五神真 大学の未来図 「知識集約型社会」を創る 2019年2月 を読んだメモ。
日本には全国47都道府県850超の大学・研究機関を超高速な通信速度でつないだ「学術情報ネットワーク SINET」が存在しており、これは世界的にみてもユニーク。(12ページ)
東大の予算は年間2500億円。うち、基盤的な運営費交付金は800億円。(15ぺージ)
日本の問題点は、巷には資金があるのに、それが動かないこと。リスク投資への流れを作りたい。(17ページ)
人口の年代別グラフ(横方向、男女別)は、上が高年齢とすると「壺」の形。すなわち若年齢、子供のほうですぼまっている。ピークが2つある。一つが団塊の世代(第1次ベビーブーム)。もう一つは段階ジュニアの世代(第2次ベビーブーム、200万人)。残念なことに第3次ベビーブーム(団塊ジュニアの子供)はこなかった。それは団塊ジュニアが大卒で就職するじきにバブルが崩壊して、非正規雇用になる人が急増したためかもしれない。(23ページ)
Society 1.0が狩猟社会、Society 2.0が農耕社会、Society 3.0が工業社会、Society 4.0が情報社会、そしてこれからがSociety 5.0。(46ページ)
- Society 5.0「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)
これまでは大学のラボと企業の研究部門との提携が主で、金額も数百万円程度が多かった。これからは、組織同士、すなわち大学と企業の「産学協創」を目指す。2016年6月日立製作所と日立東大ラボを解説。7月には日本電気(NEC)とパートナーシップ協定を締結。(90ページ)
大学ベンチャーの育成。2004年東京大学エッジキャピタル(UTEC)というベンチャーキャピタル(VC)を設立。目的は、大学関連の将来性あるベンチャー企業に投資を行って事業展開を支え、その企業の上場やM&Aを通じてキャピタルゲインを得ること。(92ページ)
2016年東京大学協創プラットフォーム株式会社UTokyo IPC設立。ベンチャー企業に投資するたけでなく、ベンチャーキャピタルにも投資することでベンチャー企業を間接的に支える。Funds of Fundsという仕組み。(93ページ)
東大生に企業マインドを教えるアントレプレナー道場も開設。(95ページ)
企業に眠る優秀な技術や技術者を掘り起こす仕組みづくり。人材と事業を「カーブアウト」する。切り出し。大手企業の会社員からベンチャー企業の経営者へという転身を支える仕組みづくり。(99ページ)
1980年当時にすでに日本の財政状況は悪化し、国立大学の研究環境は悪くなっていた。施設の老朽化、安全な設備の不足など。ある国立大学で、半導体プロセスの実験中に爆発で学生2人が亡くなった事件があった。(133ページ)
- 1991年大阪大学モノシランガス爆発事故 特殊材料ガスの法律ができるきっかけになった事故をご紹介します。1991年10月大阪府にある大阪大学の実験室で、プラズマCVD装置を使って実験していた最中に、シリンダーキャビネット内のモノシランガス10Lボンベが爆発し、学生2名が死亡し5名が負傷しました。 https://klchem.co.jp/blog/2012/10/1991.php
- https://klchem.co.jp/blog/2012/10/1991.php
- 1991 年(平成 3 年)10 月 2 日,基礎工 学部でモノシランガスの爆発事故 https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/56995/oep064_2_303.pdf
- https://www.bousaihaku.com/wp/wp-content/uploads/2017/03/c020.pdf
- https://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000614.html
東大では2001年から2013年にかけて段階的に定年を延長。60歳から65歳に。増加した人件費を抑えるために新たな雇用が抑制された。(136ページ)
期限付きプロジェクトの活動資金は得られたが、それに従事する教職員も期限付きになってしまう。40歳以下の研究者の雇用のほとんどが、任期付きの雇用になってしまった。(136ページ)
”任期付で雇用された研究者は、業績を残したからといって、必ず任期なしの雇用になれるわけではありません。これでは、多くの若手研究者が将来への不安を抱えながら研究に従事することになります。”(136~137ページ)
2017年指定国立大学法人制度 より自由度の高い運営を可能にする 東大、京大、東北大の3大学。その後、東工大、名大、阪大をあわせて6大学に。(138ページ)
”いま東大は、年間2600億円規模の事業体です。”(140ページ)
2018年12月東京大学エクステンション株式会社設立。社会人向けのデータサイエンス人材養成講座を2019年4月開設予定。(163ぺージ)
- 令和 2 年度 連 結 財 務 諸 表 第17期事業年度 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400144828.pdf
さまざまな工夫によって財源を確保し、全体で数百億円の財源を創出、これを未来にむけて投資するための財源とする。その”一丁目一番地”となるのは”言うまでもなく、若手研究者の雇用の安定化”。(165~166ページ)
運営費交付金以外の財源からでも、任期無し雇用の人件費を払えるように仕組みを変えた。(167ページ)
2017年の規制緩和により、国立大学も株式を寄付として受け入れて長期間保有することが可能になった。LIXLILグループ(潮田洋一郎CEO)が株式寄付をまっさきにしてくれた。(169ページ)
「異見交論」で京大総長と対談。山極「国立大学法人化は失敗」、五神「法人化は必然」 (174ページ)
研究時間の減少、職務時間の46.5%(2002年)から36.5%(2008年)に。文科省調査(185ページ)
参考
- Connecting cutting-edge research, driven by the joy of discovery, to the future of humanity: Interview with RIKEN President Makoto Gonokami 2024.03.07 In this interview for the International Brain Circulation series, we spoke with Dr. Makoto Gonokami, President of RIKEN. https://sj.jst.go.jp/interviewsandopinions/2024/c0307-01c.html
- How universities can become a platform for social change Jun 27, 2019 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/articles/z1311_00035.html https://www.weforum.org/stories/2019/06/universities-platform-social-change-tokyo/