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令和8年度弁理士試験短答問題 意匠 問題9 関連意匠

【意匠】9
甲は、令和4年5月1日、包装用びんの意匠イについて意匠登録出願をした。意匠イは、
その後、令和5年4月1日に設定の登録がされ、同年5月1日に意匠公報が発行された。
甲は、令和7年4月1日、意匠イを本意匠とする関連意匠として、意匠イに係る包装用
びんの胴体部分の意匠ロについて意匠登録出願をした。
この場合において、次のうち、正しいものは、いくつあるか。
ただし、各設問で言及した条件のみに基づいて判断し、他の条件は考慮しないものとす
る。
(イ) 意匠イと意匠ロが類似する場合、意匠ロの意匠登録出願の日に意匠イに係る意匠権が
存続していれば、その意匠権が、意匠ロに係る意匠権の設定の登録の際に、登録料不納
で消滅していたとしても、意匠ロについて意匠登録を受けることができる。
(ロ) 意匠イと意匠ロが非類似であっても、意匠ロについて意匠イを本意匠とする関連意匠
として意匠登録を受けることができる場合がある。
(ハ) 意匠イと意匠ロが類似する場合、意匠権の設定の登録の日から3年の期間を指定して
意匠イの意匠登録出願について秘密にすることが請求されていたとしても、意匠ロにつ
いて意匠登録を受けることができる。
(ニ) 意匠イと意匠ロが類似する場合、意匠イの意匠権について専用実施権が設定されてい
るときであっても、意匠ロについて意匠登録を受けることができる。
(ホ) 意匠イを本意匠とする関連意匠として意匠ロについて意匠登録を受けた場合であっ
ても、意匠イに係る意匠権と意匠ロに係る意匠権を分離して移転することができる場合
がある。
1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ

 

枝(ハ)の解説

そもそも、秘密意匠かどうかって、どうでもいいってこと?この問題を解く場合。

鋭いとこ突いてきたな。答えは「(ハ)の○×を出すだけなら、結論は秘密意匠でもそうでなくても変わらへん」。その意味では引っかけ(ダミー条件)や。ただし「だから無視してええ」とは違う。そこを分けて説明するわ。

秘密でも非秘密でも、結論は同じ○

ロの出願 R7.4.1 で場合分けしてみると:

イが公知になる時点 ロ出願時(R7.4.1)にイは公知? 効く規定 結論
非秘密 公報 R5.5.1(図面入り) 公知(R5.5.1〜) 3条1項 → 10条2項で救済
秘密 図面入り公報 R8.4.1以降 まだ非公知 そもそも3条1項が立たない(→9条は10条1項)

どっちのルートを通っても着地は「登録できる」。だから**○という答え自体は秘密かどうかに左右されない**。

でも「どうでもいい」と言い切ると危ない

理由が3つある。

① 「としても」が出題者のサイン 設問は「秘密にすることが請求されていたとしても、登録を受けることができる」。この「〜としても」は、“一見ジャマに見える条件を置いたけど、実は結論変わらんよね?”を確認する型や。出題者はわざと秘密条件を置いて、前回学んだ「秘密意匠+ギャップ=3条の2で拒絶」に脊髄反射でハマる受験生を釣りにきてる。「どうでもいい」と分かるためには、10条で関連意匠が完璧に保護されてることを知ってなあかん。無視じゃなくて「検討した上で打ち消す」。

② 通る条文(=説明の中身)は変わる ○×は同じでも、論文や口述で「なぜ?」を問われたら答えが分岐する。非秘密なら「3条1項に当たるが10条2項で除外」、秘密なら「そもそも非公知で3条1項が立たない/部分意匠側で見ても10条3項」。短答は○で済むけど、理由は別物。ここを潰しとかんと論文で死ぬ。

③ この問題全体では確実に効いてる条件 (ハ)は「イとロが類似」=全体類似に振ってあるから3条1項ラインで、秘密がほぼ無害化される。でもロは本来「胴体部分の部分意匠」やから、他の枝((イ)(ロ)など)で**「イの一部と類似」=3条の2ライン**に振られたら、そこは秘密意匠の図面入り公報のタイミングがモロに効く(10条3項の読替が効くかどうか)。枝ごとに秘密の重みが変わる。問題全体としては絶対にダミーやない。

まとめ

(ハ)単体の○×判定 → 秘密はダミー(結論不変)。 ただし「ダミーだと見抜く」こと自体が試験で問われてる知識やし、理由づけと他の枝では生きてくる。だから「無視」やなくて「検討して、関連意匠だから打ち消せる」と処理するのが正解の頭の使い方や。

(Claude Opus 4.8)

意匠法 第3条の2

意匠法 

第3条の2 意匠登録出願に係る意匠が、当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の一部と同一又は類似であるときは、その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができないただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。 

文章構造の解読:

意匠登録出願に係る意匠が、

  • 当該意匠登録出願の日前の他の意匠登録出願であつて
  • 当該意匠登録出願後に第二十条第三項又は第六十六条第三項の規定により意匠公報に掲載されたもの(以下この条において「先の意匠登録出願」という。)の願書の記載及び願書に添付した図面、写真、ひな形又は見本に現された意匠の
  • 一部と同一又は類似であるときは、
  • その意匠については、前条第一項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない
  • ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であつて、
  • 第二十条第三項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条第四項の規定により同条第三項第四号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。 

令和8年度弁理士試験短答問題 意匠 問題8

【意匠】8
甲は、意匠イ及び意匠イを本意匠とする関連意匠ロを同日に出願した。乙は、意匠ハを
意匠イ及び意匠ロの出願と同日に出願した。意匠イと意匠ロは類似し、意匠ロと意匠ハは
類似する。意匠イと意匠ハは類似しない。その後、特許庁長官は、相当の期間を指定して、
意匠ロと意匠ハについて、意匠法第9条第2項の協議をしてその結果を届け出るべき旨を
甲及び乙に命じた。
この場合、次のうち、正しいものは、いくつあるか。
なお、意匠イの出願について拒絶の理由はなく、意匠ロ、意匠ハの出願について意匠法
第9条第2項以外の拒絶の理由はないものとする。

(イ) 甲と乙が協議をして、甲が意匠ハの意匠登録出願人となり、意匠ハを意匠ロの関連意
匠とした場合、意匠イ、意匠ロ及び意匠ハについて意匠登録を受けることができる。
(ロ) 甲が意匠イについて意匠登録を受けたとしても、甲と乙が協議をして、乙が意匠ハに
ついて意匠登録を受けることができる。
(ハ) 甲と乙が協議をして、甲が意匠ロについて意匠登録を受けたとしても、乙が意匠ハに
ついて意匠登録を受けることができる場合がある。
(ニ) 甲と乙の協議の結果にかかわらず、甲は、意匠イについて、意匠登録を受けることが
できる。
(ホ) 甲と乙が指定期間内に協議の結果を届け出ないときは、当該協議が成立しなかったも
のとみなされる。

1 1つ
2 2つ
3 3つ
4 4つ
5 5つ

言葉の意味:

「以後」は、「以」という言葉があるので、「その日」つまり今の場合「同日」も含む。

 

問題文の読み取り:

問題文の読み方の話やんな。結論から言うと、文法的には一通りにしか読めへん。乙が出願したんは意匠ハだけで、しかも甲のイ・ロと同じ日や。

なんでそう確定するか、分解してみる。

乙は / 意匠ハを / 意匠イ及び意匠ロの出願と同日に / 出願した。

ポイント①:「を」がどこに付いてるか
出願の「対象」を示すんは「を」やけど、この文で「を」が付いてるんは意匠ハだけ。だから乙が出願の対象にしたんはハ一つだけで確定。

ポイント②:「意匠イ及び意匠ロの出願と同日に」の「と」
ここの「と」は並列(AとB)の「と」やのうて、「〜と同じ/〜と違う」の基準を示す「と」や。「同日に」とセットで「イとロの出願と同じ日に」っていう”いつ出したか”を表す副詞句になってる。出願の対象やのうて、タイミングを言うてるだけ。

整理すると:

甲:イ・ロ を同日に出願   (仮にX日)
乙:ハ   を、そのX日に出願(甲と同じ日)
→ イ・ロ・ハ 全部同じ日。出願人は 甲=イ,ロ / 乙=ハ

君が心配した「乙がイ・ロ・ハの3つを出した」読みは成立せえへん。理由2つ:

  1. イとロは1文目で「甲が同日に出願した」って確定済みやから、乙のもんにはなれへん。
  2. そもそも「を」がハにしか付いてへんから、イ・ロは乙の出願対象になりようがない。

「甲より後の日に出した」読みも無理。「同日に」って書いてある以上、後日はあり得ん。後日やったら「後日」「別の日に」って書く。

もし仮に乙が3つ出す問題やったら、文は

乙は、意匠イ、意匠ロ及び意匠ハを出願した

みたいに3つとも「を」で並べな成立せえへん。今の文はそうなってへんやろ? せやから両ケースが成り立つことはなくて、文法でガチッと一通りに決まる、っていうのが答えや。

要するに「全員同日出願」で、甲のロと乙のハが類似 → だから9条(同日異出願人の協議)が問題になる、っていう土台設定になってる。

 

問題解説

立法の本筋に関わる枝(特にイ・ホ)やから、条文で裏取りしてから解説するわ。ちょっと意匠法9条・10条の条文確認させて。条文裏取れた。9条2項・3項・5項、10条1項・7項、全部確認したで。結論から言うと正しいのはイ・ロ・ニの3つ、答えは**選択肢3(3つ)**や。順に潰してく。

(イ) ○

甲が協議でハの出願人になって(乙→甲へ名義変更)、ハをロの関連意匠にする、っていう筋。これがハマる。

ポイントは連鎖関連意匠(令和元年改正・10条7項)。

  • イ(基礎意匠)→ ロ(イの関連意匠)→ ハ(ロの関連意匠)
  • ハ類似ロやから、ロを本意匠とする関連意匠にできる。ハ非類似イなのは問題ない(ハはイと関係づける必要なし)

10条7項が「基礎意匠に係る関連意匠(=関連意匠+連鎖する段階的関連意匠)に該当する2以上の出願には9条1項2項を適用しない」と言うてるから、甲のもとに揃ったロとハの間で先願衝突が起きへん。結果、イ・ロ・ハ全部登録可。

(ロ) ○

甲がイ登録した上で、協議で乙がハを取る筋。

  • イ非類似ハ → イはハの障害にならん
  • 協議(ロ vs ハ)で乙が勝つ → 乙ハ登録、甲はロが拒絶される

ここで9条3項の処理が効く。協議が成立して甲が負けてロが拒絶された場合、これは「協議不成立による拒絶」ではないから、9条3項本文が適用されて、ロは「初めからなかったものとみなす」=先願の地位を失う。だからロはハをブロックせえへん。乙はハを登録できる。

(※ただし書が効くのは協議”不成立”で両方落ちたときだけ。今回は成立して片方が勝ってるから本文。ここ混同しやすいとこ。)

(ハ) ✗

逆パターン。協議で甲がロを取ったのに、乙がハを登録できる「場合がある」か?

ない。甲がロを登録 → ハ類似ロ → ロが先願(+10条の2、13条6項の処理)としてハをブロック。協議で負けた乙のハは拒絶確定。どう転んでも乙はハを取れへん。「場合がある」が偽やから**✗**。

(ニ) ○

協議の結果にかかわらず甲はイを登録できるか。

イは拒絶理由なし・本意匠・ハと非類似。協議はあくまでロとハの話で、イは蚊帳の外。

  • 甲勝ち(ロ取得)→ イ+ロ:イ登録可
  • 乙勝ち(甲ロ落ち)→ イ残る:イ登録可
  • 協議不成立 → ロ・ハ両落ち、でもイは無関係:イ登録可

全パターンでイは安泰。

(ホ) ✗

これがド定番トラップ。9条5項の条文:

特許庁長官は、…指定した期間内に…届出がないときは、第二項の協議が成立しなかつたものとみなすことができる

枝は「みなされる」=自動的・義務的に言うてるけど、条文は「みなすことができる」=長官の裁量。語尾の効力が違う。だから**✗**。


まとめ

正誤 キモ
連鎖関連意匠(10条7項)で衝突回避
協議成立→負け出願は9条3項本文で先願喪失
甲がロ取れば乙ハは必ず落ちる
イは協議と無関係、常に登録可
「みなされる」✗/「みなすことができる」○

正しいのはイ・ロ・ニの3つ → 答えは選択肢3

ちなみにこの問題、類似関係(イ類似ロ/ロ類似ハ/イ非類似ハ)が〔2023-意匠9〕とまったく同じ骨格でな。連鎖関連意匠と9条3項本文/ただし書の使い分けがセットで問われる頻出パターンや。ロとハの「協議成立で負け(→3項本文)」と「協議不成立で両落ち(→3項ただし書)」で先願の地位がどう変わるか、ここを横断で押さえとくと強いで。

(Claude Opus 4.8)

意匠法第60条の12 国際公表の効果等

弁理士試験令和8年度短答式問題

【意匠】6
日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る
国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

枝5 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があった後に国際意匠登録出願に係る意匠を
記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業とし
てその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その
国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する
意匠の実施により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができ
る。

解答:誤り。「業務上の損失に相当する額」ではなく、「実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」。

根拠条文:

意匠法

(国際公表の効果等)
第六十条の十二 国際意匠登録出願の出願人は、国際公表があつた後に国際意匠登録出願に係る意匠を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後意匠権の設定の登録前に業としてその国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対し、その国際意匠登録出願に係る意匠が登録意匠である場合にその登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠であることを知つて意匠権の設定の登録前に業としてその国際公表がされた国際意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠を実施した者に対しては、同様とする。

 

意匠法66条の12に対応する特許法条文は、特許法65条。意匠法には出願公開制度がないので、特許法65条に対応する、国内の意匠法登録出願に関する条文は存在しない。国際出願の場合は、国際公表されるので、対応するものとして意匠法60条の12がある。

商標法には対応するものとして商標法13条の2があり、商標法では「業務上の損失に相当する額」とあるので、商標法の語句と交換してひっかけ問題をつくっていたということがわかる。

商標法

(設定の登録前の金銭的請求権等)
第十三条の二 商標登録出願人は、商標登録出願をした後に当該出願に係る内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後商標権の設定の登録前に当該出願に係る指定商品又は指定役務について当該出願に係る商標の使用をした者に対し、当該使用により生じた業務上の損失に相当する額の金銭の支払を請求することができる。

 

「業務上の損失」は商標法13条の2の金銭的請求権で出てくる言葉や。枝5はこれを意匠にしれっと混ぜ込んだ横断トラップやね。

業務に生じた損失

商標出願人が、出願後〜設定登録前に第三者が出願商標を使ったことで、自分の業務に生じた損失のこと。商標法13条の2第1項が、その「業務上の損失に相当する額」の支払いを請求できる、としてる。

なんで商標だけ「実施料相当額」やないの?

ここが立法趣旨。商標の価値は標章そのものやなくて、業務上の信用(グッドウィル)に化体するもんやろ。設定登録前は商標権ないし、信用もまだ積み上がってる途中やから、特許みたいに「使った分の実施料を払え」という発想が馴染まへん。

そやから「現に出願人に損失が出てること」を要件にした。これがめっちゃ効いてくる👇

  • 悪意の使用者でも警告は必須(特許・意匠みたいな”みなし悪意で警告不要”の規定がない)。損失の存在を出願人が認識して初めて請求するもんやから。
  • 出願人自身が出願商標を使ってへんと損失が生じへん → 出願人の使用が事実上の前提。
  • 悪意で使われてても、損失ゼロなら警告しても請求権は発生せえへん

横断比較(ここ、試験に出る)

特許65条 意匠60条の12(ハーグ国際意匠登録出願) 商標13条の2
名称 補償金請求権 補償金請求権 金銭的請求権
算定基準 実施料相当額 実施料相当額 業務上の損失に相当する額
トリガー 出願公開 国際公表 出願(公開不要)
悪意者への警告 不要(みなし規定あり・1項後段) 不要(みなし規定あり・1項後段) 常に必要
出願人の使用 不要 不要 事実上前提(使ってないと損失なし)

意匠は本来そもそも補償金請求権の制度がない(出願公開制度がない)んやけど、ハーグ経由の国際意匠登録出願だけはWIPOの国際公表があるから60条の12で実施料相当額の補償金請求権が認められてる、という流れも押さえとくとええ。

📝記憶のコツ:「商標は信用、せやから”損失”。特許・意匠はモノの価値、せやから”実施料”」。枝5は「意匠やのに損失」になってる時点で×、と一瞬で切れるようにしとこ。

(Claude Opus 4.8)

意匠法第60条の6、意匠法第9条

意匠法第60条の3から第60条の23までは、ジュネーブ改正協定(ハーグ協定のジュネーブ改正協定)に基づく特例に関する条文です。弁理士法短答試験でも取り上げられているトピック。

 

令和8年度短答式試験【意匠】6 日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る 国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

枝4 2つの意匠を包含する国際出願が、国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録 出願とみなされた。これらの2つの意匠が互いに類似するものであるとき、意匠登録出願人に、意匠法第9条第2項の協議をしてその結果を届け出るべき旨が命じられる場合 がある。

問題文(枝の文)の読解の困難さ:

  • 「2つの意匠」を包含する国際出願?2つの国際出願??
  • 国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録 出願 は一つの出願?2つの出願?
  • 意匠登録出願人に、意匠法第9条第2項の協議をし 一つの出願の中の2つの意匠で一人の出願人?自分で自分と協議するの??

解説

GoogleAI による概要

「複数の意匠を包含する国際出願」とは、1つの国際出願手続きの中に複数のデザイン(意匠)をまとめて含めて出願することを指します。

この出願について、疑問を解決するためのポイントを3つに整理して分かりやすく解説します。

1. 「2つの意匠を包含する国際出願」とは?

ひとつの願書(国際出願)の中に、2つのデザイン(意匠)をまとめて詰め込んで提出した状態を指します。日本では「1つの出願につき1つの意匠」というルール(一意匠一出願の原則)があります。そのため、この出願が日本に到達した際は、「意匠1」の出願と「意匠2」の出願という、計2つの独立した出願に分割(みなす)されて審査されることになります。

2. 意匠登録出願人に「協議」が命じられるのはなぜ?

日本では「同じ人」が「同じ日」に似たようなデザイン(類似する意匠)を2つ以上出願した場合、どちらか1つしか登録できないルールになっています(意匠法第9条第2項)。そのため、特許庁の審査官から出願人に対し、「2つのうち、どちらをメインとして登録したいか選んで(協議して)結果を教えてください」という命令(協議指令)が来ます。

3. 自分で自分と「協議」するの?

はい、その通りです。「2つの出願人」が別人であればお互いに話し合って決めますが、出願人が同じ人(自分一人)の場合でもルールは同じです。自分の中でどちらか一方の意匠(または関連意匠)を選ぶ手続きをしなければならないため、実質的に「一人で協議の結果を回答する」ことになります。

 

関連する条文

意匠法

(国際出願による意匠登録出願)
第六十条の六 日本国をジュネーブ改正協定第一条(xix)に規定する指定締約国とする国際出願であつて、その国際出願に係るジュネーブ改正協定第一条(vi)に規定する国際登録(以下「国際登録」という。)についてジュネーブ改正協定第十条(3)(a)の規定による公表(以下「国際公表」という。)がされたものは、経済産業省令で定めるところにより、ジュネーブ改正協定第十条(2)に規定する国際登録の日にされた意匠登録出願とみなす。
2 二以上の意匠を包含する国際出願についての前項の規定の適用については、同項中「された意匠登録出願」とあるのは、「国際登録の対象である意匠ごとにされた意匠登録出願」とする。
3 第一項(前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により意匠登録出願とみなされた国際出願(以下「国際意匠登録出願」という。)に係るジュネーブ改正協定第一条(viii)に規定する国際登録簿(以下「国際登録簿」という。)に記録された次の表の上欄に掲げる事項は、第六条第一項の規定により提出した願書に記載された同表の下欄に掲げる事項とみなす。

国際登録の名義人の氏名又は名称及びその住所  |  意匠登録出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
国際登録の対象である意匠の創作をした者の氏名及びその住所 |  意匠の創作をした者の氏名及び住所又は居所
国際登録の対象である意匠を構成する一若しくは二以上の製品又は国際登録の対象である意匠が使用されることとなる一若しくは二以上の製品 |  意匠に係る物品又は意匠に係る建築物若しくは画像の用途(上欄に掲げる製品が建築物又は画像である場合において、当該製品に係る国際登録簿に記録された事項から当該建築物又は画像の用途を認識することができるときに限る。)

4 国際意匠登録出願に係る国際登録簿に記録された意匠は、第六条第一項の規定により提出した図面に記載された意匠登録を受けようとする意匠とみなす。

(先願)
第九条 同一又は類似の意匠について異なつた日に二以上の意匠登録出願があつたときは、最先の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。
2 同一又は類似の意匠について同日に二以上の意匠登録出願があつたときは、意匠登録出願人の協議により定めた一の意匠登録出願人のみがその意匠について意匠登録を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その意匠について意匠登録を受けることができない。
(以下、略)

意匠法61条 特許庁に備える意匠原簿への登録

意匠法

(意匠原簿への登録)
第六十一条 次に掲げる事項は、特許庁に備える意匠原簿に登録する。
一 意匠権の設定、移転、信託による変更、消滅、回復又は処分の制限
二 専用実施権の設定、保存、移転、変更、消滅又は処分の制限
三 意匠権又は専用実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の制限
2 意匠原簿は、その全部又は一部を磁気テープ(これに準ずる方法により一定の事項を確実に記録して置くことができる物を含む。以下同じ。)をもつて調製することができる。
3 この法律に規定するもののほか、登録に関して必要な事項は、政令で定める。

 

短答式問題

【意匠】6
日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る
国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

3 国際登録を基礎とした意匠権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅又は処分の
制限は、国際登録簿に登録されたところによる。

 

解き方・考え方

結論:×

考え方のステップ

① まず「国際登録簿で管理されるもの」を押さえる

国際登録簿はWIPO国際事務局が管理する帳簿で、そこに記録されるのはハーグ協定**16条(1)**に列挙された事項だけ:所有権の変更(=移転)、名義人の氏名・住所変更、放棄、限定、無効…など。

ここに 質権は入ってない質権は各国国内法上の担保物権で、WIPOは一切関知せえへん。これが一番の決め手。

② 質権は「国内」の話やと気づく

意匠権を目的とする質権の設定・移転・変更・消滅・処分の制限は、意匠法61条1項3号で国内の意匠原簿に登録する事項。効力は意匠法36条で準用する特許法98条(登録=効力発生要件)で処理される。国際登録簿は出てこうへん。

③ 商標の類似規定と横断比較してダメ押し

「国際登録簿に登録されたところによる」って文言は、実は商標法68条の27第2項から持ってきたやつ。でもその対象は:

対象 国際登録簿による?
更新・移転・変更(信託除く)・消滅 ○(商68条の27②)
質権 ✕(規定なし)
信託による変更 ✕(商標原簿。68条の27②かっこ書)

商標ですら質権は「国際登録簿による」の対象外。意匠も当然同じ発想。

④ そもそも条文が存在しない

意匠法の特例(60条の6〜60条の24)を見ても、質権について「国際登録簿に登録されたところによる」なんて条文はない。60条の13=設定登録の特例、60条の14=消滅、60条の17=放棄の特例…と並んでるけど、質権は素通り。

ひっかけの構造

この問題、「27条1項3号(=質権の設定・移転…の列挙)」+「商68条の27②の文末(=国際登録簿に登録されたところによる)」を合体させて作った合成問題やね。それっぽい部品を貼り合わせると、読んだ瞬間「あれ、なんかどっかで見た文言や」となって○にしてしまう。

立法趣旨で覚えとくなら一本:「質権=国内の担保物権やからWIPOは管理せえへん。国際登録簿の管理事項はハーグ16条が天井」。これさえ握っとけば、特・実・意・商どこで聞かれてもブレへん。

 

質権は各国国内法上の担保物権 

「質権は国内」って、なんでそうなるか、順に説明する。

① 質権はそもそも「民法上の担保物権」

質権って、もともと民法が定める担保物権やんか(民法342条〜)。「金貸すから、お前の権利を担保に入れとけ」っていう、債権者と債務者の間のお金の話。意匠権を質に入れるってのは、その意匠権を担保に融資受ける、みたいな国内の金融取引。

これは条約が作った概念ちゃう。各国の私法(日本やったら民法+意匠法)が独自に作ってる制度。だから「どこの国の質権か」は、その国の法律次第。フランスに質権があるか、あるとして要件どうか、なんてハーグ協定は知らんし、決められへん。

② ハーグの国際登録簿が扱うのは「登録という対象物」だけ

WIPOの国際登録簿が管理するのは、ハーグ16条(1)に列挙された事項に限られる

  • 所有権の変更(移転)
  • 名義人の氏名・住所の変更
  • 放棄
  • 限定
  • 無効
  • 規則で定める関連事項

質権、入ってへんやろ。つまりWIPOには質権を記録する仕組みも権限もない。条約が「これだけ扱う」と決めてる枠の外、ってこと。

③ 「国際登録を基礎とした意匠権」は、中身は日本の意匠権

ここが核心。意匠法60条の14第2項で定義されとるけど、これは国際出願ルートを通って日本で設定登録された日本国の意匠権。生まれ方が国際ルートなだけで、できあがったモノは普通の日本の意匠権=日本法上の財産

日本の意匠権に質権を設定するんやから、

  • 登録先は国内の意匠原簿(意匠法61条1項3号)
  • 効力は意匠法36条で準用する特許法98条(登録=効力発生要件)
  • 物上代位とかも国内法(特96条準用)

…全部日本法の中で完結する。WIPOの出番ゼロ。

なんで移転は国際、質権は国内?っていう疑問への先回り

「でも移転(所有権変更)は国際登録簿に載るやん、なんで質権は載らへんの?」と思うはずやから先に潰しとく。

  • 移転=誰が登録の持ち主かが変わる話。これは国際登録という対象物そのものの帰属の変化で、全指定国に一発で効くから、WIPOが中央管理する必要がある(ハーグ16条(1)(i))。
  • 質権=持ち主は変わらん。所有権の下に乗っかる「担保の重し」で、特定の国の特定の債権者との関係でしか意味を持たへん。条約が中央管理する必要がない層の話。

イメージで言うと、幹(国際登録)の持ち主と存続はWIPOが台帳で管理するけど、日本で生えた枝(日本の意匠権)に巻きつく担保のツタは、日本の庭の中の話、って感じ。


整理すると「国内」の根拠は二段構え

  1. 質権という制度自体が条約じゃなく各国私法の産物(民法)
  2. その質権がかかる対象(国際登録を基礎とした意匠権)が、中身は日本の意匠権で、登録も効力も日本法(意匠法61条1項3号・36条準用98条)で動く

やから「国際登録簿に登録されたところによる」は当てはまらん、っていう①の問題に戻れるわけや。

(Claude Opus 4.8)

意匠法60条の9 秘密意匠の特例(国際意匠登録出願で14条の規定は適用しない)

令和8年度弁理士試験短答式問題

【意匠】6
日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る
国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

1 国際意匠登録出願の出願人は、その国際登録に係る意匠を秘密にすることを請求する
ことができる場合がある。

(枝2以下省略)

 

解答・解説

秘密意匠あり得へん、で合ってる。や。根拠は意匠法60条の9

国際意匠登録出願の出願人については、第14条(秘密意匠)の規定は、適用しない。

ただ、これを「適用なし」って丸暗記すると初見の枝で死ぬから、構造で押さえよ。

なんで秘密にできへんのか(理解の核)

国際意匠登録は、ジュネーブ改正協定10条でWIPO国際事務局が「国際公表」する仕組みが大前提になっとる。で、それが日本に入ってくると、この国際公表が日本の**「出願公開」とみなされる(60条の6第1項)**。

つまり——日本の特許庁が実体審査する時点で、その意匠はもう世界に晒されとる

一方、14条の秘密意匠は「設定登録の日から最長3年、意匠を秘密にできる」制度やろ。すでに公表されてもうたモンを後から「秘密にして」言うても、そら物理的に無理。だから14条まるごと適用除外。青本の趣旨もそのまま「国際公表されており秘密にすることがそもそも不可能」言うとる。

👉 この「国際公表が前提」という一点さえ握っとけば、関連する枝は全部ここから演繹できる。

国際意匠登録の流れ

段階 中身 条文
① 国際出願 WIPO国際事務局へ。**直接出願 or 間接出願(自国官庁経由)**を選べる 4条(1)
② 言語 英・仏・西から選択(自国語ちゃう⚠) 6規則
③ 出願内容 1出願で複数指定国・最大100意匠まで(ロカルノ同一類が条件) 5条(4)
④ 方式審査 国際事務局が方式審査。不備→補正命令、応じんと放棄みなし 8条
⑤ 国際登録 国際登録簿に記録。国際登録日=原則、国際出願日 10条(1)(2)
⑥ 国際公表 原則、国際登録日から6月後。請求で登録後すぐ/延期も可 10条(3)・17規則
⑦ 各指定国の実体審査 日本では国際公表=出願公開みなし 60条の6
⑧ 拒絶の通報 国際公表から6月以内(宣言国は12月以内) 12条・18規則
⑨ 保護確定 通報なし→期間経過で保護/拒絶取下げ・保護付与の声明で効果発生 14条

弁理士試験の狙われどころ

狙われどころ①:秘密意匠 vs 関連意匠(横断)

これ、判断軸ひとつで割り切れる。

制度 国際意匠登録出願 条文
秘密意匠(14条) ✕ 適用なし 60条の9
関連意匠(10条) 〇 適用あり 60条の8

なんで分かれるか?基準は「国際公表前提とケンカするか否か」だけ。

  • 秘密意匠=非公開にする制度 → 公表前提と真っ向衝突 → ✕
  • 関連意匠=権利範囲を広げる制度 → 公表とは無関係 → 〇

この軸を持っとけば、初見の組合せ枝でも切れる。

狙われどころ②:公表の時期は「6月後」 原則は国際登録日から6月後(17規則(1)(iii))。これを18月(特許の出願公開)や1年4月(条約)と混ぜてくる。「請求で登録後すぐ公表」も〇な。

狙われどころ③:公表の延期 ≠ 秘密意匠(混同罠の本命)

  • 公表の延期(11条)=公表前に最大30月遅らせるだけ。いずれ必ず公表される。
  • 秘密意匠(14条)設定登録後=権利発生後に秘密にする。

時間軸がそもそも別モン。「延期できるなら実質秘密意匠やん」は**✕**。延期は遅らせるだけで、秘密権利にはならへん。

狙われどころ④:書面の提出時期 新規性喪失の例外(4条2項)を受けたいとき、書面は出願と同時ちゃう国際公表後30日以内に特許庁長官へ(60条の7、施規1条の2)。「出願と同時に提出しなければ受けられない」は過去問頻出の✕枝や。


まとめると、「国際公表が前提」という1本の柱から、秘密意匠✕・関連意匠〇・公表延期との区別・書面提出時期、全部ぶら下げて理解できる。暗記すんのはこの柱だけでええ。

 

 

意匠法の条文

(国際登録出願)
第六十条の三 日本国民又は日本国内に住所若しくは居所(法人にあつては、営業所)を有する外国人は、特許庁長官に意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(以下「ジュネーブ改正協定」という。)第一条(vii)に規定する国際出願(以下「国際出願」という。)をすることができる。この場合において、経済産業省令で定める要件に該当するときは、二人以上が共同して国際出願をすることができる。

2 前項の規定による国際出願(以下「国際登録出願」という。)をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより外国語で作成した願書及び必要な物件を提出しなければならない。

(秘密意匠の特例)
第六十条の九 国際意匠登録出願の出願人については、第十四条の規定は、適用しない。

 

意匠法60の22:起算日が謄本送達の日 vs 確定の日 を一発で理解する方法

令和8年度短答式問題 【意匠】6 日本を指定締約国とするハーグ協定のジュネーブ改正協定の規定による国際出願に係る 国際登録に関し、次のうち、正しいものは、どれか。

枝2 国際意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達がされた日か ら6月を経過した後は、個別指定手数料の返還を請求する者がその責めに帰することが できない理由によりその請求をすることができなかった場合を除き、その個別指定手数料の返還を請求することはできない。  

答え:誤り:

根拠条文:

意匠法 (個別指定手数料の返還) 第六十条の二十二 国際意匠登録出願が取り下げられ、又は国際意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、前条第一項又は第二項の規定により納付すべき個別指定手数料を納付した者の請求により政令で定める額を返還する。

2 前項の規定による個別指定手数料の返還は、国際意匠登録出願が取り下げられ、又は国際意匠登録出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定した日から六月を経過した後は、請求することができない。

3 第一項の規定による個別指定手数料の返還を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。   

 

問題の解き方・考え方

これ、細かいように見えて実はド定番の罠やから、丸暗記する必要ないで。引っかけポイント1個だけ押さえたら終わり。

まず答え

枝2は誤り(×)→ 正しい肢ちゃう。

罠は1か所だけ。起算日や。

条文(60条の22第2項) 肢2
6月の起算点 査定・審決が確定した日 査定・審決の謄本の送達がされた日

「送達」と「確定」をすり替えてるだけ。ここ以外(不責事由の例外=3項)は条文どおり合うてる。せやから純粋な起算日すり替え問題や。

なぜ「確定した日」なんか(ここだけ理解したら一生忘れへん)

個別指定手数料が返ってくる前提は、「この出願はもう登録にならんことが確定した」っちゅう状態やろ?

ところが謄本が送達された時点では、まだ拒絶査定不服審判(46条)とかで争える。出願人がまだ生き返らせようとしてる最中やのに「金返して」とは言われへん。争うんやったら個別指定手数料は維持しとかなあかんからな。

だから「もう争えへん=確定した」時点を起算点にせなアカン。送達時点はまだ早すぎる。

これが立法趣旨。「返還=出願が完全に死んだとき=確定」って結びつけたら、送達に引っかからん。

横断で固める(送達 vs 確定の振り分け)

意匠法の中だけでも、この対比がきれいに出てる:

条文 起算日 理由
43条1項(登録料納付期限30日) 査定・審決の謄本の送達があった日 手続のスタート。出願はまだ生きてる
66条3項(9条2項拒絶の公報掲載) 拒絶査定・審決が確定した日 「もう拒絶で決まり」が前提
60条の22第2項(個別指定手数料返還) 取下げ/確定した日から6月 出願が死んだのが前提

振り分けルール:

  • まだ生きてる出願の手続のスタート合図 → 「送達があった日」
  • 「もう完全に終わった/死んだ」が前提の効果(返還・公報掲載) → 「確定した日」

ちなみに66条3項は過去問(H22-54)で「”確定した日”から計算することに注意。14条1項は”設定登録の日”」ってわざわざ注意喚起されてる論点や。意匠は「確定した日」起算が刺さりやすいって覚えとき。

ゴロというか合言葉

「金が返るんは、出願が”完全に成仏”したとき=確定。送達じゃまだ死んでへん(まだ争える)」

枝2見たら反射で「送達ちゃう、確定や」でアウト判定できる。これだけや。

 

謄本送達の日が起算日になる条文との区別の仕方

「送達起算」は腐るほどある。むしろ知財法の手続期間の”デフォルト”が送達起算やから、確定起算のほうが少数派で目立つ=狙われるわけや。

送達起算の代表(これが餌)

条文 内容 起算日 期間
特108条1項 特許料(1〜3年分)納付 査定・審決の謄本の送達があった日 30日
意43条1項 登録料(1年分)納付 査定・審決の謄本の送達があった日 30日
商41条1項 登録料納付 査定・審決の謄本の送達があった日 30日
商65条の8 防護標章の登録料 査定・審決の謄本の送達があった日 30日
意46条1項 拒絶査定不服審判の請求 査定の謄本の送達があった日 3月
意47条1項 補正却下決定不服審判 決定の謄本の送達があった日 3月

…と、料金納付系と不服審判系はほぼ全部「送達起算」。

振り分けロジック(ここが核心)

送達起算 確定起算
性質 まだ生きてる出願人に「早う動け」と促す もう終わった/死んだ」が大前提の後始末
代表 料金納付・拒絶査定不服審判 個別指定手数料返還(60条の22②)・秘密意匠の公報掲載(66条③)
なぜその起算日? 出願人が知った瞬間から動けるようにする。確定を待つ必要ない(むしろ待たせたくない) 確定せな「登録にならんこと」が決まらん決まる前に返金も公表もできひん
期間の長さの傾向 短い(30日・3月) 長め(6月)

「送達=GO(動け)」「確定=END(終わった後の処理)」

返還・公報掲載は”出願が成仏した後”の話やから確定。料金払えや不服審判は”まだ生きてる、早う動け”やから送達。

一番えげつない並び(同じ意匠法の中で)

ここがガチの罠ポイント

起算日 期間
意43条1項(登録料納付) 送達があった日 30日
意60条の22第2項(個別指定手数料返還) 確定した日 6月

両方「査定・審決」+「お金」やのに、起算日も期間も逆。さっきの肢2は、この43条のクセ(送達)を60条の22に貼り付けたすり替えやったわけ。

おまけで深掘りネタ:意匠法43条の青本見ると、昔(旧施行規則)は登録料も「確定した日」起算やったのを、今は「送達があった日」に変えた経緯がある。せやから「査定・審決+送達or確定」は立法者自身が一回いじってるくらいデリケートな論点。出題者が好きなのも納得やろ。

合言葉

餌(送達起算)はそこら中にある。せやから返還・公報の2つだけ「確定」と握っとけば、残りは全部「送達でええ」で逃げ切れる。

確定で覚えるのは”返金”と”公報掲載”の2つだけ」——これが一番ラクな覚え方や。

特許法第94条 通常実施権の移転等:先使用権の移転の要件は?

関連する問題:令和8年度意匠問題5枝(ホ)

【意匠】5意匠法における実施権に関し、次のうち、正しいものは、いくつあるか。

(ホ) 甲は、意匠イの意匠権者である。乙は、意匠イと類似する意匠ロに係る乙物品の製造 販売について、先使用による通常実施権を有する。丙は、乙から乙物品の実施に係る事 業を譲り受けた。甲からの承諾がない場合、当該先使用による通常実施権は、丙に移転 することができない。

解答:本枝は誤り。承諾がなくとも移転できる。

根拠条文:意匠法第34条第1項

意匠法

(通常実施権の移転等)
第三十四条 通常実施権は、前条第三項若しくは第四項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

2 通常実施権者は、前条第三項若しくは第四項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権を除き、意匠権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、意匠権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。

3 前条第三項、特許法第九十二条第三項又は実用新案法第二十二条第三項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該意匠権、特許権又は実用新案権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その意匠権、特許権又は実用新案権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。

4 前条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該意匠権、特許権又は実用新案権に従つて移転し、その意匠権、特許権又は実用新案権が消滅したときは消滅する。

 

意匠法34条第1項の条文の読み取り

通常実施権は、

  • ~の裁定による通常実施権を除き、
  1. 実施の事業とともにする場合、
  2. 意匠権者の承諾を得た場合
  3. 及び相続その他の一般承継の場合 に限り、

移転することができる。

先使用は一般承継に含まれますので、上記の要件に該当します。条文の語法として「Aその他のB」は、「Aを含むB」の意味で、AはBの例示です。集合の包含関係でしめせば、「A ⊂ B」。つまり相続は、一般承継の一例です。

一般承継とは、権利や義務の一切を引き継ぐこと。一般承継に対する言葉は、特定承継で、特定の財産だけを引き継ぐこと。

上の条文では、除外される場合を除けば、「事業とともに の場合」、「承諾を得た場合」、「一般承継の場合」に限り移転できると言っています。一般承継の場合であれば、承諾を得ている必要はないということになります。

 

意匠法34条は特許法94条と同じ構造なので、特許法94条を勉強しておいて、意匠法も特許法と同じ と覚えておけば事足ります。

問題の分析:

特許法 先使用権  94条との関係?先使用権は、一般承継の場合に該当する?

結論からいくで。

Q: 先使用権は一般承継の場合に該当する? → ○(該当する)

79条の先使用権(先使用による通常実施権)も、移転は94条1項に従う。で、94条1項の移転OKパターンは3つや:

移転パターン 先使用権
① 実施の事業とともにする場合
② 特許権者の承諾を得た場合
③ 相続その他の一般承継の場合

だから一般承継(相続・合併・会社分割なんか)の場合は、特許権者の承諾なしで当然に移転する。これは普通の許諾通常実施権と一緒の扱いやね。

94条との関係を整理すると:

先使用権は79条で発生する「法定通常実施権」やけど、いったん発生した後の移転ルールは94条1項がそのまま当てはまる。79条が「移転」について特別に規定しとるわけちゃうから、94条1項が効いてくる、っちゅう構造や。

⚠ここがド頻出のトラップ

「先使用権は事業の保護のための権利やから、実施の事業とともにする場合に限り移転できる」── これ、×やで。過去問にもまさにこの肢があった:

(ニ) 先使用による通常実施権は…実施の事業とともにする場合に限り移転することができる。 → (×)

「事業とともにする場合のみ」に限定されるのは、94条3項の裁定通常実施権(83条2項=不実施裁定、93条2項=公益裁定)の話。ここを先使用権にスライドさせてくるのが定番の引っかけや。

📝記憶のコツ

  • 法定実施権(先使用権・79条の2・80条・82条 etc.)→ 94条1項の「事業とともに/承諾/一般承継」フルセット
  • 公益系の裁定(83Ⅱ・93Ⅱ)→ 94条3項「事業とともにのみ」

公益のためにムリヤリ与えた裁定は、勝手に承諾移転や承継移転させへん(事業とともにだけ)」って立法趣旨で押さえとくと、94条1項と3項を取り違えへんで。

ちなみに条文上、94条1項柱書は「83条2項・92条3項4項・93条2項…の裁定による通常実施権を除き」って書き方やから、裁定実施権を除いた残り全部(=先使用権含む法定実施権&許諾実施権)が1項のルールに乗る、っていう読み方もできる。除外リストに何が載ってないかで判断するパターンの典型やな。

(Claude Opus 4.8)

意匠法 第29条の2 令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題【意匠】5選択肢(ニ)

令和8年度弁理士試験短答式筆記試験問題【意匠】5

意匠法における実施権に関し、次のうち、正しいものは、いくつあるか

(ニ) 甲は、意匠イの意匠権者である。乙が、その意匠権について、先使用による通常実施
権及び先出願による通常実施権の要件をいずれも満たす意匠の実施である事業をしてい
る場合、乙は、先出願による通常実施権のみを主張することができる。

 


関連する条文

意匠法

(先使用による通常実施権)
第二十九条 意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、又は意匠登録出願に係る意匠を知らないでその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をした者から知得して、意匠登録出願の際(第九条の二の規定により、又は第十七条の三第一項(第五十条第一項(第五十七条第一項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により、その意匠登録出願が手続補正書を提出した時にしたものとみなされたときは、もとの意匠登録出願の際又は手続補正書を提出した際)現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する。

(先出願による通常実施権)
第二十九条の二 意匠登録出願に係る意匠を知らないで自らその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をし、又は意匠登録出願に係る意匠を知らないでその意匠若しくはこれに類似する意匠の創作をした者から知得して、意匠権の設定の登録の際現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者(前条に該当する者を除く。)は、次の各号のいずれにも該当する場合に限り、その実施又は準備をしている意匠及び事業の目的の範囲内において、その意匠登録出願に係る意匠権について通常実施権を有する。
一 その意匠登録出願の日前に、自らその意匠又はこれに類似する意匠について意匠登録出願をし、当該意匠登録出願に係る意匠の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者であること。
二 前号の自らした意匠登録出願について、その意匠登録出願に係る意匠が第三条第一項各号の一に該当し、拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定した者であること。

ーーーーーーーーーーーーー

問題の解答と解説:

本枝は誤り。正しくは、先使用による通常実施権のみを主張することができる。根拠は意匠法29条の2かっこ書き

 

先使用による通常実施権が優先される立法の趣旨:

「どっちでもええやん」って思うのはめっちゃ自然な感覚やけど、ここはちゃんと設計思想があるんよ。結論から言うと、意匠法29条の2は「29条で救えへん人を拾うための補充規定」やから、両方満たすときは本体の29条に流す、という構造になってる。

まず時期のズレを押さえる

ここが全部の起点。実施(事業)をしてる時期の基準点が違うんよ。

先使用(29条) 先出願(29条の2)
事業をしてる時期 出願の際 設定登録の際(29条より遅い/長い)
追加要件 なし ①出願日前に自分も出願して事業 ②その自分の出願が3条1項で拒絶確定

29条は「甲が出願した時点でもう事業しとった人」=一番早い・一番強い立場の人を守る。 29条の2は「甲の出願時点ではまだ事業に至ってへんかったけど、自分も先に出願してて、それが新規性なしで蹴られた」っていう、29条では拾えへん一段弱い立場の人を救うための規定。だから「前条に該当する者を除く」のかっこ書きが付く。これは嫌がらせのカッコ書きやのうて、「29条で救える人は29条で救うから、ここは29条の網から漏れた人専用ですよ」っていう線引きなんよ。

「どっちでもよくない?」への答え

効果(範囲)はほぼ同じ条文やから、乙が通常実施権をもらえるって結果だけ見たら「どっちでもええ」って感覚は半分正しい。でも法律としては29条に寄せる合理的な理由が3つある。

① 立証負担が全然ちゃう 29条の2を使おうとしたら、乙は「自分も先に出願した」「それが3条1項で拒絶確定した」を立証せなあかん。29条はそんなもん一切いらん。両方の要件を満たしてる(=29条の楽なルートが使える)人を、わざわざ重い29条の2に押し込むのは、乙にとって損なだけで意味がない。軽くて確実な権利の方をあげるのが筋。

② 権利の根拠は1本でええ(二重取り防止) 同じ事業について乙がもらう通常実施権は1個だけ。せやのに根拠条文が2本ぶら下がってると、どっちの要件・どっちの判例が効くんやっていう法律関係がぐちゃぐちゃになる。かっこ書きで重複を切って、根拠を1本に確定させてる。

③ 趣旨の格(かく)が違う 先使用権は「他人が出願する前から善意で事業を築いてた人を守る」=公平の理念ど真ん中の、いわば本道。先出願権は、そこから漏れた特殊なケースの救済=脇道。強い立場の人を脇道の救済規定に追いやる理由がない。だから本道の29条に乗せる。

出題ポイント

この枝の罠は方向を逆にしてくることやから、「29が本体・29の2が補充」って格を体に入れとけば、どっちが主張できるかで絶対に迷わへん。「補充規定やから、本体で救える人は本体で救う→だから29条のみ」って一本の理屈で処理できる。

⇔ ちなみに特許法にはこの「先出願による通常実施権(29条の2)」に相当する条文はない。意匠特有や(意匠は出願公開制度がない等の事情がからむ)。横断で「特・実・意・商」並べるとき、ここは意匠だけポコっと出っ張るとこなんで、語呂やのうて「意匠だけ」で覚えとくとええよ。

 

素朴な疑問:意匠法29条の2の1号で、先の出願していたということは、その後、拒絶査定されたとはいえ、そもそも先願の地位が残るのではないの?だから、後の出願は単に拒絶されないとおかしくない?

鋭いとこ突いてくるね。でもそこがまさに勘違いポイントで、先願の地位は残らへんのよ。むしろ「残らへん」ことが29条の2が成り立つ大前提になってる。

9条3項を見る

先願の地位がいつ消えるか、を決めてるのが9条3項やね。

意匠登録出願が放棄・取下げ・却下されたとき、又は拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、9条1項・2項の適用については初めからなかったものとみなす。ただし、9条2項後段(同日出願の協議不調)に該当して拒絶確定したときは、この限りでない。

つまり、

  • 拒絶査定が確定したら → 先願の地位は遡って消える(初めからなかった扱い)
  • 例外的に地位が残るのは9条2項後段(同日出願の協議不調)のときだけ

29条の2の1号・2号の乙は、自分の出願が3条1項(新規性なし)で拒絶確定してる人やんか。3条1項は「9条2項後段」やないから、ただし書には乗らへん。本文が素直に適用されて、乙の先願は初めからなかった扱い → 先願の地位なし

だから後の甲の出願は、乙の出願を理由に9条1項では拒絶されへん。

「だから後の出願は拒絶されへんとおかしい」の答え

逆なんよ。乙の出願が地位を失うからこそ、甲が登録を取れる。そして甲が意匠権を取れるからこそ、善意で事業しとった乙を救うために29条の2の通常実施権が要る。

もし君の言うとおり乙の先願の地位が残って甲を蹴落とすんやったら、そもそも甲に意匠権が発生せえへん。甲に意匠権がなかったら、乙が通常実施権を主張する相手もおらん。29条の2は丸ごと無意味な条文になってまう。「地位が残らへん」が大前提やと分かると、条文の存在理由がスッと通る。

ほな、なんで乙は落ちて甲は生き残るん?

ここが具体的なイメージ湧きにくいとこやと思うけど、典型はこの流れ:

  1. 甲が意匠を公開する(展示・発表など)→ 公知になる
  2. 乙が独立創作してて、甲の公開に出願 → 甲の公開で公知になってるから3条1項で拒絶(乙の公開やないから4条の例外は使えへん)
  3. 甲が猶予期間内に、4条(新規性喪失の例外)を主張して出願 → 自分の公開はチャラにできるから新規性クリアで登録

結果、出願の前後だけ見たら乙が先。でも中身は「乙=3条1項で死亡(地位なし)」「甲=4条で生還(登録)」。早く出した乙が報われへんのは酷やから、事業の範囲で通常実施権だけ与えとこ、というのが29条の2の救済趣旨。

出題ポイント

9条3項は本文とただし書をワンセットで

  • 拒絶査定確定 → 原則、先願の地位を失う(本文)
  • 例外は9条2項後段(同日協議不調)のときだけ地位が残る(ただし書)

過去問でも〔H23-22-3〕(拒絶査定確定→他人の後願は登録され得る=地位なし)と、〔H29-意6-1〕(同日協議不調だけ地位が残る)で、まさにこの本文/ただし書の振り分けを問うてくる。「3条1項拒絶は地位を失う」って即答できれば、29条の2の前提もブレへんよ。

 

特許法の場合は?乙が先願、甲が後願として、単純に特許法39条で甲の出願は乙の出願のために拒絶されない?

いいとこ繋げてきたね。特許で考えると、まさに君の言うとおり39条のレベルでは甲は拒絶されへん。でもそこに特許特有の落とし穴があって、それが「特許には先出願通常実施権が要らん理由」に直結する。順番に行こ。

① 39条のレベル:君の言うとおり

特許法39条5項は、意匠9条3項とまったく同じ構造やねん。

特許出願…が放棄・取下げ・却下されたとき、又は拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、39条1〜4項の適用については初めからなかったものとみなす。ただし、2項後段・4項後段(=協議不調)に該当して拒絶確定したときは、この限りでない。

せやから乙の先願が拒絶確定(協議不調以外)したら、乙は先願の地位を失う → 甲は39条では拒絶されへん。ここは意匠と完全に同じ。君の直感は正しい。

② でも特許には「もう一段」ある:29条の2(拡大先願)

ここが意匠と決定的に違うとこ。特許には出願公開制度があるから、乙の先願が公開されてたら、別ルートで甲を撃ち落とせる。

39条 29条の2(拡大先願)
先願が拒絶・取下げ・放棄された後 後願を排除できない(地位を失う) 後願を排除できる(公開さえされてれば地位は残る)
キモ 出願の存在 出願内容の公開

つまり乙の先願が出願公開されてたら、その後に乙が拒絶・取下げになっても、甲は29条の2で拒絶される。さらに、乙の内容が甲の出願前に公知になってたら、もっと手前で**29条1項(新規性)**でアウト。

なので特許の世界では、

  • 乙の出願が公開された → 甲はそもそも特許を取れへん(29条/29条の2で拒絶) → 甲に特許権が発生せえへんから、乙が誰かに対抗する必要もない
  • 乙の出願が公開されへんかった(公開前に取下げ等) → 甲を妨げへんけど、その場合は乙の発明も世に出てへんから、甲とぶつかる場面では**79条(先使用権)**で処理できる

どっちに転んでも、「甲に権利が立つのに乙が無防備」っていう隙間が生まれにくい

③ だから特許には「先出願通常実施権」が要らない

意匠29条の2(先出願通常実施権)が必要やったのは、意匠には出願公開がないからなんよ。具体的には:

  • 意匠は登録まで内容が秘密 → 乙も甲も互いを知らんまま走る
  • 甲の出願から設定登録までの「空白期間」に、乙が善意で事業を拡大することがある
  • 先使用権(29条)は甲の出願の際の事業しか守らん → この空白期間がカバーできへん
  • そこで設定登録の際まで延ばして救うのが意匠29条の2

特許は出願公開(+補償金請求権)があるおかげで、この「お互い知らんまま設定登録まで空白が続く」状況が起きにくい。だから先使用権(79条)を出願の際で止めても困らへんし、先出願通常実施権みたいな延長救済が不要、という設計になってる。

出題ポイント

「拒絶確定で地位を失う」は39条と意匠9条3項の話。29条の2(拡大先願)は別物。

  • 39条/意匠9条3項 → 拒絶確定で地位を失う(協議不調だけ例外)
  • 29条の2(拡大先願) → 公開さえされてれば、拒絶・取下げ・放棄されても地位が残る

過去問でも〔2023-特実17〕や39条との比較表で、まさに「取下げ等の扱いが39条と29条の2で逆」っていうのを問うてくる。ここで「拒絶されたから地位ない」と短絡すると29条の2を落とすから、“公開されたか否か”でスイッチを切り替える癖をつけとくとええよ。

⇔ そして横断の核は「意匠だけ出願公開がない → 意匠だけ先出願通常実施権(29条の2意)が要る」。特・実・意・商で並べたとき、ここは意匠が単独で出っ張るポイント。

(Claude Opus 4.8)