rTMS療法を用いたうつ病治療に関する科研費研究

  1. 培養神経細胞を用いた反復経頭蓋磁気刺激法の効果機序の解析 2021-04-01 – 2024-03-31 池田 哲朗 青森大学, 薬学部, 准教授 (10360489) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は非侵襲的に脳内に電流を発生させ、うつ病、統合失調症、神経変性疾患や脳血管障害等による高次脳機能障害に効果があると考えられている。しかし、rTMSの作用機序は不明な点が多く、その解明は急務である。申請者は、rTMSがマウス脳内で抗うつ薬の作用するノルエピネフリントランスポーター(NET)を変動することを報告した。より詳細に神経様細胞PC12でrTMSの効果を調べたところ、NETとそのドミナントネガティブ型NETbを変動していた。そこで、NETとNETb遺伝子を神経細胞に共発現し、未知のシグナルカスケードが変動するのかどうかを調べる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. うつ病へのrTMS治療の機序を解明し効果予測指標を確立する包括的神経生理学的研究 2021-04-01 – 2024-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:治療抵抗性うつ病に対するrTMS治療が2019年6月に保険収載されたことは精神科臨床において画期的なことであるが、臨床効果の個人差および邦人での治療エビデンスの不足という問題が指摘されている。本研究では、多施設で臨床データを共有して豊富な症例数のもとrTMSの治療効果を予測する臨床指標を探索し、さらに生物学的指標として神経炎症マーカ―、脳画像(構造・機能)、脳波を測定し、物質レベルの異常と脳構造的・機能的結合障害を評価してrTMS治療の生物学的基盤を明らかにし、治療反応の予測指標を確立する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 反復経頭蓋磁気刺激による脳の長期的な可塑性誘導を支える神経生理学的基盤の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 中村 晋也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20570055) 小区分51010:基盤脳科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、近年本邦においてもうつ病治療の保険適用になるなど、精神・神経疾患に対する有用な治療法として注目されている。rTMS治療においては通常数週間に及ぶ施術によりその治療効果が現れることが多く、これは長期にわたる脳の可塑的変化によるものと推定されているが、その作用機序については不明な点が多い。そこで本研究では、サルをモデル動物とした基礎実験により、rTMSが脳の長期的な可塑的変化をもたらす神経生理学的基盤について直接的な科学的根拠を提供することを目指す。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. アセチルコリン/GABA機能に着目した老年期うつ病へのrTMS治療の有効性の検討 2020-04-01 – 2023-03-31 喜多 彬 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20735914) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要:本研究は2019年6月に保険収載された治療抵抗性うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療の有効性について、臨床的検討が不足している老年期うつ病への有効性を明らかにすることを目標としている。なかでも老年期うつ病に併存しやすい認知機能障害の病態を神経生理学的に客観的に評価することを目標にppTMSとSAIを用いてGABA機能、アセチルコリン機能を測定する点で独自性が高い研究であり、rTMS治療の生物学的基盤の解明につながる可能性がある。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 反復性経頭蓋磁気刺激による治療抵抗性うつ病の治療メカニズムの探索 2020-04-01 – 2023-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:薬剤治療抵抗性うつ病患者に対する反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)による治療の前後に、脳脊髄液・血液・唾液中のバイオマーカー、頭部MRI検査及び前頭葉機能検査を行い、それらの結果から認知機能障害を含むrTMSの治療効果のメカニズムを探索することを目的とした研究である。さらに、うつ病における神経炎症、特にミクログリアのうつ病における関与に着目し、得られた血液サンプルから作成できるミクログリア様細胞(induced microglia-like cells; iMG)のうつ病への関与について探索する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 神経炎症・酸化ストレスに着目したうつ病へのrTMSの治療機作と反応予測指標の探索 2020-04-01 – 2023-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. rTMSの脳卒中後うつ改善効果と神経可塑性関連物質との関係性の調査 2021-03-01 – 2023-03-31 新見 昌央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30760970) 若手研究(B) 研究開始時の概要:反経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)はうつ病に有効であることがわかっており、薬物治療とは異なる治療方法として、うつ病だけではなく、さまざまな神経疾患の新しい治療法として期待されている。しかしながら、rTMSによる治療効果がどのようなメカニズムによって生じているのかは不明な点が多い。そこで本研究では脳卒中後うつ患者においてrTMSの治療前後で生体内のバイオマーカーを測定することでrTMSが生体にもたらす影響を調査する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動療法によるリハビリテーション施行のために我々の施設に入院した30歳から90歳の慢性期脳卒中患者を対象とした。対象患者のうち、62名に対しては14日間のリハビリテーション治療と反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)の併用療法を行った。対象患者のうち、33名に対しては14日間のリハビリテーション治療のみ行った。治療前後のうつ状態の評価をBeck depression inventoryにて行い、治療前後の血液検体を採取した。採取した血液検体を用いて、NMDA受容体関連物質である、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、L-セリン、D-セリンの血中濃度測定を行った。その結果、Beck depression inventoryによるうつ状態の評価において、いずれの治療群でも治療前後で有意にうつ状態は改善していた。NMDA受容体関連物質の治療前後の血中濃度変化については、リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では、リハビリテーション治療のみを行った群に比して、血中のD-セリンが有意に減少していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群ではグルタミン、グルタミン酸、グリシンが減少傾向にあり、リハビリテーション治療のみを行った群では増加していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では血中のL-セリンは増加し、リハビリテーション治療のみを行った群では減少していた。
  8. マインドフルネスへの経頭蓋直流刺激tDCSによるオーギュメンテーション法の確立 2018-04-01 – 2020-03-31 西田 圭一郎 関西医科大学, 医学部, 講師 (40567567) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「不安」や「恐怖」は危険な時に起こる感情で、状況を解決するために動き出す動機になるなど、生きていく上で必要かつ重要である。しかし、最近は社会の変化に伴い、人前で話す、といった今までと種類の異なる「不安」を感じる状況が増加している。
    過度の「不安」は健康的で充実した毎日を送る、という人として基本的な生活を送ることが難しくなることがある。また、苦手な状況を避け続けることで社会生活に問題を抱えると、不安障害やうつ病といった、色々な精神の病気を引き起こすことがある。つまり、健康な状態でも「不安」の調節はメンタルヘルス上重要となる。このような背景のなか、「マインドフルネス」というリラックス法が近年注目されており、専門書のみではなく、一般書でも取り上げられている。
    一方脳刺激法は臨床での応用を目指して様々な試みが行われており、経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation: 以下tDCS)といった手法が注目されている。tDCSは装置自体がシンプルであり、比較的小さく、安い、といった大きな利点がある。2000年代になりtDCSによって脳の神経細胞の興奮を抑えたり、上げたりできることが明らかになって以降、世界的に論文数が増えており、様々な効果報告が増えてきている。
    この研究の最終的な目的は「マインドフルネス」に「tDCS」を組み合わせ、相乗効果を生み出す手法の開発である。そのため、脳の神経ネットワークの変化に注目し、マインドフルネスと同時にtDCSを施行した時の神経活動や気分・感情の変化などを調べることを目的とする。
  9. T1w/T2w比画像と領域間時間ずれを考慮したネットワーク解析によるうつ病の研究 2018-04-01 – 2021-03-31 石田 卓也 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (10549728) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、昨年T1w/T2w比画像を作成するために確立したMRI撮像プロトコルに基づいて、うつ病患者を含めたMRIの被験者の撮像を行なっている。また、T1w/T2w比画像を用いたうつ病の皮質ミエリン異常を示す脳領域間の因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法(Dynamic Causal Modelling)はこれまではstochastic modelという手法が用いられていたが、近年はより計算的に効率的でかつ正確なspectral modelの手法が開発されてきた。そこで、昨年度施行したHuman Connectome Project (HCP)から健常者100人の安静時機能的MRI画像を用いて3つのうつ病関連ネットワークである側坐核ネットワーク、扁桃体ネットワーク、腹内側前頭前野ネットワークとうつ病への治療として使用される反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の刺激箇所である左右背外側前頭前野(DLPFC)におけるDCM解析に新たにspectral DCMを行い、stochastic modelよりも安定した結果を得た。そこでは、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの機能的結合は主にうつ病関連ネットワークからDLPFCへの方向性を持った情報の流れから説明されることがわかった。さらに、もう一つの因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法であるGranger causal modellingの解析法を組み合わせることで、これまでの相関をとるだけの機能的結合だけではわからなかった、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの結びつきの左右差や、DLPFCがどのうつ病関連ネットワークにより結合しているかなどを見ることができることを示した。これは、うつ病患者のrTMS治療においてどの刺激箇所が最も効果が高いかを個人のうつ病患者ごとに予測できる可能性を示している。
  10. 経頭蓋磁気刺激誘発脳波を応用した薬物治療抵抗性うつ病の神経生理学的病態の解明 2018-04-01 – 2022-03-31 野田 賀大 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (20807226) 小区分51030:病態神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は前年度以上にTMS-EEG実験の遂行が円滑となり、リクルートも順調に進んだ。2019年3月時点で、治療抵抗性うつ病患者の組み入れは、既に目標人数の30名に到達し、対照健常被験者は16名まで組み入れと実験を終えている。本研究では、TMS-EEG実験と同時期にマルチモーダルMRI撮像、研究採血、包括的臨床評価・認知機能検査も実施している。TMS-EEG実験では、左背外側前頭前野におけるコリン作動性神経生理機能(SAI)・GABAA作動性神経生理機能(SICI)・グルタミン酸作動性神経生理機能(ICF)・神経可塑性神経生理機能(PAS)パラダイムを実施しているが、これらの生物指標・臨床認知尺度も網羅的・包括的に測定している。現時点でのプレリミナリー解析結果では、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、ICF指標におけるグルタミン酸作動性興奮機能が相対的に上昇している可能性が示唆された。また、PAS指標による神経可塑性機能に関しては、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、神経可塑性の誘導発現が低下している可能性が示唆された。この結果は、我々の先行研究結果(Noda et al., Depress Anxiety. 2018)を再現するものとなった。
  11. 多発性硬化症の認知機能障害に対する、経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の開発 2018-04-01 – 2021-03-31 中辻 裕司 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332744) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:多発性硬化症(MS)患者に対して疾患修飾薬(DMD)の早期使用により、ある程度の脳萎縮進行予防効果が期待されるが、高次脳機能障害を改善できるエビデンスレベルの高い報告は無い。また視神経脊髄炎(NMOSD)も病初期から認知機能障害を呈し、有効な治療法が無い。経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)や、経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)はワーキングメモリー機能、脳活性化、脳の機能的接続性を高めるという報告があり、本研究ではMS、NMOSDの高次脳機能障害に対してrTMSを用いる予定であった。しかし、より非侵襲的かつ簡便であり、将来の汎用性が高いと考えられ、さらに当院での使用経験が豊富なtDCSを用いてその有効性を検証することを目的とし、以下の方法で本研究を遂行するものである。
    富山大学附属病院脳神経内科外来に通院あるいは入院されているMSおよびNMOSDの患者で本臨床研究への参加に書面で同意をいただいた患者を対象とし、2週間の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を施行し、療法の前後で高次脳機能を評価し、その効果を検証する。ベースラインの評価としてtDCS療法前に認知機能評価をRao’s Brief Repeatable Battery of Neuropsychological Tests (BRBN)、疲労度を簡易倦怠感調査票 (BFI)、うつをベックうつ病調査表 (BDI)、重症度を重症度分類総合障害度(EDSS)で評価する。また認知機能に関連した異なる脳領域の機能的接続性の評価はresting stateでfunctional MRI (fMRI) を用いて行う。BRBN、BDI、BFI、EDSSはtDCS療法終了直後(2週)、4週、および12週に再評価し、MRI/fMRIは4週に再検する。
  12. ナビゲーションシステムを用いた小児期発症てんかんに対する反復経頭蓋磁気刺激療法 2018-04-01 – 2021-03-31 下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403185) 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:小児期発症の難治てんかんの治療としての反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の可能性について検討する研究である。 rTMSは刺激頻度を低頻度刺激にすることにより神経活動を抑制的導き、一方高頻度刺激をすることにより神経活動を興奮性にも誘導することができる。成人領域においてはうつの治療として保険適応があり、重篤な副作用もなく安全性も検証されている。また脳卒中後のリハビリテーションにおいて神経疎通性の向上のためにリハビリと組み合わせてTMSを行うなど様々な疾患に対象を広げている。一方、小児におけるTMS治療の経験は我が国ではほとんどなく、またてんかんの治療として使う場合にはてんかん原性領域あるいはてんかん活動の広がりを見据えた領域を対象として刺激を行う必要があるため、ナビゲーションシステムを用いてターゲットを絞って刺激することが望ましい。従って、小児期発症のてんかん治療に用いる場合にはこれらの技術的な点において課題は多い。当院ではrTMSシステムを導入し、成人においてrTMSをナビゲーション下で行うことはできるようになった。思春期以上の小児においても有害事象なく行えることを確認した。ただし刺激閾値を設定するためのMEPにはばらつきが大きく安定しないことがわかった。患者の状態および施術者の技術的な要因が考えられる。治療前後には脳波の比較により治療効果を判定する必要があることからてんかん患者の他の様々な治療の前後における脳波の解析を行い、spike rate、周波数解析を含めた指標の変化について検討を行っている。
  13. rTMSによる顕著性回路を介したアンヘドニアの治療メカニズムの解明 2018-04-01 – 2021-03-31 小高 文聰 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10349582) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究計画は反復経頭蓋磁気刺激療法による「アンヘドニア」の治療メカニズムを探索することを目的としている。その評価に安静時機能的MRIを用いたlarage scale networkの評価と、行動指標として「アンヘドニア」にかかわる精神症状の評価と「handgrip force task」と名付けた持続握力計を用いた行動モデリングを行う予定であった。
    2019年度は治療抵抗性うつ病に対して、反復経頭蓋磁気刺激療法の治療前後の安静時機能的MRIの測定を開始した。
    神経画像の撮像に関しては、事前に撮像データのノイズ低減のための撮像パラメータ調整を行った。その結果、撮像時間を短縮しつつ位相によるノイズを大幅に減することが可能となった。被験者のエントリーは堅調に推移しており、2020年度に20例前後のデータセットが集まり次第、予備解析を行いsalience network内の脳領域の機能的結合解析を行う予定である。ドパミンあるいはノルアドレナリン神経系の機能的結合抽出のために、神経メラニンの撮像も行っている。
    行動指標に関しては、気分障害を対象として抑うつ症候とドパミン神経系にかかわる行動、特にアンヘドニアを反映する精神尺度である「SHAPS」との関係を調べるための予備評価を行った。結果は現在解析中である。「SHAPS」を用いた症状尺度に加え、アンヘドニアを測定するためのhandgrip force task(HFT)を用いる予定であった。HFTは健常者への予備実験の段階で、握力計の把持について患者負担が大きいことが予測されたため、被験者への導入は一時見送る形とし、質問紙によるeffort discounting課題に切り替えを行う予定である。
  14. うつ病重症度や自殺願望を予測する新たな臨床検査法の確立 2018-04-01 – 2021-03-31 瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:メンタルヘルス分野に対する客観的な臨床検査法の開発が世界規模で望まれている。我々は、質量分析装置を駆使し、臨床検体を用いた新たな検査技術の開発およびそれに基づくバイオマーカーの探索に取り組み、これまでに、未服薬のうつ病患者の検体から重症度に関連する代謝物バイオマーカーを発見するとともに、血しょうの「遊離型代謝物」に着目した新たなバイオマーカーの実証研究を進めている。検体は引き続き九州大学病院精神科との共同研究によって収集された未服薬の大うつ病患者および健常者からの血しょうを用いている。今年度は、遊離型代謝物の結合タンパク質探索を進める一方で、個々人の性格(パーソナリティ)情報を用いた層別化がうつ病の血液バイオマーカーの性能を高めるという新たな発見に遭遇し、当初想定していた以上の研究成果を得ることができた。
  15. 治療抵抗性統合失調症における興奮抑制バランスの破綻:TMS-EEG/MRS研究 2018-04-01 – 2022-03-31 中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383866) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慶應義塾大学病院だけでなく関連病院の協力を得て、順調に被験者のリクルートを進めている。現時点で本研究に関する有害事象、実施計画書からの逸脱は認められていない。また脱落例も認められていなく、本研究における研究全体の基本的な手順は遵守されていると判断する。TMS誘発脳波研究の実験系を確立し、その後、TMS誘発脳波の解析パイプラインを確立し、GABA(A)受容体介在性神経生理機能(short-interval intracortical inhibition: SICI)検査およびグルタミン酸NMDA受容体介在性神経生理機能(intracortical facilitation: ICF)検査の指標を定量化することが可能となった。
  16. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激の有効性と効果予測に関する研究 2017-04-01 – 2021-03-31 大久保 裕章 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50792115) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)のうつ病への治療効果を包括的に検証することを目的とする。近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy; NIRS)VBM(Voxel Based Morphometry)を用いて、rTMSの有効性判定におけるNIRSの有用性および脳形態との関連を明らかにするものである。本研究により、うつ病に対するrTMSの有効性を予測することが可能となれば、rTMSを新たな治療の選択肢として患者に提供できるようになることが期待できる。
    これまでに得られた結果の一部について検討し、平成29年6月に開催された第113回日本精神神経学会学術総会にて「うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激法の効果の検討」を発表し、優秀演題賞を受賞したことについては前年度の同報告で述べた通りである。現在、うつ病症例をさらに多数収集し、結果を論文化することを目標としている。
  17. 経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究 2017-04-01 – 2019-03-31 柴崎 千代 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (10790561) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。
    平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。
    平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。
  18. ヒト前頭前野の可塑的変化に基づく脳刺激の最適化と個別化 2017-04-01 – 2021-03-31 中村 元昭 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:令和元年度は、RCTの解析を実施して、研究計画を一部変更して発達障害者を対象としたデータも取得した。うつ病患者計25名が反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のRCTにエントリーして、7名はエントリー基準に合致せず、18名が3群にランダマイズされた。rTMS介入の前後において、頭部MRI、DTI、脳波のデータを縦断的に取得した。rTMSの総セッション数は、347セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が24.2%認められ、脱落者は1名であった。安全性情報に関しては、脳プロ・DecNef安全性検討委員会に定期報告を行い、外部委員の判断も含めて、安全性に問題のないことを確認することができた。刺激プロトコールとしては、iTBS(間歇性シータバースト刺激)やQPS(反復単相性4連発磁気刺激法)といった新規性の高い刺激プロトコールを安全に実施することができた。有効性に関しては、3群共に有効性が示されたが、QPSによる有効性が最も優れていた。認知機能については、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、言語流暢性課題、対連合記憶課題、作動記憶において有意な改善が認められ前頭葉機能との関連性が示唆されたが、刺激プロトコールによる違いは認められなかった。また、発達障害当事者13名と定型発達者16名に対し、iTBS・cTBS・シャム刺激のrTMSを行い、その前後で実行機能、注意機能を評価した。rTMSの総セッション数は、87セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が19.2%認められ、脱落者は0名であった。
  19. 反復性経頭蓋磁気刺激による大うつ病の治療メカニズム及び治療反応性予測因子の探索 2017-04-01 – 2020-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:2013年8月より治療抵抗性うつ病患者に対しrTMSを開始し、2020年3月までで、32症例に対しrTMSを実施した。これまでの検討から、rTMS治療により一部の前頭葉機能の改善及び異方分画性(fractional anisotropy: FA)の増加を認めたものの、前頭葉機能の改善とFAの増加との間には相関を認めなかった。また、rTMS治療によって、rTMS治療前後で炎症性サイトカイン単独(IL-1β, IL-6, TNF-α)では有意な変化を認めなかったが、一部の認知機能の変化量とIL-1βの変化量とが有意な相関を認めた。研究実績の概要:
  20. 認知症治療薬はミクログリアを含む脳神経血管機構にどう作用するのか 2017-04-01 – 2020-03-31 溝口 義人 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60467892) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アルツハイマー型認知症(AD)の治療で最も用いられている認知症治療薬ドネペジルには病態そのものを改善する働きはなく、進行するもの忘れに対して対症療法的にしか働かないものと報告されている。しかし、それらの報告は脳内のグリア環境を想定せず、ニューロンにのみ着目した知見による。本研究により、ドネペジルは脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに直接働き、ADを発症させる引き金となるアミロイドβの貪食能(除去する能力)を増強する働きも持ち合わせている可能性が高いことを初めて報告した(Haraguchi, Mizoguchiら,J Neuroinflammation 2017他)。研究実績の概要:
  21. 非侵襲脳刺激法の統合失調症治療にむけた臨床症状及び客観的指標での検証 2016-04-01 – 2019-03-31 池田 俊一郎 関西医科大学, 医学部, 助教 (40772231) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)が注目されているが、本研究では統合失調症の認知機能障害、精神病症状に対するtDCSの有効性、安全性を検証し、臨床応用にむけたエビデンスを構築することを目的とした。うつ病患者への研究も行い国内外の学会で発表した。また、Clinical EEG and NeuroscienceとClinical Neurophysiologyなどを中心に筆頭著者として3本、その他、共著者として論文化した。結果としては、tDCSの統合失調症への効果は限定的であり、また、実験的な段階であることがわかり今後もさらに症例・経験を積むことが必要である。研究実績の概要:
  22. うつ病を伴う強迫性障害に対する経頭蓋磁気刺激法の神経画像研究 2016-04-01 – 2019-03-31 中前 貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50542891) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では強迫性障害(OCD)に対する反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性について文献的考察を行った。刺激部位の候補として、背外側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、補足運動野が考えられたが、現時点ではどの刺激部位が最適かを結論付けることができず、さらなる知見の蓄積が必要と考えられた。
    また、OCD病態生理を解明するために、OCD群と健常群の拡散強調画像について、脳内の主要な白質線維を自動的に描出する解析手法を用いて比較したところ、OCD群における大鉗子と帯状束の異常が見出された。OCDの病態には皮質-線条体-視床回路以外の後頭葉や側頭葉領域も関与している可能性が示唆された。研究実績の概要:
  23. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。研究実績の概要:
  24. 神経ネットワークに着目した治療抵抗性うつ病へのECTとrTMSの治療機作の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 山田 信一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70549716) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:双極性障害(BD)群、うつ病(MDD)群においては、HC群と比較し、脳梁を含む広範な脳領域でFA値の低下が認められた。双極性障害(BD)群において平均FA値の低下と言語性記憶課題の低成績との有意な相関が認められ、うつ病(MDD)群において平均FA値の低下と数字順列課題・トークン運動課題・符号課題の低成績との有意な相関が認められた。本研究の結果は、気分障害では白質神経線維の微細構造という解剖学的なレベルの異常が共通して存在し、それぞれにおいて特異的な認知領域と関連していることを示唆する。研究実績の概要:
  25. 口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激による治療戦略 2015-04-01 – 2019-03-31 成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 客員教授 (10155997) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、口顎ジストニアのQOLならびに皮質活動性に対する一次運動野への経頭蓋磁気刺激の効果を検討した。口顎ジストニアは、健常者と比較して、Symptom Checklist-90-R(SCL-90R)による抑うつと身体化、ならびに口腔QOLと身体QOLに有意な変調を示した。口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激は、術前と比較して、SCL-90Rによる抑うつと身体化、口腔QOL、さらには皮質活動性(運動前野と補足運動野、一次感覚運動野)に有意な改善を示した。以上のことから、口顎ジストニア患者への経頭蓋磁気刺激は、精神心理、口腔QOL、一次感覚運動野口顎領域の皮質活動性に有意な改善を示唆した。研究実績の概要:
  26. 治療抵抗性うつ病のGABA機能評価によるrTMSの治療機作と反応性予測指標の解明 2015-04-01 – 2019-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究開始当初の目的は、治療抵抗性うつ病におけるGABA機能の障害を示し、GABA機能の障害とrTMSへの反応性の関連を明らかにすることであったが、脳の機能障害の評価には新しい脳構造・機能画像解析を用いて脳内神経ネットワーク障害でも評価することとした。うつ病に対するrTMSが治療機器の国内承認が遅れたために延期となり、脳構造・機能画像解析によるrTMSの作用機作と治療反応性の予測指標の解明を優先した。これにより、精神疾患に対する種々の脳構造・機能画像解析法を開発するとともに、それらの手法によって精神疾患の病態研究について多くの研究の成果を得ることができた。研究実績の概要:
  27. うつ病患者の自伝的記憶の概括化に対する治療法の検討 2015-04-24 – 2018-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究は順調に進捗し,成果をあげることができた。本年度は最終年度にあたるため,前年度から引き続き収集されたデータを統合的に解析しまとめた。具体的には,うつ症状を有する者および健常被験者を対象に,これまでの申請者の検討で治療の有効性が示唆された行動活性化プログラムを適用し,その前後で記憶の概括化の評価とfMRIによる脳機能測定を実施した。当該プログラムではその個人にとって快感情が随伴するような行動を特定し,それを増やす計画を作成・実施しながら行動を活性化することを目的として作成された心理療法プログラムである。よりうつ症状の高い症例については,将来の目標を設定しそれに沿った行動を増やすことで回避行動を減らすプログラムも加えられた。これらのプログラムはうつ病の治療に効果があることが示されているが,同時に行動を増やすことで記憶情報が増え概括化が減少する可能性が考えられたため本課題に適用した。解析の結果,プログラム前後で記憶の概括化が減少した症例が一定数みられ,その改善度とfMRIによる安静時脳機能結合性評価の得点が関連することが明らかになった。これらの検討内容は現在,関連学術領域に公表すべく準備中である。近年,うつ病患者の再発要因としての記憶の概括化に対する介入の必要性が指摘される中,効果的な治療法の開発には至っていなかった。申請者の試みはいまだ先行例がなく行動変容による記憶の概括化の変化およびその神経基盤までも明らかにしようとしたものであり,再発が多いうつ病治療への新規介入提案が実現でき大いに有益である。
  28. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。研究実績の概要:
  29. 統合失調症におけるアセチルコリン、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連 2014-04-01 – 2017-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は、経頭蓋磁気刺激を用い、統合失調症のアセチルコリン機能、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連を検討することである。2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)を用いたGABA/グルタミン酸機能の評価では、統合失調症における皮質興奮性の増強と認知機能障害、皮質興奮性の増強と罹病期間の関連が明らかになった。アセチルコリン機能の評価については、経頭蓋磁気刺激と正中神経の電気刺激を組み合わせ、アセチルコリン機能を反映するとされるShort latency afferent inhibition(SAI)の簡便な測定法の開発に取り組み、健常者を対象にデータを収集した。研究実績の概要:
  30. 経頭蓋磁気刺激による気分変調に伴う脳活動の変化のPET測定-霊長類モデル研究 2014-04-01 – 2017-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アカゲザルを対象として、内側前頭前皮質の腹側部(vmPFC)に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(lf-rTMS)を行い、それが抑うつ状態を誘発することを見出した。一方で、前帯状回後部(pACC)や、その他の領域にに対する lf-rTMS では、そのような症状が誘発されることはなかった。これら3頭のサルについて、内側前頭皮質腹側部刺激、前帯状回後部刺激、および、内側前頭皮質腹側部へのシャム刺激を行った後の、安静時脳活動を fMRI にて計測した。このデータの解析によって、正常時と抑うつ状態で、どのような脳活動の違いがあるのかが明らかになることが期待される。研究実績の概要:
  31. 慢性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激のメカニズム解明 ラットモデルのfMRI解析 2014-04-01 – 2017-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:難治性神経障害性疼痛に対して反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の需要が高まっている。本研究は11.7Tという高磁場のMRIを用いて、坐骨神経を結紮する慢性疼痛モデルラットの詳細な画像解析をして、その病態を究明し、rTMSの最適な刺激条件を同定することを目的とした。ラットにrTMSを施行するための麻酔や磁気刺激装置、筋電図の準備を整えた。7Tの先行研究に基づいた麻酔や撮像パラメータに準じて、11.7TのMRIでの撮像を行い、解剖的MRI撮影に成功した。しかし今回の11.7TのMRIは動物を縦入れするタイプのもので、持続した麻酔した状態のラットの安静時機能的MRI撮影を安定して行うことはできなかった。研究実績の概要:
  32. 脳部位間結合性の包括的な神経生理学的検討による統合失調症と気分障害の病態解明 2014-04-01 – 2018-03-31 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:統合失調症、大うつ病、双極性障害などの白質異常をMRIで検討した。MRI拡散テンソル画像/異方性係数FA、安静時機能MRI/機能結合解析、T1/T2比ミエリン強調画像を用いた。統合失調症ではミエリン障害が広範な領域で確認され、血中ω-3脂肪酸と認知機能が相関した。双極性障害と大うつ病では共に前頭葉を結ぶ脳梁でFA値低下が解析を変えても確認された。大うつ病ではFA値と実行機能、注意機能が相関した。双極性障害では左右半球・体制感覚運動ネットワークの機能的結合が躁病スケール値と相関した。次の課題はrTMS、ω3脂肪酸による神経ネットワークの改善と治療効果の確認である。研究実績の概要:
  33. 気分障害・適応障害における反復経頭蓋磁気刺激法を応用した鑑別診断法の検討 2014-04-01 – 2017-03-31 青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)に際する脳の反応性パターンに違いに基づき、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害)、および適応障害の脳機能の特徴を明らかにし、鑑別診断への応用可能性を検討するものである。大うつ病性障害では、明らかな刺激中の反応を認めず、双極性障害では健常者と同様の変化を示し、適応障害でも健常者と同様の変化を示し、刺激時間として60秒間、120秒間の2設定の検討でも同様の反応を認めた。反復経頭蓋磁気刺激中の対側脳機能反応性は疾患特異的な反応を示していると考えられ,鑑別診断に利用できる可能性への示唆が得られた。研究実績の概要:
  34. 急性期脳卒中の内側皮質に対する深部rTMS 2014-04-01 – 2017-03-31 佐々木 信幸 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60328325) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性期脳卒中の下肢麻痺およびアパシーに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の報告はない。21人の急性期脳卒中患者を無作為に高頻度rTMS群と偽刺激群に割り付け5日間連続介入を行った結果、下肢麻痺の改善はrTMS群で有意であった。次に13人の慢性期脳卒中患者を無作為にrTMS群と偽刺激群に割り付け、背側前部帯状回(dACC)~内側前頭前野(mPFC)へ高頻度rTMSもしくは偽刺激を5日間施行したところ、アパシーはrTMS群で有意に改善した。なお、この介入は急性期脳卒中患者のアパシーに対しても安全かつ有用であった。rTMSは急性期脳卒中に対する新たな有用なリハビリテーション介入と考えられる。研究実績の概要:
  35. 情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態 2014-07-10 – 2019-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 生物系 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:注意や情動にかかわる大脳皮質間神経回路の動態をしらべるため、経頭蓋磁気刺激による局所神経活動の操作、および、広域的な電気生理学的計測を行った。注意に関しては、前頭連合野背外側部と運動前野背側部がそれぞれ、注意や作業記憶の視空間的および運動的な側面を担っていることが明らかになった。一方で、情動や気分の制御には、内則前頭皮質の腹側部がとりわけ重要な役割を果たしており、その機能の破綻が、うつ病などの気分障害につながることが示唆された。また、特に注意や作業記憶の機能の発揮には、前頭皮質から後部皮質へのトップダウン的な情報の流れが重要な役割を果たしていることも明らかになった。研究実績の概要:
  36. 広汎性発達障害における高次連合野の刺激応答特性と神経可塑性 2013-04-01 – 2016-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:TMS(経頭蓋磁気刺激法)と脳波を組み合わせた実験の方法論を確立し、定型発達者29名、自閉症スペクトラム障害者20名のデータを取得した。前頭前野へのシータバースト刺激(TBS)前後で経時的にTMS誘発電位と認知機能を測定した。定型発達者において、TBS群はシャム刺激群と比較して、TBS実施後10分~50分においてN45成分の振幅が増幅効果を示し、20分~40分において作動記憶の一時的な増強効果を示すことが確認された。その一方で、発達障害者においては、N45成分や作動記憶の増強効果を認めなかった。前頭前野の神経可塑性様変化において、定型発達者と発達障害者の間で顕著な違いを見出すことができた。研究実績の概要:
  37. うつ病及び摂食障害の認知柔軟性を高める経頭蓋的脳刺激法に関する研究 2013-04-01 – 2017-03-31 中里 道子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10334195) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、神経性過食症患者を対象として,経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の効果を、過食衝動の頻度低下、食への渇望(craving)を用いた主観評価主観評価に加え、客観的な至適治療パラメータの検討を目的に、近赤外光スペクトロスコピー(NIRS)を用いて評価した。rTMSの刺激部位は、左前頭前野とし、10Hzの磁気刺激を、1セッション、合計1000パルスで実施した。rTMS実施2時間後に、食物画像を用いた課題に対する過食衝動等を0-10点で点数化し評価した。全症例に安全に施行され脱落例はなく、介入後に過食衝動が減少し、不安尺度の軽減、左前頭前野で課題遂行中のoxyHbの減少が認められた。研究実績の概要:
  38. 医療従事者の睡眠状態と脳高次機能についての生理学的研究 2013-04-01 – 2016-03-31 西多 昌規 自治医科大学, 医学部, 講師 (10424029) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:医療従事者の疲労・睡眠不足は、医療事故の温床である。本研究では研修医を対象に、当直前後での採血手技中の脳血液量変化を比較検討した。当直前後において、採血練習用の模擬血管を協力者に装着し、被験者に採血手技を行わせた。被験者にはウェアラブル光トポグラフィを装着し、関心領域を前額部付近として採血手技中の脳血液量変化を記録し解析を行った。当直後における2回の採血手技で比較したところ、2回目は1回目に比較して、右前頭前皮質領域の有意な血流量変化の減少が認められた。ヒヤリ・ハットに通じるイージーミスを発生しやすい神経学的証拠であると考えられた。研究実績の概要:
  39. 脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激によるニューロモデユレーション 2012-04-01 – 2015-03-31 山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:脳卒中後疼痛症例に対して、Dual-lead SCSを施行し、半身に刺激感覚を誘発することができた。また、モルヒネ、ケタミン、ラボナールを用いたドラッグチャレンジテストでは、ケタミンが有効な症例に脊髄刺激の有効例が多いことから、患者選択に有用であった。脳卒中後疼痛27例に対してDual-lead SCSを用いたテスト刺激を行い、21例(77.7%)に慢性植え込みを行った。慢性刺激開始後12カ月の結果では、excellent(60%以上VASが減少)4例、good(30-60% VASが減少)11例、fair (VASの減少が30%以下)6例で、15例(71.1%)で満足できる効果が得られた。研究実績の概要:
  40. 統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討 2012-04-01 – 2016-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:うつ病の新しい治療法である反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、統合失調症の認知機能障害の治療にも応用されつつある。一方で、大脳皮質のGABA機能の障害が統合失調症の認知機能障害に関与する可能性が指摘されている。そこで、rTMSの治療機作やエビデンスを、ヒトの大脳皮質のGABA機能を評価できる2連発経頭蓋磁気刺激を中心に、rTMS刺激中の皮質の血流反応性、脳機能・構造画像などを相補的に用いて検討することを本研究の目標とした。時間的制約から、rTMS治療と各種の評価を並行実施する最終段階には至らなかったが、これらの手法を用いて統合失調症をはじめとする神経・精神疾患の病態等の研究に多くの成果を得た。研究実績の概要:
  41. 情動的ストレスによる心血管系の応答に対する圧受容体機能の役割 2012 – 2016 上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50264875) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:圧受容体反射経路と情動的ストレスの回路で、共通する箇所を神経解剖学的手法で探索することを探索することを目標とした。圧受容体反射弓除神経群とSham群で、不動化(情動的)ストレスで変化する領域として不確体や淡蒼球縫線核が抽出された。そこでより上位の自律神経から影響され、また圧受容体反射経路からは上位にあたると考えられる分界条床核(BST)に注目し、その求心路を逆行性トレーサーChlera toxin b subunit(CTb)をBSTに注入し、ストレス負荷を加え、CTbと神経興奮マーカーであるc-Fosとの二重染色を行い、mappingを行った。CTbをLSDの一部と中隔海馬采や三角中隔核に注入し、側脳室に漏れた。CTb陽性細胞としては、辺縁系として知られるD1・島皮質(GI)、帯状回(Cg)、下辺縁皮質(IL)、前辺縁皮質(PrL)、背側脚皮質(DP)やそれ以外の大脳皮質としも運動野(M1、M2)、感覚野(S1, S2)の場所に見られた。また、視床下部として腹側内側核(VMH)、視索前野(LPO, MPA)、ブローカの体格帯(HDB, VDB)が見られ、小脳皮質巣小葉(Sim)、中脳の淡蒼縫線核(RPa)の場所でも観察することができた。次にCTbとcFos二重陽性は中脳の青斑核(LC)、延髄の尾側オリーブ周囲核(CPO)、視床下部室傍核(PaLM)、視床下部外側核(LH)の場所で見られた。
  42. ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 2012-04-01 – 2014-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要:平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。
    本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. rTMS・tDCSの定量的評価および治療応用システムの開発 2012 – 2013 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は脳の興奮性を変化させることができることから, うつ病, パーキンソン痛, 脳卒中の後遺症, 慢性疼痛, ジストニアなどの治療に応用されている. しかしながら, rTMSやtDCSの臨床応用に関する報告では, 疾患に対する効果や有効性は確認されているものの, 刺激を行う際の刺激条件が客観的に定められていないとう問題がある. そこで, 本研究ではrTMS・tDCSの刺激効果を定量的に評価し, 疾患を入力することで, rTMS・tDCSの最適な刺激条件が出力されるシステムの開発を行う.
    まず, 運動野において, μ波とrTMS・tDCSの刺激効果の関係性について調べた. その結果, μ波のERDは促進性の刺激であるAnodal tDCSにより, 有意的に増加し, 抑制性の刺激である1Hz110%RMT rTMSとCathdal tDCSにより有意的に減少した.
    次に, rTMSの刺激条件と刺激効果の関係性を調べるために, 抑制効果を誘発すると言われている1HzのrTMSを左半球の第一次運動野に与え, 運動誘発電位(MEP)を計測することで, 大脳皮質興奮特性の変化を評価した. 更に, その実験結果を用い, 重回帰分析によりrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 実験により, 刺激強度が強いほど, パルス数が多いほど, 抑制効果が強く生じることが分かり, MEPの振幅変化と刺激強度, パルス数の関係が非線形である可能性があることが分かった. また, 樹木モデルを計測データにあてはめ, 独立変数間の交互作用を調べた. その結果, 刺激強度とパルス数の間に交互作用がある可能性が示唆された. これらの結果から, 初期のモデルに, 刺激強度の二乗, パルス数の二乗, 刺激強度とパルス数の積を含むモデルを用い, 重回帰分析を行うことでrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 刺激の効果が被験者により異なることがある為, クラスター分析により被験者を分類し, モデルを分けて作成することで, モデルの精度向上を行った。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 経頭蓋磁気刺激法の気分障害に対する治療プロトコールの最適化と神経可塑性変化の検討 2011 – 2012 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:薬物治療抵抗性のうつ病の患者群を対象として、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性を厳密に調べるランダム化比較試験(RCT)のデザインを開発した。精度の高いシャム刺激を対照群として、複数の治療プロトコールの直接比較や、再発予防効果の検証が可能となる臨床試験である。現時点で RCT の被験者数は目標数に達していないため、rTMS前後の生物学的変化も含めた本研究の最終的な解析は RCT終了時点にて行なう。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳卒中後歩行障害に対する機能回復型ブレイン・マシンインターフェイス開発 2011 – 2013 竹内 直行 東北大学, 大学病院, 助教 (10374498) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:脳卒中患者の運動野に陽極経頭蓋直流電気刺激、麻痺側下肢の腓骨神経に機能的電気刺激を同時に行ったが歩行機能改善効果は認めず、ブレイン・マシンインターフェイス(BMI)を歩行障害の治療に応用するため経頭蓋直流電気刺激にて運動野の興奮性を変化させ、BMIに用いる下肢の感覚運動リズムを調節できるか検討を行った。経頭蓋直流電気刺激後の足運動イメージ時のβ帯域感覚運動リズム変化は健常者と下肢切断患者では異なり、BMIを歩行障害に応用するためには、興奮性・抑制性刺激を使い分ける必要があり、BMI情報の変動に対し経頭蓋直流電気刺激が有益である可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。研究実績の概要:
  48. アットリスク精神状態の介入指標の確立と病態解明を目指す縦断的TMS-NIRS研究課題名 2010 – 2012 辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:幻聴や思考障害の基盤とされる上側頭回(STG)と前頭葉の結合性を検討するため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)中に刺激遠隔部で起こる血流変化をNIRSで測定した。対象は健常男性12名。左STG 後部をrTMS 中の左前頭部、右前頭部の血流変化をNIRS で測定した。左STG へのrTMS では、左前頭部、右前頭部において、シャム刺激中と比較し、実刺激中に有意に血流が低下した。本研究の結果から、TMS-NIRS がSTG -前頭葉の機能的結合性の指標となる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 気分障害・適応障害の反復経頭蓋磁気刺激法に際する脳機能反応性の検討 2010 – 2012 青山 義之 群馬大学, 医学部, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. 経頭蓋直流刺激のうつ病治療の可能性についての研究 2009 – 2011 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:電気けいれん療法(ECT)に代わる治療法として期待されている左背外側前頭前野に対する反復陽性経頭蓋直流刺激(tDCS)の気分と認知機能に与える影響を検討した。健常男性に対し偽刺激を対照とするクロスオーバー法試験を実施したところ、視覚性再認記憶課題の正答率のみが時間とともに上昇しており、実刺激で開始した群で変化が顕著であった。これらの所見より、tDCSは特に有害な作用を示すことなく、視覚性再認学習機能を高める可能性が示唆され、うつ病の新たな治療法として検討を進める価値があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. アットリスク精神状態の前向き追跡による神経生理学的介入指標の確立と発症機序の解明 2009 – 2011 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の病態仮説と関連するGABA系、NMDA系の機能を評価できる2つの神経生理学的検査を用いて統合失調症の発症早期群、超ハイリスク群を横断的に検討した。発症早期群において皮質のGABA機能の低下を認め、さらにワーキングメモリーの障害と相関することから、認知機能障害の軽減にGABA系の機能回復を目指す治療的介入が役立つ可能性が示唆された。超ハイリスク群では発症群と同様に皮質のNMDA系の機能低下が認められ、顕在発病前からの脳灰白質の体積の減少にNMDA系の機能低下が関与するとの仮説を支持した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 統合失調症と漢方-認知機能障害の治療と客観的神経生理指標の確立 2008 – 2009 正山 勝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70364081) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究の目的は統合失調症の認知機能障害の治療を漢方製剤と生物学指標によって行うことである。最初に経頭蓋磁気刺激手法を応用したshort latency afferent inhibition(SAI)を統合失調症患者群と健常対照群で測定した。SAIは患者群で有意な低下を認めた。次に漢方製剤の抑肝散により、精神症状や認知機能の改善を認めた統合失調症、妄想性障害、皮質下認知症での症例を検討した。統合失調症の認知機能障害の治療において、漢方製剤や中枢性のコリン系伝達の評価が有用であることを示唆するものと考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 統合失調症の神経回路網の機能障害に対する連続経頭蓋磁気刺激の効果の検討 2008 – 2009 奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:very late onset schizophrenia like psychosisの基準を満たす薬物治療抵抗性幻聴をもち、低頻度rTMS治療を行った62歳女性についてSPECTで評価した。同時に、我々はPANSSや幻聴スケールで精神症状とBACSで認知機能を評価した。rTMS前後の血流変化は3DSRTを用いて評価した。rCBFは側頭皮質で減少し、基底核で増加していた。認知機能では言語性記憶と運動機能が改善した。側頭皮質の血流減少は既報と一致しているが、基底核での増加はvery late onset schizophrenia like psychosisの病態に起因しているのではないかと考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. ナビゲーションガイド下経頭蓋磁気刺激の気分障害への治療応用と治療反応性の予測因子 2008 – 2010 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:目的:薬物治療抵抗性の気分障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の安全性、有効性と治療反応性を検討する。神経画像を用いてrTMS前後での脳形態の変化を調べる。
    方法:単極性及び双極性のうつ病を対象としてrTMSを計10セッション施行。刺激頻度は20Hz又は1Hzで、刺激強度は安静時運動閾値の90-100%、週の総パルス数は5000とした。頭部MRIと超音波によるナビゲーションを用いて前頭前野背外側面(DLPFC)を刺激した。
    結果:被験者51名(平均年齢:48.2歳、男36名、女15名)の中でrTMS開始前のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は12.9±4.6点で、rTMS終了後は8.0±5.1点であり、有意な改善を認めた(Z=5.88,p<0.0001)。治療前後で50%以上の改善を認めた群は41.2%で、25%以上50%未満の部分改善群は29.4%で、25%未満の非改善群は29.4%であった。前頭葉機能の改善も認められた(言語流暢性:Z=2.62,n=40,p=0.009)。重篤な有害事象は認められなかったが、33.3%において一過性に軽度~中等度の頭皮痛を認めた。治療反応性の予測因子としては年齢や運動閾値に加えて臨床像との関連が推測された。rTMS前後の脳形態変化は刺激部位である左DLPFC(t37=5.53,p<0.0001)を中心として前帯状回などにおいても灰白質体積の増加が認められた。さらには刺激部位を中心として両側DLPFCにおいて拡散係数の低下を認めた(t20=8.12,p<0.0001)。改善群と非改善群を比較した場合に、改善群において左DLPFCの体積増加と拡散係数低下が認められた。
    結論:非盲検デザインではあるが、ナビゲーションガイド下rTMSの安全性と有効性が示唆された。rTMS後の灰白質の体積増加や拡散係数低下はrTMSによる神経可塑性変化を示唆する所見であり、抗うつ効果発現との関連が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 反復経頭蓋磁気刺激と脳画像によるうつ病の治療反応性の解明 2008 – 2010 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【実験1】ラットでのrTMS施行群ではControl 群と比較し、BrdU-positive cellsが有意に増加した。rTMSの抗うつ効果発現に海馬神経細胞新生が関与する可能性がある。
    【実験2】脳血流に関して難治性うつ病でのrTMS治療のレスポンダーでは治療前のCg25野の血流が上昇し治療後には低下した。rTMSによりCg25野が調節される可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 近赤外分光法による脳血流同時測定を用いた精神疾患の経頭蓋磁気刺激治療法の開発研究 2008 – 2011 岩瀬 真生 大阪大学, 医学系・研究科, 助教 (60362711) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 統合失調症と気分障害における意欲症状の脳基盤の解明と改善のためのNIRS研究 2008 – 2010 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、MRI・NIRS・MEGを用いた検討を行なった。健常者においては眠気・疲労感・幼小児期の養育・協調性が前頭前野の体積や賦活反応性と関連すること、統合失調症の前頭極部機能が機能の全体的レベル(GAF)やσ1受容体・COMT遺伝子多型と関連すること、摂食障害の前側頭部機能が臨床症状と関連すること、双極性障害ではMMNm成分の潜時延長が認められることを明らかにし、前頭葉の体積や賦活反応性が健常者や精神疾患における意欲と密接に関連することを示した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. こころの健康増進のための脳機能自己モニタリング・システムの確立 2007 – 2008 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:脳機能の自己モニタリングを可能にするために、健常者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)装置を用いて大脳皮質の賦活反応性を検討し、さまざまな精神状態との関連を検討した。(1)頭皮上のNIRS測定チャンネル位置と標準脳における脳回との対応を確立し、fMRIやPETにおいてアーチファクトのために測定の信頼性が低いとされる前頭極部frontal pole(Brodmann 10野)についてNIRSの測定が可能であるという利点を明らかにした。(2)時間分解能が高いというNIRSの特徴を生かし、運動課題における大脳皮質の賦活反応性について、運動野については「課題区間における持続的な賦活」、体性感覚野については「課題開始時の-過性の賦活」、前頭葉については「課題区間における累積漸増的な賦活」、という時間経過の特徴があることを明ならかにした(Neurosci Res 58:297,2007)。(3)言語流暢性課題において、自覚的な軽度の眠気が前頭葉背外側面の内側部における賦活反応性と負の相関をすることを示し、高次脳機能の軽度の変化がNIRSデータに反映されることを明らかにした(Neurosci Res 60:319,2008)。(4)同じ言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われることを明らかにした(Brain Res1252:152,2009)。(5)以上の結果から、「自然な状態における検査が可能」という特徴をもつNIRSは、健常者の精神状態の自覚の脳基盤を明らかにするうえで有用であり、脳機能の自己モニタリング装置として適切であることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. 脳磁図による機能画像を用いた統合失調症の磁気刺激療法の作用機作と有効性予測の検討 2006 – 2008 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の治療には通常薬物療法が選択されるが、今後期待されるその他の治療法のひとつに反復的経頭蓋磁気刺激療法がある。この治療法は幻聴や陰性症状の改善に有効である可能性が指摘されているが、その作用機作は不明であり、個々の症例での有効性の予測の指標も確立されていない。本研究では脳磁図を用いた時間分解能の高い脳機能画像を得る手法を確立するとともに、それを用いて本治療法の作用機作や有効性予測の指標を確立することを最終目標として基礎的な研究をおこない、いくつかの重要な成果を得た。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 低頻度反復的経頭蓋磁気刺激の抗うつ作用と認知機能に及ぼす影響に関する検討 2005 – 2006 松本 直起 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60326361) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:難治性うつ病に対する反復的経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)の有効性と認知機能へ影響の検討を行った。rTMSのパラメータは直近の報告(Savitha E. Am J Psy 2007など)でも総パルス数が10000発以上が推奨されているため、本研究でも当初の予定より多くした。すなわち、左背外側前頭前野に対して、刺激強度は運動閾値の110%、刺激頻度10Hz、刺激時間5秒間、1日刺激総数1000発、刺激日数15日間、総刺激数15000発とした。症例の取り込みのためにマスメディアなどを通じて啓発活動を行った。最終的に応募者の中から除外基準に抵触しない数名の難治性うつ病患者を抽出し本研究を行った。結果は、約半数の患者においてうつ状態評価尺度であるHAM-Dスコアの軽度から中等度の改善(開始時スコアの50%以上の低下)を認めた。またその改善は、刺激期間終了後も2ヶ月にわたって持続した。Frontal Assessment Battery (FAB)、Wisconsin Card Sorting Test (WCST)による評価で認知機能に悪影響は認めなかった。また臨床上も問題となる副作用はなかったが、刺激部位の不快感ゆえ脱落する症例があった。
    既報でも難治性うつ病患者に対するrTMSの有効性は着実に追試されてきており、薬剤抵抗性の症例や高齢者において有効な選択枝となりつつある。今後も症例を重ねて有効性と安全性に関するエビデンスを集積していく予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  61. 経頭蓋磁気刺激による統合失調症患者の大脳皮質の抑制・興奮性の検討 2005 – 2006 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の生理学的指標の開発を目指して、2連発刺激による抑制効果を統合失調症患者で検討した。2連発経頭蓋磁気刺激pp-TMSで大脳運動野のGABA神経機能を、また2連発聴覚性驚愕反応(prepulse inhibition : PPI)でNMDA受容体機能を検討した。
    pp-TMSでは2,3,4msの短間隔刺激による抑制効果(SICI)と10,15msの長間隔刺激による側通効果(LICF)を検討した。刺激強度は1発目80%MT、2発目130%MTとした。統合失調症患者群は健常群と異なりSICIで障害を認めた。SICI障害は定型抗精神病薬服用群、症状重症群、認知・社会機能低下群で強く、病形では解体型で強く妄想型で軽症となる傾向があった。一部の患者ではstate markerとなる可能性が見られた。
    PPIは刺激間隔60,120,480,2000ms、一発目20ms、82dB、2発目40ms、112dB、背景雑音70dBとした。統合失調症群はISI60ms,480msにおいて有意な障害を認めた.患者背景(発症年齢、罹病期間、薬物クロールプロマジン換算量、ニコチン量)、精神症状(PANSS,GAF)、認知機能(MMSE,FAB,ATMT)との有意な関連は見出せなかったことよりtrait marker候補と考えられた.他方、olanzapine単独服用群は定型薬服用群よりPPI障害が有意に小さかったが、統制研究ではないため薬理作用によるものと結論するには至らなかった。
    この研究によりpp-TMS,PPIはそれぞれstate marker, trait markerの候補となる可能性が得ら眼球追跡運動なども含め、早期統合失調症の早期介入、初発統合失調症の最適治療管理など臨床への応用開発を目指す予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  62. 反復経頭蓋磁気刺激法による発現変動遺伝子の解析 2004 – 2005 池田 哲朗 理研, 研究員 (10360489) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域では長年電気痙攣療法(ECT)が行われてきたが、最近ではより安全で非侵襲的代替療法として、磁場を応用した反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS : repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)の有用性が、多くの臨床的研究で示されている。特に、難治性うつ病、気分障害、統合失調症(精神分裂症)、アルツハイマー病、パーキンソン病等の患者で、磁場刺激による症状改善報告が示されている。磁場刺激後の変動遺伝子の解析をGeneChipで現在解析した。その結果、モノアミン神経系に関与するモノアミントランスポーターに変化があった。モノアミン神経系は上記疾患と深く関わることが知られており、rTMS刺激後のモノアミントランスポーターの機能解析を行った。モノアミントランスポーターは、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポータ(NET)からなり、シナプス前膜部から放出されたモノアミン神経伝達物質を再取込みし、シナプス伝達を終結させる重要な細胞膜蛋白である。20日磁気刺激後、マウス脳においてSERT mRNA,[3H]Serotonin uptake, [3H]Citalopram bindingはいずれも増加した。一方、DAT, NET mRNA, [3H]Dopamine, [3H]Norepinephrine uptake,3H]Nisoxetine binding(not [3H]GBR12935 binding)は増加した。これらのことは20日磁気刺激がモノアミントランスポーターを変化させることを示しており、モノアミン神経系が関与していると考えられている上記疾患へのrTMSの分子メカニズムを提供するものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  63. Restless Legs syndromeに対する高頻度磁気刺激の治療応用 2004 – 2005 佐久間 研司 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (70311199) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲に中枢神経を刺激して錐体路機能評価の他に,うつ病をはじめとする精神疾患やパーキンソン病,脊髄小脳変性症,神経リハビリテーションなどの治療目的で臨床応用が期待されている.体性感覚誘発高周波応答(high frequency oscillation ; HFO)は体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential ; SEP)のN20の主にascebding slopeに重畳する500-800Hzの電位である.前半部は視床,視床皮質路由来であり,後半部はBA 3bの第4層にあるGABA抑制性ニューロン,又は第3層にあるChattering錐体細胞などが起源であると推定されている.
    Theta burst stimulation(TBS)は動物実験ではシナプスの可塑性に影響を与えることが知られ,ヒトの運動野に対するTBSでは数十秒から数分の刺激によって運動神経シナプスの可塑性に影響を与えることを証明し,効果が数十分から一時間程度持続することがわかっている.非常に短時間の刺激で脳の可塑性に変化をきたす方法の治療応用への可能性を検討するべく本年度においてはTBS前後における体性感覚誘発電位の変化について検討を行った.18人の健常成人を対象とし,TBS前後での両側正中神経刺激にてSEPを測定した.SEP測定の方法については平成16年度のものを踏襲した.TBSは200msec間に50Hzの刺激を3回行うことをひとつの単位とし,それを2秒間刺激して8秒間休むを繰り返し合計600回刺激するまで継続する方法をiTBSとし,連続的に600回刺激する方法をcTBSとした.刺激部位はM1とし,刺激強度は80%AMTとした.
    Motor evoked potential(MEP), Short-latency intracortical inhibition(SICI)はiTBSでは増大傾向,cTBSでは減少傾向を認めた.HFOについてはiTBSにて刺激側で有意に振幅増大を認めたが,cTBSについては有意に減少した.
    TBSではMEPとSICI,HFOの動きが相関していた.SICIにはGABA抑制性ニューロンが関与しているとされており,HFO, SICIの両者に同方向め変化をきたしたことはTBSによりGABA抑制性ニューロンへの変化をきたすと考えられた.HFOの変化についてはiTBSによる促通効果は前半部に強く,cTBSによる抑制効果は後半部に強く見られた.HFOの前半部は視床,視床皮質路など皮質下由来であり,後半部は皮質領域由来と考えられ,TBSではまず表層に近い皮質神経細胞の可塑性に変化を与えて,二次的に深部である皮質下領域に影響が伝播する可能性があると考えられた.
    平成16年度の結果と合わせ,TMSにはSensorimotor integrationをmodifyする作用が確認できた.Restless legs syndrome(RLS)において磁気刺激治療を行った.運動閾値,MEP振幅,SICIについては健常人と差がなかった.M1への10Hz,1500発の治療を行った.
    足が勝手に動く症状,RLSの自覚症状,QOL, CGI(Clinical Global Impressions)について問診により変化をたずねた.結果としては明らかな前後での変動は認めなかったが副作用も認めていない. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  64. 脳磁図と反復的経頭蓋磁気刺激による統合失調症の幻聴発生機構の解明と治療法の開発 2004 – 2005 石井 良平 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40372619) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMSを用いて、視床痛などの求心路遮断痛患者7症例について、患側の第1次運動野や前頭前野に与えたrTMS(1Hzまたは10Hz)の治療前後でのMEG、EEG、SPECTの変化と治療効果との比較検討では、MEG、EEGの改善は疼痛症状の改善と関連なくほとんどの症例で認めるのに対し、SPECTの改善は疼痛の改善を伴う症例に多く認める傾向がみられた。このことは、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法が血流変化を測定するSPECTよりもより鋭敏にrTMSによる脳活動の変化を捉えている可能性を示唆している。今後、rTMSの種々の刺激条件と、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化の相関を詳細に検討していくことが必要であると考えられた。
    MEGの空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で機能画像化し、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した結果、DLPFCでの活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となった。このことから、統合失調症患者において、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症群においても入力-組織制御-出力という脳内神経ネットワーク上の基本的な情報処理過程の流れは保たれていることが示された。今後は、統合失調症患者の左DLPFCの機能不全をrTMSによって活性化させることで、幻聴症状にどのような治療効果がもたらされるのかをMEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化との相関も会わせて、詳細に検討していくことが必要であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究 2004 – 2005 廣常 秀人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346203) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuron systemの障害を捉えられる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  66. 反復性経頭蓋磁気刺激のうつ病治療に対する有用性と作用機序についての研究 2004 – 2005 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激法repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS)の有用性と脳内^<11>C-raclopride結合に与える影響を検討した。薬物療法に反応を示さなかったうつ病の患者9名(男性4名、女性5名;平均年齢36.4±6.1歳)を対象とした。刺激部位は左背外側前頭前野とし、1回のセッションにつきmotor thresholdの100%の強度で10Hzの刺激を計1000発、合計10セッションを2週間で行った。症状評価には、Hamilton Rating Scale for Depression(HRSD)とBeck Depression Inventory(BDI)を用い、治療前後の認知機能の評価として、Mini Mental State Examination、Wechsler Memory Scale-Revised中の視覚再生と言語性対連合、Trail Making Test、生活健忘チェックリストを使用した。また、治療前後で尾状核と被殻の^<11>C-raclopride結合をPETにより測定した。rTMSにより、HRSDは17.4±2.6点から10.4±6.0点に、BDIは20.7±6.6点から13.6±7.7点にそれぞれ減少した。5人の患者が軽度の頭痛を訴えたがまもなく改善し、他の副作用は認めなかった。また、治療前後で認知機能の悪化は認めず、言語性対連合の無関係言語の即時、遅延再生、生活健忘チェックリストの得点が有意に改善した。以上より、rTMSは軽度から中等度のうつ病の治療に有効であり、重篤な副作用のない安全な治療法と考えられた。さらに、言語性記憶機能の一部を改善する可能性が示された。しかし、脳内ドーパミン系には影響を与えないことが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. 随意運動遂行障害に対する連続経頭蓋磁気刺激を用いた臨床応用 2004 – 2005 中馬 孝容 北海道大学, 病院, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、中枢性神経疾患やうつ病などの難治性疾患に対する臨床応用の検討が数多くの検討がなされている。今回、パーキンソン病を対象としてrTMS投与部位による影響について検討した。
    平成16年度では、13名のパーキンソン病を対象(男性3名、女性10名、平均年齢69.2±6.2歳)とし、8の字コイルを用いて低頻度rTMSを行った。rTMS投与部位は(1)前頭前野背外側部、(2)補足運動野、(3)運動前野、(4)第一次運動野の4箇所で、各々0.3Hz、50回のrTMSを投与した。rTMS前後において、短母指外転近(APB)のcortical mappingを測定し、APBのMEPの振幅の総和について比較した。結果は、(1)へのrTMS投与後においてのみ、APBのMEPの振幅は高くなり、MEPのareaは拡大する傾向がみられた。パーキンソン病に関しては、前頭前野背外側部への低頻度rTMSは大脳皮質の興奮性が増強する可能性が推測された。
    平成17年度では、9名のパーキンソン病患者を対象とし、高頻度rTMSの投与部位による影響を測定した。rTMSは10Hzの刺激頻度で総計1000回施行し、投与部位は左第一次運動野、左前頭前野背外側部の2種類とシャム刺激の3パターンについて検討した。rTMS投与前後において、運動機能(歩行・握力等)および前頭葉機能(stroop test)への影響について検討した。前頭前野背外側部刺激では、stroop test II-I時間の短縮傾向がみられた。左前頭前野背外側部への高頻度rTMSは、前頭葉機能に影響を与える可能性がある。高頻度rTMSの投与部位や刺激条件を検討する必要はあるが、前頭葉機能に対する臨床応用の可能性が推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  68. 神経生理学的脳機能画像による反復的経頭蓋磁気刺激治療の刺激条件の確立 2003 – 2005 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療に用いる具体的な最適刺激条件を、神経生理学的脳機能画像、脳機能測定・解析法から検討するとともに、当該治療法の作用機作を解明することを目標とした。3年間の主な研究実績は下記のとおりである。
    1.HFOsの増強効果からみたrTMSの作用機作の検討
    体性感覚誘発電位(SEP)の高周波振動(HFOs)の変化を指標として、健常者の体性感覚野に与えた低頻度rTMS(0.5Hz、50回、運動誘発閾値の80%強度)が、皮質興奮性に与える影響について検討したところ、SEPには変化を認めない一方、HFOsには有意な増強を認めた。HFOsは皮質内GABA系抑制性介在ニューロンの活動を反映すると考えられているので、低頻度rTMSによる皮質興奮性の抑制は、抑制性介在ニューロンの作用の増大を介して行われている可能性が示唆された。また、HFOsがrTMSの最適刺激条件を検討する際の客観的な指標になりえることが示された。
    2.StrooP課題遂行時における統合失調症患者の脳内情報処理のMEGによる脳機能画像化
    脳磁図の空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で脳機能画像化する方法を開発するとともに、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した。前頭前野背外側部(DLPFC)での活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となることから、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症の臨床特性やrTMS前後で異なると想定される神経ネットワークのダイナミクスの差異を、われわれが開発したMEGの脳機能画像法が捉えうる可能性が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  69. 連続磁気刺激(rTMS),脳深部刺激(DBS)の作用機序に関する研究 2002 – 2003 宇川 義一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)に関する研究
    rTMSの臨床効果については以下の研究を2年間で行った。パーキンソンにしては日本全国規模の効果判定を行い、シャム刺激と比較して有意な効果が得られない事を報告した(文献2)。排尿障害、急性の痛みのに関しては治療効果を認める報告をした(文献1、4)。さらに、rTMSの効果を考える時には、刺激コイル直下の大脳皮質部位だけでなく、その部位と密接な連絡を持つ離れた部位への刺激が及ぼす効果も考慮すべきであることを報告した(文献3)。さらに猿にrTMSを行い、そのときの脳の代謝の変化などを検討した。まず、猿用のコイルを作成した(図書)。このコイルにより、猿の脳でも効果的に限局した部位のみに、電流を誘発できることを証明した。このコイルにより猿の運動野を連続刺激したときの、大脳基底核でのドーパミン代謝の変化を分析した(文献5)。運動野の連続磁気刺激により、腹側線条体での内因性ドーパミンの放出が上昇した。このドーパミン代謝の上昇が、本刺激の鬱病などの治疲機序を一部説明していると考えた。今後は、マイクロダイアリシスによりドーパミンの放出を確認するサルでの実験を計画している。さらに、rTMSの今後の臨床応用が期待されるため、いくつかの神経疾患に刺激パラメータを変えて、治療を試みる予定である。
    脳深部刺激(DBS)に関する研究
    視床下核のDBSで治療を行っているパーキンソン病患者に関して、刺激オンをオフでFDG PETを行い、両者を比較した。刺激オンの時はオフの時と比べて、刺激側の前運動野と前帯状回で糖代謝の亢進が観られた。DBSがパーキンソンなど運動障害に効果を示す機序の一つとして、前運動野の機能亢進が関連していると結論した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  70. PETによる気分障害患の病態と治療法の作用機序に関する研究 2002 – 2005 須原 哲也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 脳機能イメージング研究開発推進室, 研究員 (90216490) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:無けいれん性電気けいれん療法(mECT)は難治性うつ病等に非常に有効な治療であり臨床的に確立した治療法であるが、その機序は不明な点が多い上研究も遅れている。本研究ではmECTの適応となったうつ病患者9名を対象にmECT治療前後でのセロトニン1A受容体の変化を[^<11>C]WAY100635を用いて検討した。mECT開始前日、1クール終了1日後にPET検査および精神症状評価を行った。mECT後に9名全例で精神症状の改善を認めた。ECT前後での海馬の結合能(BP)は一部上昇傾向は認めたが統計学的には有意な変化とは認められなかった。今後は海馬5HTIA受容体以外の受容体変化を検討していく必要があると考えられた。
    抗うつ薬などの向精神薬は脳内の受容体やトランスポーターなどに結合し、その薬理作用を発揮している。そのような結合部位での動態を生体内で検討することは薬物の作用機序の解明や用量用法を決定する際に重要である。本研究では健常男性6名を対象とし、SSR1の一つ、フルボキサミンによるセロトニントランスポーター(5HTT)占有率の経時的変化を[^<11>C]DASBを用い、PET測定を行った。また、5HTT占有率の経時的変化を5HTT親和性特性(ED50値;占有率が50%を呈する値)と血中濃度の経時変化をパラメーターとしてシミュレーションし、実測値との相関を検討した。フルボキサミンによる5HTTの平均占有率は5時間後で約73%、26時間後で約50%、53時間後で約25%であった。また、シミュレーション結果は実測値と良く相関した。抗うつ薬の用量用法の決定の際には血中濃度のみならず、脳内セロトニントランスポーター占有率の経時的変化の検討が重要な指標を与えると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  71. 経頭蓋磁気刺激法(TMS)によるうつ病および強迫性障害の治療 2001 – 2002 太田 龍朗 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00109323) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激法の臨床応用は、平成13年度に当大学の倫理委員会に受理された。治療は安全性を考慮して外来では行わず、入院治療で行う事として受理されたものである。平成13年度に血液中のテトラヒドロビオブテリン測定系は完成し、いつでも運転可能となった。本年度も当院精神科および関連医療機関で、上記倫理委員会で受理された基準に基づき同治療法の適応患者を募集した。8月に1例慢性うつ病患者に実施すべく、患者および家族に治療について説明し同意を得たので、入院し、治療チームを編成したが、入院後、経頭蓋磁気刺激法の実施予定日までの間に症状が軽快し、ハミルトンスコア(うつ病重症度スコア)が10点以下にまで軽快したため協議の末実施に至らなかった。その他にも数例紹介された候補患者はあったが、いずれも治療に導入する基準(特に診断名と合併症)を満たさず、実施出来なかった。実施0例に至った事態について、その理由としてまず適応の基準が厳しかったことが挙げられる。安全な方法とはいえ、同治療法を将来定着させるためにも事故を防ぎ、きちんとした理論的根拠をもって適用し効果判定を行うにはやむを得ない事と考えている。次に、同治療法の利点である速効性、簡便性と安全性が、厳密に入院治療で実施することにしたことで、患者側のメリットが減少し、わざわざ入院するくらいなら外来での薬物療法の工夫で何とかしてほしいと思わせてしまった事がある。うつ病は生活の質を低下させるが直ちに生命を侵す疾患でないだけに、患者には、確実に治癒するのでなければわざわざ入院して、難解な説明や検査や採血を受ける必然性が無くなる。今後改善すべきことは、同治療法の利点をより明確に患者および精神科医に宣伝すること、国内では外来治療で実施している施設もあるので外来で実施可能な根拠について情報収集し、外来で実施できるよう倫理委員会に再申請することをまず行いたい。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  72. 高頻度磁気刺激による不安モデル動物作成とその機能の解明 2001 – 2002 龝吉 條太郎 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00159344) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高頻度磁気刺激(rTMS)が、ラットにおいて不安を形成するか否かを調べる研究を計画した。不安をしらべる方法として恐怖条件付け試験、高架十時迷路、明暗箱を用いた。また選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor : SSRI)や抗不安薬であるdiazepam, alplazolam and buspironeがrTMSによる不安を抑制するか否かも調べた10日間のrTMS慢性照射は、Elevated plus maze, Black & white boxテスト,Conditioned fear stressテストによってラットに対して不安を惹起することが明らかとなった。この不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制されたがparoxetineの急性投与では抑制さえなかった。rTMSは従来うつ病や神経症の治療に使用されてきたので、我々は最初rTMSが不安を抑制するものと予想していた。しかし結果は逆であった。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。このrTMSによる不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制された。このことはrTMSによる不安は、セロトニンやGABA-ベンゾジアゼピン系の神経伝達が関与している可能性が考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  73. 反復的経頭蓋磁気刺激によるneurogenesisの誘導 2001 – 2002 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMS(反復的経頭蓋磁気刺激)の作用機作についてneurogenesisの促進効果、および神経生理学的側面から検討した。
    1.neurogenesisの誘導の実証とその最適パラメータの決定のための基礎的データの取得を目指した。健常ラットを2群に分け、一方の群には磁気刺激装置でラットの前頭部を局所刺激して運動誘発閾値を決定し、その120%強度で、頻度10Hz、刺激時間5秒、1日3回刺激した。他方の群には同様の条件でシャム刺激を与えた。両群のマウスにneurogenesisのマーカーとなるBromodeoxyuridine(BrdU)を12時間おきに腹腔内に注入、本操作を14日間連続施行の後、灌流固定した。neurogenesisの指標となるanti-BrdU抗体、ニューロンの指標となるanti-NeuN polyclonal抗体で蛍光色素を変えた二重免疫染色をし、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、neurogenesis促進効果を、側脳室近傍、海馬、刺激直下の新皮質で定量し検討した。
    2.健常被験者での磁気刺激前後の誘発電位変化を体性感覚誘発電位高周波振動HFOs(high frequency oscillations)を用いて検討した。健常被験者7名に0.5Hz、50回の低頻度rTMSを実施し、刺激前後でのHFOsの変化を測定した。被験者全員にHFOsを認め、7名中6名にはHFOsのパワー値の有意な増大を認めたが、シャム刺激によるコントロール実験では変化を認めなかった。rTMSが直接皮質内GABA系介在神経細胞の活動を増大させ、介在神経細胞を通して抑制性入力を増強し、皮質興奮性を抑制するメカニズムが推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. パーキンソン病への経頭蓋連続磁気刺激の効果に関する運動学的解析 2000 – 2001 中馬 孝容 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋連続磁気刺激(rTMS)は、種々の中枢性変性疾患やうつ病に試みられている。8の字コイルを用いて前頭前野を局所的に刺激し、第1次運動野への影響について検討した。
    平成12年度は、パーキンソン症候群7名(男性1名、女性6名、平均年齢56.4±8.1歳)を対象とし、インフォームドコンセントを行った上で施行した。方法は8の字コイルを用いて、APBでの120%motor thresholdの刺激強度で、対側の前頭前野に0.3Hz、30回のrTMSを投与した。rTMSの前後にて、APBにおけるmotor threshold、silent period、cortical mappingを測定した。また、rTMS施行中は、ビデオ、APBの表面筋電図、脳波によるモニターを施行し、rTMSの安全性の確認も検討した。結果は、全例において,rTMS後の第1次運動野におけるAPBにおいてMEPの振幅の増大がみられた。APBのmotor threshold、silent periodの著変はなかった。以上より、前頭前野への局所的なrTMSは運動系への効果が推測された。また、全例において安全性の確認ができた。
    平成13年度は、19名のパーキンソン病(男性10名、女性9名、平均年齢62.8±11.0歳)を対象とした。方法は同様で、APBにおけるrTMS前後のcortical mappingを行った。結果では、19例中13例において、rTMS後のMEPの振幅は増大し、その中にmappingのareaが拡大していた例があった。MEPの振幅の総和におけるrTMS前後での差において、振幅の低下がみられたものは6症例あり、その中の3症例は、rTMS後のmotor thresholdが低下していた。前頭前野における局所的なrTMSは、第1次運動野への促通効果あるいは興奮性の上昇傾向があると推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  75. 強性水泳ラットにおける継頭蓋的磁気刺激法の効果 2000 – 2001 堤 隆 大分医大, 医学部, 助手 (60284791) 奨励研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要:(1)、18時から6時を明期とする明暗条件下で飼育したウイスター系成熟雄性ラットを用いた。ラットは恒温(23±0.5℃)、恒湿(50±5%)で、照明時間は午後6時から午前6時までの動物舎で飼育した。水および固形資料は自由に与えた。ラットは少なくとも3週間以上飼育した後実験に用いた。(2)、ラットは2群(rTMS群、sham rTMS群)に分け実験を行った。rTMS群にはコイル径5cmの8の字コイルを用い、刺激頻度は運動閾値上で52パルス、刺激頻度15Hz、刺激時間3.5秒の磁気刺激で17-18時の間に施行した。1日または10日間連続してラットにrTMSを施行した。(3)、rTMSの第10回施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様に行った。(4)、急性実験として第1回強制水泳施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察、測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様におこなう。(5)、記録したビデオからラットの行動を静止状態、水泳状態、登坂状態に分けてカウントした。(6)、10日間の連続施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ有意に静止状態が少なかった。単回施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ特に行動面では有意な変化は認めなかった。この結果よりrTMSの連続施行はラットのうつ病モデルである強制水泳において有意な抗うつ作用効果が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 連続磁気刺激によるヒト中枢神経系の長期的興奮性変化の機序に関する研究 2000 – 2001 宇川 義一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)がうつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経疾患の治療に使用されている。この作用機序として、何らかの長期的効果が生じているはずである。この機序を解明する目的で以下の2点についてこの2年間で研究した。
    1.rTMSは直接の刺激点以外に効果を示すか。
    中枢神経は、線維を介して離れた部位が連絡し合って、その機能を発揮している。そこでrTMSの効果も、この連絡を介して発生していると考えれる。運動野を刺激した時の効果を対側運動野へのTMS(文献3,4)、同側感覚野のSEP(文献5)、SPECT、PETなどを用いて検討した。運動野のrTMSにより、同側の感覚運動野のみならず、対側の感覚運動野、同側の視床、対側の小脳などの離れた部位に機能変化が生ずることが証明された。以上より、rTMSにより刺激部位と離れた部位にも機能変化が生ずると考えた。
    2.rTMSは、刺激終了後にも持続する効果を誘発するか。
    rTMSが治療効果を発現するためには、rTMS終了後も持続する効果(after effect)を誘発しなければならない。この点を検討するために、SEP(文献5)、ABR, VEPなどを用いて、運動野へのrTMS後に持続する効果を誘発できるかを研究した。1HZ,200発のrTMSにより、2時間位続く効果を誘発できた。さらに、PET、SPECTなども用いてafter effectについて検討している。以上により、rTMSは刺激終了後も時間単位で持続する効果を誘発できると結論した。
    以上の結果から、パーキンソン病にrTMSが効果を出す機序として、rTMS後に視床に持続する変化を誘発した(functional thalamotomy)可能性を考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. 反復経頭蓋磁気刺激法の臨床応用への安全性の検討 1999 眞野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激を与えると、神経系の機能に変化を与えることが観察されるようになり、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)が中枢神経疾患の治療に用いられようとしている。そこで、rTMSの安全でかつ有効な投与法の検討が、求められている。これまで副作用として痙攣や機能異常、脳波上の異常波の誘発などの指摘がある。これらの研究は世界的規模で行われており、国内、国外の治験の集積により、より有効でかつ安全な施行方法を追求する、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床応用を検討する国際会議を開催した。
    本シンポジウムの目的はrTMSのヒトへの応用での安全性と効果であり、またそのメカニズムの解明である。シンポジウムでの結果をまとめると、rTMSでは大脳皮質の興奮と抑制をひきおこしている。rTMSで大脳の局所を刺激した時に、その反応は局所にとどまらず、経シナプス的に他部位に強い影響を及ぼす。また脳の再構築にはその闘値などの関与がある。最近低頻度rTMSが使われ始めているが、高頻度rTMSとその作用機構に質の差があることが示唆された。さらに、ヒトへの治療の応用にあたって、安全域の設定には慎重である必要があり、危険をよく知り、動物実験などの結果も重視する必要があると思われた。うつ病への応用にあたって、電気痙攣療法(ECT)を受けている患者さんにとっては、意識消失、痙攣、記憶障害などのETCの副作用を本法はさけれるため、rTMSの方がより安全であると思われる。刺激最適部位といわれる前前頭野の左右にbalance theoryが存在し大脳の左右への刺激の効果には差があると議論された。
    パーキンソン病(PD)へのrTMSの応用では、PDではうつ症状がよくなればQOLはかなり改善するといわれており、rTMSの抗うつ作用が改善に一定の役割をしていると考えられる。PDでの治療では刺激部位が運動野と前前頭野での差はあるのか、あるいは大脳への刺激が経シナプス的に基底核に影響を及ぼしているのかがさらに解明されれば、rTMSはさらに発展すると思われた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 経頭蓋的高頻度磁気刺激の安全性と作用機序に関する基礎的研究 1999 – 2001 滝川 守国 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70041423) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域における磁気刺激療法は臨床応用が先行し、基礎的研究とその安全性、特に高頻度磁気刺激(rTMS)に関しては試行錯誤の段階が現状である。精神科に置ける電気ショック療法の歴史がその治療機序が解明されないまま、ただ臨床に効果的であるとの理由で実施されてきた。このような理論に裏付けのないrTMS療法とならないよう本研究では以下のように実施した。
    (1)動物実験に本法を適用し脳にrTMSがいかなる影響を及ぼすかを検討した。
    (2)次に臨床に置いて健常コントロール群にrTMSが及ぼす作用をこの3年間において検討し、その結果は国際誌に掲載された。
    まず、rTMSの反復刺激によりラット脳におけるc-Fos発現を分子生物学的に検討した。その結果は、神経活動変化を反映するc-Fosは、脳内の広範囲の部位に出現するが電気ショックと比べて線条体に有意に多くc-Fosが出現するという興味ある結果を得た。
    次にrTMSの脳機能に与える光誘発電位法(VEP)で経時的に調べた。
    その結果、家兎対側後頭葉のYEPは潜時(N_2,P_2成分)は短縮しその振幅は有意に増大した。このことは、rTMSの反復刺激は脳に新しい神経回路網すなわち脳の可塑性が形成されることが判明した。また、反復rTMSはヒト脳波を指標として調べた。その結果、健常コントロール群の刺激部位の周辺の脳波周波数が1Hz以上早い周波数に刺激後の2分間位ではみられた。
    このことはヒトにrTMSで治療する場合、刺激後数分間は脳機能を活性化するので、その間は異常脳波の出現に注意すべきであることが示唆された。
    上記の結果は、rTMSが脳に新しい可塑性を生じることを意味し、また、rTMS後、短時間で脳を活性化することからrTMSの精神科領域への新しい治療法となることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. 反復経頭蓋磁気刺激法のリハビリテーション医学への応用 1998 – 1999 真野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度には、経頭蓋磁気刺激法(rTMS)法の安全性を検討する目的で、行動学的に分析した。32匹の正常マウスと31匹のcytosine arabinosideを注射した運動失調マウスを対象とした。週5回3週間、運動皮質閾値の130%の強度でrTMSを施行した。A群(正常11匹、失調マウス10匹)では、10Hz刺激を10秒間与えた。B群(正常11匹、失調マウス10匹)では、3Hzを60秒間与えた。C群(正常10匹、失調マウス11匹)には磁気刺激を与えなかった。オープンフィールド法で、運動回数と転倒率を測定した。失調群は対照群に比べ有意に運動回数が低下した(p<0.05)。rTMSは対照群でも失調群でもこの運動回数に影響しなかった。転倒率は、失調A群(10Hz×10秒)では平均36%の転倒率で、磁気刺激をしない失調C群(59%)に比べ有意の低下を示した(p<0.05)。長期効果は認めなかった。また、B群(3Hz×60秒)は、非刺激C群との差違を認めなかった。以上、失調マウスに対する反復経頭蓋磁気刺激の治療効果を確認した。
    平成11年度には、大学の倫理委員会の承認を得て、rTMSを、薬物療法、運動療法、心理療法などで充分な効果がなく、意欲が下十分であった6名のパーキンソニズム、不随意運動を呈する患者に試みた。rTMSのパラメーターは低頻度(0.3Hz)、30回を1日2回、刺激強度は運動閾値の110〜120%、一週間に5日間で2週間、平円形コイルを用いて行った。1例の脳波モニターで一側大脳にrTMS時に3Hzのslow waveが出現し、長くrTMSを続けるとそれは延長する傾向があった。日をかえて同様なslow waveを認めたため、以後この症例へのrTMSは中止した。臨床症状の改善は除外した1例を除く5例中4例にみられた。改善内容ではうつスケールは3例に、パーキンソン病スコア(UPDRS)は2例で改善、痴呆を呈した1例では長谷川式痴呆スケールでの著明な改善があった。UPDRSでの改善では抑うつ、意欲などの改善は著明であり、運動機能評価も軽度〜中等度の改善を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 運動失調症に対するリハビリテーションの研究(磁気刺激を用いた研究) 1998 – 1999 中馬 孝容 北海道大学, 医学部, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度は、うつ症状に効果があるといわれている経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)の安全性について正常マウスを用いて検討し、臨床応用への可能性について検討した。rTMSを10Hz、100回投与群と3Hz、180回投与群とrTMS非投与群の3群に分け、各群に刺激閾値の130%、90%の2種類の刺激強度で磁気刺激を行い、学習・記憶能への影響について検討した。学習.記憶能の検討には、Morris水迷路試験を用いた。結果は、rTMS投与した群では、一過性に影響がみられるものの、記憶の保持には影響はみられなかった。また、実験中にけいれんがみられたマウスはいなかった。rTMSは、磁気刺激の強度、頻度、回数、一連の反復刺激を繰り返す回数を検討することにより、安全に臨床応用が行なうことができると考えられた。
    平成11年度は、健常者に反復磁気刺激を行ない、臨床応用について検討した。上腕二頭筋を磁気刺激し、筋収縮パターンを記録し、収縮時間、弛緩半減時間を測定した。次に、50Hz、0.5秒間の反復磁気刺激を行ない、強縮性収縮を起こさせ、その前後にて単収縮を行なった時の筋収縮パターンにおける張力の変化について検討した。結果は、男性では出力50%の時に張力比は最大に達し、女性では出力70%の時に最大に達した。収縮時間では男女差はみられなかったが、弛緩半減時間では女性の方が有位に長く、これは、slow twitsh unitとfast twitch unitの比率が男女間で差が見られるためと考えられた。強縮性収縮前後での単収縮の張力比は、男女ともに反復磁気刺激後において単収縮の張力は増大していたが、これは男性においてより増大傾向であった。この現象は、Post-tetanic potentiationを示していると考えられた。連続磁気刺激は、ヒトの近位筋の生理学的解析に有用な方法であり、臨床応用に発展させることができると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要: