PCT規則64.3は日本特許法で言うところの29条の2(拡大先願)の例外規定にあたるもんやね。
PCT規則64.3とは?——一言でいうと
「過去に出願したけど、まだ公開されてへん他人の出願(または特許)」は、国際予備審査では先行技術として扱わへん——という規則。
つまり、日本特許法29条の2(拡大先願・準公知)に相当する効果を、国際予備審査では否定する規則なんよ。
条文の中身(要約)
PCT規則64.3は要するにこういうことを言うてる:
「ある出願や特許が 基準日より前に公開されとったら 先行技術になっとったやろうけど、実際の公開日は 基準日と同じ日かそれ以後 で、ただし 出願日(または優先日)は基準日より前 やった」——こういう出願・特許は、国際予備審査においては先行技術の一部としない。
ただし、国際予備審査報告では、その出願・特許の存在に注意喚起だけはする(規則70.10)。
🧠 記憶に残る覚え方
キーワード:「PCTは拡大先願(29条の2)を採用してへん」
これが一番頭に残る言い方やと思う。
日本では、自分より前に出願された他人の出願が後で公開された場合、その先願に書いてある内容は「拡大先願(29条の2)」として後願を排除する。要は「出願時には未公開やけど、実は先に出願されてた」という出願に、強い後願排除効を与える制度。
PCTの国際予備審査は、これをやらへん。実際に基準日より前に公衆が利用できるようになったものだけを先行技術とする(規則64.1(a))——これがPCTの大原則。そやから、基準日時点で未公開やったもの(=規則64.3が拾う出願)は先行技術から外される。
イメージ図
時間軸 →
他人の出願日X 基準日 公開日Y
────●───────────●─────────●──→
↑ ↑
早く出願されてる やっと公開
日本29条の2 → 先行技術扱い(拡大先願として効く)
PCT規則64.3 → 先行技術にしない(注意喚起のみ)
語呂・コアフレーズ
「未公開先願は、PCTでは攻撃力ゼロ。でも”気をつけてや”とは言うてくれる」
「攻撃力ゼロ」=先行技術にしない/「気をつけてや」=70.10で注意喚起、という対応。
💡 立法趣旨
なぜPCTは拡大先願を採用してへんのか?
① 各国制度のばらつきへの配慮(最重要)
拡大先願制度は、国によって有無も内容もバラバラやねん。
- 日本(29条の2)、米国(102(a)(2))、EPO(54(3)):採用してる
- ただし採用国でも、同一出願人の扱い(自己衝突を排除するか)、優先権の効果、外国出願の扱いなどが各国で違う
PCTの国際予備審査は予備的かつ拘束力のない見解(PCT33条(1))を出すもの。各国制度の違いに踏み込んで判断したら、かえって指定国の判断と齟齬が生じる。そやから「実際に公開されたもの」だけを見るシンプルなルールにして、各国の拡大先願判断は各国に任せる、という設計。
② 注意喚起だけはする実務的配慮
ただ、出願人と指定官庁にとって、こういう「未公開やけど実は先願がある」情報は指定国段階で重要になる。各国で拡大先願として効くかもしれへんからね。
そやから国際予備審査機関は「先行技術にはせえへんけど、こういうのがあるで〜」と報告書のBox No. VIで注意喚起する(規則70.10)。これで出願人も「あ、米国移行のときには注意せなあかんな」と気づける。
⇔ 横断比較:兄弟規定の規則64.2
似た構造の規則64.2(書面によらない開示) と並べて覚えると盤石やで。
| 64.2 | 64.3 | |
|---|---|---|
| 対象 | 口頭・使用・展示など書面以外の開示 | 後で公開された他人の先願・先特許 |
| 状況 | 基準日前に開示されたが、それを記載した文書は基準日以後に公開 | 出願日は基準日前だが、公開は基準日以後 |
| 扱い | 先行技術にしない | 先行技術にしない |
| 注意喚起 | 規則70.9 | 規則70.10 |
共通する思想:「証拠としての書面公開が基準日後にしかないもの」「公開が基準日後のもの」は、PCTの先行技術の中核(=書面で基準日前に公衆利用可能になったもの、規則64.1(a))から外す。ただし指定国判断のために情報提供(注意喚起)はする。
⚠ 出題ポイント
過去問では64.3そのものはあんまりピンポイントで聞かれへんけど、「PCTの先行技術の定義」を問う問題で間接的に問われることがある。
たとえば「PCT規則上、先行技術は基準日前に書面で公衆に利用可能になっていたものに限られる」という肢が出たら、これは○。日本の拡大先願に相当する効果がないことの裏返しやね。
また、規則64.1(a)・64.2・64.3をワンセットで「PCTの先行技術の範囲」として整理しとくとええ:
- 64.1(a):原則=書面で基準日前に公衆利用可能
- 64.2:書面以外の開示は原則外す
- 64.3:未公開先願も外す