Journal of Virology, 94. https://doi.org/10.1128/jvi.02120-19
  8. Gong, Z., Wu, T., Zhao, Y., Guo, J., Zhang, Y., Li, B., & Li, Y. (2024). Intercellular Tunneling Nanotubes as Natural Biophotonic Conveyors.. ACS nano. https://doi.org/10.1021/acsnano.4c12681
  9. Marzo, L., Gousset, K., & Zurzolo, C. (2012). Multifaceted Roles of Tunneling Nanotubes in Intercellular Communication. Frontiers in Physiology, 3. https://doi.org/10.3389/fphys.2012.00072
  10. DuPont, M., Souriant, S., Lugo-Villarino, G., Maridonneau-Parini, I., & Vérollet, C. (2018). Tunneling Nanotubes: Intimate Communication between Myeloid Cells. Frontiers in Immunology, 9. https://doi.org/10.3389/fimmu.2018.00043
  11. Lou, E., Zhai, E., Sarkari, A., Desir, S., Wong, P., Iizuka, Y., Yang, J., Subramanian, S., McCarthy, J., Bazzaro, M., & Steer, C. (2018). Cellular and Molecular Networking Within the Ecosystem of Cancer Cell Communication via Tunneling Nanotubes. Frontiers in Cell and Developmental Biology, 6. https://doi.org/10.3389/fcell.2018.00095
  12. Schiller, C., Huber, J., Diakopoulos, K., & Weiss, E. (2013). Tunneling nanotubes enable intercellular transfer of MHC class I molecules.. Human immunology, 74 4, 412-6. https://doi.org/10.1016/j.humimm.2012.11.026
  13. Chakraborty, R., & Zurzolo, C. (2022). Tunnelling nanotubes between neuronal and microglial cells allow bi-directional transfer of α-Synuclein and mitochondria. Cell Death & Disease, 14. https://doi.org/10.1101/2022.12.13.519450
  14. Zhu, C., Shi, Y., & You, J. (2021). Immune Cell Connection by Tunneling Nanotubes: The Impact of Intercellular Cross-Talk on the Immune Response and Its Therapeutic Applications.. Molecular pharmaceutics. https://doi.org/10.1021/acs.molpharmaceut.0c01248
  15. Nawaz, M., & Fatima, F. (2017). Extracellular Vesicles, Tunneling Nanotubes, and Cellular Interplay: Synergies and Missing Links. Frontiers in Molecular Biosciences, 4. https://doi.org/10.3389/fmolb.2017.00050
  16. Mittal, R., Karhu, E., Wang, J., Delgado, S., Zukerman, R., Mittal, J., & Jhaveri, V. (2018). Cell communication by tunneling nanotubes: Implications in disease and therapeutic applications. Journal of Cellular Physiology, 234, 1130 – 1146. https://doi.org/10.1002/jcp.27072
  17. Abounit, S., Delage, E., & Zurzolo, C. (2015). Identification and Characterization of Tunneling Nanotubes for Intercellular Trafficking. Current Protocols in Cell Biology, 67, 12.10.1 – 12.10.21. https://doi.org/10.1002/0471143030.cb1210s67
  18. Suhail, Y., , K., Lee, J., Walker, M., Kim, D., Brennan, M., Bader, J., & Levchenko, A. (2013). Modeling Intercellular Transfer of Biomolecules Through Tunneling Nanotubes. Bulletin of Mathematical Biology, 75, 1400 – 1416. https://doi.org/10.1007/s11538-013-9819-4
  19. Wittig, D., Wang, X., Walter, C., Gerdes, H., Funk, R., & Roehlecke, C. (2012). Multi-Level Communication of Human Retinal Pigment Epithelial Cells via Tunneling Nanotubes. PLoS ONE, 7. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0033195
  20. Yamashita, Y., Inaba, M., & Buszczak, M. (2018). Specialized Intercellular Communications via Cytonemes and Nanotubes.. Annual review of cell and developmental biology, 34, 59-84. https://doi.org/10.1146/annurev-cellbio-100617-062932

その他の文献情報

  1. 2025.10.24【研究発表】細胞同士がつながっちゃう?丈夫なトンネルナノチューブを作る新たなメカニズム 東京都立大学 https://www.tmu.ac.jp/news/topics/38060.html 多くのTNTの細胞骨格はアクチンフィラメントですが、中にはより強い細胞骨格で、高速で方向性を持った輸送のレールとなる微小管を含むTNTもあります。今回、東京都立大学理学研究科の榎本美優(当時大学院生)、淺田明子助教、安藤香奈絵教授らは、TNTの形成を促進するタンパク質、CCT4を見つけました。
  2. Tunneling nanotubes enable intercellular transfer in zebrafish embryos Korenkova, Olga et al. Developmental Cell, Volume 60, Issue 4, 524 – 534.e3 February 24, 2025 https://www.cell.com/developmental-cell/fulltext/S1534-5807%2824%2900635-X
  3. Microglia rescue neurons from aggregate-induced neuronal dysfunction and death through tunneling nanotubes ミクログリアは凝集タンパク質による神経異常と細胞死をナノチューブのトンネルを形成して助ける Scheiblich et al. Neuron 112, 3106 – 3125.e8 (2024) 日本認知症学会(論文解説)
  4. Capobianco D. L. , Simone L. , Svelto M. , Pisani F. Intercellular crosstalk mediated by tunneling nanotubes between central nervous system cells. What we need to advance Frontiers in Physiology Volume 14 – 2023  https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2023.1214210 DOI=10.3389/fphys.2023.1214210
  5. Driscoll, J.; Gondaliya, P.; Patel, T. Tunneling Nanotube-Mediated Communication: A Mechanism of Intercellular Nucleic Acid Transfer. Int. J. Mol. Sci. 202223, 5487. https://doi.org/10.3390/ijms23105487 https://www.mdpi.com/1422-0067/23/10/5487
  6. Khattar KE, Safi J, Rodriguez AM, Vignais ML. Intercellular Communication in the Brain through Tunneling Nanotubes. Cancers (Basel). 2022 Feb 25;14(5):1207. doi: 10.3390/cancers14051207. PMID: 35267518; PMCID: PMC8909287. 
  7. トンネルナノチューブを介した細胞間ミトコンドリア移送 三  木  敏  生 日本大学医学部生体機能医学系生理学分野 日大医誌 79 (5): 313–315 (2020)  ミトコンドリアの細胞間移送には,大きく二つの可能性 が示されている.まず一つは,細胞外小胞 (Extracellular Vesicles) を介したもの,そしてもう一つは,トンネルナ ノチューブ (TNTs) と呼ばれる特殊なチューブ状の構造 物の接続によるものである.  https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/79/5/79_313/_pdf/-char/ja
  8. トンネル ナノチューブ: 骨髄細胞間の密接なコミュニケーション Maeva Dupont,Shanti Souriant,Geanncarlo Lugo-Villarino,Isabelle Maridonneau-Parini,Christel Vérollet, PMID:29422895DOI:10.3389/fimmu.2018.00043 Frontiers in immunology20180101Vol.9 https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/29422895
  9. Hans-Hermann Gerdes, Amin Rustom, Xiang Wang, Tunneling nanotubes, an emerging intercellular communication route in development, Mechanisms of Development, Volume 130, Issues 6–8, 2013, Pages 381-387, ISSN 0925-4773, June–August 2013 https://doi.org/10.1016/j.mod.2012.11.006.
  10. Kolba, M.D., Dudka, W., Zaręba-Kozioł, M. et al. Tunneling nanotube-mediated intercellular vesicle and protein transfer in the stroma-provided imatinib resistance in chronic myeloid leukemia cells. Cell Death Dis 10, 817 (2019). https://doi.org/10.1038/s41419-019-2045-8
  11. Lou E, Fujisawa S, Barlas A, Romin Y, Manova-Todorova K, Moore MA, Subramanian S. Tunneling Nanotubes: A new paradigm for studying intercellular communication and therapeutics in cancer. Commun Integr Biol. 2012 Jul 1;5(4):399-403. doi: 10.4161/cib.20569. PMID: 23060969; PMCID: PMC3460850.
  12. 2009年11月23日 独立行政法人 理化学研究所 細胞間を連結する細胞膜ナノチューブの形成因子「M-Sec」を発見 -遠隔にある細胞間を連結し、素早く確実に情報伝達するシステム解明に貢献-  https://www.riken.jp/press/2009/20091123/index.html
  13. Amin Rustom et al. , Nanotubular Highways for Intercellular Organelle Transport. Science 303,1007-1010(2004).DOI:10.1126/science.1093133 https://www.science.org/doi/10.1126/science.1093133
  14. Ramírez-Weber FA, Kornberg TB. Cytonemes: cellular processes that project to the principal signaling center in Drosophila imaginal discs. Cell. 1999 May 28;97(5):599-607. doi: 10.1016/s0092-8674(00)80771-0. PMID: 10367889. 

技術移転、TLO(technology transfer organization)について

産学連携・産学協創のための研究助成事業

  1. 産学共創基礎基盤研究プログラム(JST) https://www.jst.go.jp/kyousou/outline/index.html
  2. 戦略的創造イノベーションプログラム(JST)https://www.jst.go.jp/s-innova/index.html

大学と企業とのマッチングの機会

  1. 新技術説明会(JST)https://shingi.jst.go.jp/

書籍

Stanford’s Office of Technology Licensing and the Cohen/Boyer Cloning Patents: Oral History Transcript / 199 2022/10/27 Sally Smith Hughes (著), Niels J Reimers (著)

資料

  1. JST産学連携 刊行物 https://www.jst.go.jp/tt/pamph/index.html

文献

  1. 技術移転の考え方―大学と大学に所属する研究者のために― 高橋 伸夫 東京大学大学院経済学研究科 中野 剛治 東京大学大学院経済学研究科 赤門マネジメント・レビュー 2 巻 10 号 (2003 年 10 月) https://www.jstage.jst.go.jp/article/amr/2/10/2_021002/_pdf
  2. TLO と弁理士  田中 正男 2003 パテント https://www.jpaa.or.jp/old/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200301/jpaapatent200301_021-026.pdf
  3. 東京大学 TLO における技術移転の取組み 株式会社東京大学 TLO 代表取締役社長 本田 圭子 https://www.ceramic.or.jp/sangaku/journal/pdf_free_access/59_7_500.pdf 東京大学では年間約 500 件強の発明届出書があり、東京大学TLO担当アソシエイト は発明者へのインタビュー、特許性・市場性 の調査を実施し、調査結果を東京大学に上げる。東京大学はその報告を踏まえて大 学への承継および出願の要否を判断する。

TLO

  1. 法律に基づいて承認を受けた技術移転機関(承認TLO)令和7年4月1日現在30機関 https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/sangakub/sangakub5.htm

記事

  1. 東大発の特許を後押し 弁理士の女性副社長が奮闘 東大TLO副社長 本田圭子氏(上) 2019 / 9 / 24 https://reskill.nikkei.com/article/DGXMZO49667250R10C19A9000000/ 1998年、大学等技術移転促進法(Technology Licensing Organization=TLO法)制定 特許につながりそうな研究成果があった場合、研究者は大学に発明届出書を提出するが、東京大学では年間約550件の発明届出書が提出される。東大TLOスタッフはその特許性や市場性を調査する。ライセンス契約を結ぶのが大変で営業力が必要。この発明は先行発明と何が違うのかという分析能力が大事。
  2. 5年がかりで弁理士に 知財発掘に挑む双子ママの奮闘 東大TLO副社長 本田圭子氏(下) 2019 / 10 / 1 https://reskill.nikkei.com/article/DGXMZO50194500V20C19A9000000/ 東大ではTLO担当者が研究室にはりつき、特許につながりそうな発明の情報をいちはやく仕入れる仕組みがある。

米国特許について

米国特許に関する公式文書

  1. U.S. Code: Title 35 — PATENTS https://www.law.cornell.edu/uscode/text/35
  2. https://www.uspto.gov/patents/basics
  3. Appendix L Consolidated Patent Laws — July 2025 Update https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/consolidated_laws.pdf
  4. Patent Law: A Handbook for Congress https://www.congress.gov/crs-product/R46525
  5. Manual of Patent Examining Procedure (MPEP) Ninth Edition, Revision 01.2024 https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/index.html

日本の法律との比較

日本の法律
対応する米国の法律 (U.S. Code)
備考
特許法
Title 35 (Patents)
ユーティリティ特許 (Utility Patent)
実用新案法
(該当なし)
小発明も Title 35 のユーティリティ特許で保護
意匠法
Title 35 (Patents)
意匠特許 (Design Patent)
商標法
Title 15 (Commerce and Trade)
ランハム法 (Lanham Act)

米国特許に関する解説書

  1. Patent It Yourself Your Step-by-Step Guide to Filing at the U.S. Patent Office David Pressman, David E. Blau
  2. 日本からの米国特許出願マニュアル  2025/11/10 三村 淳一  262ページ 日本から個人で米国特許出願を行うための具体的な手続と書類作成方法を、実例を交えて丁寧に解説した実務マニュアル。 日本大学ゼミ生による実際の出願事例を掲載 ・米国弁理士・米国特許実務経験を持つ著者 日本大学法学部教授
  3. 米国特許法判例から見た米国特許法(出願実務者向け)  2025/8/28 矢部 達雄 米国特許に関する主要な判例を紹介し、それらが米国特許出願実務において有益となるよう厳選・編集 まず米国特許法の全体像を俯瞰し、出願実務において拒絶理由の根拠となる主要条文(101条、102条、103条、112条)に関する基礎判例とその解釈の変遷を解説
  4. 自明性に関する米国特許重要判例 佐々木 眞人 2025/4/21  376ページ 発明協会 第1章 序章 第1節 判例法主義 第2節 判例法と制定法 第3節 103条の立法前の判例 第2章 103条の立法 第1節 1952年特許法改正まで 第2節 1952年改正特許法における103条 第3節 103条の立法趣旨 第4節 2011年特許法改正までの103条の改正 第3章 103条の立法後KSR判決までの判例 第1節 非自明性の判断手法を示した判例 第2節 Graham判決以降KSR判決より前までの最高裁判例 第3節 KSR判決 第4章 KSR判決後の判例 ‥
  5. 趣旨から理解する米国特許法103条とOBVIOUSNESS: 趣旨から理解する米国特許法シリーズ  2025/1/28 中村剛  日米国特許法を理解し考える力「米国特許『脳』」を鍛える
  6. 米国特許法講義  2020/9/19 武重 竜男 (著), 荒木 昭子 (著)

その他

  1. Legislative IP Acts (LIPA) / History Archive The Patent Act of 1952 – Legislative History – The Federico Commentary Commentary on the New Patent Act* P. J. Federico** https://ipmall.info/sites/default/files/hosted_resources/lipa/patents/federico-commentary.asp

クリーブランドー理研 日本人研究者 遺伝子スパイ事件の顛末

アメリカで働いていた一人の研究者が日本に職を得て、自分の研究試料を新しい職場に輸送した。試料の移送にあたり、長年の友人がアメリカの大学に勤務しているので一時的に、研究試料をラボの冷凍庫で保管してくれるように依頼し快く引き受けてもらった。

これは、研究者の世界ではありきたりの話ではないでしょうか。

ところがこれらの行為が、「窃盗」とみなされてしまい、二人の日本人研究者が告発されるという重大事件に発展しました。また、クリーブランドクリニックから帰国する研究者の日本での新しい職場となるはずだった理化学研究所は、組織的にこの窃盗行為を指示したと糾弾されました。こうして、当事者2人の日本人研究者のキャリアを大きく狂わせる結果になってしまったのです。

 

告発された2人の日本人研究者がしたこと

1997年から1999年まで米国のクリーブランド・クリニック財団に勤務していた日本人研究者の岡本氏は、細胞株とDNAサンプルを新しい職場である理化学研究所(RIKEN)へ移しました。この行為が「窃盗」と見なされ、友人の芹沢氏も生体試料の移送のための一時保管に協力したとして、両名は2001年5月、1996年制定の経済スパイ法違反、盗品輸送、共謀の罪で起訴されました。

カンザス大学助教授であった芹沢氏は、旧来の友人である岡本氏から研究サンプルを数週間預かってほしいと頼まれ、1999年7月、届いた箱を自身の研究室の冷凍庫で保管し、5週間後に日本の理研での新しい職場に向かう岡本氏に渡しただけでした。しかし、このささやかな親切行為が、思いもよらぬ結果をもたらしてしまったのです。

Serizawa’s legal troubles began in 1999, when he temporarily stored DNA samples as a favor for a friend, Alzheimer’s researcher Takashi Okamoto. Prosecutors allege that Okamoto stole the samples from the Cleveland Clinic Foundation in Ohio when he left for a new job in Japan. (Court Sentences Japanese Researcher Science 6 Jun 2003 Vol 300, Issue 5625 p. 1487 DOI: 10.1126/science.300.5625.1487c https://www.science.org/doi/10.1126/science.300.5625.1487c)

  1. Scientist gets probation in Clinic espionage case 05/29/03 John Mangels https://www.crisismanagement.com/scientist-gets-probation-in-clinic-espionage-case
  2. Published: 09 May 2002 Spying charges dropped as Japanese biologist cuts deal David Cyranoski Nature volume 417, page108 (2002) https://www.nature.com/articles/417108b
  3. Riken researcher may be in on crime: report Jun 9, 2001 The Japan Times
  4. Alzheimer Researcher Indicted for ‘Economic Espionage’ U.S. accuses researcher of taking lab samples to new job in Japan 15 May 2001ByEliot Marshall, Dennis Normile https://www.science.org/content/article/alzheimer-researcher-indicted-economic-espionage

カンザス大学に助教授として勤務していた日本人研究者の芹沢氏は、長年の友人である岡本氏がクリーブランド・クリニックから持ち出したアルツハイマー病の研究試料を一時保管するのに協力したことから科学スパイ(密輸共謀)の容疑で起訴されていましたが、この主要な起訴は後に取り下げられました。その理由は、検察当局自身が、問題となった物質は当初主張していた「企業秘密」には該当しないと認めたためです。ただし、芹沢氏はスパイ容疑とは別に「FBIに虚偽の情報を提供した」という軽い罪については、高額な裁判費用を避けるために罪を認めました。その結果、彼は永住権を維持しましたが、大学のテニュア(終身在職権)を失い、推定25万ドルという高額な訴訟費用を抱えることになりました。

The Information charges that on September 2, 1999, Serizawa provided a materially false, fictitious and fraudulent statement in an interview of him by Special Agents of the Federal Bureau of Investigation, who were investigating the theft of the research and material from the Cleveland Clinic Foundation (CCF), in that Serizawa: falsely understated the number of vials of research material which Okamoto had taken from Serizawa’s laboratory at KUMC, by initially indicating that 10 or fewer vials had been taken, when, in fact, several hundred vials were taken out of Serizawa’s laboratory by Okamoto; initially denied any recent personal contact with Okamoto, when, in fact, Serizawa had been in recent telephone, electronic mail and personal contact with Okamoto; and initially denied any knowledge of Okamoto having accepted a research position with RIKEN, when, in fact, Serizawa knew that Okamoto had accepted a research position at RIKEN.

Scientist Pleads Guilty to Providing False Statements Regarding Trade Secret Theft from Cleveland Clinic Foundation (May 1, 2002)  https://www.justice.gov/archive/criminal/cybercrime/press-releases/2002/serizawaPlea.htm

  1. The accidental spy David Cyranoski Nature volume 430, pages960–961 (2004) https://www.nature.com/articles/430960a
  2. Scientist gets probation in Clinic espionage case 05/29/03 John Mangels https://www.crisismanagement.com/scientist-gets-probation-in-clinic-espionage-case
  3. Case Closed Science 10 May 2002 https://www.science.org/doi/10.1126/science.296.5570.1003b
  4. Japanese Scientist Pleads Guilty To Lying In Espionage Case Published: May 2, 2002 at 8:01 AM JST  https://www.cleveland19.com/story/765392/japanese-scientist-pleads-guilty-to-lying-in-espionage-case/
  5. 日経バイオビジネス「遺伝子スパイ事件」 石塚 泰年 本稿では、『日経バイオビジネス』2001年7月号に掲載された、同年5月の「遺伝子スパイ事件」を扱った記事を紹介する。 http://www.ethics.bun.kyoto-u.ac.jp/fine/newsletter/n08b2.htm

判決

One of two Japanese researchers charged with industrial espionage has been fined $500, put on probation for 3 years, and ordered to put in 150 hours of community service. (Court Sentences Japanese Researcher Science 6 Jun 2003 Vol 300, Issue 5625 p. 1487 DOI: 10.1126/science.300.5625.1487)

  1. Researcher gets probation, fine Economic espionage charges dismissed in plea deal  https://www.record-courier.com/story/news/2003/05/29/researcher-gets-probation-fine-economic/19855430007/
  2. 日経バイオビジネス 巻号 (26)-(31) 記事 遺伝子スパイ事件–… 遺伝子スパイ事件–芹沢の手記(3)FBI捜査と逮捕後に知った驚くべき事実

 

理研の関与の有無について

理化学研究所(理研)は、米国に対する経済スパイ疑惑への関与を否定する報告書を発表し、岡本氏にオハイオ州のクリーブランド・クリニックから研究資料を盗むよう指示した事実はないと説明しました。また、岡本氏が7月31日付で理研を辞職したことも発表されました。岡本氏は、クリーブランド・クリニックから細胞株やDNAサンプルを持ち出した疑いで、米司法省から起訴されていましたが、理研は、企業秘密へのアクセスを目的として同氏を雇用したという疑惑も否定しています。

  1. RIKEN Scientist Quits; Lab Says It’s Clean Dennis NormileAuthors Info & Affiliations Science 10 Aug 2001 Vol 293, Issue 5532 p. 1033 DOI: 10.1126/science.293.5532.1033b https://www.science.org/doi/10.1126/science.293.5532.1033b

 

その他の参考サイト

  1. Missing U.S. genetic work not in Japan, lawyer says SHARE/SAVE May 14, 2001 The Japan Times  https://www.japantimes.co.jp/news/2001/05/14/national/missing-u-s-genetic-work-not-in-japan-lawyer-says/ A lawyer for Takashi Okamoto, a Japanese researcher charged with stealing genetic materials from a U.S. medical institute in Ohio, denies Okamoto brought any of the materials with him to Japan and said the material in question was jointly developed by Okamoto and another researcher before he arrived at the institute.

 

魚の骨の上下に伸びる骨と人間の骨との対応関係?

魚の骨の絵を描くと、

(いらすとや)

のように描く人が多いと思いますが、この上下に伸びる骨は一体、どんな種類の骨なのでしょうか。人間の骨を考えると、

魚の骨=人間の肋骨?と思いますが、肋骨が上側(背側)にも伸びているというのも変です。

今回は、魚の骨の解剖学を勉強してみます。

肋骨

人間の肋骨は内臓を包むような形をしていて内臓を保護していますが、魚も同様です。魚の体の中心をとおる背骨から肋骨が左右にで出て湾曲して、内臓を包み込むような形状をしています。魚の骨の横から見た絵だとわかりませんが、実は肋骨は左右にあって一対なわけです。人間と同様です。

AI による概要:「肋骨」と「腹骨」は同じものを指す言葉です。魚の「肋骨」は、内臓を保護するお腹側の骨で、一般的に「腹骨」や「あばら骨」と呼ばれます。これらの骨周りの肉は「あばら肉」といい、煮付けや汁物などに使われます。

  1. https://www.shibatashoten.co.jp/dayori/2011/06/15_1118.html 魚の肋骨(腹骨)の断面図があります。

では、魚の背骨から上側(背側)に長く伸びた「肋骨みたいな」骨はいったい何でしょうか?

棘突起

AIによる概要:魚の椎骨(せきついこつ)から背側(はいそく)に伸びる骨は、一般的に神経棘(しんけいきょく)、または棘突起(きょくとっき)と呼ばれます。 料理の文脈では、この神経棘を含めた細く長い骨全体を「中骨」と呼ぶこともあります。 これらの骨は、魚の体を支え、筋肉や靭帯が付着する役割を果たしています。

肋骨ではなくて、椎骨の一部である、棘突起だったのですね。魚の場合は、それが肋骨と同じくらいに長く伸びているというわけです。

  1. https://www.sekitsui.com/function/anatomy/

棘突起は人間にもあります。ただし魚のように長くはありません。手で背中の中心を触ったときに背骨を感じることができますが、ごつごつと突起を感じ取るができます。これが棘突起の部分です。

血管棘

魚の前方部分の内臓があるところに伸びている骨が肋骨なのはいいとして、じゃあ肋骨が尾の方まで存在しているのでしょうか?そうではありません。

AI による概要:魚の内臓がある部分よりも尾側(後ろ側)にある骨は肋骨ではありません。その部分は尾椎(びつい)と呼ばれる背骨(脊椎)の一部で、そこから腹側(下側)に伸びる骨は血管棘(けっかんきょく)と呼ばれます。

AI による概要:魚類の**血管棘(けっかんきょく)は左右一対ではなく、単一(正中線上)**にあります。血管棘は、魚の脊椎骨の腹側(下側)に突出している骨で、神経棘(背中側への突起)と同様に正中線上の構造物です。これらの棘の間を血管が通るための空間(血道弓門)を形成しています。

  1. https://kotobank.jp/word/%E9%AD%9A%E9%A1%9E-53530#goog_rewarded 魚類の骨格の図
  2. 臀鰭の領域(前方)において椎骨の血管棘を観察すると、その基部は分岐し、血管を入れるための椎孔が大きく開口していたが、血管棘の先端では 1 本に癒合し、体幹の正中面を下行
    ていた。同じ正中面に担鰭骨が配列していたが、血管棘とは異なる周期を示していた(図 7a,b)。

魚の腹側で尾側の長い骨は血管棘と呼ばれるのだそうです。基部では左右一対ですがそれが癒合して一本になっているのですね。

これでようやくイラストで描かれる魚の骨の、解剖学的な分類ができました。まとめると、人間と違って魚の場合には体の真ん中に背骨(脊椎)が位置していて、背側に伸びる長い骨は、人間の椎骨にも存在する棘突起、腹側に伸びる長い骨は、内臓部分は人間と同様に肋骨、それより尾側の骨魚特有の骨で血管棘だったというわけです。