特許法184条の17:出願審査の請求の時期の制限
これは 国内移行後の話やで。PCT国際出願が日本国に移行した後、その国際特許出願について「審査請求をいつからできるか」という時期的制限の規定や。
条文の構造
主語が2つある。それぞれで要件が違う。
① 出願人による審査請求
日本語特許出願の場合:
- 184条の5第1項の手続(国内書面の提出)
- 195条2項の規定による手数料の納付
→ この2つの後でなければ審査請求できない
外国語特許出願の場合:
- 184条の4第1項又は第4項の手続(翻訳文の提出)
- 184条の5第1項の手続(国内書面の提出)
- 195条2項の規定による手数料の納付
→ この3つの後でなければ審査請求できない
② 出願人以外の者(第三者)による審査請求
日本語・外国語問わず:
- 国内書面提出期間(外国語で翻訳文提出特例期間が適用される場合はその期間)の経過後でなければ審査請求できない
つまり、外国語国際出願の翻訳文の話やと
そのとおり、外国語特許出願では翻訳文提出が審査請求の前提条件になってる。せやから、
- 翻訳文未提出 → 審査請求不可
- 国内書面未提出 → 審査請求不可
- 手数料未納付 → 審査請求不可
ちなみに、これは「審査ができる状態にする」ための規定であって、PCT 23条・40条との整合性も理由の一つや(青本参照)。
出題ポイント(ひっかけ)
📍ポイント1:第三者の審査請求時期は出願人と違う
【予想問題】「日本語でされた国際特許出願について、国内書面提出と手数料納付後であれば、何人もいつでも審査請求できる」→ ×
第三者は国内書面提出期間の経過後でないとアカン。出願人と第三者で要件が違うのが最重要ポイント。
📍ポイント2:手数料納付も必要(翻訳文と国内書面だけでは足りん)
【予想問題】「外国語国際特許出願について、国際出願日から3年以内であって、翻訳文及び国内書面を提出した後であれば、出願人はいつでも審査請求できる」→ ×
→ 手数料納付が抜けてる。
📍ポイント3:「直ちに審査させなければならない」みたいな規定はない
H18-35の3。PCT23条(2)で早期処理請求しても、184条の17の要件満たして審査請求がされたら、即座に審査開始する義務があるわけやない。
横断比較
| 比較項目 | 通常出願(48条の3) | 国際特許出願(184条の17) |
|---|---|---|
| 出願人の審査請求時期 | 出願日から3年以内、いつでも可 | 国内書面・翻訳文・手数料の手続後 |
| 第三者の審査請求時期 | 出願日から3年以内、いつでも可 | 国内書面提出期間経過後 |
| 起算日 | 「その日」(実際の出願日) | (3年は国際出願日から) |
語呂(プロジェクト資料 フレーズドライ より)
- 日本語:「日本語の 審請5の1 手数料 以外の者は 提出期間後」
- 外国語:「外国語 審請5の1 手数料 翻訳文と 以外は後で」
質問の答えとしては、国内移行後の話で、外国語国際出願では翻訳文提出が審査の前提として必須、というのは正解や。ただ翻訳文だけやなくて、国内書面と手数料もセットで必要、第三者は国内書面提出期間の経過後っちゅうのを忘れんといて。
国内書面提出期間とは
定義(特184条の4第1項)
優先日から2年6月
これだけ。シンプルやけど、PCT国際出願が日本国へ国内移行する際の最重要期間や。
条文的には184条の4第1項のかっこ書で定義されてる:
「条約第二条(xi)の優先日(以下「優先日」という。)から二年六月(以下「国内書面提出期間」という。)以内に、…」
起算日に注意
優先日が起算日。「国際出願日」やない、ここがひっかけポイント。
- 優先権主張あり → 第一国出願日(優先日)から2年6月
- 優先権主張なし → 国際出願日 = 優先日 として2年6月
【予想問題】「外国語特許出願の出願人は、国際出願日から2年6月以内に翻訳文を提出しなければならない」→ ×(優先日から2年6月)
この期間内にやることは?
「国内書面提出期間」って名前の通り、本来は国内書面(184条の5第1項の書面)を提出する期間やけど、実務上はこの期間内にいろんなことをやる必要がある:
| やること | 条文 |
|---|---|
| 国内書面の提出 | 184条の5第1項 |
| 翻訳文の提出(外国語特許出願) | 184条の4第1項 |
| 手数料の納付 | 195条2項 |
翻訳文提出特例期間(特184条の4第1項ただし書)
これも超重要。期間ギリギリで国内書面を出した場合の救済規定や。
条件:国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までの間に国内書面を提出した場合
効果:その国内書面提出の日から2月以内に翻訳文を提出すればOK
つまり、翻訳文の提出期限が最大で「優先日から2年8月」まで延びる可能性がある。
【H27-11】「国内書面提出期間の満了前2月から満了の日までの間に、国内書面を提出した場合、優先日から32月以内に翻訳文を…」→ ×
→ 「優先日から32月(2年8月)以内」やなくて「国内書面の提出の日から2月以内」が正しい。これ、結果的に最大32月になることもあるけど、条文上の表現が違う、というひっかけ。
翻訳文未提出の効果(特184条の4第3項・第4項)
| 状況 | 効果 |
|---|---|
| 国内書面提出期間内に明細書・請求の範囲の翻訳文が提出されない | 国際特許出願はみなし取下げ(3項) |
| 救済 | 正当な理由(経産省令で「正当な理由がなくなった日から2月、ただし国内書面提出期間経過後1年以内」)があれば翻訳文を提出可能(4項) |
| 図面の中の説明・要約書の翻訳文 | 図面の説明はないものとして扱う、要約書は補正命令→提出なしなら却下 |
全体像のまとめ
優先日 ────────────────────────────► 2年6月(国内書面提出期間)
│
└──► +2月(翻訳文提出特例期間:条件付き)
│
└──► +1年(救済期間:正当理由あり)
関連する用語との関係(横断整理)
| 用語 | 定義 | 条文 |
|---|---|---|
| 優先日 | PCT条約2条(xi)の優先日 | 184条の4第1項かっこ書 |
| 国内書面提出期間 | 優先日から2年6月 | 184条の4第1項かっこ書 |
| 翻訳文提出特例期間 | 国内書面提出日から2月(条件付き) | 184条の4第1項ただし書 |
| 国際出願日 | PCT条約3条(2)で認められた出願日 | 184条の3第1項 |
| 国内処理基準時 | 国内書面提出期間の満了時。ただし期間内に審査請求した場合は審査請求時 | 184条の4第6項 |
184条の17(前回の質問)との関係
前の質問で出てきた184条の17の「第三者による審査請求は国内書面提出期間の経過後でなければできない」というルールに直結する。
つまり「国内書面提出期間」=「PCT国際出願が日本に国内移行する手続きの猶予期間」と理解しとけばOK。この期間が経過するまでは、出願人が手続を整えて出願人自身が審査請求するのは可能やけど、第三者は手出しできへん、っちゅう構造や。
語呂(プロジェクト資料より)
- 「国内書面 提出期間は 2年半 経産令で 2カ月・1年(第4項)」
- 「翻訳文 提出特例 期間とは 国内書面の 提出後2月」
- 「国内の 処理基準時は 審請求 国内書面と 提出特例」
ざっくり言うと、国内書面提出期間 = 優先日から2年6月 = PCT国際出願の国内移行手続きのコア期間、これを軸に翻訳文・国内書面・手数料の提出時期、第三者の審査請求時期、国内処理基準時、国内公表時期、全部が決まってくる、っちゅう超重要な概念や。
国内書面提出期間の経過後でなければ審査請求できない?国内書面提出期間を経過したらもう国内移行できないのでは?
重要な誤解やから整理するで。
結論から言うと
国内書面提出期間が経過したら国内移行できない、という理解は間違いや。正確には:
- 国内書面提出期間内に「国内書面の提出」と「翻訳文の提出(外国語の場合)」をしないと、その国際特許出願はみなし取下げになる(184条の4第3項)
- でも、期間内にちゃんと提出してたら、国際特許出願は普通に係属し続ける
つまり、国内書面提出期間っていうのは「国内移行のための提出期限」であって、これを経過したら何もできへんようになるわけやない。期間内に必要な手続きを済ませた出願は、その後も普通に審査請求とかできる。
ここの構造を整理すると
時系列で見るとわかりやすい:
優先日 ─────────────────► 2年6月(国内書面提出期間)─────────────────►
│ │
│ この期間内に: │ 期間経過後:
│ ・国内書面の提出 │ ・国際特許出願は係属継続
│ ・翻訳文の提出(外国語) │ (提出期間内に手続済の場合)
│ ・手数料の納付 │ ・審査請求は引き続き可能
│ │ (優先日から3年以内)
│ ↓ │
│ 出願人による審査請求はこの段階で可能 │ ↓
│ │ 第三者による審査請求は
│ │ ここから可能に!
「経過後でなければ第三者は審査請求できない」の意味
つまり、184条の17が言ってるのは:
- 国内書面提出期間中:第三者は審査請求でけへん(出願人だけが手続を整えて審査請求できる)
- 国内書面提出期間の経過後:第三者も審査請求できるようになる
これって、第三者が審査請求できるタイミングを「遅らせる」規定やねん。
なんでこんな規定があるか?(趣旨)
青本に書いてあるとおり:
国際出願は出願人からの明示の請求がある場合を除き、国内書面提出期間が経過するまでは、締約国の国内官庁は処理または審査を開始してはならないこととなっている(PCT23条、40条)ことから、それに合わせて時期を制限したものである。
つまりPCT条約23条・40条の要請や。PCT条約で「国内書面提出期間内は、出願人の明示の請求がない限り、指定国は処理・審査を開始してはならん」と定めてる。
理由としては:
- 出願人の保護:国内移行の手続を整える時間を出願人に与える
- 第三者の介入防止:出願人が手続を整える前に、第三者が勝手に審査請求して審査を強制スタートさせることを防ぐ
通常の国内出願との比較
ここで通常の国内出願(48条の3)と比較するとよう分かる:
| 項目 | 通常出願(48条の3) | 国際特許出願(184条の17) |
|---|---|---|
| 出願人による審査請求 | 出願日から3年以内、いつでも可 | 国内書面・翻訳文・手数料の手続後 |
| 第三者による審査請求 | 出願日から3年以内、いつでも可 | 国内書面提出期間の経過後でなければ不可 |
通常出願では「いつでも何人も」審査請求できるのに対し、国際特許出願では第三者の審査請求は国内書面提出期間経過後まで待たされる、っちゅう違いがある。
期間のフルピクチャー
| 時期 | 出願人 | 第三者 |
|---|---|---|
| 優先日〜国内書面提出期間内(2年6月) | 手続を整えれば審査請求可 | 不可 |
| 国内書面提出期間経過後〜優先日から3年 | 審査請求可 | 審査請求可 |
| 優先日から3年経過後 | 不可(48条の3で読み替え) | 不可 |
※審査請求の期限自体は通常の国内出願と同じく3年で、これは184条の3第2項の読み替えで適用される。
まとめ
質問の核心に答えると:
- 「国内書面提出期間を経過したらもう国内移行できない」 → 違う。期間内に手続を済ませてれば、出願は普通に係属続ける
- 「審査請求する意味ない」 → 意味あり。第三者は期間経過後でないと審査請求できない、っちゅう制限規定であって、期間経過後に審査請求できなくなるわけやない
- 184条の17は「第三者が審査請求できるタイミングを遅らせる」規定であって、出願自体の生死とは別物
要するに、「国内書面提出期間」 = 「国内移行手続の期限」であって、ここで提出義務を果たしたら、その後は普通の国内出願と同じように扱われる。第三者の審査請求ができるようになるのは、その期間が経過してからや。