性とジェンダーの生物学的な基盤

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性同一障害(Gender Dysphoria)

性同一性障害(Gender Identity Disorder)は、生まれたときの身体的な特徴により同定された性と、自分自身が自分の性をどう考えているかが、一致しないことで、1953年にアメリカの内科医が“性同一性障害”の概念を報告したことが最初だそうです。性同一性障害は、精神疾患というよりも性の多様性の一部として理解したほうがよいという考え方が現在では広がっていることから、性同一障害という言葉の代わりに、性別違和(Gender Dysphoria)という呼称に置き換えられているそうです。

  1. 性同一性障害について 福岡大学医学部精神医学教室 助教 縄田秀幸 H27年2月掲載 北九州市 いのちとこころの情報サイト

脳の解剖学的な男女差

下の西先生の動画レクチャーによれば、男性の場合は胎児(18~24週)の時期に、精巣で作られたアンドロゲンが脳に働きかけて(アンドロゲンシャワー)、脳を男性化するのだそうです。このシグナルがない女性の場合はそのまま女性の脳になるのだそう。その差となるのが、17~21週ころに脳でおこる神経細胞死で、アンドロゲンシャワーがこの細胞死を抑制する結果脳が男性化するのだそう。アンドロゲンシャワーを浴び得ていない女性の胎児の脳は細胞死が予定通り生じて、女性化した脳になるという仮説です。

UCLAのRoger Gorskiの研究(1990)によれば分界条床核(ぶんかいじょうしょうかく) Bed nucleus of stria terminalis (BNST)の大きさが女性よりも男性のほうがずっと大きい(2倍以上)のだそう。

別の研究で、オランダのDick F. Swaabの研究によれば前視床下部間質核(ぜんししょうかぶかんしつかく)Interstitial nucleus of the anterior hypothalamus (INAH)の大きさが男性の方が大きいのだそう。

解剖学的な差は見つかっているとして、それと性自認とどうつながるのか(つながらないのか)のでしょうか。Kruijvert et al., 2000の論文によると、体が男性で性自認が女性の人(Male to Female Transsexual; M to F)の場合には、分界条床核のソマトスタチン陽性神経細胞の数が「女性と同様」で男性の半分くらいしかなかったそうです。ちなみに男性のゲイの人の場合には、男性と差がなかったのだそう。このことから分界条床核はジェンダー・アイデンティティと関係があると考えられているそう。

また、INAHに関しては、同性愛の男性でも女性と同じ大きさであったことから、性的な指向性に関係するのではないかと考えられているとのこと。

では大脳皮質においても性差があるのでしょうか。『話を聞かない男 地図が読めない女』(2002年)という本が昔ベストセラーになりましたが、どうやら違いがあるようです。ブロックを空間で回転させるように頭でイメージするテストは男性のほうが成績が良かったという論文があるそう。また、別の研究ではBrain activation during human navigation: gender-differnet neural networks ans substrate of performanceという論文があるそう。

Grön, G., Wunderlich, A., Spitzer, M. et al. Brain activation during human navigation: gender-different neural networks as substrate of performance. Nat Neurosci 3, 404–408 (2000). https://doi.org/10.1038/73980

これによると三次元迷路を学習させたときに男性だけは海馬もつかっていたのだそう。

アンドロゲンシャワーの有無が脳の性を決めるのではないかという仮説を支持する報告もあるのだそうです。例えば、出産前の助成がアンドロゲン作用をもつ薬を服用していた場合に生まれてきた女性の空間認知能力が普通の女性よりも高かったとか、逆に、精巣機能がわるくてアンドロゲンが十分に出ていなかった男性の場合には空間認知テストの成績が悪いなど。

他の脳の性差としては、脳梁の大きさが女性のほうが大きいということが知られているそう。脳梁の中でも大きい部分が、言語中枢(ウェルニッケ中枢)が左右の脳に連絡する部分だそう。また、女性のほうがおしゃべりするときに脳のたくさんの部分を活性化させているのだそう。

ラットの実験で、メスのほうがよくしゃべるという論文もあるそう。

Foxp2 mediates sex differences in ultrasonic vocalization by rat pups and directs order of maternal retrieval. https://www.jneurosci.org/content/33/8/3276.long

この論文ではFoxp2タンパク質の男女差を調べていて、4歳のとき女の子のほうがタンパク質菱が多かったそうです。

なお、胎生期の臨界期のアンドロゲンシャワーだけでなく、思春期になってから分泌されるアンドロゲン(男性の精巣から)やエストロゲン(女性の卵巣から)も脳の働きに作用しているという研究や考え方も最近ではでてきているそうです。このレクチャーでは、環境要因(その人の生き方)も関係するのではないかと補足していました。

  1. ISOUKAIx女性研究者 ③西真弓先生 「脳の性差」 ISOUKAIx29 チャンネル登録者数 430人
    1. Sorry to interrupt, dear, but women really do talk more than men (13,000 words a day more to be precise) 
  2. Are There “Male” and “Female” Brains? SciShow Psych チャンネル登録者数 83.2万人 「脳に性差は存在するのか?」という疑問に対する答えは「YES]であります。脳の機能や構造に性差は存在します。(2分22秒~)
  3. Are male and female brains different? – BBC REEL BBC Reel チャンネル登録者数 48.5万人 ”Have wee actually found any differences between the brains of MEN and the brains of WOMEN?” ”The answer is: NO.” (1分12秒~)

アンドロゲン・シャワー仮説

下の創設では、アンドロゲンシャワーは性自認には影響しないと述べています。

Increasing evidence confirms that prenatal androgens have facilitative effects on male-typed activity interests and engagement (including child toy preferences and adult careers), and spatial abilities, but relatively minimal effects on gender identity.

Curr Opin Behav Sci. 2016 Feb; 7: 53–60. doi: 10.1016/j.cobeha.2015.11.011 PMCID: PMC4681519 NIHMSID: NIHMS740435 PMID: 26688827 How Early Hormones Shape Gender Development Sheri A. Berenbauma and Adriene M. Beltzb

  1. Early androgen exposure and human gender development Melissa Hines,Mihaela Constantinescu, and Debra Spencer Biol Sex Differ. 2015; 6: 3. Published online 2015 Feb 26. doi: 10.1186/s13293-015-0022-1 PMCID: PMC4350266 PMID: 25745554

ジェンダーの種類

  1. Sex Assigned at Birth and Gender Identity: What Is The Difference? AMAZE Org チャンネル登録者数 25.6万人

 

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