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特178条1項 の条文でOR(又は、若しくは)AND(及び、並びに)のルールをマスター!

(審決等に対する訴え)
第百七十八条 取消決定又は審決に対する訴え及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定に対する訴えは、東京高等裁判所の専属管轄とする。

法律の条文を読むのが最初難しく感じられる理由は、日常的な日本語の文章とは異なるルールがいくつかあるせいだと思います。日常だと、「**と**」のように、ANDで結ばれる2つのものの長さは同じ程度が望ましいとされます。しかし法律の条文だと、「**と*******************************」みたいな著しく長さがことなる2つのものが並列の関係に結ばれていることがしょっちゅうです。つまり繋がれる者同士の長さは全く読解の際に当てにならないのです。

ORについて

あとは、OR(又は、若しくは)AND(及び、並びに)の階層構造に応じた使い分けのルールを知る必要があります。ORを意味する場合、階層構造がなければ、「又は」を使います。

例 A又はB

AやBの中にさらにORを入れ込みたいときには、「若しくは」を使います。つまり、「若しくは」のほうが、文章の中では局所的なつながりを示しています。

例 A若しくはB又はC

例 A又はB若しくはC

読む際の手掛かり:「若しくは」が出てきたら、その後にはかならず「又は」が登場する。なぜなら、「若しくは」は、「又は」を使ったあとでさらに下の階層でORを使いたいときに使うものだから。

ルール:一番上の階層には「又は」を使い、さらに細かい下の階層でORを使いたい場合には「若しくは」を使う。

ルール(上のルールの例外):A, B若しくはC とように3つ以上を列挙するときは、一番上の(=唯一の)階層であっても、「若しくは」使う。

ANDについて

ルール:一番下の階層のみの場合は「及び」を使い、一つ上の階層でANDを使いたいときは、「並びに」を使う。

上の階層下の階層ということに関して、ORとANDでは、どちらの言葉(及び 並びに 若しくは 又は)を優先するかが逆になっているのがミソです。

例 A及びB

例 A及びB並びにC

括弧を用いてまとまりを示すなら、(A及びB)並びにC です。

読む際の手掛かり:「及び」が出てきていないのに「並びに」が出てきたら、その後「及び」が出てくる。

特許法178条の読解

(取消決定 又は 審決)に対する訴え

及び

(① 特許異議申立書、②( 審判若しくは再審)の請求書 又は ③(第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項)の訂正の請求書)の却下の決定 に対する訴え

は、東京高等裁判所の専属管轄とする。

 

上の説明はGeminiに説明してもらったものを自分なりに書き直したものです。Geminiの説明は以下のようなものでした。


1. 【OR(または)系列】の読み方ルール

「上から下へ(大きい方から)」

「A 又は B 若しくは C」 → A or (B or C)

「若しくは」が出たら、必ず親分の「又は」がいるはず。

解説:

    • 「又は」は**レベル1(最大)**です。

    • 「若しくは」は**レベル2以下(子分)**です。

    • 子分(若しくは)がいきなり単独で仕切ることはありません。必ず親分(又は)の支配下にあります。

読み進めるコツ: 「又は」を見つけたら「あ、ここで話が大きく分かれるな」と思い、「若しくは」を見つけたら「あ、さっきの選択肢の中での細かい話だな」とズームインします。


2. 【AND(および)系列】の読み方ルール

「下から上へ(小さい方から)」

「並びに」が出てきたら、その後に(またはその構成要素として)「及び」が必ず出てくる。

解説:

    • 「及び」は**レベル1(最小単位・接着剤)**です。

    • 「並びに」は**レベル2以上(包装紙)**です。

    • 「並びに」は、バラバラのものを包むのではなく、「すでに『及び』で接着されたセット」を包むために存在します。

    • だから、「並びに」があるのに、中身に「及び」が一つもない(単語A 並びに 単語B)ということはあり得ません。(それは「A 及び B」と書くべきだからです)。


3. 唯一の「例外」的なケース(ここだけ注意!)

「若しくは」の読み方で、一つだけレアケース(リスト形式)があります。

例: 「A、B、C 若しくは D」

(意味:A or B or C or D)

このように、3つ以上のものを並列に列挙する場合、最後のつなぎ目だけに接続詞を使います。

このとき、法律のルールでは、単なる並列の列挙には(一番大きな区切りがない限り)「若しくは」を使うことになっています。

  • この場合の読み方:「又は」が出てこないのに「若しくは」が出ている!とおかしいと思うかもしれませんが、これは**「A, B, C, D 全員がフラットな関係(小粒な並列)」**である合図です。

最終まとめ:条文読解の「センサー」

読み方マニュアル

  1. 「又は」を見たら👉 「よし、ここで一番大きな分岐だ! 左の道か、右の道か。」
  2. 「若しくは」を見たら👉 「おっと、これは枝道だ。さっきのグループの中での細かい選択肢だな。」
  3. 「及び」を見たら👉 「これはセット商品だ。AとBは離れないぞ。」
  4. 「並びに」を見たら👉 「でっかい風呂敷が来たぞ! これまでに出てきた**『及びセット』たちをまとめて縛りにきたな**。」

この感覚で条文を眺めれば、どんなに長く複雑な特許法の条文も、構造図が浮かび上がってきます。

弁理士試験における専門科目試験の免除制度:学位論文概要証明書をどうする?

博士号取得者の場合、専門試験を免除してもらうために必要な書類は以下のようになっています。

https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/ronbun-menjo-gakui.html

提出書類 学位
博士 修士 専門職
1. 選択科目免除資格認定申請書
見本(PDF:651KB)様式(ワード:35KB)
2. 学位取得証明書
又は大学院修了(見込)証明書
3.大学院成績証明書 不要
4. 指導教授又はこれに準ずる者の証明のある学位論文概要証明書(※)
見本(PDF:79KB)様式(ワード:29KB)
5. 修了要件証明書
見本(PDF:101KB)様式(ワード:17KB)
不要 不要

ここでギョッとするのが、「指導教授又はこれに準ずる者の証明のある学位論文概要証明書」という書類です。卒業して何十年も経っているのに、今さらそれは無理でしょ!?と思ってしまいました。概要の長さに関しては、「研究の概要は 1,000 字程度でどのような研究・分析等をして、どの
ような結果が得られたのか分かるようにまとめてください。」(https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/document/ronbun-menjo-gakui/04_sample.pdf)とあります。

※印の説明をみると、

※ 学位論文概要証明書は、学位論文全文とその論文が学位論文であることを確認できる情報の提示で省略することができます。

と書いていました。学位論文全文に代えられるようです。こんな記載も見つけました。

要望(縦割110番) 令和3年9月3日 内閣府 規制改革・行政改革担当大臣直轄チーム 弁理士試験の負担軽減について 修士・博士の学位を有する者は、弁理士試験の論文選択科目の免除申請の際「学位論文概要証明書」の提出が必要だが、同時に提出が必要となる「学位取得証明書」の下位互換のような書類で あるにも関わらず、取得に労力を要し提出意義が極めて低い。よって、撤廃してほしい。 特許庁の対応 令和3年10月以降、個々の免除申請者が便利な手段を選択できるよう、概要証明書又は学位論文全文の写しのいずれか1つ提出すればよいように運用変更。令和3年9月8日に特許庁ウェブサイトで公表。

弁理士試験の負担軽減について https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/direct/210903direct67_01.pdf

しかし博士論文は自分は手元にありませんしウェブ上でも公開されていません。全文複写もまだ敷居が高いです。さらにグーグル検索したりしてウェブをいろいろ見ていたら、こんな記述も見つかりました。

弁理士試験の免除関係に関するQ&A https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-qanda-menjo.html 3-16 学位論文概要証明書の提出を省略することはできますか。 学位論文データベース等大学のウェブサイトにより、学位論文の全文、学位論文の要旨、論文が学位論文である旨が確認できる場合は、選択科目免除資格認定申請書に当該URL(アクセス可能で内容が確認できるものに限る。)を記載することにより学位論文概要証明書の提出を省略することができます。 なお、ウェブサイトで論文の全文の確認ができない場合であっても、学位論文の要旨、論文が学位論文である旨が確認できる場合は、同様に学位論文概要証明書の提出を省略することができますが、審査において論文全文の確認が必要となる場合は、別途ご提出をお願いすることがあります。

え、省略できるの?FAQへのリンクが直接は貼っていなかったようで、グーグル検索で見つけましたが。これなら、誰にも迷惑をかけずに書類が揃えられそうです。

さて、この免除申請は、弁理士試験の受験の「前」に済ませておく必要があります。これも知らなかったらアウトの落とし穴でしょう。なんと、免除申請は通年で受け付けているようです。

受付期間 通年受け付けています。ただし、弁理士試験を受験する年の免除認定の申請期限は、同年の試験公告で指定する日(例年2月末日)までです。これを過ぎると、免除認定の審査が受験願書提出の期間に間に合わず、翌年の試験から免除となる場合がありますのでご注意ください。

万が一、博士論文を全文提出してと言われても困るので、早めに申請しておくのが無難でしょう。

 

参考

  1. 修士・博士等の学位に基づく論文式筆記試験(選択科目)の免除について https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/ronbun-menjo-gakui.html 修士、博士又は専門職の学位を有する方で、選択科目の免除を希望する方は、受験願書提出時に、工業所有権審議会が発行する免除資格認定通知書を併せてご提出いただく必要があります。免除資格の認定を受けるためには、事前に、免除認定申請書などの必要書類を工業所有権審議会にご提出いただきます。

特113 異議理由 と 特123 無効理由 の違い

Gemini:知財の学習において、「異議理由」と「無効理由」の違いを理解することは、非常に重要です。なぜそれが大事なのか、そしてその判断基準について、初心者の方にも分かりやすいように解説しますね。


💡「異議理由」と「無効理由」が大事な理由

特許における「異議申立て」と「無効審判」は、特許権を遡及的に(最初から)無かったことにするための手続きです。どちらも、特許庁が誤って特許を与えてしまった場合に、その特許を無効にするという共通の目的を持ちますが、手続きの性質と目的が異なります。この違いが、「異議理由になるか、無効理由になるか」の判断を重要にしているのです。

項目 特許異議申立て (特許法 第113条~) 特許無効審判 (特許法 第123条~)
目的 公益的な観点から、特許庁の審査の誤りを早期に是正し、特許の信頼性を高めること。 当事者間の紛争解決を主な目的とし、特許権の効力を争うこと。
請求人 誰でも(特許権者以外) 利害関係人に限定(紛争の当事者など)
期間 特許掲載公報発行日から6ヶ月以内 いつでも(特許権消滅後も可)
理由 公益性の高い実体的な瑕疵(新規性・進歩性の欠如など) すべての無効事由(異議理由 + 権利帰属に関する瑕疵など)

このように、利用できる人、期間、そして理由の範囲が違うため、「どの手続きで無効を主張できるのか」を正しく判断する必要があるのです。

🔍 「異議理由になるか」「無効理由になるか」の判断基準

  • 異議理由公益的な観点から重要とされる、実体的な瑕疵(新規性・進歩性の欠如など)の一部に限られます。(特許法 第113条, 第114条)

  • 無効理由特許権が有すべきすべての瑕疵(上記の実体的な瑕疵すべてに加え、権利帰属に関する瑕疵など)をカバーします。(特許法 第123条)

異議理由の範囲は、無効理由の範囲よりも狭いという関係にあります。「権利の帰属に関する瑕疵」(誰が特許権を持つべきかという問題)がポイントになります。

1. 実体的な瑕疵(異議理由 = 無効理由)

これは、発明の内容自体に問題がある場合です。公益的な観点からも重大であるため、異議申立てでも無効審判でも主張できます。

  • :発明が新規性(新しいこと)や進歩性(容易に思いつけないこと)を欠いていた場合。

    • 該当条文(無効審判の規定を準用):特許法 第113条(第123条第1項第1号、第2号)

  • 考え方:特許権が付与されるべきでない発明に特許を与えたことは、社会全体にとって不利益です。

2. 権利の帰属に関する瑕疵(無効理由のみ)

これは、発明の内容には問題ないが、「特許出願をした人が、本当に特許権を持つべき人か」という点に問題がある場合です。当事者間の紛争解決に主眼が置かれるため、無効審判しか主張できません。

  • 冒認出願(真の発明者でない人が特許出願をして特許を受けた場合)。

    • 該当条文:特許法 第123条第1項第6号

  • 考え方:誰が真の権利者かという問題は、当事者(真の発明者と特許権者)の間の問題であり、特許庁が早期是正を目指す異議申立ての目的(公益性)にはそぐわないとされます。

📝 具体的な例で解説

あなたが特許権者「A社」のライバルである「B社」だと仮定します。

例1:実体的な瑕疵(異議理由 $\cap$ 無効理由)

  • A社の特許:「水に溶けるスマートフォンカバー」という特許を取得しました。

  • B社の発見:A社が出願するに、同じ技術が海外の学会で発表されていたことを発見しました(新規性の欠如)。

この場合、「水に溶けるスマホカバー」は新規性がないという実体的な瑕疵があるため、A社の特許は無効にされるべきです。

  • B社の行動

    1. 特許掲載公報発行日から6ヶ月以内であれば、誰でも特許異議申立てができます。

    2. 6ヶ月経過後でも、利害関係人であれば、特許無効審判を請求できます。

例2:権利の帰属に関する瑕疵(無効理由のみ)

  • A社の特許:「超高速充電器」の特許を取得しました。

  • B社の状況:B社の元社員Cさんが、B社の開発した発明を盗み、A社名義で勝手に出願して特許を取得しました(冒認出願)。発明自体は新規性・進歩性があります。

この場合、特許を受ける権利はB社にあるのに、A社が特許権者となっています。これは権利の帰属に関する瑕疵です。

  • B社の行動

    1. 特許異議申立てできません(冒認出願は異議理由ではない)。

    2. 特許無効審判利害関係人(真の権利者であるB社)として、無効審判を請求することになります。

この具体例で、どの手続きでどんな理由を主張できるのかが、より鮮明になったかと思います。

結論とまとめ

  • 異議理由公益的な観点から特許庁の誤りを早期是正するために、誰でも使える狭い範囲の理由(主に実体的な瑕疵)です。

    • 特許法 第113条

  • 無効理由紛争解決のために、利害関係人いつでも使える広い範囲の理由(すべての瑕疵)です。

    • 特許法 第123条

この制度の趣旨(目的)の違いが、使える理由の範囲の違いに結びついていると理解すれば、記憶に残りやすいでしょう。この解説で理解が深まったでしょうか?特許法 第113条と第123条の条文をもう一度確認してみると、さらに理解が定着すると思います。

特70条1項 全要件充足の原則

請求範囲、充足といったキーワードは、特許権の侵害が成立するかどうかを判断する際の、最も基本的かつ重要な原則を指す言葉です。特許権侵害訴訟では、ある製品や方法(イ号製品イ号方法と呼びます)が、他社の特許権の及ぶ範囲内にあるかどうかを判断する必要があります。


🔑 請求範囲 充足とは?

「請求範囲 充足」とは、侵害が疑われる製品や方法(イ号製品)が、特許権者の「特許請求の範囲」に記載された発明のすべての要件を満たしている状態を意味します。これが満たされたとき、その製品は特許発明の技術的範囲に属すると判断され、原則として特許侵害が成立します。

1. 「請求範囲」とは?

特許法において、特許権の範囲(どこまでが特許で守られているか)を定める最も重要な文書が「特許請求の範囲」(クレーム)です。この中には、発明を構成する要素(構成要件)が記載されています。

2. 「充足」とは?

特許請求の範囲に記載された発明の構成要件A, B, Cに対し、侵害が疑われる製品が**A’, B’, C’**という構成をすべて備えている状態を「充足(じゅうそく)」と言います。


💡 全要件充足の原則(オール・エレメント・ルール)

この「請求範囲 充足」の判断は、「全要件充足の原則」に基づいて行われます。この原則は、特許請求の範囲に記載されたすべての構成要件を、侵害品がすべて満たさなければ侵害は成立しない、という厳しいルールです。

具体的な判断の流れ

ステップ 内容 侵害の判断
① 要件分解 特許請求の範囲を、構成要素(要件A、要件B、要件C…)に分解する。
② 比較 侵害が疑われる製品(イ号製品)の構成を、各構成要件と比較する。
③ 充足確認 イ号製品が、すべての構成要件A, B, C…を完全に備えているかを確認する。 すべて充足 ➡️ 侵害成立(文言侵害)
④ 不充足の場合 イ号製品が、一つでも要件を欠いている場合(例:A、Bは備えているが、Cがない)。 一つでも不充足 ➡️ 侵害不成立

例外:均等論

全要件充足の原則が満たされない場合でも、侵害品が特許発明と実質的に同じであると認められる場合は、均等論という例外的なルールによって特許侵害が成立することがあります。

しかし、まずはこの「請求範囲 充足」(全要件充足の原則)を満たしているかどうか、つまり文言通りの侵害があるかどうかが最優先で判断されます。

特70条1項 特許請求の範囲 切餅の上面の切り込みの解釈【明細書の役割】

(特許発明の技術的範囲)
第七十条 特許発明の技術的範囲は、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。

特許法 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_4-Se_1-At_70

 

【請求項1】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の載置底面ではなく上側表面部に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする餅。
【請求項2】
角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の平坦頂面や載置底面ではなく上側表面部の側周表面に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。

【発明の詳細な説明】

【0007】
一方、米菓では餅表面に数条の切り込み(スジ溝)を入れ、膨化による噴き出しを制御しているが、同じ考えの下切餅や丸餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れると、この切り込みのため膨化部位が特定されると共に、切り込みが長さを有するため噴き出し力も弱くなり焼き網へ落ちて付着する程の突発噴き出しを抑制することはできるけれども、焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれる。

特開2004-147598 【出願人】【識別番号】593201958【氏名又は名称】越後製菓株式会社  https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

質問:越後製菓の特許の明細書 【0007】からすると、「上面ではなく」と解釈すべきだと思うんだけど。地裁ではそう判断して、高裁ではそれがひっくり返ったんだけど。高裁の解釈は、側面であることを述べるために「上面ではなく」と書いたにすぎない、なぜなら「読点」が使われていないからという理由だったんだけどさ、たしかに、その1文だけから判断したらそうだけど、別の場所ではっきりと、上面に切り込みを入れると醜くなるって書いてたわけだよね、なぜそれが問題にならなかったの?

Gemini:ご特許明細書の記述【0007】と、それに関する裁判所の判断について解説します。特に、なぜ「上面ではなく」という解釈が地裁と高裁で分かれ、高裁では他の記述が問題にならなかったのかという点に焦点を当てます。


🧐 【0007】の記述と解釈の対立

特許明細書【0007】の記述は、以下の通りです。(便宜上、区切りを明確にします。)

一方、米菓では餅表面に数条の切り込み(スジ溝)を入れ、膨化による噴き出しを制御しているが、(A)同じ考えの下切餅や丸餅の表面に数条の切り込みや交差させた切り込みを入れると、(B)この切り込みのため膨化部位が特定されると共に、切り込みが長さを有するため噴き出し力も弱くなり焼き網へ落ちて付着する程の突発噴き出しを抑制することはできるけれども、(C)焼き上がった後その切り込み部位が人肌での傷跡のような焼き上がりとなり、実に忌避すべき状態となってしまい、生のつき立て餅をパックした切餅や丸餅への実用化はためらわれる。

1. 地裁の解釈:上面に否定的な記述

地裁(知的財産高等裁判所・大合議判決以前の東京地裁)は、この文章を読んで、以下のように解釈しました。

  • (A)でいう「切餅や丸餅の表面」とは「上面」を指す。

  • (C)の記述は、上面に切り込みを入れると「傷跡のような焼き上がり」になり、実用化はためらわれるという、従来の技術(上面への切り込み)に対する否定的な評価を述べている。

  • したがって、この明細書は、切り込みを上面に入れる技術を避けていることを示している。

2. 知財高裁の解釈:否定的な記述ではない(対比)

その後、知財高裁(大合議判決)は、地裁の判断を覆しました。高裁の解釈は以下の通りです。

  • 読点」(、)の欠如:高裁は、文脈を判断する際に、文章の句読点にも着目しました。もしこれが「上面への切り込み」を否定しているなら、(C)の前に強い区切り(読点など)があるはずだ、と。

  • 技術の対比:この文章は、従来の技術(表面の切り込み)にもメリット(突発噴き出しの抑制)はあるが、同時にデメリット(忌避すべき焼き上がり)もあるという「対比・紹介」をしているに過ぎない、と判断しました。

  • 「ためらわれる」の解釈:「実用化はためらわれる」という表現は、「特許発明(側面の切り込み)の優秀さ」を際立たせるために、従来の技術を過度に否定的に描写している(ディス・クローズ)にすぎず、発明者が本当に上面への切り込みを排除したわけではないと解釈しました。


🔑 なぜ「別の場所での明確な記述」が問題にならなかったのか?

ご指摘の通り、特許明細書全体を読めば、発明者が上面への切り込みの醜さを明確に述べている箇所があったとすれば、その解釈は変わるべきです。しかし、裁判で焦点となったのは、「特許の請求の範囲」の解釈です。

1. 請求の範囲と明細書の関係

特許権の範囲は、「特許請求の範囲」(特許法第70条第1項)の記載に基づいて定められます。明細書(【0007】の記述を含む)は、この請求の範囲を解釈するための補助資料として使われます。

2. 高裁の判断の核心

知財高裁は、明細書全体や【0007】の記述に「切り込みを上面に入れないこと」が、この発明の必須の構成要件である、とは書かれていないと判断しました。明細書は「発明の技術的範囲を明確にするための記載」であるという原則から見て、裁判所は、発明者が単に「上面の切り込みのデメリット」を説明しているに過ぎず、そのデメリットを解消するために側面に切り込みを入れることを付加的に提案している、と解釈しました。つまり、高裁は以下の論理を採用しました。

  1. 特許請求の範囲には、「上面に切り込みを設けない」という要件は明記されていない。

  2. 明細書の【0007】などの記載は、上面への切り込みを「醜いから絶対にやらない」という発明の限定(技術的範囲の除外)を意図しているとまでは言えない。

  3. もし、発明者が「上面への切り込みを排除する」ことを発明の重要な限定と考えるなら、それを特許請求の範囲に明確に記載するか、明細書内でより明確に限定しているはずである。

最終的に、高裁は越後製菓の特許の技術的範囲を広く解釈し、佐藤食品工業の製品(上面にも側面にも切り込みがある)も越後製菓の特許権の範囲内であると判断しました。これは、特許明細書という特殊な文書において、単なるデメリットの記載(ディス・クローズ)と、発明の技術的範囲を限定する記載とを区別した、高度な解釈の結果と言えます。

質問:仮に越後製菓が側面限定として特許を取ってしまっていたら、サトウの「側面+上面」特許は、越後製菓を侵害しないの?特許の一部になってることには変わりないんじゃないの?

Gemini:仮に越後製菓が「側面のみに切り込みがある切餅」という発明で特許を取得していた場合、佐藤食品工業の「側面と上面の両方に切り込みがある切餅」が越後製菓の特許を侵害するかどうかは、特許侵害の基本原則である全要件充足の原則に基づいて判断されます。結論から言うと、侵害しない可能性が非常に高いです。


1. 🔑 全要件充足の原則(Literally Infringement)

特許侵害が成立するための基本的な判断基準は、「特許請求の範囲に記載された発明のすべての構成要件を、侵害品がすべて備えていること」です。

越後製菓の仮想的な特許(側面限定)

越後製菓が取得した特許請求の範囲の構成要件を、仮に以下のように定めていたとします。

要件番号 越後製菓の特許請求の範囲(仮定)
A 切餅であること。
B 切餅の側周表面のみに切り込み(スリット)を有すること。
C (他の要件…)

佐藤食品工業の製品(侵害品)

佐藤食品工業の製品の構成は以下の通りです。

構成 佐藤食品工業の製品
A’ 切餅である。
B’ 切餅の側周表面に切り込み(スリット)を有する。
C’ 切餅の平坦上面にも切り込みを有する。

侵害判断

特許侵害が成立するためには、佐藤食品工業の製品が、越後製菓の特許要件Bを完全に満たす必要があります。

  • 要件 B: 「側周表面 のみ に切り込みを有する

  • 佐藤製品: 「側周表面に切り込みがあり、かつ上面にも切り込みがある」

この場合、佐藤製品は「上面にも切り込みがある」ため、越後製菓の特許が要求する「のみ」という限定要件を充足しません。つまり、特許要件 B を欠くと判断されます。

全要件充足の原則により、侵害は成立しないことになります。


2. 💡 なぜ「一部になっている」だけでは侵害にならないのか?

ご指摘の通り、佐藤製品は越後製菓の特許発明の一部(側面の切り込み)を含んでいます。しかし、特許法上の「侵害」は、「余分な構成の付加」によって簡単に回避されてしまうことがあります。

⭕ 侵害が回避される理由(付加・限定)

特許の請求の範囲に**「のみ」**という限定詞が入っていると、その要件を厳格に解釈します。

  • 側面のみ」という特許に対して、「側面+上面」という製品は、「上面」という**余分な構成(付加)**を有しているため、特許の範囲外(非侵害)となります。

特許権の範囲は、特許請求の範囲という法律上の文言によってカチッと定められるため、「特許発明の主要部分が含まれているから侵害だ」という感覚的な判断は適用されません。まさに、この事件の越後製菓の補正拒絶の論点は、この「のみ」という限定が、特許権の範囲を決定的に狭めてしまうことを示しています。


3. ⚖️ 結論

もし越後製菓が「側面のみ」という限定特許を取得できていたら、佐藤食品工業は「上面の切り込み」という余分な構成を付加することで、容易に特許侵害を回避し、合法的に市場で製品を販売できた可能性が高いと言えます。

質問:全要件充足の原則 って特許法の第何条に書いてある?

Gemini:「全要件充足の原則」(オール・エレメント・ルール)は、日本の特許法において明文で「この条文に全要件充足の原則が書いてある」と規定されているわけではありませんしかし、その根拠となるのは、特許権の技術的範囲を定める以下の条文です。


🔑 根拠条文:特許法 第70条第1項

全要件充足の原則の法的根拠は、特許法第70条第1項の規定と、それに基づく裁判所の解釈にあります。

特許法 第70条第1項

$$\text{特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。}$$

原則の導出

この条文は、「特許権の及ぶ範囲は、特許請求の範囲(クレーム)の記載に基づいて決まる」と定めています。

特許請求の範囲には、その発明を構成する要素(構成要件)が記載されています。

  1. 特許発明の技術的範囲を定めるためには、特許請求の範囲のすべての構成要件を抽出します。

  2. 侵害品(イ号製品)が、その抽出されたすべての構成要件一つ残らず(すべて)充足している場合に限り、特許発明の技術的範囲に属すると判断されます。

この解釈の積み重ねが、全要件充足の原則(構成要件を一つでも欠くと侵害は成立しない)として確立しているのです。


補足:均等論との関係

全要件充足の原則は文言侵害(文字通りの侵害)を判断する際の基本原則です。しかし、これだけでは特許権の保護が不十分になるため、この原則の例外として、構成要件の一部が異なっていても実質的に同じであれば侵害と認める均等論が、最高裁判所の判例(東京高裁大合議判決)によって確立されています。

特許が成立するまでの経過

質問:ブログ記事 https://www.ondatechno.com/jp/report/patent/hanrei/p2449/ によれば、越後製菓は、新規事項の追加の補正をやろうとしてダメ出しをくらってたってこと。そして、その際、明確に「上面ではなく」という意図があったってこと。この経過はなぜ高裁は取り入れなかったの?

Gemini:ご提示いただいた情報は、この特許紛争の経緯において非常に重要な論点であり、特に**出願経過(プロセキューション・ヒストリー)**が高裁でどのように扱われたか、という点に直結します。

1. 越後製菓の補正と「のみ」の削除の事実

ご指摘の通り、越後製菓は審査の過程で、以下の補正を試みました。

  1. 当初の補正案: 「上側表面部の側周表面のみに…切り込み」という限定を加える。

  2. 特許庁の判断: この「のみ」という限定は、出願当初の明細書に記載されていない**新規事項の追加(特許法第17条の2第3項違反)**に当たるため、認められない。

  3. 越後製菓の対応: 特許を受けるために、「のみ」を削除し、「上側表面部の側周表面に…切り込み」という表現で特許を取得した。

この経過から、越後製菓が出願当初、「上面に切り込みがないこと」を必須の要件としていなかったが、審査途中でそれを限定しようとした明確な意図があったことは明らかです。


2. 裁判所の判断(高裁大合議)が「出願経過」を取り入れなかった理由

特許侵害訴訟において、裁判所が**出願経過(プロセキューション・ヒストリー)**をどこまで参酌するかは、非常に難しい問題です。

知財高裁の大合議判決が、越後製菓の「のみ」を削除した経緯を、特許請求の範囲の解釈に取り入れなかった(または重要視しなかった)主な理由は、特許権の効力範囲の決定に関する日本の原則に基づいています。

① 権利範囲は「最終的な請求の範囲」で決まる

日本の特許法において、特許権の効力は、最終的に特許として成立した「特許請求の範囲」の記載に基づいて定まります。

  • 審査の過程で限定が拒絶され、その限定を削除して成立させた場合、裁判所は「削除した限定は、特許権の範囲に含まれていない」と解釈します。

越後製菓は、「のみ」という限定を削除して特許を成立させました。高裁は、この「のみ」が削除された事実をもって、「発明者は上面への切り込みがないことを必須要件とする限定を最終的に放棄した」とみなしたと考えられます。

② 明細書の記載と矛盾しない解釈を優先

高裁は、前述の通り明細書【0007】の記述が、「上面への切り込みを忌避している」という強い限定を意味するとは解釈しませんでした。

その上で、「のみ」の削除という出願経過は、明細書の記載(【0007】)を特許請求の範囲を限定する方向に解釈する材料としては不十分である、と判断したのです。

❌ 裁判所の論理(推定)

もし、「のみ」という限定を特許請求の範囲に含めていたなら、佐藤食品工業の製品(上面にも切り込みがある)は非侵害となったはずです。しかし、「のみ」を削除したことにより、特許請求の範囲は広くなり、佐藤食品工業の製品も侵害となる、という流れを採用しました。


💡 知的財産権訴訟における教訓

このケースは、特許審査の過程で「限定を試みたが拒絶され、その限定を削除して特許を成立させた」場合、その削除された限定は将来の侵害訴訟において、権利の範囲を狭める材料としてほとんど使えない、という教訓を示しています。越後製菓の「上面に切り込みがない」という意図(真意)よりも、特許請求の範囲の文言と、その成立に至るプロセスで何を 最終的に 放棄したかが、権利範囲の解釈において重視された結果と言えます。

特068 特許権の効力 特許発明の実施をする権利を専有 越後製菓vsサトウ 角餅の切り込み

(特許権の効力)
第六十八条 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000121#Mp-Ch_1

プロンプト:進歩性があったとしても、そのクレームの一部が過去の別の会社のクレームを含むものであったら、結局、侵害になっちゃうんだね。

Gemini:はい、その通りです。特許の世界では、「特許の成立(登録)」「特許の実施(侵害の有無)」は、別の基準で判断されるため、あなたが指摘された状況が起こりえます。

💡 特権の成立と侵害は別問題

1. 進歩性が認められ、特許が「成立」した理由

特許の成立(登録)は、特許庁の審査で判断されます。

  • 基準: 請求項(クレーム)に記載された発明が、先行技術(過去の特許や公知技術)と比較して、「新しいこと(新規性)」と「容易に思いつけないこと(進歩性)」があるかどうかです。

  • サトウのケース: 佐藤食品工業の特許(3620045号)は、「上下面の十字切り込み」など、越後製菓の特許にはなかった新たな構成と効果(均一な膨化など)を持っていたため、進歩性が認められ、特許として登録されました。

2. 実施が「侵害」になった理由

特許の実施(侵害の有無)は、他社の有効な特許権との関係で判断されます。

  • 基準: 自社が実施しようとする製品・技術が、他社の特許の請求項に記載された技術的範囲をすべて満たしているかどうかです。

  • 抵触の関係: 佐藤食品工業の製品は、「側面への切り込み」という構成を含んでいました。この「側面への切り込み」は、裁判所によって越後製菓の特許の技術的範囲に含まれると判断されました。

したがって、自社の特許に進歩性が認められて登録できたとしても、その特許を実施する行為が他社の先行特許の権利範囲に抵触する場合、その特許を自由に実施することはできず、特許侵害になります。

このような関係にある特許を、「改良発明特許」または「利用発明」と呼びます。改良発明を実施するためには、元の特許(基本特許)を持つ会社から許諾(ライセンス)を得る必要があります。

 

ABS(Access and Benefit-Sharing)とは?研究にどう関係する?

質問:ABSが関係するのはどういうとき?アフリカのビクトリア湖に行って、そこに生息する魚をサンプリングして、(殺して固定したサンプルを)持って帰る場合、関係する?生きていないから、関係ない?

Gemini:

結論から言うと、**そのケースは「ABS対応が必要」である可能性が極めて高い(ほぼ確実)**です。

「生きていないから関係ない」というのは、よくある誤解ですので注意が必要です。

なぜ「死んでいても(固定標本でも)ダメなのか」、理由を整理します。

1. なぜ「死んだ魚」でも対象になるのか?

ABS(名古屋議定書)が保護対象としているのは、「生き物そのもの(生命)」ではなく、**「遺伝資源(Genetic Resources)」**だからです。

  • 遺伝資源とは?

    • 定義:遺伝の機能的単位(DNAやRNA)を含む素材。

  • ポイント:

    • 魚が死んでいても、ホルマリンやエタノールで固定されていても、その細胞の中には**DNA(遺伝情報)**が残っています。

    • そのDNAを解析したり、成分を調べたりする目的で持ち帰るのであれば、それは「遺伝資源の利用」とみなされます。

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「本(魚)」がボロボロで読めなくなっていても(死んでいても)、中に書いてある「文章(DNA情報)」をコピーして使うなら、著作権料(利益配分)を払ってね、という理屈に近いです。

2. 「ビクトリア湖(アフリカ)」という場所の重要性

ビクトリア湖は、ケニア、タンザニア、ウガンダの3カ国にまたがっています。この3カ国はいずれも名古屋議定書の締約国であり、生物資源の持ち出しに関して非常に厳しい国々です。

  • サンプリング(採集)行為そのもの:

    • ABS以前に、その国で研究目的の採集をするための「研究許可(Research Permit)」が必要です。

  • 持ち出し(輸出):

    • 死んだ標本であっても、海外へ持ち出すための「輸出許可」が必要です。

    • この輸出許可を取るプロセスの中で、「ABS契約(利益配分などの合意)」が結ばれているかどうかが厳しくチェックされます。

3. 「関係ない」ときがあるとすれば?

ABSが「関係ない」と言えるのは、以下のような非常に限られたケースだけです。

  • 純粋な「商品(コモディティ)」として扱う場合

    • 現地の市場で魚を買い、夕食としてホテルで食べる(研究に使わない)。

    • ※ただし、「市場で買った魚を研究用に持ち帰る」場合は、ABSの対象になります(出所が変わっても、利用目的が研究ならアウトです)。

  • DNAが完全に破壊されている、または対象外と明記されている場合

    • 国によっては「加工済みの皮革製品」や「精製された抽出物」を対象外とする場合もありますが、アフリカ諸国は「派生物(成分など)」も含めて広く規制していることが多いです。

まとめ

アフリカのビクトリア湖で、研究のために自分で魚をサンプリングして持ち帰るなら、生きていようが死んでいようが、100%「ABSの手続き」が必要です。

【もし無許可で持ち帰ったらどうなる?】

  1. 空港で没収・逮捕: 現地の空港税関で「研究許可証」と「ABS許可証」の提示を求められ、持っていなければ没収、最悪の場合は逮捕・勾留されるリスクがあります。

  2. 論文が出せない: いざ研究して論文を書こうとしたとき、主要な学術誌は「ABS遵守の証明」の提出を求めるようになっています。

質問:ABSの手続きを怠った研究者が、その国から出国して自分の国に帰ろうとしたときに、空港で逮捕された事件ある?

Gemini:

はい、実際にあります。

脅しではなく、空港で逮捕・拘束される事例は世界中で発生しており、日本人研究者が当事者になったケースもあります。

先ほどの質問にあった「死んでいるから大丈夫だろう」「学術目的だから大丈夫だろう」という油断が、まさに逮捕につながった実例をご紹介します。


1. 【最近の衝撃事例】死んだ虫を拾っただけで逮捕(スリランカ)

あなたの「魚の死骸なら大丈夫?」という疑問に一番近い、非常に恐ろしい事例です。

  • 時期・場所: 2020年、スリランカ

  • 当事者: ロシアの生物学者ら3名

  • 何をした?: 国立公園周辺で、死んでいる昆虫や小動物を拾い集め、持ち帰ろうとした。

  • 彼らの主張: 「研究用に写真を撮るためだった」「死骸を拾っただけ(殺していない)」

  • 結果:

    • 空港ではなく滞在中に逮捕されましたが、出国禁止・長期拘束。

    • 裁判で約400万円以上の罰金刑(支払えなければ懲役刑)となりました。

    • 最終的に支援団体が罰金を肩代わりして帰国できましたが、約2年間も拘束されました。

  • 教訓: 「死骸(死んでいるサンプル)」であっても、無許可採取は密猟・密輸と同じ扱いを受けます。


2. 【有名な事例】著名な科学者が監獄へ(インド)

これはABS業界で最も有名な「チェコの昆虫学者事件」です。

  • 時期・場所: 2008年、インド(ダージリン)

  • 当事者: チェコの著名な昆虫学者2名

  • 何をした?: 研究のために昆虫を採集していた。

  • 結果:

    • **インドの生物多様性法(ABS法)**および野生生物保護法違反で逮捕。

    • 一人は有罪判決を受け、懲役3年の実刑判決(のちに国外逃亡)。もう一人は高額な罰金刑。

    • 世界中の科学者が「彼らは密売人ではなく純粋な研究者だ」と嘆願書を出しましたが、インド裁判所は**「法律は法律である」**として厳しく処罰しました。

  • 教訓: 「純粋な学術研究」であっても、許可がなければ犯罪者です。


3. 【日本人の事例】空港の手荷物検査で発覚(エクアドル、インドなど)

日本人研究者も例外ではありません。

  • エクアドル(2019年): 日本の大学教員が、現地の空港で荷物の中に「標本(昆虫)」を入れているのをX線検査で見つかり、その場で環境犯罪違反の容疑で逮捕されました。

  • インド(2015年): 日本人2名が、空港から出国しようとした際、荷物に昆虫や爬虫類が入っているのが見つかり、逮捕・拘留されました。


なぜ「空港」でバレるのか?

「小さなサンプルならバレない」と思うのは昔の話です。現在は以下の理由で非常に厳格です。

  1. X線技術の向上: 有機物の形状を高精度で判別できます(乾燥した魚や昆虫の標本は映ります)。

  2. 専門官の配置: 生物多様性に厳しい国(ブラジル、オーストラリア、東南アジア諸国など)の税関には、生物サンプルの持ち出しを専門にチェックする職員がいることがあります。

  3. 「許可証」の提示義務: 怪しいものが見つかった瞬間、「輸出許可証(Export Permit)」と「ABS許可証」の提示を求められます。これを持っていないと、その場で「密輸(Smuggling)」として処理されます。

結論

アフリカのビクトリア湖から魚の固定標本を持って帰ろうとして、空港で呼び止められた場合、**「許可証」を持っていなければ、最悪の場合は逮捕、良くても没収・罰金・国外退去処分(+今後その国に入国禁止)**になります。

脅かすわけではありませんが、無許可で持ち帰る」という選択肢は、研究生命を絶たれるリスクがあると考えてください。

前立腺の発生

質問:前立腺の発生の由来は、膀胱など尿路系と同じ?

Gemini:前立腺の発生の由来は、膀胱などの下部尿路系と「ほぼ同じ」です。胎児の初期にある「尿生殖洞(にょうせいしょくどう)」という器官から分かれてできます。

1. 共通の親:「尿生殖洞」と「内胚葉」

前立腺と膀胱は、どちらも「内胚葉(ないはいよう)」という細胞の層からできた「尿生殖洞(Urogenital Sinus)」という袋状の器官が起源です。

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胎児の初期(妊娠4〜7週頃)、お尻のあたりには「総排泄腔(そうはいせつくう)」という、尿と便の出口が一緒になった部屋があります。これが壁で仕切られて2つに分かれます。

  • 背中側: 直腸・肛門になります。

  • お腹側: 尿生殖洞になります(ここが前立腺と膀胱の共通の先祖です)。

2. 膀胱と前立腺の分かれ道

共通の親である「尿生殖洞」の場所(上か下か)によって、何になるかが決まります。

部位 発生するもの 詳細
上部 膀胱 尿生殖洞の大部分が膨らんで膀胱になります。
中部・下部 尿道・前立腺 膀胱の下につながる細い部分(骨盤部)が尿道になります。この尿道の壁から「芽」が出てきて前立腺になります。

つまり、「膀胱から続く尿道の壁の一部が、外側に向かってニョキニョキと生え出して(これを『出芽』といいます)、周りの組織に入り込んでできたもの」が前立腺です。

3. 何が運命を決めるのか?(性ホルモン)

ここが最大の違いです。膀胱は男女ともにできますが、前立腺ができるかどうかは「男性ホルモン」にかかっています。

  • 妊娠10週頃: 精巣から分泌される男性ホルモン(テストステロン)が、より強力な「ジヒドロテストステロン(DHT)」に変換されます。

  • 出芽の合図: このDHTの刺激を受けて初めて、尿生殖洞(尿道)の壁から前立腺の芽が出始めます。

  • 女性の場合: 男性ホルモンが少ないため、この芽はほとんど発達しません(退化するか、スキーン腺という小さな痕跡器官になります)。

まとめ:尿路系との違い

「尿路系と同じ?」というご質問への答えは、以下のようになります。

  1. 膀胱・尿道とは「同じ」:どちらも「尿生殖洞(内胚葉)」由来の兄弟のような関係です。
  2. 腎臓・尿管とは「違う」:同じ尿路系でも、上の方にある腎臓や尿管は、「中胚葉(ちゅうはいよう)」由来の組織からできるため、発生のルーツが異なります。

 

質問:「尿道の壁から「芽」が出るのは、男性だけ?なせ女性ではそれが起きないの?

Gemini:「芽が出てきて前立腺になる」というダイナミックな変化は、基本的には男性だけで起きます。なぜ女性ではその「発芽(出芽)」が起きないのか。一言で言うと、**「『芽を出せ!』という強力な命令(ホルモン)が来ないから」**です。胎児の体には、「男性になりなさい」という命令が来ない限り、自然と女性の形になる(女性がデフォルトである) という基本ルールがあります。その仕組みを3つのステップで解説します。


1. 運命の分かれ道:Y染色体と精巣

すべての始まりは遺伝子です。

  • 男性(XY): Y染色体にある「SRY遺伝子」というスイッチが入ると、胎児の体内で**「精巣(睾丸)」**が作られます。

  • 女性(XX): Y染色体がないので、精巣は作られず、**「卵巣」**になります。

この「精巣ができたかどうか」が、次のステップで決定的な差を生みます。

2. 「芽を出せ」という命令書:DHT(ジヒドロテストステロン)

前立腺の芽が出るためには、ただ男性ホルモンがあるだけではダメで、「DHT(ジヒドロテストステロン)」という超強力な男性ホルモンが必要です。

  • 男性の場合:

    1. できたばかりの精巣から、大量の「テストステロン(男性ホルモン)」が分泌されます。

    2. 尿生殖洞(尿道の元)にある酵素の働きで、テストステロンが最強ホルモン「DHT」に変換されます。

    3. このDHTが尿道の壁にある受容体(レセプター)に結合すると、それが**「ここに前立腺を作れ!(芽を出せ)」という強力な指令**になります。

    4. その結果、尿道の壁からニョキニョキと細胞が増殖し、前立腺が形成されます。

  • 女性の場合:

    1. 精巣がないため、テストステロンが大量には出ません(卵巣からは出ません)。

    2. 材料(テストステロン)が少ないので、指令役の「DHT」も作られません。

    3. 「芽を出せ」という命令が来ないため、尿道の壁はそのまま尿道として成長します。

3. 女性に「前立腺の痕跡」はある?

実は、女性にも前立腺と**「発生の起源が同じ」**器官が存在します。

女性の尿道の入り口付近にある**「スキーン腺(傍尿道腺)」**という小さな分泌腺です。

これは、男性の前立腺に相当するもので、「女性の前立腺(Female Prostate)」と呼ばれることもあります。

  • 意味すること:女性の体にも「前立腺になるポテンシャルを持った組織」はありましたが、DHTという強力な肥料(命令)がなかったため、大きな前立腺にはならず、小さな分泌腺(スキーン腺)として留まった、と考えると分かりやすいです。

まとめ

    • 男性: 精巣ができる → 強力なホルモン(DHT)が出る → 「芽を出せ」と命令される → 前立腺ができる。

    • 女性: 精巣ができない → 強力なホルモンが出ない → 命令が来ない(スルーされる) → 前立腺にならず、小さな腺(スキーン腺)になる。

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「人体は基本設定が女性で、オプションパーツ(Y染色体とホルモン)がつくと男性仕様にカスタマイズされる」という発生学の面白いルールが、ここでも働いているわけですね。

質問:テストステロンをDHTに変換するのは、自分自身(DHTを受容する細胞そのもの)なの?それとも、DHTを受容する細胞の近くの細胞?

Gemini:基本的には**「自分自身(DHTを受容する細胞そのもの)」の中で変換が行われます。これを専門用語で「イントラクリン(細胞内分泌)」**と呼びます。ただし、前立腺の発生(芽が出るプロセス)においては、「変換する細胞(司令塔)」と「実際に芽を出す細胞(実行部隊)」の連携プレーが非常に重要になります。少し詳しく解説します。

1. 基本ルール:変換工場は「細胞の中」にある

テストステロンからDHTへの変換を行う酵素「5α-還元酵素(5α-リダクターゼ)」は、細胞の膜の上や外ではなく、**細胞の中(小胞体や核膜)**に待機しています。

  1. 血管を流れてきたテストステロンが、細胞膜を通り抜けて中に入ります。

  2. その細胞の中にいる酵素が、テストステロンをDHTに「アップグレード」します。

  3. できたてのDHTが、同じ細胞の中にある受容体(アンドロゲンレセプター)にくっつきます。

  4. その細胞の核の中で、遺伝子のスイッチがONになります。

つまり、「材料(テストステロン)を取り込んで、自分で調理(DHTに変換)して、自分で食べる(受容)」というのが基本スタイルです。

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2. 前立腺の発生時の「連携プレー」

前立腺の「芽が出る」ときには、この基本ルールを使いつつ、隣の細胞を動かすという面白い仕組みが働きます。

  • 間葉(かんよう)細胞: 尿道の周りを取り囲んでいる「裏方・サポート役」の細胞。

  • 上皮(じょうひ)細胞: 尿道の内壁を作っている「表面」の細胞(ここから芽が出る)。

この2人の関係は以下のようになっています。

  1. 変換するのは「間葉(裏方)」:5α-還元酵素を持っているのは、主に裏方の間葉細胞です。彼らがテストステロンを取り込み、DHTに変換し、自分の中の受容体で受け取ります。
  2. 命令を出す(パラクリン):DHTを受け取った間葉細胞は、「おーい、成長しろ!」という別の信号(成長因子:KGFやFGFなど)を分泌して、隣にいる「上皮細胞」に投げかけます。
  3. 芽が出るのは「上皮(表面)」:隣からの命令(成長因子)を受け取った上皮細胞が、それに応えて増殖し、壁からニョキニョキと**「芽(前立腺の原型)」**を出します。

まとめ

質問への回答としては:「変換するのは、DHTを受容する細胞(自分自身)です。」しかし、前立腺ができるときは:「変換してDHTを受け取った細胞(裏方)が、隣の細胞(表面)に『芽を出せ』と命令を出している」という間接的なコントロールが行われています。この「裏方(間質)と主役(上皮)の会話」は、大人になってからの前立腺肥大症や前立腺がんのメカニズムでも非常に重要になってくるポイントです。

 

特184条の3 国際出願による特許出願

PCT出願から日本国内へ移行する手続き(国内移行手続)について、根拠となる条文を整理します。大きく分けて「PCT条約(国際的なルール)」と「日本国特許法(国内の受け入れルール)」の2つの側面から規定されています。

1. PCT条約(特許協力条約)の規定

国際出願をした出願人が、指定国(日本など)で手続を開始するための義務と期限を定めています。

  • 第22条(指定官庁への写し、翻訳文及び手数料の提出)

    • 予備審査を請求しない場合(第1章)の国内移行について規定しています。「優先日から30ヶ月以内(原則)」に手続をしなさい、という大元のルールです。

  • 第39条(選定官庁への写し、翻訳文及び手数料の提出)

    • 予備審査を請求した場合(第2章)の規定です。こちらも現在は多くの国で30ヶ月(一部31ヶ月)です。


2. 日本国特許法の規定

日本には「第9章 国際出願に係る特例(第184条の3 ~ 第184条の20)」という専用の章があり、ここで詳しい手続きが定められています。特に重要なのは以下の条文です。

① 国際出願は「日本の出願」とみなす(基本)

  • 第184条の3(国際出願による特許出願)

    • 国際出願日にされた日本の特許出願とみなす」という、PCTの効力を日本法に落とし込む条文です。

② 手続き書類(国内書面)を出しなさい

  • 第184条の5(書面の提出及び補正命令)これが「国内書面(表紙)」の提出義務を定めた条文です。「国内処理基準時(優先日から30ヶ月)」までに、出願人の氏名や住所などを記載した書面を特許庁長官に提出しなさい、と書かれています。

③ 翻訳文を出しなさい(外国語の場合のみ)

  • 第184条の4(外国語特許出願の翻訳文)英語などで出願されたPCT出願(外国語特許出願)の場合、日本語の翻訳文を出す義務とその期限(原則30ヶ月)を定めています。※「日本語特許出願」の場合は、この翻訳文提出は不要です。


まとめ:日本語PCTの事例(日本語PCT)で言うと?

日本語で行ったPCT出願を日本へ移行するケースで該当する「手続きの条文」は、ズバリこれです。

  • 特許法 第184条の5 第1項

    • 内容: 「日本語でPCT出願した人は、優先日から30ヶ月以内に、国内書面(願書のようなもの)を提出して、手数料を払いなさい。」

つまり、日本語でPCT出願をしていた場合、「書き直さなくていい(翻訳いらない)」というのは第184条の4が適用されないからであり、「新しい表紙(国内書面)は必要」というのは第184条の5で義務付けられているから、という法的な整理になります。

質問:PCT出願時は、どの国に国内以降する予定があるかは書かなくていい?

Gemini:PCT出願の段階では、将来どの国に移行するかを決めて書く必要はありません。「とりあえず全部の国を指定したことにしておく(自動的に全指定)」というルールになっています。

1. 「みなし全指定」のルール

2004年1月1日以降のルール改正により、PCT出願の願書を提出するだけで、その時点で加盟しているすべての国を自動的に指定したとみなされます。

  • 昔(2003年まで): 願書のチェックボックスで「アメリカ」「日本」「ドイツ」…と移行したい国をいちいち選んでチェックする必要がありました(そして指定国の数に応じて手数料も変わりました)。

  • 今: チェックボックスは基本的に不要です。出願するだけで、世界中(150カ国以上)の「予約チケット」を自動的に確保した状態になります。

2. いつ決めるの?

実際に「どの国で権利化するか」を決めるのは、30ヶ月後の「国内移行期限」のタイミングです。

  • PCT出願時(0ヶ月): 「とりあえず世界中の権利化の可能性(予約権)」を確保。

  • 考慮期間(〜30ヶ月): 製品が売れそうな国はどこか、費用対効果などをじっくり考える。

  • 期限直前(30ヶ月):

    • 「やっぱり日本だけでいいや」→ 日本の特許庁にだけ手続き(国内移行)をする。他の国の予約権は放置すれば自動的に消滅。

    • 「アメリカと中国も欲しい」→ 日本、米国、中国のそれぞれに手続きをする。

「とりあえず広く網をかけておいて、後で必要なところだけ拾う」ことができるのが、PCT出願の最大のメリットですね。

補正(修正)したい場合

もし、「PCT出願のときの内容から少し変えたい(請求項を絞りたい、書き方を変えたい)」場合は、国内移行のタイミング(または審査請求などのタイミング)で「手続補正書」を出せば、内容を書き直す(補正する)ことも可能です。 ※先ほどの議論にあった「分割出願」をするために、あえてここで内容をいじる等の戦略をとることもあります。

ただし、「新規事項の追加(New Matter)」は絶対NGです。いくら補正(修正)ができると言っても、「国際出願をした日(今回の場合は2014年3月13日)の明細書・請求の範囲・図面」に書いていないことを、後から付け加えることは許されません。このルールは**「新規事項追加の禁止」**と呼ばれ、日本の特許実務において最も厳しく、かつ重要なルールのひとつです。

1. なぜNGなのか?(ルールの理由)

もし、出願した後から自由に新しいアイデアを書き足せるなら、以下のようなズルができてしまうからです。

  • 後出しジャンケン: 先にテキトーな内容で出願して日付けを確保し、後から他社の製品を見て「あ、あの機能も入れておこう」と書き足す。

  • 早い者勝ちの崩壊: 真面目に研究して完成させてから出願した人が損をしてしまいます。

だから、**「最初に提出した書類(日本語でPCT出願したのであれば、PCT出願時の日本語明細書)の範囲内」**でしか、文章を直したり、説明を補充したりすることはできません。

2. 「範囲内」の境界線は厳しい

「書いてあること」だけでなく、「書いてあることから自明(当たり前)なこと」までは許容される場合もありますが、審査官はここを非常に厳しく見ます。

  • OKな例:

    • 誤記の訂正(「てにをは」や明らかな誤字)。

    • 不明瞭な表現を、元の文脈から明らかな範囲で分かりやすく書き直す。

    • 上位概念化 ※ただし、元々その概念が読み取れる場合に限る。

  • NGな例(新規事項):

    • 実施例(実験データ)の追加。「実はこんな実験もしてました」と後から出すのは、反論の証拠としては使えても、明細書本文には追加できません。

    • 数値範囲の変更。「30℃~50℃」と書いてあったのを、根拠なく「20℃~60℃」に広げる。

    • 新しい効果の記載。「実はこれ、防臭効果もありました」と元々書いていない効果を追記する。

3. もし「新規事項」が入ってしまったら?

補正書を出しても、審査官に「これ、元のPCT出願に書いてないですよね?(新規事項の追加)」と指摘されると、その補正は却下されます(拒絶理由になります)。

最悪の場合、うっかり登録されてしまっても、後でライバル会社から**「この特許は新規事項が追加されているから無効だ(特許法第123条)」**と訴えられて、特許が潰される原因になります。

まとめ

  • 国内移行時の書き直し(手続補正): 可能です。

  • ただし: 「PCT出願時のテキスト」という檻(おり)の中から一歩も出てはいけません。