月別アーカイブ: 2022年11月

解糖系、TCA回路、電子伝達系で産生されるATPの総数は38分子?36?34?32?31?30?28?

生化学の教科書をあれこれ見ていると、解糖系、TCA回路、電子伝達系で産生されるATPの総数がまちまちです。最大38分子、36分子、34分子、32分子、31分子、30分子、28分子といった記述を見たことがあるような気がします。

  1. グルコース1モルから好気的解糖系・クエン酸回路で38モルのATPが産生。shinshu-u.ac.jp
  2. グルコース1モルから38モルのATPを生成する(実際には30モル程度になる)kyoto-u.ac.jp
  3. 好気呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。wikibooks.org

 

レーヴン/ジョンソン『生物学』にわかりやすい説明がありました(176ページ)。

  1. グルコース1分子あたり、解糖系でまず正味2分子のATPが産生されます。
  2. また解糖系でNADHが2分子産生されます。NADH1分子あたり、ATP3分子が産生される換算だそうなので、ここでATP6分子になるはずのところですが、実際には、細胞質に存在するNADHをミトコンドリアの内部へ輸送する際に、NADH1分子あたりATP1分子を消費するため、このNADH2分子から産生される正味のATPは2x3-2=分子なります。
  3. ピルビン酸が脱炭酸反応で酸化されてアセチルCoAがつくられるときに2つのNADHが産生しますので、2x3=6 で、ATP6分子に相当します。
  4. TCA回路では(グルコース1分子あたり)GTPが2分子できてこれがATPに変わるので、ATP2分子が産生。
  5. TCA回路ではNADHは(グルコース1分子あたり)6分子産生するので、6x3=18で、ATP18産生。
  6. TCA回路ではFADH2が(グルコース1分子あたり)2分子でき、FADH2の1分子につきATPが2分子産生される換算なので、2x2=4で4分子のATPが産生されます。

これらを合計すると36分子ということになります。最大38と言う言い方がなされるのは、細胞質のNADHをミトコンドリアに輸送するときに消費されるNADHを勘定に入れていないということなのでしょうか。この教科書の説明によれば、実際にはプロトン勾配のプロトンが必ずATP産生に使われるとは限らず、一部は単純に漏れ出てしまって何にもつかわれなかったり、あるいは、他の仕事に使われることもあるため、換算式としては、NADH1分子からATP2.5個FADH21分子からATP1.5個で計算して、

  1. 解糖系ATP 2 ATP
  2. 解糖系NADH 2×2.5ATP – 2ATP(輸送料)=
  3. ピルビン酸の脱炭酸反応 NADH 2個x2.5 ATP =5
  4. TCA回路 GTP 2x1 ATP =2
  5. TCA回路 NADH 6個x2.5 ATP  = 15
  6. FADH2 2個x1.5 ATP =3

この計算だと、30個のATPができるということになります。

 

 

炭水化物はどのようにエネルギーを蓄えていて、それを解糖系、TCA回路、電子伝達系がどのように取り出しているのか?

エネルギー代謝を一言で説明するなら、グルコースC6H12O6を二酸化炭素と水に分解する過程でエネルギーを取り出しているということになろうかと思います。しかし、グルコースのどこにそんなエネルギーが蓄えられていたのでしょうか。また、電子伝達系で電子がさまざまな物質を移動していくことでなぜ、エネルギーが取り出せるのでしょうか。自然が作り出した巧妙なエネルギー代謝の仕組みに驚く一方で、なんとなく腑に落ちないモヤモヤが残ります。しっくりこないということは、まだ理解が足りていないということでしょう。

生化学の教科書を読んでも、エネルギーがどうやって蓄えられているのかの説明があまり直接的ではないように感じます。明確に説明していると感じられる教科書をいくつか紹介しておきます。

日本物理学会編『生体とエネルギーの物理』第5章「生体エネルギー変換の戦略」(垣谷俊昭 著)

この本によれば、グルコース中のC-H結合やC-C結合に存在する電子のエネルギー準位は、酸化されてCO2になったときのC-O結合やH2OになったときのH-O結合に比べて、高い状態にあります。酸素は電気陰性度が大きい(=電子のエネルギー準位が低い)ので、CやHの電子にしてみれば、酸素と結合したほうがエネルギーが低い状態になれるというわけです。

この本には酸化還元電位の解説もあり、電子を引き抜くのに必要な仕事という目安として考えればいいということです。酸素は電気陰性度が大きい(=エネルギー準位が低い)ので、電子を引き抜くには大きな仕事量が必要になります(すなわち、酸化還元電位が大きい)。酸化還元電位が大きい物質ほど、電子を受け入れやすいという関係になります。

「電気陰性度」や「酸化還元電位」などいろいろな概念が登場しますが、これらは便利だから使っているだけで、概念としては、「電子のエネルギー準位」という一つのものしかなく、いろいろ言い換えているだけのように思います。

 

生物物理43(3)150-153ページ(2003年) 談話室  グルコースのエネルギーとは?

と言う記事にも、エネルギーがどこに蓄えられているのか(=化学結合)に関する考察・解説があります。

グルコースがエネルギー物質であるというとき, それはグルコースの酸化反応 1/6 C6H12O6 + O2 → CO2 + H2O における∆rH˚<0をさしている(∆rH˚は反応によるエンタルピー変化の値). もとよりエネルギーは相対的な値であり, グルコースのエネルギーの絶対値を云々することはできないから, 酸化反応によっていかほどまでエネルギー水準が降下するか, これが意味のある設問である. (生物物理43(3)150-153ページ(2003年) 談話室  グルコースのエネルギーとは?

上記の指摘は当たり前なのですが、グルコースが蓄えているエネルギーという言い方をしてしまうと、グルコースに関して何か絶対的な数値を思い浮かべてしまうため、初めて学ぶ人に誤解させてしまいがちな物言いだと思います。そのことに注意して読めば、下の教科書の解説もわかりやすい(というか、他ではあまりあからさまに書いていない言葉遣いで書かれている)。

レーヴン/ジョンソン『生物学』(上巻)原書第7版 培風館

光合成では、光から得たエネルギーを利用し、小さな分子(水と二酸化炭素)をより複雑な分子(糖類)に化合させていく。つまり、得られたエネルギーは位置エネルギーとして糖分子の原子間結合に蓄えられるのである。(144ページ)

化学反応の過程では、化学結合に蓄えられたエネルギーが新しい結合に移動する。実際には、電子がある原子や分子からほかの原子や分子に渡される。(145ページ)

原子や分子が電子を失うことを酸化されるといい、この過程を酸化とよぶ。このよび方は、生物において酸素原子がもっとも一般的な電子の受容体となっていることを反映している。(145ぺージ)

何故電子を失うことが酸化なのか、それは酸素の電気陰性度が大きい(異原子間の共有結合において、酸素は電子を自分のほうに引き付ける力が強い)からというわけです。

酸化還元反応は生命におけるエネルギーの流れにおいて重要な役割をになっている。というのは、原子から原子へ受け渡される電子自体がエネルギーを運ぶからである。(145ぺージ)

電子がある原子から飛び出し(酸化)ほかの原子に移動する(還元)と、電子に与えられたエネルギーも一緒に移動し、その電子は異動先の原子でエネルギーレベルの高い電子軌道に入ることになる。与えられたエネルギーは化学的な位置エネルギーとして蓄えられ、その電子が本来のエネルギーレベルに戻るときに原子からエネルギーが放出されるのである。‥ 還元型の分子は酸化型の分子に比べて多くのエネルギーを持っていることになる。(145ページ)

レーヴン/ジョンソン『生物学』では、エネルギーの説明をまず最初にしていて、マクロな話として運動エネルギーと位置エネルギーを説明しています。電子のエネルギーに関しては位置エネルギーという概念で説明をしていました。

どんな教科書でも結局は同じことを説明しているはずなのですが、ちょっとした言葉遣いの違いによって、理解のしやすさがだいぶ変わってきます。もちろん、学ぶ側の予備知識の量の違いも大きく影響します。

 

参考サイト

  1. 酸化還元反応式 だいたいわかる高校化学(基礎)
  2. 呼吸鎖の各酸化還元電位 スライドプレーヤー 酸化還元対NAD+/NADH + H+ の標準酸化還元電位E0’= -0.32 V, 酸化還元対1/2 O2 / H2O の標準酸化還元電位E0’=0.82 V など

大腸癌・直腸がんの手術について

下の動画が非常にわかりやすいと思いました。

専門医が教える直腸がん手術~イラストで分かりやすく解説~【国立がん研究センター中央病院】国立がん研究センター公式

上の動画のキーワード:大腸外科、直腸がん、腹膜、消化菅、胃、肝臓、脾臓、小腸、大腸、盲腸、上行結腸(じょうこうけっちょう)、横行結腸(おうこうけっちょう)、下向結腸(かこうけっちょう)、S状結腸、直腸、直腸S状部、上部直腸、下部直腸、肛門、肛門管(こうもんかん)、直腸がん、血便、便柱狭小化(べんちゅうきょうしょうか 便が細くなること)、血管、リンパ節、転移、肛門温存、腸管切離ライン、口側、肛門側、内肛門括約筋(ないこうもんかつやくきん)、外肛門括約筋(がいこうもんかつやくきん)、括約筋間直腸切除術(ISR)、排便機能、直腸切断術(肛門を含めて直腸を切断するため、永久人工肛門になる)、切除後の再建吻合部、縫合不全、吻合、人工肛門、一時的人工肛門、永久人工肛門、根治

 

直腸間膜全切除total mesorectal excisionTME

  1. 腹腔鏡下括約筋間直腸切除術(ISR)に必要な局所解剖 (手術 第74巻第13号 2020年12月号)肛門管近傍の腫瘍に対する括約筋間直腸切除術intersphincteric resection;ISR)は,1994 年のSchiessel らによる報告以降,腹会陰式直腸切断術(abdominoperineal resection;APR)に代わる肛門温存手術として広く普及してきた。内視鏡外科手術の拡大視効果によって,狭い骨盤内でも精細な解剖認識が可能になり,ISRの根治性向上と機能温存が治療成績向上につながっている2)。さらに近年では,ISRの新しいアプローチとして経肛門的に直腸間膜全切除total mesorectal excisionTME) を 行うtaTME(transanal TMEや,ロボット支援手術が普及しつつある。
  2. Total Mesorectal Excision  Society of American Gastroint 2011/06/24 PG Colon Course – R. Larry Whelan(YOUTUBE)
  3. Laparoscopic TME Society of American Gastrointe Laparoscopic TME Society of American Gastrointe(YOUTUBE)

 

その他

  1. 大腸がんの手術について腹腔鏡(ふくくうきょう)手術について (国立がん研究センター 東病院)イレウス:術後に腸管が麻痺することで腸がむくんでしまい、食事がとれなかったり嘔吐してしまう状況です。以前は腸閉塞(ちょうへいそく)と呼んでいましたが、腸管の癒着による腸閉塞と区別するため、最近では「イレウス」という言葉を使うことが多くなっています。

運動時のエネルギー代謝の変化 ATP,クレアチンリン酸、グリコーゲン、酸化的リン酸化、脂肪酸

庭で木を切っていたら、半分もきらないうちに筋肉が披露して、腕が動かなくなりました。エネルギーの枯渇です。若いときに比べたら、持続的に運動できる時間が本当に短くなったと思います。バス停まで走るときも、数十メートルも走ると足が止まってしまいます。20代後半にサッカーをやっていたときは、ボールを追いかけて長距離は知ったら突然体が動かなくなってバランスを失い倒れたことがあります。小学校の頃にサッカーをやっていたときは、こういうエネルギーの枯渇を経験したことはありませんでした。サケが産卵で河を上ってきて、産卵を終えた後、ばたばたと死んでいくのも不思議でした。さっきまで普通に生きていたサケがなぜ、数分後にはエネルギーが枯渇して死んでしまっているのでしょうか。若いときは、エネルギーが枯渇するということがあまり実感できませんでしたが、歳をとると、突然エネルギーが切れて、体や頭が全く動かなくなるということを普通に経験するようになります。そうなって初めて、エネルギー代謝のありがたみを感じるのです。

エネルギー代謝って大事だなと思う今日この頃です。運動時のエネルギー代謝の変化としては、ATPの枯渇が数秒でおき、ATPを再生させる系であるクレアチンリン酸の枯渇が数十秒で起き(激しい運動時の話)、グリコーゲンが分解されてグルコースを供給しますが、それも数十分で枯渇し、酸化的リン酸化、脂肪酸

ChemSketch(ケムスケッチ)でリン酸基の中の水酸基をイオンにする方法

ChemSketch(ケムスケッチ)では、どうすればリン酸基の中の水酸基をイオン化できるんだろうとしばらく悩んで、やっと方法を見つけました。

  1. メニューで Structure と Drawのうち、Structureを選ぶ。
  2. 変更したい水酸基-OHにカーソルをもっていくと、OHが四角い枠で囲われた状態になるので、(左)クリック。すると、点々で囲われたように表示が変わるので、この状態で右クリックし、現れるメニューからObject Propertiesを選択。
  3. C H n q V I N Aとならんでいるメニューのなかの、q (Charge)をクリック。
  4. すると今の場合 Value は0になっている(電荷はゼロ)ので、数値を-1に変更すして、applyをボタンを押す。

これで、 OH が  O- となり、めでたくイオン化されました。

 

ケムスケッチで水酸基をイオン化する方法がわかったところで、なぜカルボキシ基やこのリン酸の中の水酸基ーOHはHが電離するのに、アルコールの水酸基は電離しないんだろうという素朴な疑問が生じました。ネットであれこれしらべたら、要は、どっちがエネルギー的に安定か?という話です。アルコールの水酸基の水素が電離しないのは、電離してしまうとエネルギー的に安定しないから。一方、カルボキシ基やリン酸基の場合は、電離したほうが安定化するから。なぜ安定化するのかというと、「共鳴」するから。共鳴というのは、複数の同等の電子の配置が存在していて、電子がそれらの状態を全部とれるからということみたいです。カルボン酸だと、-C(=O)OHよりも -C(=O)O- のほうが、C(-O-)(=O)の配置もとれて共鳴できるというわけです。リン酸基も同様です。

補酵素NADHとNADPHとの違いは?NADPHは、脂肪酸、コレステロール、ヌクレオチドなど同化反応(高分子の生合成)で使われる電子供与体

生化学の勉強をしていると、NAD+, NADH, NADPH+, NADPH, FAD, FADH2といろいろ似たものが登場して頭が混乱させられます。たいていの場合、まずは解糖系、TCA回路、電子伝達系というエネルギー代謝経路を学び、その際にNAD+/NADH、FAD/FADH2が登場します。ところが、そのご、何かの機会でNADP+/NADPHが登場してきて、こんがらがるわけです。何が共通点で、何が相違点なのかを纏めておきます。

NAD+/NADH、FAD/FADH2、NADP+/NADPH は酸化還元反応で活躍する補酵素です(電子受容体(酸化型)/電子供与体(還元型))。

NADHは、Nicotineamide Adenine Dinucleotideの略。水素Hがついているので還元型(還元された状態)。NADHという名前の文字のうち、N,A,Dは略号で、Hだけは水素そのもので、還元型であることを示しています。

NAD+(酸化型)  + 2e- + H+  ⇔ NADH(還元型)

FADH2は、Flavin Adenine Dinucleotideの略。で水素が2つついているので(H2)、還元型。

FAD(酸化型)  + 2e- 2H+  ⇔ FADH2(還元型)

NADPHは、Nicotineamide Adenine Dinucleotide phosphateの略。水素Hがついているのは、還元型。

NADP+(酸化型)  + 2e- + H+  ⇔ NADPH(還元型)

NAD,NADP,FADはアデニンやリボース、リン酸エステルなど複雑な構造で圧倒されますが、これらは酵素による構造認識で重要なだけで反応に重要なのはニコチンアミドの部分やフラビンの部分だけです。それを知れば、複雑な構造を目にしてビビらなくて済みます。

下のの図中のニコチンアミドの6員環の中の炭素に、還元型では水素がひとつ付加して、N+の電荷もゼロになっています(NADHの構造式に描かれた2つの水素のうちの一つは、もともとついていたもの。NAD+では描かれていなかっただけです。)。

NADPは、NADにリン酸基がついたもので、それ以外の部分の構造はNADと同一です。このリン酸は、補酵素NADPが酵素に認識される際の構造的な特異性を生み出すために存在するものであって、リン酸基を他に供与したりするのに使われるものではありません。NAD+/NADHがエネルギー代謝(リン酸基が転移される反応が多い)で登場するため、紛らわしいので要注意。

  1. Protein Engineering for Nicotinamide Coenzyme Specificity in Oxidoreductases: Attempts and Challenges. Andrea M. Chánique1 and Loreto P. Parra Front Microbiol. 2018; 9: 194. Published online 2018 Feb 14. doi: 10.3389/fmicb.2018.00194 Different structural motifs enable the union of the coenzyme and give the specificity for NAD or NADP. Usually, enzymes preferring NADP have larger pockets with positively charged or hydrogen bond donating residues that interact with the phosphate group of the adenine ribose (Pick et al., 2014). NAD preferring enzymes contain negatively charged amino acids that generate repulsion toward NADP and form hydrogen bonds to the 2′-OH and 3′-OH of the adenine ribose (Petschacher et al., 2014).

NADHとNADPHとの違いは何かというと、NADHはエネルギー代謝(異化、つまり高分子の分解)の際に、電子受容体としてつかわれ、NADPHは同化反応(生体高分子の合成)の際に電子供与体として使われるという、使い分けです。

  1. Better than Nature: Nicotinamide Biomimetics That Outperform Natural Coenzymes. J Am Chem Soc. 2016 Jan 27; 138(3): 1033–1039. Published online 2016 Jan 3. doi: 10.1021/jacs.5b12252 Oxidoreductases, for example, rely on the nicotinamide coenzymes to supply them with the redox equivalents required to sustain their catalytic cycles. Two forms of natural coenzymes exist: the phosphorylated (NADP+/NADPH) and nonphosphorylated (NAD+/NADH) forms (Figure​Figure11A). Nicotinamide coenzymes essentially contain two structural motifs, the nicotinamide moiety conferring their electrochemical function (i.e., serving as an electron source or sink in the form of a hydride) and the adenosine dinucleotide moiety conferring the separation between anabolic and catabolic pathways. NADP is involved in anabolic redox processes, whereas NAD is mostly found in processes dealing with energy metabolism.

NADHとFADH2は、TCA回路で作られます。一方、NADPHは、ペントースリン酸回路で作られます。

NADPHの役割

NADPHの還元作用は、生体内で様々な役割を果たしています。

  1. 高分子の生合成(脂肪酸、コレステロール、アミノ酸、ヌクレオチドなどのde nove合成)
  2. 活性酸素種H2O2の消去(捕捉) (還元型グルタチオンGSHを再生あるいは抗酸化タンパク質チオレドキシン(TRX)を還元することによって)
  3. NADPH oxidases (NOXs) によるスーパーオキサイド (O2−) 産生の際の補酵素として

NADHやFADH2と違って、ATP産生に使われるわけではありません。

  1. NADPH-The Forgotten Reducing Equivalent. Cold Spring Harb Perspect Biol . 2021 Jun 1;13(6):a040550. doi: 10.1101/cshperspect.a040550. Navdeep S Chandel (PubMED)
  2. SOSA (Superoxide Radical Scavenging Activity) 技術用語解説 活性酸素消去(活性酸素捕捉)フリーラジカルとは対になっていない孤立した電子を持っている物質の総称で、一般的に不安定で反応性が高い。一重項酸素は酸素ラジカルではないが、広義の活性酸素に含まれる。

アミノ酸20個の構造式の覚え方:官能基や基本骨格で分類して覚えると簡単!必須アミノ酸9個(10個)も。

蛋白質を構成するアミノ酸は20個あります。丸暗記するのはきついですが、構造が似ているものを分類しながら覚えれば、なんとか覚えられそうです。

1番簡単な構造のグリシンとアラニン

一番簡単な構造のアミノ酸1つ:グリシン

側鎖はH-  なので、20個のアミノ酸の中で唯一α炭素が不斉炭素ではありません。

炭素の鎖のみからなるアミノ酸4つ:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン

アラニンは、側鎖がメチル基のみ  CH3-。グリシンの次に簡単な構造と言えます。

分岐鎖アミノ酸3つ

分岐鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids; BCAA)は、サプリなどでBCAAとしてお馴染みだと思います。アラニンの先にメチル基が2つついて枝分かれした構造なのが、バリン (CH3)2-CH2-

バリンより一つ分、炭素の主骨格が長いのがロイシン。(CH3)2-CH2-CH2-

ロイシンの枝分かれしたメチル基がひとつ根元側にずれたのがイソロイシン。

CH3-CH2(-CH3)-CH2-

これで6個覚えられました。

硫黄を含むアミノ酸2つ

つぎに、硫黄を含む2つを覚えましょう。

HS-C- の構造をもつのがシステイン。HS-CH2-

ちょっとかわっていて炭素と炭素の間に硫黄が挟まれて、

H3C-S-CH2-CH2- の構造をもつメチオニン。

水酸基を含むアミノ酸2つ

つぎは、水酸基をもつアミノ酸を覚えましょう。ベンゼン環に水酸基がついたチロシンはあとまわし。

アラニンの先端に水酸基がついた HO-CH2- を側鎖にもつのがセリン

炭素2個からなる骨格の内側のほうに水酸基がついた H3C-CH(-OH)- が スレオニン

さて、いよいよ、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸を覚えましょう。

酸性アミノ酸2つ

酸性になる理由はカルボキシ基を持つからです。アラニンの先にカルボキシ基がついたらアスパラギン酸(英語だとaspartate)。HOOC-CH2-

炭素の鎖が一つ分ながいのがグルタミン酸。HOOC-CH2-CH2-

酸性アミノ酸がアミドになった 2つ

カルボキシ基のOHがH2N-とおきかわってアミドになったもののうち、アスパラギン酸に対応するのが、アスパラギン。2HN-C(=O)-CH2-

グルタミン酸に対応するのが、グルタミン。2HN-C(=O)-CH2-CH2-

塩基性アミノ酸2つ

塩基性、いきます。炭素4つの鎖の先にアミノ基がついてイオン化しているのが

H3N(+)-CH2-CH2-CH2-CH2-  リジン。炭素4つの鎖。

側鎖の先のほうから考えた場合、先端の炭素に2つのアミノ基がついて、窒素を介したあと炭素が3つつながる主骨格の構造を持つのが、アルギニン。

H2N-C(=NH2 +) -NH- CH2-CH2-CH2- これも間にNが入っていますが、炭素の数は4つ。

ベンゼン環をもつアミノ酸2つ

さて次にベンゼン環をもつ2つを覚えます。

アラニンの先端にフェニル基がついた、そのまんまの名前のフェニルアラニン

フェニルアラニンのパラの位置に水酸基がついた、チロシン。さきほど水酸基をもつアミノ酸として、セリンとスレオニンを覚えましたが、チロシンにも水酸基があります。ただし、覚える都合上ベンゼン環をもつ2つとして覚えておくほうが覚えやすいと思います。

これで17個覚えました。残り3つは、環状構造を持ったアミノ酸です。

他の環の構造を持つアミノ酸3つ

イミダゾール(五員環で、Nが2つ)と炭素がつながったものを側鎖にもつのが、ヒスチジン。

インドール(六員環と五員環が複合した構造で五員環の角のひとつが窒素)と炭素を側鎖にもつのがトリプトファン。

さて20個目が、プロリンです。プロリンは構造が、ほかと比べると異質です。なにしろアミノ酸の共通要素であるαアミノ基が、側鎖と合体して環状構造を作ってしまっているのです。α炭素もその環状構造の一部になっています。

以上20個のアミノ酸でした。

ヒスチジン(イミダゾール)とトリプトファン(インドール)は少し覚えにくいので、何回も構造を紙に書き出してみる必要があります。あとは、比較的覚えやすいと思います。視覚的に形で覚えることプラス、構造を要素(官能基)にわけて、どんな要素(官能基)からなるかを覚えること。その際、酸性、塩基性などの性質も併せると頭の中で整理しやすいと思います。

必須アミノ酸

20個のアミノ酸、グリシン、アラニン、バリンロイシンイソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミンサン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジントリプトファン、プロリンの内、必須アミノ酸は、9個あり、バリンロイシンイソロイシンメチオニンスレオニンリジンフェニルアラニンヒスチジントリプトファンです。乳幼児の場合はこれらに加えてアルギニンも必須アミノ酸になります。

必須アミノ酸9個の覚え方ですが、構造を先に覚えていれば、

炭素の分岐を持つアミノ酸:バリンロイシンイソロイシンスレオニン

二重結合を含む環を持つアミノ酸、ただしチロシンはフェニルアラニンを水酸化すればいいので除外:フェニルアラニンヒスチジントリプトファン

塩基性アミノ酸ただしアルギニンは乳幼児のみ:リジン、(アルギニン)

残り一つがメチオニンです。

炭素の枝分かれだったり、二重結合を含む環だったり、ぱっと見複雑な構造を持つものというイメージでいいのではないでしょうか。それプラス、塩基性アミノ酸、そして、メチオニンと。

なお、上の構造式の図はケムスケッチ(Chem-Sketch)を利用しました(デフォルトで用意されているアミノ酸の構造式そのままです)。折れ線の角の点や分岐の中心の点は、炭素およびそれに結合した水素が省略されています。つまり折れ線の角の点は、-CH2- の意味です。分岐の場合(他の官能基が付いている場合)は、もちろん、炭素の手の合計が4本になるように水素の数がかわります。折れ線の端のメチル基CH3- は、省略してしまう描き方もありますが、ここではわかりやすさのためにあえて描いているようです。

また、アミノ酸のカルボキシ基やアミノ基は、生理的な条件下では電離していると思いますが、ここでは電離していない状態の構造が描かれています。

参考資料

  1. Chem-Sketch(構造式を描画するソフトウェア)
  2. Bruice Organic Chemistry

 

クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへ 作業仮説の設定 PICO/PECO FINER

クリニカルクエスチョン(CQ)とは何か

日常の臨床で疑問に思うことが何一つない臨床医はいないであろう.‥ 自分の行う意思決定すべてが証明された根拠に基づいていることはまったくないはずである.‥ 問いに対して明確で決定的な答えが得られることは少ない.というのも一般的にエビデンスレベルがもっとも高いと考えられているランダム化比較試験(RCT)の結果をもってしても,その研究が対象とした患者群と目の前の患者が完璧に一致することはほぼないため,絶対的な根拠とはなりえないからである.臨床現場において,あらゆる意思決定の段階で生まれるありのままの疑問,それが“CQ”である.(クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへ 整形外科)

クリニカルクエスチョン(CQ)の分類

  1. 病気や診療の実態を調べる
  2. 診断法を評価する
  3. 要因とアウトカムの関連性を調べる
  4. 治療・予防法の効果を調べる

参考:クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへ 整形外科

クリニカルクエスチョンが得られたら、次に、新規性、研究コスト、研究倫理などの確認をして、研究が実施可能となるようなリサーチクエスチョンにまで昇華させる必要があります。多少漠然としていた(抽象的だった)クリニカルクエスチョンをより具体的なものにして、検証可能な作業仮説(testable hypothesis)を導くのです。

PICO/PECO

FFINER;FIRM2NESS

以下、各科の先生がまとめたガイド記事のまとめです。

整形外科

  1. クリニカルクエスチョンからリサーチクエスチョンへ 整形外科71巻6号:514~519,2020

作業療法士

  1. 臨床家のための研究のすすめ:実践編 第1回「リサーチ・クエスチョンを作る」菅野圭子 作業療法33巻2号2014年4月(PDF

理学療法士

  1. D-3 理学療法研究方法論(EBPT含む) 日本理学療法士協会生涯学習課(2017年4)

薬剤師

  1. 医療現場の疑問を整理する 第1章 医療現場の疑問をリサーチ・クエスチョンにする