投稿者「PhD」のアーカイブ

がん微小環境とは

がんは、体の細胞ががん化して増殖するというシンプルな理解だけではその増殖の過程を理解することはできません。がん化した細胞とがん細胞の周囲にある細胞との相互作用が、がん化を推し進めることが明らかになってきたからです。そこでがん微小環境という概念が提唱されました。

Our understanding of the tumor microenvironment (TME), including the interplay between tumor cells, stromal cells, immune cells, and extracellular matrix components, is mandatory for the innovation of new therapeutic approaches in cancer. ‥ Cancer-associated fibroblasts (CAF) and tumor-associated macrophages (TAM) are major cell populations in the stroma of all solid tumors and often exert protumorigenic functions (Front. Oncol., 20 May 2021 Volume 11

参考

  1. TGFβ and the Tumor Microenvironment in Colorectal Cancer Cells 2023, 12(8), 1139; https://doi.org/10.3390/cells12081139
  2. Interleukin-11 signaling underlies fibrosis, parenchymal dysfunction, and chronic inflammation of the airway December 2020Experimental and Molecular Medicine 52(12) DOI:10.1038/s12276-020-00531-5

ラポールの測定方法

ラポールの測定方法をChatGPTに聞いてみました。回答は以下の通りです。

「ラポール」は、人と人との対人関係の中での和やかでつながりのある状態を指します。従来は主観的な観察や自己報告の手法を用いて測定されてきましたが、最近の研究ではバイオシグナルを用いてラポールを測定する可能性が探求されています。以下に、バイオシグナルを利用してラポールを測定するための潜在的な方法をいくつか紹介します:

  1. 皮膚電気活動(EDA):EDAは皮膚の電気的な導電性を測定するもので、感情的な興奮を示すことがあり、対話の中での個人同士の関与や感情的なつながりのレベルを反映する可能性があります。増加したEDAは、より高いラポールを示唆する可能性があります。
  2. 心拍変動(HRV):HRVは、心拍の間隔の時間的な変動を指します。高いHRVは感情の調節や社会的な関与の改善と関連しています。個人間の生理的な同調性を示す要素として捉えられ、ラポールの確立を反映する可能性があります。
  3. 表情:コンピュータビジョン技術を用いた表情分析は、微細な顔の筋肉の変化を捉え、感情の状態を示すことができます。対話中の表情のモニタリングや分析は、ミラーリングや相互の感情的な関与などのラポールのダイナミクスに関する洞察を提供することができます。
  4. アイコンタクトと視線のパターン:アイトラッキング技術を用いることで、社会的な対話中の目の動きや視線のパターンを測定することができます。相互のアイコンタクトや同期した視線のパターンは、ラポールと関連付けられることが多く、つながりのレベルを客観的に評価するのに役立ちます。
  5. 音声分析:声の特徴、例えばトーン、ピッチ、韻律は、感情の状態や社会的なダイナミクスを伝えることができます。発話速度、強度、スペクトル特性などの声のパターンを分析する

Rapport refers to the harmonious and connected state between individuals during interpersonal interactions. While traditionally measured through subjective observations and self-report measures, recent research has explored the possibility of measuring rapport using biosignals. Here are some potential ways in which biosignals can be utilized to measure rapport:

  1. Electrodermal Activity (EDA): EDA, also known as skin conductance, measures the electrical conductivity of the skin. It can be indicative of emotional arousal and could potentially reflect the level of engagement and emotional connection between individuals in a rapport-building interaction. Increased EDA may suggest higher rapport.
  2. Heart Rate Variability (HRV): HRV is the variation in time intervals between successive heartbeats. Higher HRV is associated with better emotional regulation and social engagement. It can be an indicator of physiological synchrony between individuals, which may reflect the establishment of rapport.
  3. Facial Expressions: Facial expression analysis using computer vision techniques can capture subtle changes in facial muscles, indicating emotional states. Monitoring and analyzing facial expressions during interactions can provide insights into rapport dynamics, such as mirroring or mutual emotional engagement.
  4. Eye Contact and Gaze Patterns: Eye tracking technology can measure eye movements and gaze patterns during social interactions. Mutual eye contact and synchronized gaze patterns are often associated with rapport and can be measured objectively to assess the level of connection between individuals.
  5. Voice Analysis: Vocal characteristics such as tone, pitch, and prosody can convey emotional states and social dynamics. Analyzing voice patterns, including speech rate, intensity, and spectral features, may help gauge rapport during conversations.

It’s important to note that while these biosignals can provide valuable insights into rapport, their interpretation requires context and additional data analysis. Additionally, individual differences, cultural factors, and environmental influences should be taken into account when using biosignals as a measure of rapport. Further research is still needed to refine and validate these methods for measuring rapport effectively.

体液の浸透圧調節機構

第107回 看護師国家試験午後問題72

血液中の濃度の変化が膠質浸透圧に影響を与えるのはどれか。

  1. 血小板
  2. 赤血球
  3. アルブミン
  4. グルコース
  5. ナトリウムイオン

正解はアルブミンです。

膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ)とは、血漿タンパク質によって生じる浸透圧です。血漿タンパク質は、アルブミンとグロブリンですが、量としてはアルブミンのほうがずっと多いので膠質浸透圧へ寄与するものはアルブミンということになります。膠質はコロイドとも呼ばれます。膠質浸透圧に対比される概念は晶質浸透圧(しょうしつしんとうあつ)です。晶質とは、容易に結晶化する物質と言う意味で具体的には、電解質、糖質、アミノ酸などです。英語ではクリスタロイドと呼ばれます。

大学の期末試験(本試験)、追試験、再試験、レポート、単位を落としそう学生の救済処置

大学生は必修科目の単位を落とすと留年の憂き目にあいますので、その心理的な負担は大変なものがあります。

留年回避術

  1. 大学卒業の単位が足りない?救済措置や補講はできる?留年通知の連絡は? | 気になる事な~んでもすぐ分かる辞典ブログ♪ 「いかなる理由があっても、留年や単位不足を救済する手段はありません」という大学もありますが、救済措置がある大学も結構あります。よくある救済措置は、レポートの提出 再試験の実施 補講(集中講義) 他過程のコース履修などです。 最終的に単位を落としてしまったケースでは、成績開示後だったので、教授に頼んでも既に機械的に処理されてしまっていて無理だった 救済措置や補講などが一切ない大学だったという事例が主な原因でした。

群馬大学医学部演劇の科目で落第して留年する学生が大量に発生した事件

演技の優劣で国立大学医学部の学生が大量に留年させられたという事件がありました。しかも演技の評価基準が非常に不明瞭で学生がなっとくせずに、表ざたになったものです。

  1. 群大、留年相次ぐ演劇授業で3年生の救済措置へ レポート 2023年2月11日 (土) 小川洋輔(m3.com編集部)

講義欠席で留年した学生が提訴

  1. 東大「期末試験はコロナ救済なし」で陥るジレンマ 陽性・濃厚接触者は登校自粛なのに…学生が猛反発 野中 大樹 : 東洋経済 2022/07/28 12:45 学生は5月17日に39度以上の高熱や呼吸困難に見舞われ、翌18日に病院を受診。PCR検査の結果、コロナ陽性が判明した。それから一週間は意識が朦朧とし、食事もできなかったという。その期間に実施された5月17日と24日の講義はやむなく欠席 教官は24日の講義については補講を認める一方、17日の講義については「講義日から8日も時間が過ぎているため対応できない」と補講を拒否した。そして、単位不認定

試験で落第点をとった学生の救済措置の期限

教員から事務への成績報告の締め切り日以降には一切の 救済はしません。そんなことしたら,合格した学生から クレームが入る。なぜ,単位を落とした学生を特別扱い するのか? 我々教員はそれには反論できないから, 救済はしない。(大学で単位を落とした場合救済措置として何があるでしょうか? YAHOO!JAPAN知恵袋)

救済の是非

  1. 落第生を再試験で救済しようとした大学教授が懲戒処分を受けた事件 2019-06-17 弁護士 師子角允彬のブログ 学生を救済しようとした大学教授が、停職8か月の懲戒処分 東北芸術工科大学 成績変更申請の不自然さに気付いた大学側は、事実関係の確認を行い、大学教授に対して停職8か月の懲戒処分 学期末試験は、「ノート等の持ち込みを許可し、講義で扱ったテーマについて空欄40個を補充させ、1つの空欄に正しい単語を記載すると1点と評価する40点満点の問題」に回答する形式のものであった

追試と再試の違い

  1. 意外と知らない大学の追試と再試の違いについて 2018年03月10日  追試は、正しくは「追試験」 本試験を受けられなかった場合に受けられる試験  再試は「再試験」の略で、本試験で赤点だった場合に対象者のみに行われる試験

心不全のマーカーBNP,ProNT-BNP,トロポニン

心不全とは

心不全とは体が必要とするだけの循環量を心臓が十分に拍出できない病態の事で病名ではなく症候名です https://midori-hp.or.jp/examination-blog/congestive_-heart_failur_bnp/

心不全は病名ではなく心筋梗塞心臓弁膜症心筋炎などの心臓のさまざまな病気や高血圧などが原因となり、引き起こされる状態のこと。https://doctorsfile.jp/medication/139/

ナトリウム利尿ペプチド(natriuretic peptides)の種類

ANP (atrial natriuretic peptide 心房性ナトリウム利尿ペプチド 心房が分泌) (Human ANP は、略してHANP)、BNP (B-typeもしくはbrain natriuretic peptide 脳性ナトリウム利尿ペプチド 歴史的には脳から初めて単離されたが、主として心室が分泌), CNP (C-type natriuretic peptide 歴史的には脳から初めて単離されたが、血管内内皮細胞が分泌)という種類があります。研究の歴史的な経緯から、名称にはあまり一貫性がありませんね。

B-type or brain natriuretic peptide (BNP) is a novel natriuretic peptide secreted from the heart that forms a peptide family with A-type or atrial natriuretic peptide (ANP), and its plasma level has been shown to be increased in patients with congestive heart failure.  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8025996/

Natriuretic Peptides | ANP, BNP & CNP | Atrial Natriuretic Peptide, Brain Natriuretic Peptide | Lab Medicosis Perfectionalis チャンネル登録者数 87.3

The second member of the family to be discovered, B-type natriuretic peptide (BNP), was originally called brain natriuretic peptide because it was purified and sequenced from porcine brain (Sudoh et al. 1988). However, subsequent studies found that it is more highly concentrated in cardiac ventricles of patients with heart failure (Mukoyama et al. 1991; Mukoyama et al. 1990). Therefore, it is often described as B-type natriuretic peptide today. Finally, the third member of the family, C-type natriuretic peptide (CNP) (Sudoh et al. 1990) was purified in 1991 from porcine brain extracts based on its ability to relax smooth muscle. All three members are similar in primary amino acid structure, contain a 17-residue disulfide ring, and are the products of separate genes. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4855512/

  1.  Natriuretic Peptides: Their Structures, Receptors, Physiologic Functions and Therapeutic Applications Handb Exp Pharmacol. 2009; (191): 341–366.PMCID: PMC4855512

 

BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)

「脳性」という名前が付けられたのは、もともと脳から見つかったためですが、その後の研究で実は、驚いたことに心臓の心室で作られていることがわかったそうです。発見当初の名前が残ってしまっているため、もはや、人を欺くようなネーミングですね。

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP:Brain Natriuretic Peptide)は、1988年、Sudohらによって豚の脳から単離されたペプチドホルモンで32個のアミノ酸により構成されている。その後の研究で、BNPは心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP:Artial Natriuretic Peptide)と同様に主に心臓で分泌されるペプチドであり、ANPが主として心房から分泌されるのに対しBNPは主に心室から分泌されることが示されている。https://www.kchnet.or.jp/for_medicalstaff/LI/item/LI_DETAIL_013600.html

the natriuretic peptides, namely B-type natriuretic peptide (BNP) and the amino-terminal fragment of the precursor protein (NT-proBNP), have been shown to be useful in establishing the diagnosis of acute HF and providing short-term prognostic information in patients presenting to urgent care settings with dyspnea. https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circulationaha.106.666255

BNPが表すもの

BNPは心臓ホルモンといわれます。数値は心房の圧を反映します。 https://www.jhf.or.jp/check/opinion/12-2/bnp.html

BNPが高いということは、何らかの負荷が心臓にかかっていることを意味し、心不全のマーカーとして使用されています(当院で行える血液検査 「BNP」 馬込駅前たきざわハート内科クリニック)

プレプロBNP、プロBNP、NT-ProBNP、BNP

ホルモンとしての活性をもつものはBNPです。遺伝子が、転写、翻訳されて最初にできるポリペプチドは、シグナル配列(26アミノ酸残基)を持ったプレプロBNP(134アミノ酸残基)で、シグナル配列が切りとれらたものがプロBNP(108アミノ酸残基)になります。N末側(NT)とC末側(BNP)に切断されて、NT-ProBNP(76アミノ酸残基)とBNP(32アミノ酸残基)が同じ数だけ生じます。BNPはジスルフィド結合をもっていて環状になっています。BNPがホルモンの活性をもつものであり、NT-ProBNPは特に活性は認められていません。また、ペプチドとしての寿命はNT-ProBNPの方が長いため(半減期20分 vs. 60~120分)、血液中のマーカーとしての基準値には差があります。


(著作権および転載元:CC-BY  Management of Chronic Heart Failure:Biomarkers, Monitors, and Disease ManagementPrograms Parul U. Gandhi, MD, and Sean Pinney, MD)

  1. Natriuretic Peptides: Their Structures, Receptors, Physiologic Functions and Therapeutic Applications Handb Exp Pharmacol. 2009; (191): 341–366. PMCID: PMC4855512
  2. Monitoring B-type natriuretic peptide in patients undergoing therapy with neprilysin inhibitors. An emerging challenge? International Journal of Cardiology Volume 219, 15 September 2016, Pages 111-114

参考

  1. Phase 1 Trial of Antibody NI006 for Depletion of Cardiac Transthyretin Amyloid NEJM The median N-terminal pro–B-type natriuretic peptide and troponin T levels also seemed to be reduced.
  2. 血液検査で心臓を評価する〜BNPとは (brain natriuretic hormone) 東寺やまだクリニック 内科では血液検査をよくします。代表的なものとしては貧血検査(白血球数、赤血球数、ヘモグロビンなど)、肝機能検査(GOT、GPT、LDHなど)、腎機能検査(クレアチニン、BUN、eGFRなど)、脂質(総コレステロール、HDL、LDLなど)、糖尿病関連(血糖、HbA1c)などがあります。私はこれらに加えて、よくBNPという項目を検査します。これは心臓から分泌されるホルモンで、心臓になんらかの問題があると上昇します。正常値は18.5pg/ml以下ですが、心臓が弱って心不全という状態になると1000pg/ml以上にもなります。

 

尿量と血圧との関係

利尿ペプチド(尿量を増やすホルモン)で血圧が下がる理由は何でしょうか。

高血圧とは

高血圧とは、上の血圧「収縮期血圧」が140mmHg以上、下の血圧「拡張期血圧」が90mmHg以上と定義されており、収縮期血圧と拡張期血圧の基準値のどちらか一方、または両方を超えると、高血圧と診断 https://www.mrso.jp/colorda/lab/2102/

高血圧の原因2種類

血圧があがる理由は、循環する血液の量が多くなるか、もしくは血管が収縮した場合です。逆に、血圧が下がる要因は、循環する血液の量が減るか、血管が拡張する場合です。

血管パンパン型:血圧中の水分が増えることで血管の壁にかかる圧が上がる 日本人の7割がこのタイプ 塩分のとり過ぎが原因 血液中の余分な水とナトリウムを尿として体外に出すことが必要 利尿薬がよく効く。

血管ギュウギュウ型:65歳以上の人に多い 血管が縮んでしまう

(桑島巌氏 東京都健康長寿医療センター https://www.mrso.jp/colorda/lab/2102/)

  1. ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド, HANP(human atrial natriuretic peptide)(okayama-u.ac.jp)心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は,アミノ酸28個からなるホルモンで,主に心房で合成,貯蔵され血中に分泌される。またANPは,腎臓に働き利尿を促進すると同時に,末梢血管を拡張血圧降下作用物質としても働く。 

塩分と血圧との関係

塩分の摂取量が多すぎると(Naの摂り過ぎ)、身体は体液の塩分濃度を一定に保とうとして水分をより多く取り込み体液量が増えてしまいます。血管を流れる血液量が増えれば、血管はその分圧迫され、末梢血管の抵抗も増加し、血圧が上昇します。 https://pharma-navi.bayer.jp/adalat/pharmacist/basic/03/t26

尿量の調節と血圧との関係

利尿薬は主に、遠位尿細管で血圧を上昇させる機能に関与しているナトリウムイオンを再吸収させないように作用します。ナトリウムイオンは、再吸収されるときに水分も一緒に引き込もうとします。そのナトリウムイオンの再吸収を抑制するので、集合管への水分量やナトリウムイオン量が増加して、水分が血管に引き込まれなくなります。結果として循環血液量は減少するので、血圧が下がることになります。https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/5207/

水分摂取と血圧との関係

健康な人の尿は1日約1200ml排泄されるが、腎臓の働きによって食事からとった余分なナトリウムも体外へ排泄する。この他にも、息を吐く、皮膚表面、汗、尿、便など様々な経路で排泄され、その量は1日に2300ml以上とされている。水分を意識的に摂取することが、ナトリウムの排泄による血圧のコントロールに役立つ。(高血圧の方は水分が重要。その理由とは familyset.jp)

血管の収縮・拡張と血圧との関係

血管が収縮すると血圧は上がります。逆に、拡張すると血圧は下がります。

  1. 血管収縮物質 vasopressor substance 循環器学用語集

降圧薬の種類

カルシウム拮抗剤アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬利尿薬 (『高血圧治療ガイドライン』日本高血圧学会 https://www.mrso.jp/colorda/lab/2102/)

  1. 治療編 (テキスト解説)  利尿薬 Ca拮抗薬 利尿薬  ARB・ACE阻害薬 β遮断薬・α遮断薬 https://pharma-navi.bayer.jp/adalat/pharmacist/basic/03/t26 (解説がわかりやすい)

血圧を調節するホルモン

バソプレシン

バソプレシン(vasopressin)は、抗利尿ホルモンとも呼ばれます。その日本語名が示すとおり利尿作用を抑えて、すなわち、水の(血管内への)再吸収を促進することにより、尿量を減少(すなわち、循環血液量を増加、すなわち血圧を上昇)させます。また、英語名vasopressinが示す通り、血管(vaso)を収縮(press)させることによっても、血圧を上昇させます。バソプレシンを産生する神経分泌細胞は背側視床下部に存在し、軸索を下垂体後葉にまで伸ばしているので、バソプレシンは下垂体後葉から分泌されます。バソプレシンの標的は、腎臓および、血管平滑筋です。

ちなみに、血圧を上げる薬は昇圧剤(vasopressor)と呼ばれます。もちろん、血管(vaso)を収縮(press)させることにより血圧を上げるからです。

  1. 抗利尿ホルモンとは・・・ 看護roo!
  2. ヒトES細胞からバソプレシンを分泌する視床下部―ホルモン産生ニューロンへの分化に世界に先駆けて成功!― AMED バソプレシンというホルモンは、主に背側視床下部で産生され、下垂体後葉から分泌されて血液中に拡がるホルモンで、尿量を精密に制御し、身体の浸透圧を一定の範囲内に保つ働きをしています。
  3. Vasopressin-induced vasoconstriction: two concentration-dependent signaling pathways J Appl Physiol. 2007 Apr; 102(4): 1402–1409. AVP exerts an antidiuretic effect at the kidneys by binding to V2 receptors. Additionally, AVP binds to V1a receptors on vascular smooth muscle cells to induce vasoconstriction.

参考

  1. 心不全 Question 18 水だけ出す利尿薬とは何ですか。なぜそういう薬剤が必要なのですか 日本心臓財団

トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)とは

トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)とは

ATTR-CMは、肝臓で作られたトランスサイレチンの突然変異型タンパク質が心臓の左心室に蓄積してアミロイドを形成してしまい、心臓の機能を損なう進行性の病気だそうです。

Transthyretin amyloidosis (ATTR-CM) occurs when your liver produces faulty transthyretin (TTR) proteins. Clumps of these abnormal proteins (called fibrils) build up in your heart’s main pumping chamber. https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17855-amyloidosis-attr

ATTR-CMは稀な疾患で、他の疾患に間違えられてしまうことも多いのだそう。

What You Need to Know about This Rare Heart Condition Pfizer チャンネル登録者数 7.03万人

 

ATTR-CMの治療戦略

第1相試験の結果を報告した論文がNEJMに掲載。

  1. 心アミロイドーシスに有望な抗ATTR抗体 2023年06月05日 MedicalTribune
  2. Phase 1 Trial of Antibody NI006 for Depletion of Cardiac Transthyretin Amyloid BACKGROUND Transthyretin amyloid (ATTR) cardiomyopathy is a progressive and fatal disease caused by misfolded transthyretin. Despite advances in slowing disease progression, there is no available treatment that depletes ATTR from the heart for the amelioration of cardiac dysfunction. NI006 is a recombinant human anti-ATTR antibody that was developed for the removal of ATTR by phagocytic immune cells.

Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy (ATTR-CM)は何の略?

CMはcardiomyopathy

TTRは、transthyretin

Aはamyloid もしくはamyloidosis

のことのようです。

Transthyretin amyloid cardiomyopathy (ATTR-CM) is one of the types of systemic amyloidosis in which misfolded transthyretin (TTR) protein gets deposited in the myocardium.

Transthyretin amyloidosis (ATTR) is a systemic disease.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK574531/

 

 

授業への参加態度が最終試験に及ぼす影響:試験成績の予測因子の同定

大学の定期試験の成績を決めるものは、もちろん学生の勉強量と質です。日頃の勉強の様子で、学業成績が予測可能でしょうか。もし可能であれば、落ちこぼれる前にその学生を救う手立てを講じることができるはずです。

落第点を取る学生を、それくらい早期に予測可能か?という疑問を抱きました。そのような研究はすでに多数あるようです。

成績の予測

  1. Educational Data Mining Techniques for Student Performance Prediction: Method Review and Comparison Analysis Front. Psychol., 07 December 2021 Sec. Educational Psychology Volume 12 – 2021 |
  2. A Robust Machine Learning Technique to Predict Low-performing Students ACM Transactions on Computing Education Volume 19 Issue 3 Article No.: 18pp 1–19 16 January 2019 https://doi.org/10.1145/3277569 to identify students who are at risk of performing poorly in a course. This identification must be performed early enough in the term to allow instructors to assist those students before they fall irreparably behind. This study describes a modeling methodology that predicts student final exam scores in the third week of the term
  3. Student placement and skill ranking predictors for programming classes using class attitude, psychological scales, and code metrics Research and Practice in Technology Enhanced Learning volume 13, Article number: 7 (2018)
  4. Predicting Students’ Final Exam Scores from their Course Activities October 2015 DOI:10.1109/FIE.2015.7344081 Conference: IEEE Frontiers in Education (リサーチゲート)
  5. Data Mining: A Prediction for Performance
    Improvement of Engineering Students using
    Classification (PDF) World of Computer Science and Information Technology Journal (WCSIT)
    ISSN: 2221-0741 Vol. 2, No. 2, 51-56, 2012
  6. Data Mining Approach for Predicting Student Performance (PDF) Journal of Economics and Business, Vol. X, Issue 1, May 2012
  7. The Use of Progressive Indicators as Predictors of NCLEX-RN Success and Performance of BSN Graduates Journal of Nursing Education, 2013;30(1):9 Published Online:January 01, 1991
  8. Academic Predictors of Success on the NCLEX-RN Examination for Associate Degree Nursing Students  Journal of Nursing Education, 2013;29(4):163–169 Published Online:April 01, 1990

もともとの能力

  1. Aptitude, Previous Achievement, and Cognitive Style: Relation to Academic Achievement in Nursing Courses of Differing Content  Journal of Nursing Education, 2013;28(6):265–270 previous achievement or aptitude measures are the best predictors of nursing course achievement (Schwirian, 1976; Grant, 1986). 無料要旨

対面vs.オンライン

  1. Replacing Lecture with Web-Based Course Materials incorporating frequent interactive comprehension checks into the online material (something that is difficult to do in lecture) proved effective
  2. Multimedia Comprehension Skill Predicts Differential Outcomes of Web-Based and Lecture Courses (PDF) Journal of Experimental Psychology: Applied 2002, Vol. 8, No. 2, 85–98

動画視聴

  1. A study exploring the impact of lecture capture availability and lecture capture usage on student attendance and attainment  Higher Education volume 77, pages403–421 (2019) 無料フルテキスト
  2. Turn up, tune in, don’t drop out: the relationship between lecture attendance, use of lecture recordings, and achievement at different levels of study  Higher Education volume 77, pages1065–1084 (2019) Published: 03 November 2018

興味と学習態度

  1. Academic Achievement Prediction: Role of Interest in
    Learning and Attitude towards School International Journal of Humanities Social Sciences and Education (IJHSSE) (PDF)
    Volume 1, Issue 11, November 2014, PP 73-100

学習態度

  1. STUDENTS’ ATTITUDES AND THEIR EFFECTS ON LEARNING AND ACHIEVEMENT IN MATHEMATICS: A CASE STUDY OF PUBLIC SECONDARY SCHOOLS IN KIAMBU COUNTY, KENYA. (PDF) ALPHINE C. LANGAT E55/24385/2011
  2. Understanding the relationship between student attitudes and student learning PHYSICAL REVIEW PHYSICS EDUCATION RESEARCH 14, 010107 (2018)

学習習慣と学習態度

  1. PREDICTING STUDENTS’ ACHIEVEMENT IN FINANCIAL ACCOUNTING USING STUDY HABIT AND ATTITUDE SCORES (PDF) Journal of Social Science and Public Policy Volume 2, December 2010

授業への出席

  1. Class Attendance in College: A Meta-Analytic Review of the Relationship of Class Attendance With Grades and Student Characteristics June 1, 2010 無料要旨 class attendance a better predictor of college grades than any other known predictor of academic performance, including scores on standardized admissions tests such as the SAT, high school GPA, study habits, and study skills

ノートをとること

  1. College Students’ Perceptions of Notetaking and Their Relationship to Selected Learner Characteristics and Course Achievement Research in Higher Education Vol. 28, No. 3 (May, 1988), pp. 223-239 (無料要旨、1ページめ)Professors speak, Students write.

小テスト

  1. Wambuguh, Oscar and Yonn-Brown, Theo (2013) “Regular Lecture Quizzes Scores as Predictors of Final Examination Performance: A Test of Hypothesis Using Logistic Regression Analysis,” International Journal for the Scholarship of Teaching and Learning: Vol. 7: No. 1, Article 7. Available at: https://doi.org/10.20429/ijsotl.2013.070107

授業中の質問

  1. Do Students’ Questions during Chemistry Lectures Predict Perceived Comprehension and Exam Performance? Published online: 13 Jan 2022 The Journal of Experimental Education Volume 91, 2023 – Issue 3 Questions that sought verification or disambiguation were positively associated with exam performance.

その他の論文

  1. An Evaluation of Blended Instruction in Terms of Knowledge Acquisition and Attitude in an Introductory Mathematics Course (PDF) January 2014 A blended course is one taught by combining teacher-centered face-to-face instructional elements with online learning components and online course management tools.

学生が苦手意識を持ちやすい科目

統計学

  1. Ugh…Statistics! College Students’ Attitudes and Perceptions Toward Statistics (PDF) Drew A. Doyle 2017  University of Central Florida

 

参考

アクティブラーニング

  1. Measuring actual learning versus feeling of learning in response to being actively engaged in the classroom PNAS September 4, 2019 116 (39) 19251-19257 students in the active classroom learn more, but they feel like they learn less.

生化学の勉強方法、理解の仕方

生化学がカバーする範囲

今の大学の生化学の科目は、教科書を見てみて驚いたのですが、古典的な生化学(糖質、脂質、タンパク質の代謝)だけでなく、分子生物学(DNAの複製、遺伝子の転写、翻訳)や細胞生物学(細胞周期の制御、細胞内情報伝達機構)、生理学(ホルモンの働き)も含んだものになっています。

生化学はそうでなくても、知識の量が膨大でつまらないものという印象だったのが、今やもう本当に勉強することが大変な科目になってしまいました。そんな生化学をどのように勉強していけばよいのでしょうか。

生化学は、生体物質の化学です。化学なので、原子が共有結合して分子がつくられ、分子が化学反応により別の分子になるといったことが基本になります。

狭義の生化学

生化学反応の目的は、生体高分子の異化(分解反応、多くの場合、酸化反応)により高分子から低分子(再度、高分子をつくるための原材料)に分解すること、高分子の材料から同化(合成反応、多くの場合、還元反応)により生体高分子をつくること、エネルギー源となるグルコースなどの酸化反応によりエネルギーを取り出すことです。

分解して再度合成するのなら、最初から分解せずに使えばいいのでは?という疑問が湧くかもしれませんが、ご飯として口の中にいれる栄養は、炭水化物や脂肪など、動物や植物の貯蔵エネルギーの状態の分子です。人間はそれらをそのまま貯蔵エネルギーにしないので、一度分解します。炭水化物(=糖質+食物繊維)(糖質のことを炭水化物とおおざっぱに呼ぶことも多い)は、単糖が重合したものですが、消化吸収の過程で、単糖にまで分解されて体内へ吸収されます。エネルギーが必要なときは、単糖、特にブドウ糖(グルコース)は解糖系と呼ばれる一連の反応(およびその後のクエン酸回路)によって分解され、エネルギーが取り出されます。エネルギーが足りているときは、肝臓と骨格筋では、単糖は重合反応によりグリコーゲンという貯蔵エネルギーになります。また、グルコースが分解されてアセチルCoAにまでなったあと、アセチルCoAが脂肪酸合成に使われ、脂肪酸はグリセロールとエステル結合により中性脂肪に変えられて、脂肪組織に貯蔵エネルギーとして蓄えられます。

生化学(代謝)を学ぶときにおさえるべきポイント

代謝経路を学ぶときには、

  • いつどういう条件のとき(摂食時、食感などの絶食時、絶食の時間が続いた飢餓状態のとき)、
  • どの臓器で(肝臓、骨格筋、腎臓、脂肪組織、その他)、
  • 細胞内のどのコンパートメントで(細胞質、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、小胞体、その他)、
  • なんの出発材料から(糖、アセチルCoA、脂肪酸、その他)、
  • 何を最終産物として(糖、ATP、尿酸、尿素、ケトン体、脂肪酸、その他)、
  • 何の目的で(血糖値の維持、その他のホメオスタシスのため、エネルギー産生、など)、
  • どの臓器で使うために(脳などでグルコース代替としてケトン体を、血糖値を上げるために肝臓自身でなく、血糖値には寄与せず筋肉細胞自身で地産地消するためのグリコーゲン分解、など)

その代謝回路の反応が生じるのかを強く意識して勉強するとよいです。代謝の場合は、エネルギーの安定供給(つまりは、生体の恒常性)が目的であることが多いと思います。代謝だけでなく、ホルモンの働きもそうですが、とどのつまりは、生体の恒常性(健康に生きていること)を維持するために全ての出来事が生じていると言えるでしょう。

摂食や飢餓は、外的環境の「変化」として捉えることができます。変化があったときに、生体の恒常性を維持するために生体がどのように応答するのかという観点で物事をみると統一的な理解ができると思います。

代謝経路の調節

生化学で代謝を学ぶときのもう一つの重要な観点は、その代謝経路がどのように調節されているかという点です。調節されるべきは、反応の向きと反応の速さです。速さを決めるのは、一連の反応であれば律速段階となる、最も遅い反応です。反応を促進する因子や抑制する因子が何か(反応を調節するホルモンの存在、あるいは、最終産物が律速段階の反応を司る酵素に作用するなど)も大事です。

また、多くの化学反応は可逆反応ですが、化学反応がどちらの向きに進むのかが、どのように決まるのか(これは反応前後のギブスの自由エネルギーの差が負か正かで決まる)、生化学反応は酵素が触媒しますが、その酵素活性の調節がどのようになされているのかを知ることも重要です。ギブスの自由エネルギー差には、生成物と反応物の量比も寄与しますが、それとはまったく別の仕組みとして、一連の化学反応により最終的な生成物が産生される場合、その最終産物が一連の化学反応の最初のほうの反応を触媒する酵素に結合して酵素活性を調節することもあります。酵素は反応の活性化エネルギーを下げる(=反応の速さを速める)働きをするだけであり、化学反応の向きを決めるわけではないことに注意を要します。

  1. 第 1 章 生体の機能とタンパク質(tokokita-h.spec.ed.jp 埼玉県立所沢北高等学校) 細胞内で複数の酵素によって連続的に化学反応が進む代謝経路においては,一般に,一連の化学反応の結果つくられた最終産物が代謝経路の初期の反応に作用する酵素にはたらいて,反応系全体の進行を調節している。

ホルモンによる代謝の調節

代謝経路がどのように調節されているかという点においては、化学反応の枠組みを越えて、ホルモンなどによる調節、そのホルモンが細胞内情報伝達機構を動かして、代謝に関わる酵素の活性をタンパク質レベル(リン酸化など)で調節したり、その遺伝子発現を調節したりするメカニズムも押さえておく必要があります。

大学レベルの生化学で覚えるべきホルモンの数は30種類を超えるくらいありますので、定期試験の直前になって一度に全部暗記しようとするのは無謀です。ちょっとずつ覚えていくしかありません。しかし、覚えるための要領というものがあります。

  • 体の状態がどうなったときに分泌されるのか(多くの場合、ホルモンの働きは恒常性の維持ですので、どんな変化に対してそれ打ち消す方向で作用するのか)(血圧の上下、血糖値の上下、血中カルシウムイオン濃度の上下、など)
  • 体のどの部位から分泌されるのか(視床下部、下垂体、副腎、甲状腺、副甲状腺、性腺など)
  • 体のどの部位に働きかけるのか(標的)(視床下部、下垂体、副腎、甲状腺、副甲状腺、性腺など)
  • 標的となる部位でさらに別のホルモンが分泌されるか(視床下部→下垂体→副腎皮質 など)
  • 水溶性か脂溶性か(甲状腺ホルモンや性ホルモンは脂溶性)
  • 拮抗する働きをもつホルモンは何か(インスリンvs.グルカゴン、カルシトニンvs.副甲状腺、など)

といったところに注意を払いましょう。

エネルギーの形態による生化学の理解

使うためのエネルギーの形態:ATP

人間はエネルギーがないと生きていけません。動く(=筋肉が収縮する)のにもエネルギーが必要(=ATPが加水分解されて放出されるエネルギーにより筋繊維が収縮)です。ものを考える(=神経細胞で活動電位が発生する)のにもエネルギーが必要です(=ATP加水分解でえられるエネルギーを利用して、イオンを汲み上げるポンプを動かし、イオン濃度の勾配の維持)。「使える形のエネルギー=ATP」だと言えます。しかし、ATPは貯蔵や輸送されることはありません。細胞内で用事調整されます。

輸送可能なエネルギーの形態:グルコース

血流に乗って輸送できて、ATPを即座につくるためのエネルギー源が、グルコースです。ですから、血液中のグルコースの量、すなわち、血糖値が非常に重要なのです。

飢餓時のグルコースの代替となるケトン体も、輸送できるエネルギー源です。脂肪酸も(脳には入っていけないため脳では利用できませんが)、輸送できる(アルブミンと結合することにより血液中を移動可能)エネルギー源と言えます。

貯蔵エネルギー:グリコーゲン、中性脂肪

エネルギーの供給が需要を上回る状況であれば、エネルギーは貯蓄に回されます。その場合、貯蔵エネルギーの形態が何かというと、筋肉や肝臓で作られて蓄えられるグリコーゲンであり、また、脂肪組織でつくられて蓄えられる中性脂肪です。これらは特定の臓器で貯蔵されていますが、いざ体がエネルギーを必要としたときには、分解して、エネルギー源として利用されます。肝臓は、他の臓器にエネルギー源を供給するために非常に重要な役割を担う臓器です。一方、筋肉では、グリコーゲンは筋肉が自分で使うために分解されます。その理由は、筋肉にはグルコース-6-ホスファターゼが存在しないため、グルコースにまでは変換されずにグルコース-6-リン酸から解糖系に入るためです。筋肉のグリコーゲンはグルコースにはならないのです!それとは対照的に、肝臓は、グルコース-6-ホスファターゼによってグルコース-6-リン酸をグルコースにまで変換し、グルコースを血中に放出して、全身での利用に供します。筋肉は利己的で、肝臓は他己的なんですね。

貯蔵エネルギーとしてグリコーゲンと中性脂肪とがあると聞くと、じゃあどっちをどう使うの?という疑問が湧きます。ご飯を食べて数時間して次のご飯を食べる直前は腹ペコになっていますが、そのときの(つまり食間の)エネルギーはどうやって供給されているのかというと、グリコーゲンが分解されています。筋肉は自分で蓄えたグリコーゲンを分解して解糖系をまわしていますし、肝臓は肝臓に蓄えたグリコーゲンを分解してグルコースをつくり、全身に供給します。食間の血糖値を維持するために、肝臓が大きな役割を果たしているわけです。それに対して、中性脂肪はグリコーゲンよりも遅いタイミングで活躍します。なので、運動選手が運動するときは当然、「食間」なわけですが、まずはグリコーゲンが分解されてできたエネルギーを使って運動しているのです。中性脂肪は、絶食状態が続いてグリコーゲンが使われたあとで、重要になります。災害に巻き込まれて何日間も食べるものがないという状況に陥った場合には、中性脂肪が多くある人のほうが生き伸びるチャンスは大きいと言えます。

グリコーゲンと中性脂肪の使い分けは、スポーツ選手にとってことさら重要です。マラソンのように長時間運動する場合には、グリコーゲンは枯渇して脂肪が燃料になります。

フルマラソンの距離、42.195kmを走るためには、体重60kgの人なら2500kcalのエネルギーが必要ですが、身体に蓄えることのできる糖質は2000kcalほど。カーボローディングでより多くの糖質を身体に蓄えて、マラソンへの準備をする人もいますが、いずれにしても足りない分は脂肪を燃料にしないと、マラソンを走り切ることができません。(脂肪をエネルギー源にして走れるカラダをつくろう glico.com)

  1. カーボ・ローディング(Carbohydrate Loading)(ウィキペディア)グリコーゲンを通常より多く体に貯蔵するための運動量の調節および栄養摂取法。グリコーゲン・ローディングとも呼ばれる。

筋肉におけるATP再生

筋肉では筋収縮のためにATPが消費されます。ATPは保存されているものではないので、もともとあったATPは筋収縮であっというまに消費されます。では、どうするか?筋肉にはクレアチンリン酸が多量に存在しており、クレアチンリン酸がリン酸をADPに転移することによりATPを再生しています。

  1. クレアチンリン酸 / CrP(くれあちんりんさん)  e-ヘルスネット 厚生労働省

これは、「ATP-クレアチンリン酸系(ATP-CP系)」と称されます。ATP-CP系が働けるのはせいぜい10秒たらずと言われています。これくらい短い時間に強度の運動をするときは、呼吸せずに無酸素運動をしていると言われます。

運動を続けると、クレアチンリン酸も枯渇します。そうなると、普通にエネルギー代謝経路(解糖系、クエン酸回路、電子伝達系)をつかってATPを産生するしかありません。この場合は、電子伝達系における最終的な電子の受け手として、酸素が必要になります。

恒常性の調節機構という視点からの生化学の理解

恒常性の調節というと生理学の守備範囲ですが、生化学ともオーバーラップしています。恒常性を調節するために化学反応が生じるのであれば生化学というわけです。無理やり線引きをする必要はありません。何の恒常性?ということでいえば、

  1. 血糖値
  2. 血圧
  3. 体液の浸透圧
  4. 血中カルシウムイオン濃度
  5. 体温

などが考えられます。

 

 

 

 

プリン体は腎臓に悪いの?腎臓が悪い人はプリン体を控えるべき?

プリン体と腎臓とはどういう関係でしょうか。プリン体は、プリンの構造を持つ化合物の総称で、代表的なものは核酸の塩基であるアデニンとグアニンです。アデニンやグアニンは代謝されて尿酸になり、尿から排出されます。プリン体が代謝される場所は、肝臓です。肝臓でできた尿酸は血中を通って腎臓に行き、そこで尿に排出されます。

尿酸が高いことが、腎機能悪化の原因なのか、単に腎機能が悪くなったことに対する結果であるのかはよくわかっていません。(尿酸を下げることで腎機能低下を防ぐことが可能か? ウェルビーイング内科クリニック 船橋市上山町)

 

尿酸と慢性腎臓病に関する論文のメモ

  1. Gout and Diet: A Comprehensive Review of Mechanisms and Management Nutrients 2022, 14(17), 3525; https://doi.org/10.3390/nu14173525
  2. The case for uric acid-lowering treatment in patients with hyperuricaemia and CKD Nature Reviews Nephrology volume 15, pages767–775 (2019)
  3. What Are Purines? By: Judith Frank, MD, Rheumatologist arthritis-health.com