DL表示法

不斉炭素を含む化合物には鏡像異性体が存在します。生体物質の場合は、この区別は非常に重要で、一方の構造しか酵素で認識されないため、他方は存在しないということになります。例えばアミノ酸であればL型しか存在しませんし、グルコースでいえばD型しか存在しません。

DL型の区別方法ですが、グリセルアルデヒド CH(=O)(-OH)(-CH2OH)を基準に決められています。グリセルアルデヒド をフィッシャーの投影式で描いたときに、水酸基ーOHが右側にくるものをD体としています。

グルコースのように不斉炭素がたくさんある場合は、フィッシャー投影式で一番下にくる不斉炭素に結合する水酸基が右側にあればD体とします。

アミノ酸の場合は、どうようにアミノ基が右がわにくるものをD体とします。

D-(+)-グリセルアルデヒド

のようにD体であることを示します。その次の(+)は旋光性を表していますが、DLとの関連性はありません。D-グリセルアルデヒドの旋光性がたまたま(+)だったのでこのように表記しているのです。D-(-)-グリセルアルデヒドなる物質が別に存在するというわけでもありません。

L-システイン のようにL型であることを示すことがあります。全然関係ないのですが、α‐アミノ酸という言い方をすることがあります。混乱しないように、ここで説明しておきます。αの意味は、アミノ基がα位の炭素に結合しているという意味です。α位というのは、カルボキシ基がついている炭素のことです。生体を構成するタンパク質を構成する20個のアミノ酸はすべて、αアミノ酸ですので、わざわざαアミノ酸と呼ばずに単にアミノ酸と呼ぶことが多いです。わざわざαアミノ酸と呼ぶことがある理由は、アラニンのように炭素鎖がある場合、側鎖であるメチル基の炭素(β位)にアミノ基がつく異性体β‐アラニンが考えられるからです。