免疫の研究に関する記事を読んでいると2型免疫応答、2型免疫反応、2型炎症応答といった言葉をよく見かけます。これらは同じことを指しているようですが、「2型」とは一体どういうことなのでしょうか。
2型という言葉の由来
ウィキペディアの説明が、わかりやすくまとまっています。
1986年に1型ヘルパーT細胞(Th1)と2型ヘルパーT細胞(Th2)が発見されて以来、両者が互いの活性を抑制し合い、そのバランスが免疫制御上重要であると考えられてきた。この考え方の下、アレルギー性疾患はTh2が過度に活性化した「Th2炎症」と呼ばれてきたが、2010年にナチュラルヘルパー細胞(NH細胞。ILC2細胞の一つ)が発見され、Th2サイトカイン(IL-5,IL-13)を大量に放出する事が判明し、喘息等の病態に関与する旨が明らかになるにつれて、Th2とILC2の双方を含む用語として「2型炎症」(免疫反応全体を指して「2型免疫」という)と呼ばれるようになった。(2型炎症 ウィキペディア)
2型という言葉は、2型ヘルパーT細胞(Th2)に由来しています。しかしTh2細胞だけが出すと思われていたサイトカイン(IL-5, IL-13など)を出す新たな種類の細胞、ILC2細胞が2010年に発見されたため、Th2とILC2とが関与する応答を併せて2型と呼ぶようになったようです。
最初はヘルパーT細胞のTh2だったのが、Th2が出すサイトカイン(ILC2細胞も出す)で効果が発揮される現象と定義を変えたんですね。新しい細胞が見つかったので、細胞の型で現象を定義するのをやめて、そこで働くサイトカインで(結果として細胞の型が決まる)現象を定義する流儀になったと考えればよいのでしょう。つまり、2型免疫応答とは、2型サイトカイン(具体的にはIL-5, IL-13など)で誘導される免疫応答のこと、と理解できます。
- 2型炎症反応 実験医学online 2型サイトカインの産生を主軸とする炎症反応. 主に寄生虫に対する生体防御反応として機能する一方で,アレルギー性炎症の主因ともなっている.
1型と2型のバランス
- ヘルパーT細胞が持つ2つの顔 5. 獲得免疫「Th1細胞」と「Th2細胞」の働き(イムノバランス)Th1細胞は、細菌やウィルスなどの異物に対して反応します。‥「Th2」細胞は、ダニやカビ、花粉などのアレルゲンに反応します。‥どちらか一方の反応が過剰にならないように、それぞれの細胞から分泌される「IFN-γ」と「IL-4」のサイトカインがお互いの働きを抑制し合うようにも働いています。
- https://www.osaka-med.ac.jp/deps/opt/oldweb/staffonly/pdf/clinicalstudy_28_01.pdf
- HygienehypothesisとTh1・Th2系のアンバランス-良好な地球規模的自然環境の重要性 近藤直実 岐阜大学医学部小病態学 日本小アレルギー学会誌第17巻第2号155~162,2003 アレルギーの発症に関してヘルパーT細胞のThl系Th2系の議論に加えて,近年Hygienehypothesis(衛生仮説)が提唱されている.
- Th1細胞とTh2細胞 ヘルパーT細胞には、Th1細胞とTh2細胞とがある。抗原提示細胞が、IL-12を産生するか、それとも、PGE2を産生するかが、Th1細胞(細胞性免疫)と、Th2細胞(液性免疫)のどちらが優位になるのか、決定している。リノール酸(LA)やアラキドン酸の摂取量が多いと、PGE2の産生が過剰に行われ、Th1細胞による細胞性免疫が低下し、発熱期間が長引き(熱が長く続く)、Th2細胞による抗体産生が過剰に行われ、アレルギー体質になりやすくなると、考えられる。
2型炎症応答
- 2型炎症応答は寄生虫の感染や,アレルゲン,毒素,アジュバントなどの刺激により生体内で引き起こされる炎症応答である.刺激物質の侵入に応じて免疫細胞からIL-4, 5, 13などの2型サイトカインや免疫グロブリンE(IgE)が産生され,好酸球をはじめとしたエフェクター細胞の働きと粘膜分泌や平滑筋収縮によって,原因となった刺激物質が体内から排除される.2型炎症応答は寄生虫の感染に対しては生体防御機構として働くが,アレルゲンなどに対して起こるとアレルギー症状をもたらし生体に有害な反応となる.(神経系による2型自然リンパ球と2型炎症応答の制御 森山 彩野 生化学 Journal of Japanese Biochemical Society 91(5): 711-714 (2019))
- 一般的に一般的に蠕虫感染症ではTh2型免疫応答が優位となり、血中IgEや好酸球が増加することによって、感染に対して抵抗性を示します。https://www.hyo-med.ac.jp/department/immunology/project/immune_response.html
- Type-2-cell-mediated immunity, rich in eosinophils, basophils, mast cells, CD4+ T helper 2 (Th2) cells, and type 2 innate lymphoid cells (ILC2s), protects the host from helminth infection but also drives chronic allergic diseases like asthma and atopic dermatitis. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1074761315002745
アレルギー
アレルギーと2型免疫反応
- 自己免疫疾患をより良く理解するための免疫学 第9回 アレルギー JBスクウェア
アレルギーと自然リンパ球
- 自然リンパ球関連サイトカインとアレルギー 小端 哲二 獨協医科大学免疫学講座 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO) 35(2): 18, 2017
1型免疫応答
- The type I IFN response to extracellular bacteria in the airway epithelium Dane Parker and Alice Prince. Trends Immunol. 2011 Dec; 32(12): 582–588.
記憶型病原性Th2(Tpath2)細胞
- 各種サイトカインで誘導される2 型免疫応答による組織線維化のしくみ 平原 潔, 中山 俊憲- 千葉大学大学院医学研究院免疫発生学講座 医学のあゆみ Volume 271, Issue 5, 486 – 490 医歯薬出版株式会社 (2019) (1,320円)