日本人の自己肯定感の低さについて

日本人の自己肯定感、世界的に見て低い水準 – 背景に教育や社会構造の課題

複数の国際調査によると、日本人の自己肯定感は世界的に見て低い水準にあることが示されています。特に若者においてその傾向は顕著で、自己の価値や能力を肯定的に捉える割合が他国に比べて著しく低いという結果が出ています。この背景には、日本の教育制度や家族・社会構造が複雑に影響していると考えられます。

自己肯定感、日本は低く欧米・アジア諸国は高い傾向

内閣府が実施した国際比較調査(※1)では、「私は価値のある人間だと思う」という項目に対し「そう思う」と回答した日本の若者の割合は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、韓国、スウェーデンの6カ国の中で最も低い結果となりました。同様の調査は複数行われていますが、アメリカや中国、ヨーロッパ諸国などが高い自己肯定感を示す一方で、日本は常に最低水準に位置づけられています。

自己肯定感が高い国としては、アメリカ、オランダ、フランス、ドイツなどが挙げられます。これらの国々では、個人を尊重し、自身の意見を表明することが奨励される文化的土壌があります。

教育制度における課題:相対評価と画一性

日本の教育制度が自己肯定感の低さに与える影響として、専門家はいくつかの点を指摘しています。

  • 相対評価と競争: 偏差値に代表されるように、他者との比較によって個人の能力が評価されるシステムは、「勝者」と「敗者」を生み出しやすく、自分の絶対的な価値を見出しにくくさせます。
  • 画一性と同調圧力: 「みんなと同じ」であることが重視され、個々の個性や多様な価値観が尊重されにくい環境では、自分の意見を表明したり、他者と違う行動をとったりすることに不安を感じやすくなります。
  • 減点方式の評価: 失敗を恐れ、挑戦をためらう傾向を生み出す一因として、間違いを指摘し減点していく評価方法が挙げられます。加点方式で良い点を褒めて伸ばす教育は、子どもの自己肯定感を育む上で有効とされています。
  • 知識偏重の学習: 知識の暗記に偏りがちで、ディベートやプレゼンテーションなど、自分の考えを表現し、他者と意見を交換する機会が少ないことも、自己表現への自信を損なう要因と考えられています。

家族・社会における影響:「謙遜の美徳」と「他者評価」

家庭や社会の在り方も、自己肯定感の形成に大きく関わっています。

  • 家族関係: 幼少期に親から無条件の愛情を受け、「自分は大切な存在だ」と感じる経験は、自己肯定感の土台となります。一方で、親から褒められる経験が少なかったり、兄弟や他人と比較されたりする経験は、自己肯定感を低くする原因となり得ます。
  • 謙遜を美徳とする文化: 日本には、自己主張を控え、謙遜することを美徳とする文化的背景があります。これが、自分を肯定的に評価することへのためらいにつながっている側面も否定できません。
  • 同調圧力と他者からの評価: 「空気を読む」という言葉に象徴されるように、周囲との調和を重んじ、他者からどう見られるかを過度に意識する社会的な風潮も、ありのままの自分を肯定することを難しくしています。

これらの教育、家族、社会における様々な要因が相互に影響し合い、日本人の自己肯定感の低さに繋がっていると考えられます。近年では、こうした課題を克服するため、教育現場での個性を伸ばす取り組みや、多様な生き方を認め合う社会を目指す動きも見られます。


(※1)出典: 内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」等。調査年によって対象国や質問項目は異なりますが、日本の自己肯定感の低さは一貫して示されています。

(Genimi 2.5 Pro)