アセチルCoAの構造式を丸暗記する方法:

スポンサーリンク

生化学でアセチルCoAは主役中の主役です。しかし、その構造式は想像を絶するほど複雑で、きちんと書ける人は一体どれだけいるんだろうと思ってしまいます。しかし、よくよく眺めると、いくつかの重要な物質に分けて考えることができるため、丸暗記できなくもなさそうです。

アセチルCoAの構造式

まずアセチルCoAという名前が示す通り、アセチルCoAはCoAにアセチル基が結合したものです。CoAは補酵素AまたはコエンザイムAと呼ばれるもの。また、補酵素AのAとは何かというと、名前の由来は実は、acetate(酢酸)を活性化する補酵素というものです。acetateのaだったんですね(もしくはactivation のa?)。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Coenzyme_A
  2. 酢酸を活性化する酵素(アセチルCoA合成酵素)欠損マウスは絶食時に体温、持久力が低下する。 ―酢酸が絶食時の燃料になることを発見―

酢酸の構造はCH3COOHで、アセチル基はCH3CO-です。つまりアセチルCoAは、酢酸の水酸基とCoAのチオール基(-SH)とが脱水縮合して結合した構造をしていて、CH3CO-S-CoAと書けます。SはCoAの一部なのですが、チオール基のところにアセチル基が結合していることを明示するためにSをあえて書く書き方です。そんなわけで、アセチルCoAの構造を覚え長ければCoAの構造を覚えればよいということになります。

CoAの構造式を眺めてみて、真っ先に気付くのは、ATPに似た構造があること。アデニンがリボースに結合しており、リボースの3位にはリン酸が結合しているのがちょっと特徴的。6位の炭素にはリン酸基が2つついています。その先に、いろいろ複雑な構造がつながっているわけです。リン酸に結合しているうちの真ん中部分は、ビタミンの一種である、パントテン酸です。パントテン酸の先に、端にチオール基をもつ化合物があります。2-アミノエタンチオールです。パントテン酸だけとっても、その構造は複雑ですが、パントテン酸はさらに2つに分解して考えることができます。β‐アラニンパントイン酸(2,4‐ジオキシ-3,3,ジメチルブタン酸)です。パントイン酸と覚えても構造式は出てこないので、2,4‐ジオキシ-3,3,ジメチルブタン酸で覚えましょう。ブタンなので炭素は4つ(メタン、エタン、プロパン、ブタン、‥)。酸なので、端はカルボキシ基。カルボキシ基の炭素から順に1,2,3,4と炭素に番号が振られます。2,4に水酸基が、3,3にメチル基がついた構造ですので、書き下してみると、

HOOC-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH となります。

また、β‐アラニンの構造式は?と考えると難しいですが、最初にアミノ酸のα‐アラニンを思い出して、側鎖はメチル基だったので、HOOC-CH(NH2)-CH3を思い出せます。これはα位の炭素にアミノ基がついていますが、β‐アラニンはβ位の炭素にアミノ基がつくので、HOOC-CH2-CH2(NH2)だということがわかります。さて、β‐アラニンとパントイン酸を結合させてやると、

HOOC-CH2-CH2(NH2) と HOOC-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH  との、アミノ基とカルボキシ基の間で脱水縮合させて、

HOOC-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH

これがパントテン酸。

さて、これに2-アミノエタンチオール HS-CH2-CH2-NH2 を結合させると、同様にアミノ基とカルボキシ基の間で脱水縮合させて、

HS-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH  となります。これを、さきほどの3-ホスホアデノシンの6位のリン酸2つに結合させて、

HS-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2O-リン酸-リン酸-(5位)アデノシン 3-リン酸 となります。これがCoAの部分。このチオール基にアセチル基 CH3-C(=O)-を結合させば、アセチルCoAです。

アセチルCoAの構造式:

CH3-C(=O)-S-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) –C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2-O-リン酸-リン酸-(5位)アデノシン 3-リン酸

言葉で書くなら、

アセチル基-(2-アミノエタンチオール)-(β‐アラニン)-パントイン酸-リン酸-リン酸-アデノシン-3-リン酸

となります。β‐アラニンの両端は、どちらも -NH-C(=O)- という、ペプチド結合と同じ形なので覚えやすいです。パントイン酸は、別名2,4-dioxy-3,3-dimethyl butanoic acidと覚えておくしかありません。これで3~4回、書いてみれば、一晩たっても覚えていられる程度になりました。

アセチルCoAの産生

アセチルCoAはグルコースの代謝や、脂肪酸代謝によって産生されます。

アセチルCoAは、グルコースC6H12O6が解糖系で分解されてできるピルビン酸CH3C(=O)COOHが、ミトコンドリアのマトリックスに入ってピルビン酸脱水素酵素複合体によって脱炭酸されてCoAと結合することによりできます。

  1. ピルビン酸脱水素酵素複合体 PDBj 入門 今月の分子 最初の段階を実行する酵素は、チアミンピロリン酸(thiamine pyrophosphate)を使ってピルビン酸(pyruvate)から二酸化炭素を取り出す。

アセチルCoAから作られる化合物

アセチルCoAは脂肪酸のβ酸化(分解)により産生されますが、逆に、脂肪酸合成のための原材料にもなります。また、コレステロールの合成材料にもなっています。

モバイルバージョンを終了
タイトルとURLをコピーしました