コレステロールの構造、生合成、阻害剤スタチン

コレステロールは生体において非常に重要な物質です。押さえておくべき知識としては、

  1. コレステロールは細胞膜の重要な成分
  2. コレステロールは、ステロイドホルモン(コルチゾール、アンドロゲン(男性ホルモン)、エストロゲン(女性ホルモン)の前駆体になる。
  3. 胆汁酸の前駆体
  4. 動脈に沈着すると心臓病脳卒中のリスク要因になる(アテローム性動脈硬化(atherosclerosis)  ギリシャ語:athera かゆ + sclerosis 硬さ)
  5. 肝臓で、アセチルCoAから多数の反応を経て作られる。
  6. HMG-CoAレダクターゼ(メバロン酸をつくる酵素)の量と活性が、コレステロール生合成の制御として重要
  7. LDL受容体によって血中コレステロール濃度は低く保たれている
  8. Konrad Blochらがコレステロールの生合成経路の研究に貢献
  9. 高コレステロール血症の治療薬であるスタチンは、HMG-CoAレダクターゼを阻害する薬
  10. 食べものから摂取および生体内でde nove生合成されることにより、得られている

参考

  1. ヴォ―ト基礎生化学
  2. KONRAD BLOCH The Biological Synthesis of Cholesterol SCIENCE 1 Oct 1965 Vol 150, Issue 3692 pp. 19-28 DOI: 10.1126/science.150.3692.19 コレステロールの構造を決める研究の歴史の概観 1930年代にコレステロールの構造が完全に決定された  Sire Robert Robinsonがコレステロールの環状の骨格はスクアレンによってできているのではないかという仮説を提唱 Blochらは、同位体トレーサーを用いることにより、酢酸がコレステロールの側鎖および4員環骨格の構成要素になることを発見。
  3. ARTICLE THE BIOLOGICAL CONVERSION OF LANOSTEROL TO CHOLESTEROL. R.B.ClaytonKonradBloch Journal of Biological Chemistry Volume 218, Issue 1, 1 January 1956, Pages 319-325 https://doi.org/10.1016/S0021-9258(18)65895-8
  4. SYNTHESIS OF LANOSTEROL IN VIVO* BY PETER B. SCHNEIDER, R. B. CLAYTON, AND KONRAD BLOCH (Received for publication, June 14, 1956) Journal of Biological Chemistry Volume 224, Issue 1, 1 January 1957, Pages 175-183

コレステロールの構造が複雑でいつまでたってもなかなか覚えられないでいました。しかし、目で映像的に覚えれば、案外、覚えられることがわかりました。

ステロイド

コレステロールはステロイドの一種ですが、ステロイドsteroidは、六員環3つと、五員環1つの4つの環の骨格をもつ脂質のことです。覚えるときは六角形を2つ、一辺を共有するかたちで横に並べて描き、右の六員環の右上にもうひとつ接するように描きます。その右横に五員環を接するように描きます。環の名前は左からA,B,C,Dと呼ばれます。炭素の番号はAの一番上から反時計回りに1,2,3,4,5とつけて、環Bにうつって6,7,8,9,10とします。次に環Cを時計まわりに11,12,13,14として、環Dにうつって反時計回りに15,16,17とします。炭素13についているメチル基がのCが18,炭素10についているメチル基のCが19になります。17の炭素に「側鎖」がつきます。

  1. マクマリー生化学反応機構第2版 2・2 生体分子:脂質 テルペノイド、ステロイド、エイコサノイド 55ページ

コレステロールの構造

上のステロイド骨格に加えて、コレステロールの場合は側鎖は炭素8個からなるので、合計するとコレステロールは27個の炭素からなることになります(化学式C27H46O)。3番の炭素には水酸基がついています。また、5-6番の炭素間は二重結合になっています。側鎖の番号は、17の次の、側鎖の最初が20,分岐したメチル基が21,長い鎖のほうにむかって22,23,24,25,26,先端の枝分かれの炭素が27となります。25からは先が割れて26と27になるイメージです。

  1. Fig. 1. Structure of cholesterol with the numbering of the carbon atoms. Analytical methods for cholesterol quantification Journal of Food and Drug Analysis Volume 27, Issue 2, April 2019, Pages 375-386 https://doi.org/10.1016/j.jfda.2018.09.001

 

コレステロールの生合成経路

コレステロールの生合成経路は長大でかなり複雑に見えます。しかし炭素5個(C5)からなるイソプレンCH2=C(-CH3)-CH2-CH3が5個結合した形であるスクアレン(C30)が、メチル基除去などのいくつかの反応を経てC27になると理解すれば、見通しが良くなります。

イソプレンは、ピロリン酸が結合したイソペンテニルピロリン酸(IPP)CH2=C(-CH3)-CH2-CH2-O-(P)-(P) として反応にかかわります。

コレステロールの産生を抑制する薬としてスタチンが有名ですが、スタチンHMG-CoA還元酵素を阻害して、HMG-CoAからメバロン酸が生成する反応を阻害します。

アセチルCoA

コレステロールの構造は複雑ですが、環になる前の鎖状の構造を見てみると、イソプレン(C5)が6個つながったもの(C30)が主骨格のもとになっています。イソプレンに2リン酸が結合したイソペンテニルピロリン酸(IPP)を作るための材料が、アセチルCoAです。

アセチルCoAを最初に学ぶのは、ピルビン酸(C3)がTCA回路に入るときに、脱炭酸(C1)されて、まずアセチルCoAに変換されて、そのアセチル基(C2)がオキサロ酢酸(C4)に結合してクエン酸(C6)が回復するという場面でした。TCA回路ではこのC6化合物が2回、脱炭酸してC4化合物になります。この酸化の過程でATPにのちに変換するのにつかわれるNADH(3分子)やFADH2(1分子)、GTP(1分子)を作るのでした。

つまり、分解され、酸化されてエネルギーを取り出すためのアセチルCoAだったわけですが、実はアセチルCoAは「異化」だけでなく、種々の高分子化合物(コレステロール、脂肪酸など)を合成する「同化」反応において、炭素骨格を提供する原材料としても使われるという点が重要だと思います。

  1. 畠山『生化学』121ページ 図6-9 アセチルCoAの移動とNADPHの供給

 

さて、ステロイド合成に向けた反応の出発点ですが、アセチルCoA 2分子が「クライゼン縮合」と呼ばれる反応によって、アセトアセチルCoAになります。

CH3-C(=O)-S-CoA  + CH3-C(=O)-S-CoA   → CH3-C(=O)-CH2-C(=O)-S-CoA  + HS-CoA 

  1. マクマリー生化学反応機構第2版 1・8カルボニル縮合反応の機構 29ページ エステルの縮合はクライゼン縮合反応と呼ばれ
  2. チオエステル結合(コトバンク)カルボキシル基(-COOH)とチオール基(-SH)が脱水縮合してできる結合(-CO-S-)。高エネルギー結合の一つ。
  3. クライゼン縮合 Claisen Condensation(Chem-Station)塩基性条件下におけるエステル同士の縮合反応。 2 R1-C-C(=O)-OR2 → R1-C-C(=O)-R1-C(=O)-OR2
  4. クライゼン縮合(ウィキペディア)2分子のエステルが塩基の存在下に縮合反応してβ-ケトエステルを生成する反応である。 R-C-C(=O)-O-R’ + R-C-C(=O)-O-R’→ R-C-C(=O)-C(-R)-C(=O)-O-R’ + R’OH
  5. クライゼン縮合 (FUJIFILM)

アセトアセチルCoA

アセトアセチルCoAは、再度アセチルCoAと反応します。この反応はアルドール反応で、

CH3-C(=O)-CH2-C(=O)-S-CoA  + CH3-C(=O)-S-CoA →(アルドール反応)

さらに加水分解がおこり、3-ヒドロキシ3-メチルグルタリルCoA(HMG-CoA)

HOOC-CH2-C(OH)(CH3)-CH2-C(=O)-S-CoA

が生成します。

ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)

ヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)は、2分子の(NADPH + H+)によってチオエステル基の部分が還元されて、メバロン酸 HOOC-CH2-C(-CH3)(-OH)-CH2-CH2OH (と2分子のNADP+)を生成します。

メバロン酸

メバロン酸 HOOC-CH2-C(-CH3)(-OH)-CH2-CH2OH

メバロン酸は、メバロン酸キナーゼにより、5-ホスホメバロン酸になり、さらにホスホメバロン酸キナーゼによって、5-ピロホスホメバロン酸になります。それから、ピロホスホメバロン酸デカルボキシラーゼの働きによって、イソペンテニル二リン酸(C5)が生じます。

イソペンテニル二リン酸 H2C=C(-CH3)-CH2-CH2-O-PO2(-)O-PO3(2-)

イソペンテニル二リン酸(IPP)

イソペンテニル二リン酸 H2C=C(-CH3)-CH2-CH2-O-PO2(-)O-PO3(2-) が生成します。

イソペンテニル二リン酸 が異性化して、ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)

ジメチルアリル二リン酸(DMAPP)

イソペンテニル二リン酸 (C5)とジメチルアリル二リン酸(DMAPP)(C5)との結合により、ゲラニル二リン酸(C10)が生成します。

ゲラニル二リン酸(C10)

H3C-C(-CH3)=CH-CH2-CH2-C(-CH3)=CH-CH2-O-PO2(-)-O-PO(2-)   (C10化合物)

ゲラニル二リン酸(C10)にイソペンテニル二リン酸(C5)が結合してファルネシル二リン酸(C15)が生成します。

ファルネシル二リン酸(C15)

ファルネシル二リン酸(C15) 2分子が向かい合わせになるような向きで結合してスクアレン(C30)になります。

スクアレン(C30)

H3C-C(-CH3)=CH-(CH2-C(-CH3)=CH-CH2)2 – (CH2-CH=C(-CH3)-CH2)2 -CH2-CH=C(-CH3)-CH3

上記の構造であるスクアレン(C30)は直鎖構造をしていますが、これが環状になったものがラノステロール(C30)です。

ラノステロール

ラノステロール(C30)から3つのメチル基が取り除かれます。また、側鎖の二重結合が還元されて、環構造の中にある二重結合は場所が移動します。こうしてコレステロールになります。

コレステロール

コレステロールは、他の種々のステロイドの前駆体としての役割を担います。

 

スタチン

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系) 働き・特徴肝臓におけるコレステロールの合成に関与するHMG-CoA還元酵素の作用を阻害することによって、コレステロールの産生を抑制する薬です。

参考

  1. マクマリー生化学反応機構第2版 3・6ステロイドの合成 141ページ~
  2. マークス臨床生化学 第28章 コレステロールの吸収、合成、代謝、運命

 

 

 

 

 

アルコールを飲むとなぜ喉が渇く?

アルコールを飲むと喉が渇きます。アルコールの代謝に水が必要?と一瞬思いましたが、そういうわけではなく、単に、アルコールに利尿作用があるため、体から水分が失われるので水の補給が必要になるということだそうです。もしくは、細胞外液の浸透圧がアルコールのせいで上昇するため、細胞から水が失われるので水を補給したくなるということみたいです。

  1. お酒を飲みすぎた翌日は、いつも冷たい水をがぶ飲みしてしまいます。これって大丈夫ですか?(サントリー)

アルコール(エチルアルコールCH3CH2OH)は、胃や腸で吸収され、肝臓に運ばれて、ADH(アルコール脱水素酵素)の働きによりアセトアルデヒドに変換され、さらにALDH(アルデヒド脱水素酵素)の働きで酢酸になります。酢酸は、アセチルCoAになり、TCA回路に入って最終的には、二酸化炭素にまで分解されます。あるいは、脂肪酸の原料としても使われます。

アルコールが代謝されてできるアセチルCoAが脂肪酸の原料だから、飲みすぎは太るのかというと、理由としてはそれだけではないようで、お酒には糖質もかなり含まれていることが多いので、その糖質が栄養の摂りすぎになって太るという可能性もあるそう。

  1. 【酒好き必見!】太りにくいお酒の種類・飲み方・おつまみを徹底解説 MedicaLook

アルドール反応とは

解糖系について勉強していると、グルコースからピルビン酸にいたるまでの経路にでてくる反応で、フルクトース1,6ビスリン酸 CH2(-OPO4 2-)-C(=O)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2(-OPO4 2-)が2つに分かれて、ジヒドロキシアセトンリン酸 CH2(-OPO4 2-)-C(=O)-CH2(OH)とグリセルアルデヒド3-リン酸 CH(=O)-CH(OH)-CH2(-OPO3 2-) が生成する反応があります。これはアルドール開裂(アルドール反応の逆反応)と呼ばれるもので、この反応を理解するためには、アルドール反応が何なのかを勉強する必要があると感じました。

カルボニル基 -C(=O)-に隣接する炭素は、α炭素と呼ばれ、そのα炭素に結合している水素はα水素と呼ばれるのだそうです。このα水素が水素イオンとして脱離することによって、α炭素がマイナスの電荷を帯びます。これが、エノラートイオンと呼ばれるそう。

アルドール反応とは

新しい炭素-炭素結合を作ることが出来る 有機化合物の基本骨格を、二つのフラグメントを結合する形で繋げ、より複雑なものに出来る。 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (1) Chem-Station

aldol反応とは、α水素を有するアルデヒド(またはケトン)が酸もしくは塩基の存在下、2分子間で起きる付加反応のことです。生成物はβ-ヒドロキシルアルデヒドまたはβ-ヒドロキシルケトンとなります。ここでいう「β」はβ位のことで、カルボニル基の隣(=α位)のさらに隣(=β位)という意味です。(aldol反応・aldol縮合 yaku-tik.com)

解糖系の場合、ジヒドロキシアセトンリン酸 CH2(-OPO4 2-)-C(=O)-CH2(OH)とグリセルアルデヒド3-リン酸 CH(=O)-CH(OH)-CH2(-OPO3 2-)  の2つが構成要素で、アルドール反応の生成物が、フルクトース1,6ビスリン酸 CH2(-OPO4 2-)-C(=O)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2(-OPO4 2-) なので、確かに、生成物のβ位の炭素には水酸基(アルデヒド由来)になっていて納得です。

アルドール反応のエッセンス部分は、炭素から水素イオンが脱離して、炭素がマイナスイオンになっているのを(-)と書いておくと、

-C(=O)-C(-)  + CH(=O)  ⇒ -C(=O)-C-C(OH) –

ということになります。

アルドール反応(アルドールはんのう、aldol reaction)はα位に水素を持つカルボニル化合物が、アルデヒドまたはケトンと反応してβ-ヒドロキシカルボニル化合物が生成する反応で、求核付加反応のひとつ。 アルデヒド同士がこの反応を起こすとアルドールを生成することから、この名で呼ばれる。(アルドール反応 ウィキペディア)

アルドールとは、アルデヒド+アルコールの造語だったんですね。知ってすっきり。「アルデヒド同士がこの反応を起こすとアルドールを生成」という説明で、ようやく気付きました。

なぜこんな反応が起きるのか?カルボニル基のとなりの炭素(α炭素)に水素がある化合物の場合、

R-C(=O)-CH2-R (ケト型) は、R-C(-OH)=CH-R(エノール型)の配置もとれるのだそうです。二重結合(en)をもつアルコール(-ol)なのでエノールという名称になるわけですね。この水素が脱離した分子は、エノラート(enolate)と呼ばれるそうです。R-C(=O)-CH-R  α炭素がマイナスの電荷を帯びることになります(水素は水素イオンとして脱離)。このマイナス電荷の炭素が、もう一方のケトンあるいはアルデヒドの分子内にある、プラス電荷気味になっているカルボニル基の炭素に対して「求核置換」の攻撃をするわけですね。

  1. アルドール反応・アルドール縮合:酸・塩基によるエノラート合成 Hatsudy:総合学習サイト

さて、エノラートという言葉を学んだので、もういちどアルドール反応の定義に戻ります。これが厳密な定義なのかな。

アルドール反応の定義は以下の通りである。【α水素をもつカルボニル化合物から発生したエノラート(エノール)がもう一つのカルボニル化合物へ求核付加し、β-ヒドロキシカルボニル化合物を与える反応】(炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (1) Chem-Station)

アルドール反応・アルドール付加・アルドール縮合という名称

自分が混乱したのは、アルドール縮合という言葉です。上記の説明では、縮合(例えば水分子が脱離するなど)していなくて、単に結合しただけです(付加反応)。付加反応のことを縮合と呼ぶ人もいるようですが、アルドール反応は実際にこの付加反応が生じたあと、次に続く反応で縮合も生じるので、それを(もしくはそれも含めて)アルドール縮合と呼ぶのかもしれません。

【縮合】2分子またはそれ以上の有機化合物が反応して、簡単な化合物の脱離を伴いながら新しい化合物を生成する反応をいう。たとえば、酢酸とエタノール(エチルアルコール)から酢酸エチルを生成するエステル化の反応は、酢酸とエタノールの両分子から簡単な化合物である水が脱離して、より大きい分子である酢酸エチルを生成するので縮合反応である。縮合反応ということばはかなり広く用いられていて、アルドール縮合のように、2種類の分子があわさって一つの大きな分子が生成するだけで、簡単な分子がとれないという例外的な縮合反応もある。(縮合 コトバンク)

コトバンクにはアセトアルデヒドCH3CHO 2分子が「アルドール縮合」して

HC(=O)-CH3   + HC(=O)-CH3   →  HC(=O)-CH2-CH(OH)-CH3

アルドールが生成される反応が例として挙げられています。

アルドール縮合反応の名称は、アルデヒドやケトンが2分子関わってこれらが縮合によって生成する、それぞれβ-ヒドロキシアルデヒド類(β-アルドール)およびβーヒドロキシケトン類(β-ケト―ル)から名付けられた。一般にはこれらのβーヒドロキシ化合物の脱水によって生成するα、βー不飽和アルデヒド、およびケトン類を含んで総称されている。(糖尿病とメイラード反応 須山亨三 仙台大学紀要 2006 Vol.38. No.1. pp47-71)

ここまでくれば、

薬剤師国家試験平成30年度第103回一般理論問題問106 は簡単に答えがわかります。

生体において解糖や糖新生は、アルドラーゼにより触媒される可逆過程(アルドール反応及び逆アルドール反応)を含む。Aの構造式として正しいのはどれか。1つ選べ。ただし、構造式はすべて鎖状構造を示している。(PDF 第103回薬剤師国家試験問題及び解答(平成30年2月24日、2月25日実施) 厚生労働省)

生化学におけるアルドール反応の例

解糖系でC6がC3に分かれるところが、アルドール反応の逆反応(アルドール開裂)でした。重要なエネルギー代謝経路でアルドール反応が起きている別の例としては、クエン酸回路にアセチルCoAが入るときの反応があります。アセチルCoAのアセチル基がオキサロ酢酸に付加されて、クエン酸ができるわけですが、最初にこの反応を見たとき、CoAのチオール基側の炭素が骨格として繋がるのかと思ったのですが、どうやらそうではないようで、一体どういう反応でメチル基側の炭素が繋がるのだろうと不思議でした。これがまさにアルドール反応によるものと知り、なるほどと思いました。

アセチルCoA  CH3-C(=O)-S-CoA  のメチル基の炭素がまさに、カルボニル基の隣、すなわちα炭素で、それについている水素がα水素です。この水素が水素イオンとして脱離して、炭素がマイナスの電荷をもち、オキサロ酢酸 O=CCOOH-CH2(COOH) のカルボニル基の炭素(プラスに電荷が偏っている)を攻撃するわけですね。アルドール反応により、

O=C(-S-CoA)-CH2-C(OH)(COOH)-CH2COOH

加水分解(H2O)により、HS-CoA とクエン酸 HOOCCH2-C(OH)(COOH)-CH2COOH になります。

  1. アルドール反応 クエン酸 (health.joyplot.com) アセチルCoAとオキサロ酢酸がアルドール反応によりカップリングした後、チオエステル部分が加水分解を受けて生成される。
  2. 加水分解(ウィキペディア)水分子 (H2O) は、生成物の上で H(プロトン成分)と OH(水酸化物成分)とに分割して取り込まれる。

参考

  1. ブルース有機化学概説(第3版) オンライン提供「18章 酵素触媒反応の機構・ビタミンの有機化学」(p.678〜729)
  2. 有機化学 改訂2版 (丸善出版 2016年)奥山 格, 石井 昭彦, 箕浦 真生 plus on the web ウェブチャプター23 生体物質の化学 23E 代謝の化学
  3. 第24回 エノール・エラノートの反応(1) 名城大学理工学部応用化学科

論文で使える英語表現の目的別まとめ

これまでに自分たちが明らかにした

  • “We previously demonstrated that” 135,000

明らかでない

  • “remains unclear” 1,180,000 ”remain unclear” 502,000
  • ”not well understood” 756,000
  • (has/have) “not been well understood” 33400

メカニズムが明らかでない

  • “through poorly understood mechanisms” 998
  • “via poorly understood mechanisms” 345
  • “with poorly understood mechanisms” 208

あまり研究されていない・調べられていない

  1. understudied” 235,000
  2. “under-investigated” 36,400 +名詞 で使うことが多いようです。

今回は、~かを調べた

  • “In this study, we investigated if” 3250
  • “In this study, we examined if” 1560
  • “In this study, we asked if” 708

それに対して・一方

  • “in contrast” 7,520,000 何と何とを対比させたいのかを明らかにするため、前置詞を続けることも多い。
  • “in contrast to” 6,680,000
  • “in contrast with” 1,590,000

重要な点は・重要なことに

結論を述べる表現

  • “Our findings suggest that” 592,000
  • “Our findings indicate that” 365,000
  • “Our findings prove that” 1580

 

時間やタイミングを表す英語表現

by ~ ~までに by the time その時刻よりも前もしくはその時刻が該当する範囲です。その時刻も含まれることに注意(参考動画)。by next Monday 月曜までに と言った場合、日本語でも月曜日も含まれそうなので、まあ英語も同じってことですね。

  1. Almost all native contacts are formed by the time of 100 000–300 000 Monte Carlo steps. (paper) (ある時点までにその出来事が起きている、完了している)

during ~ 前置詞。~の期間の間ずっと または ~の期間の間のある時に 同じ意味で使える接続詞はwhile 。2つの使い方があり得ることに注意。

  • The accident happened during my holidays.(転載元)休暇中にその事故は起きた。(ある期間の一点で)

throughout ~  ~の間中ずっと

  1. Isofluorane was maintained at 1.0%–1.5% (v/v) in oxygen at 1.0 – 1.5 l/min throughout the surgery. (論文

until ~ ~の時刻・タイミングまで連続していたことを示すときに使います。

注意

  1. 例の少なさは、不適切であることを必ずしも意味しない。そのような言い方や用例が少なかったというだけ。もちろん、英語として不適切なので、誤用例が少数見受けられた可能性もある。
  2. 例が多くても、外国人による誤用である場合もあり得る。

「奥井 朝子 不倫(おくい あさこ ふりん)」クエン酸回路(TCA回路/クレブス回路)の中間代謝物の化合物の名称を丸暗記する方法

TCA回路での重要事項

個々の中間代謝産物の名前を覚えるよりも大事なことを列挙しておきます。

  1. クエン酸1分子あたり、この回路一周することで、NADHが3分子FADH2分子が1分子GTPが1分子CO2が2分子生じる。
  2. この回路のなかの脱炭酸反応産生するCO2および、ピルビン酸(C3)がアセチルCoA (アセチル基はC2)になる際の脱炭酸反応が、人間が肺で呼吸するときに吐き出す二酸化炭素CO2.
  3. NADH,FADH2は電子供与体として、次のステップである電子伝達系で使われる。
  4. GTPはATPをつくるのに使われる。
  5. TCA回路そのものでは直接ATPが産生されない。(注:GDP→GTPでなく直接ADP→ATPがつくられる動物種・臓器もあるため、教科書によって記述が異なることがある)

TCA回路の暗記

ATPやアセチルCoAの構造式を覚え、解糖系の反応物と働く酵素を覚え、次にやるべきは、TCA回路を覚えることでしょう。大学院入試の前には全部暗記しましたが、もうすっかり忘れています。どうすれば、長い間覚えていられるのでしょうか。

やはり語呂合わせや歌で覚えるしかなさそうです。

日本語でのTCA回路の語呂合わせ

日本語で、語呂合わせで覚える方法がありました。「おくいあさこ不倫」で覚えられます。奥井朝子不倫なのか奥居麻子不倫なのか、奥井亜佐子不倫なのか、奥井亜沙子不倫なのか、奥井阿紗子不倫なのかはわかりませんが、

  1. 「お」きさろ酢酸(オキサロ酢酸)
  2. 「く」えん酸(クエン酸)
  3. 「い」そくえん酸(イソクエン酸)
  4. 「あ」るふぁーけとぐるたる酸(α‐ケトグルタル酸)
  5. 「さ」くしにるCoA(サクシニルCoA または スクシニルCoA)
  6. 「こ」はく酸(コハク酸)
  7. 「ふ」まる酸(フマル酸)
  8. 「りん」ご酸(リンゴ酸)

の8個の化合物です。クエン酸回路という名前ですが、オキサロ酢酸がクエン酸になるところから、この語呂合わせはスタートします。サクシニルCoA よりも、 スクシニルCoAと呼ばれるほうが多いと思いますが、サクシニルCoAという呼び名も使われているようです。

  1. 代謝疾患分野|サクシニル-CoA:3-ケト酸CoAトランスフェラーゼ欠損症(平成22年度)(難病情報センター)
  2. 「奥井あさこ」不倫 星薬科大学教授 ・ファルマシアアドバ イザー 辻 勉 フアルマシア Vol.45 No.6 2009 これは先日教室で耳にした学生達の会話の一部です.聞いてみると.生化学でのTCAサイクル(クエン酸回路)に登場する代謝中間体の名称と順序の語呂合せだそうです.「」キサロ酢酸→「」エン酸→「」ソクエン酸→「」ルファーケトグルタル酸→「」クシニルCoA→「」ハク酸→「」マル酸→「リン」ゴ酸 の頭文字を繋いだものだそうで,なかなか良くできており妙に感心してしまいました.

さて、構造式ですが。

クエン酸

クレブス回路、クエン酸回路、TCA回路といろいろな名前で呼ばれますが、この回路は、解糖系でできたピルビン酸がアセチルCoAになって、そのアセチル基が使われることでクエン酸が再生されるところから始まります。クエン酸という名前を知っていても、構造式は思い浮かびません。構造式を覚える手がかりになるのは、TCA回路という名前です。これはトリカルボン酸回路の略で、つまりカルボン酸が三つあるということです。クエン酸の構造は、カルボン酸(カルボキシ基)が3つついていることを知っていれば、CH2(COOH)-C(OH)(COOH)-CH2(COOH) は覚えやすいでしょう。真ん中の炭素には、水酸基がついているのは、覚えておくしかありません。

イソクエン酸

イソという名前(isomer 異性体)が示すとおり、クエン酸の異性体で、水酸基が炭素一つ移動して、

HO-CH(COOH)-CH(COOH)-CH2(COOH) になります。

α‐ケトグルタル酸

さて、イソクエン酸HO-CH(COOH)-CH(COOH)-CH2(COOH) の水酸基がついた炭素  C(-OH)-は酸化されてカルボニル基 -C(=O)-になります。この酸化反応と同時にNADH+が還元されてNADHが産生します。続いておこる脱炭酸反応により二酸化炭素が産生されます。脱炭酸が起きるカルボキシ基は真ん中の炭素についたものです。

-OOC-C(=O)-CH2-CH2(COO-)

炭素6個の化合物から二酸化炭素が抜けたので、炭素5個の化合物になりました。

  1. Isocitrate Dehydrogenase (NADP)  sciencedirect.com

スクシニルCoA

さて、脱炭酸反応は、続けて起こります。スクシニルCoAという名前が示すようにsuccinilate(コハク酸)にCoAが結合した化合物です。α‐ケトグルタル酸のケトン基がついている炭素のカルボキシ基で脱炭酸反応が起きます。また触媒する酵素がデヒドロゲナーゼですので水素ものぞかれます。そこにCoAが結合しますので、CoA-S-C(=O)-CH2-CH2(COO -)  となることがわかります。-S-はCoAのチオール基のSを明示的に書いたものです。

  1. Alpha-ketoglutarate dehydrogenase: a target and generator of oxidative stress Laszlo Tretter and Vera Adam-Vizi Published:04 November 2005 https://doi.org/10.1098/rstb.2005.1764

コハク酸

スクシニルCoA CoA-S-C(=O)-CH2-CH2(COO -) からCoAが外れて、そこに水酸基がつきます。CoAのチオールエステル結合は、「高エネルギー結合」のひとつであり、この結合がきれることでたくさんのエネルギーが放出され、そのエネルギーはGDPをGTPにすることに使われます(共役する)。

– O-C(=O)-CH2-CH2(COO -)   同じことですが少し書き直すと

– OOC-CH2-CH2-COO - 対称的な構造をしていることがわかります。

ここで、酸素の数が合わないような気がして、一体どこから来たのだろうという疑問が生じました。加水分解と考えると、

CoA-S-C(=O)-CH2-CH2(COO -)  + H2O  ⇒ CoA-SH + HO-C(=O)-CH2-CH2(COO -)

つじつまがあいます。ところが、話はそう単純ではありません。

スクシニルCoAはステップ5において加水分解されてコハク酸となるが、この反応は水分子による単純な求核アシル置換反応のように思われる。しかし、酵素に結合したチオエステルが加水分解される解糖系のステップ6,7でみられたように、この反応は見かけよりは複雑である。スクシニルCoAシンテターゼにより触媒されるこの”加水分解反応”は、水分子は関与しない。(マクマリー生化学反応機構 186ページ)

上の教科書では加水分解という言葉をちょっと使っていますが、見かけは加水分解だけど実は水は登場しないと注意を促しています。

これは、全体の反応を考えると、疑問が解消しました。

スクシニルCoA + 無機リン酸 + GDP  ⇒ コハク酸 + CoA + GTP

が全体としての反応です。無機リン酸(inorganic phosphate)はPiと略記されることが多いですが、オルトリン酸(正リン酸 orthophosphate) H3PO4のこと。水素が電離する個数によって、H3PO4, H2PO4 -, HPO4 2-, PO4 3- となります。スクシニルCoAからいきなりコハク酸になるのではなくて、スクシニルCoAと無機リン酸( OPO3H 2-)が反応して、succinyl phosphate(日本語名???)がまずできます。

-OOC-CH2-CH2-C(=O)-S-CoA  + OPO3H 2-   ⇒ -OOC-CH2-CH2-C(=O)-OPO3 2-   +   HS-CoA

次にsuccinyl phosphateのリン酸基がGDPに転移されてGTPを生じ、自身はコハク酸になります。

-OOC-CH2-CH2-C(=O)-OPO3 2-     + GDP  ⇒ -OOC-CH2-CH2-C(=O)-O –  +  GTP

無機リン酸からもらった酸素でした。

  1. 無機リン酸 photosyn.jp
  2. Step 5 of the Krebs cycle: Succinyl-CoA Synthetase proteopedia.org

フマル酸

コハク酸の骨格部分の2つの炭素から水素が除かれて二重結合が導入されます。異性体がありえますが、フマル酸はトランス型です。ちなみに、シス型の異性体は、マレイン酸(maleic acid)です。

HC(-COOH)=CH-COOH

リンゴ酸

フマル酸に水分子が反応して二重結合があったところに水酸基がひとつ導入されます。

HOOC-CH(-OH)-CH2-COOH

オキサロ酢酸

リンゴ酸から水素が除かれて、水酸基だったところはケトン基に変わります。

HOOC-C(=O)-CH2-COOH

オキサロ酢酸もα‐ケト酸であることが構造式から読み取れます。

クエン酸

オキサロ酢酸HOOC-C(=O)-CH2-COOHに、アセチルCoAからアセチル基がもらわれて(アルドール反応)、クエン酸に戻ります。HOOC-CH2-C(OH)(COOH)-CH2-COOH

  1. アルドール反応とは

クエン酸回路は8個の化合物からなって、一見複雑ですが、化合物名を覚え、酵素名を覚え、反応を考えれば、案外構造式は書き下せるものだと思いました。クエン酸から出発してぐるっと一周するのを3,4回も書けいていると、自然に覚えられます。

 

TCA回路を覚えさせられるのは日本の学生だけでなく、世界でも同じ。英語の語呂合わせもあるみたいです。

TCA回路の中間代謝物の名称の語呂合わせ(英語)

  1. CITRIC ACID CYCLE SONG | Science Music Video Jam Campus (YOUTUBE)

下の動画に、Can I Keep Selling Substances For Money, Officer?  という文で覚えましょうと、覚えかたの語呂が紹介されていました。

  1. Krebs Cylcle Trick How to remember krebs cycle FOREVER!! MEDSimplified

早速試してみました。これは、いけます。2回くらい白紙に書き出してみたら、頭に入りました。

  1. Citrate
  2. Isocitrate
  3. Ketoglutarate
  4. Succinyl CoA
  5. Succinate
  6. Fumarate
  7. Malate
  8. Oxalo acetate

の8つの化合物が自分の頭の中から出てきます。初めてTCA回路を勉強する人には難しいかもしれませんが、一度TCA回路を学んでいて、化合物名やその英語名をある程度聞いていて、なかなか覚えられないという状態の人であれば、お勧めの語呂合わせだと思います。

さて、次に構造式をどうやって覚えるかです。なにしろ、「呼吸」の過程なので、二酸化炭素CO2が発生します。クエン酸はC6(炭素6個)ですが、CO2が発生するとCの数が減っていきます。ですので、Cの数およびCO2の発生がどこで生じるかに気をつけたほうが、覚えやすくなります。

  1. Citrate   C6
  2. Isocitrate   C6
  3. α-Ketoglutarate C5  脱炭酸反応で、CO2発生
  4. Succinyl CoA C4   脱炭酸反応で、CO2発生
  5. Succinate C4
  6. Fumarate C4
  7. Malate C4
  8. Oxalo acetate C4
  9. Citrate   C6 (アセチルCoAから、アセチル基(C2)をもらったので、Cの数が2増えて、もとに戻った)

ということになります。クエン酸が異性化してイソクエン酸になったあと、次々と脱炭酸反応が起き、C6,C5,C4ときてその後はC4のままで、最後にアセチルCoAからアセチル基(C2)をもらうことで、C6にもどり、一周すると覚えればいいでしょう。

TCA回路の酵素名の語呂合わせ(英語)

さて、上の動画では、酵素名の覚えかたも紹介されていたので、まずは酵素名から覚えましょう。

So, At Disco, Divil Sipped Five Drinks.  と覚えるのだそうです。ここで、SはSyntase(合成酵素)、DはDehydrogenase(脱水素酵素)で、AとFだけは、そのまま、Aconitaseと、Fumaraseと覚えるしかありません。

  1. Citrate  →   Isocitrate   [Aconitase]   At
  2. Isocitrate  →  α-Ketoglutarate  [Isocitrate dehydrogenase]   Disco
  3. α-Ketoglutarate →   Succinyl CoA  [α-ketoglutarate dehydrogenase]   Devil
  4. Succinyl CoA →  Succinate    [Succinyl CoA synthetase]   Sipped
  5. Succinate  →   Fumarate   [Succinate dehydrogenase]    Down
  6. Fumarate  →    Malate [Fumarase]    Five
  7. Malate →   Oxalo acetate   [Malate dehydrogenase]  Drinks
  8. Oxalo acetate →     Citrate   [Citrate synthase]    So,

Succinyl CoA synthetaseだけは、合成酵素なのに生成物ではなく反応物の名前が来ます。これは、逆反応も触媒するもので、逆反応のほうで名前がついたからなんでしょうね。

あと、Sは合成酵素といっても、synthase(シンターゼ)とsynthetase(シンテターゼ)の区別があります。ややこしいですね。例えばATPを合成する酵素は、ATPシンターゼです。シンテターゼは、高エネルギーリン酸結合の加水分解と共役して何かを結合させる酵素のようです。

  1. シンターゼとシンセターゼの違い(ultrabem.com)

コハク酸(Succinate)からスクシニルCoA(Succinyl CoA)を合成するときに、スクシニルCoAシンテターゼ(Succinyl CoA synthetase)が働くわけですが、その際GTPを加水分解します。今、TCA回路ではこの逆反応なので、GDPからGTPが生成されます。TCA回路では実はATPは一つもできませんが、GTPが一つできるんですね。このGTPは、このあとADPからATPを産生するのに使われますので、トータルで産生されるATPを数えるときには、数にカウントされます。

上の語呂合わせでは、synthaseとsynthetaseとの区別をつけていなかったというのが、要注意だと思いました。

また、自分の手元の教科書だと、

aconitaseのことは、aconitic acid hydratase アコニット酸ヒドラターゼ で紹介されており、

fumarate は、 fumarate hydratase フマル酸ヒドラターゼ となっています。酵素には名前が複数あることがるので、ややこしい。違う人が違う呼び方をするかもしれないので、結局、全部覚えるはめになります。

まあ、機械的に丸暗記するより、こういう語呂合わせでもいいので手がかりがあったほうが覚えやすいのは確かです。

クエン酸回路の図

自分にとって見やすい図を一つ決めておくと、いいです。

中間代謝物の構造と酵素

  1. 畠山 生化学 80ページ 図4-11

収支の概略

  1. 畠山 生化学 82ページ 図4-12
  2. https://www.sciencedirect.com/topics/neuroscience/citric-acid-cycle

参考

  1. マクマリー生化学反応機構 4・4 クエン酸回路 180ページ~
  2. Bruice Organic Chemistry 5th edition Chapter 25 The Organic mechanisms of the coenzymes ・Metabolism page 1038 Figure 25.3 The citric acid cycle
  3. 畠山 生化学 80ページ 図4-11
  4. 酸と塩基の強さ NHK高校講座

 

アセチルCoAの構造式を丸暗記する方法:

生化学でアセチルCoAは主役中の主役です。しかし、その構造式は想像を絶するほど複雑で、きちんと書ける人は一体どれだけいるんだろうと思ってしまいます。しかし、よくよく眺めると、いくつかの重要な物質に分けて考えることができるため、丸暗記できなくもなさそうです。

アセチルCoAの構造式

まずアセチルCoAという名前が示す通り、アセチルCoAはCoAにアセチル基が結合したものです。CoAは補酵素AまたはコエンザイムAと呼ばれるもの。また、補酵素AのAとは何かというと、名前の由来は実は、acetate(酢酸)を活性化する補酵素というものです。acetateのaだったんですね(もしくはactivation のa?)。

  1. https://en.wikipedia.org/wiki/Coenzyme_A
  2. 酢酸を活性化する酵素(アセチルCoA合成酵素)欠損マウスは絶食時に体温、持久力が低下する。 ―酢酸が絶食時の燃料になることを発見―

酢酸の構造はCH3COOHで、アセチル基はCH3CO-です。つまりアセチルCoAは、酢酸の水酸基とCoAのチオール基(-SH)とが脱水縮合して結合した構造をしていて、CH3CO-S-CoAと書けます。SはCoAの一部なのですが、チオール基のところにアセチル基が結合していることを明示するためにSをあえて書く書き方です。そんなわけで、アセチルCoAの構造を覚え長ければCoAの構造を覚えればよいということになります。

CoAの構造式を眺めてみて、真っ先に気付くのは、ATPに似た構造があること。アデニンがリボースに結合しており、リボースの3位にはリン酸が結合しているのがちょっと特徴的。6位の炭素にはリン酸基が2つついています。その先に、いろいろ複雑な構造がつながっているわけです。リン酸に結合しているうちの真ん中部分は、ビタミンの一種である、パントテン酸です。パントテン酸の先に、端にチオール基をもつ化合物があります。2-アミノエタンチオールです。パントテン酸だけとっても、その構造は複雑ですが、パントテン酸はさらに2つに分解して考えることができます。β‐アラニンパントイン酸(2,4‐ジオキシ-3,3,ジメチルブタン酸)です。パントイン酸と覚えても構造式は出てこないので、2,4‐ジオキシ-3,3,ジメチルブタン酸で覚えましょう。ブタンなので炭素は4つ(メタン、エタン、プロパン、ブタン、‥)。酸なので、端はカルボキシ基。カルボキシ基の炭素から順に1,2,3,4と炭素に番号が振られます。2,4に水酸基が、3,3にメチル基がついた構造ですので、書き下してみると、

HOOC-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH となります。

また、β‐アラニンの構造式は?と考えると難しいですが、最初にアミノ酸のα‐アラニンを思い出して、側鎖はメチル基だったので、HOOC-CH(NH2)-CH3を思い出せます。これはα位の炭素にアミノ基がついていますが、β‐アラニンはβ位の炭素にアミノ基がつくので、HOOC-CH2-CH2(NH2)だということがわかります。さて、β‐アラニンとパントイン酸を結合させてやると、

HOOC-CH2-CH2(NH2) と HOOC-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH  との、アミノ基とカルボキシ基の間で脱水縮合させて、

HOOC-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH

これがパントテン酸。

さて、これに2-アミノエタンチオール HS-CH2-CH2-NH2 を結合させると、同様にアミノ基とカルボキシ基の間で脱水縮合させて、

HS-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2OH  となります。これを、さきほどの3-ホスホアデノシンの6位のリン酸2つに結合させて、

HS-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) -C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2O-リン酸-リン酸-(5位)アデノシン 3-リン酸 となります。これがCoAの部分。このチオール基にアセチル基 CH3-C(=O)-を結合させば、アセチルCoAです。

アセチルCoAの構造式:

CH3-C(=O)-S-CH2-CH2(NH)-C(=O)-CH2-CH2(NH) –C(=O)-C(OH)-C(CH3)2-CH2-O-リン酸-リン酸-(5位)アデノシン 3-リン酸

言葉で書くなら、

アセチル基-(2-アミノエタンチオール)-(β‐アラニン)-パントイン酸-リン酸-リン酸-アデノシン-3-リン酸

となります。β‐アラニンの両端は、どちらも -NH-C(=O)- という、ペプチド結合と同じ形なので覚えやすいです。パントイン酸は、別名2,4-dioxy-3,3-dimethyl butanoic acidと覚えておくしかありません。これで3~4回、書いてみれば、一晩たっても覚えていられる程度になりました。

アセチルCoAの産生

アセチルCoAはグルコースの代謝や、脂肪酸代謝によって産生されます。

アセチルCoAは、グルコースC6H12O6が解糖系で分解されてできるピルビン酸CH3C(=O)COOHが、ミトコンドリアのマトリックスに入ってピルビン酸脱水素酵素複合体によって脱炭酸されてCoAと結合することによりできます。

  1. ピルビン酸脱水素酵素複合体 PDBj 入門 今月の分子 最初の段階を実行する酵素は、チアミンピロリン酸(thiamine pyrophosphate)を使ってピルビン酸(pyruvate)から二酸化炭素を取り出す。

アセチルCoAから作られる化合物

アセチルCoAは脂肪酸のβ酸化(分解)により産生されますが、逆に、脂肪酸合成のための原材料にもなります。また、コレステロールの合成材料にもなっています。

解糖系の反応式と化合物の化学構造と各反応を触媒する酵素を丸暗記する方法

解糖系とは

解糖系とは、グルコースを分解してピルビン酸にまでする過程です。酸素が十分にある環境下では、ピルビン酸はそのあと、アセチルCoAになって、TCA回路(クエン酸回路)に入ります。酸素がない状態では、ピルビン酸は乳酸になります。激しい運動をする場合、酸素の供給がおっつかなくて筋肉に乳酸が貯まることになるわけです。

解糖系で押さえておくべき事実

解糖系の中間代謝産物を全部把握しておいたほうが気持ちいいのですが、それより大事なことがあります。個々の化合物の名前を覚えるよりも大事です。

  1. グルコースから出発して多段階の反応を経て、最後はピルビン酸(2分子)になる。
  2. 解糖系は細胞質で起こる。
  3. 最終産物のピルビン酸はそのあと、ミトコンドリア内に輸送されて、アセチルCoAの産生の材料となり、そのアセチルCoAがTCA回路に入る。
  4. 解糖系では、酸素(O2)は必要ない(使われない)。
  5. 解糖系では、グルコース1分子に対して、ATPが2分子生じる(2個消費され4つ生成するので、正味が2分子)
  6. 解糖系で、グルコース1分子あたり、NADHが2分子生じる。
  7. グルコースは六炭糖で、解糖系の過程で2つに分かれて炭素3つからなるピルビン酸が2つできる。
  8. 酸素が無い条件では、ピルビン酸はそのまま乳酸に代謝される。この反応ではNADHが消費される。

解糖系の反応のまとめ

グルコースC6H12O6 + 2NAD+ + 2Pi + 2ADP  → ピルビン酸 2分子 + 2NADH + 2ATP + 2H2O

グルコース1分子(および、NAD+ 2分子、ADP 2分子、無機リン酸H3PO4 2分子)から、ピルビン酸が2分子、NADH 2分子、ATP 2分子、水が2分子生じます。途中の反応を忘れても、この結果を覚えておきましょう。NADHとATPがそれぞれ2分子生じるということです。

  1. マクマリー生化学反応機構第2版 175ページ

解糖系の暗記

解糖系は生化学の基本的な反応です。ぜひ、暗記したいものですが、10個の反応を覚えられるものでしょうか?自分がやってみたところでは、4~5回、反応を白い紙に書いているうちになんとか覚えられました。しかし、むやみに構造式を書いていても頭に入りません。ポイントポイントをおさえたほうが、頭に入りやすいです。

グルコースは炭素6個からなる化合物で、解糖系ではそれが2つに分かれるので、ピルビン酸は炭素3つの化合物ということになります。ピルビン酸はα‐ケト酸、つまりαの位置の炭素がケトン期です。酸というのはカルボン酸(カルボキシ基)というわけなので、構造式を覚える手がかりになります。カルボキシ基のとなりがαの位置ですので、ピルビン酸の構造式は、HOOC-C(=O)-CH3 と覚えられると思います。

さてグルコースからピルビン酸に至る過程は、暗記できそうなことなのでしょうか。グルコースは炭水化物でアルデヒドであり、多価のアルコールで炭素6個の鎖からなるということはまず押さえておきましょう。水酸基と水素の位置関係がどうであっても解糖系の反応とは関係ないので、異性体の構造を無視して考えることにします。また、環状と鎖状の2通りの構造をとりえますが、直鎖で書いたほうが頭に入りやすいので、直鎖で覚えることにします。

C6をC3に分裂させる際に、できるだけ同じ構造式のものにしたいので、1位と6位がリン酸化されます。また、アルドール開裂の反応でC3とC3に分かれるように、グルコースのアルデヒド基(ホルミル基)は、一つ内側に異性化反応で移されてフルクトースに変換されています。

R-C(=O)-CR’-C(OH)-R” の形が、アルドール開裂で、R-C(=O)-CR’  と、 CHO-R” に分かれるわけです。

また、高エネルギーリン酸結合をもつ化合物ができたら、その次のステップ(反応)では、リン酸基をADPに転移して、ATPを生成しています。

こういったポイントを覚えておけば、構造式や反応はかなり覚えやすくなります。

グルコース

グルコースは炭素6個からなる炭水化物なのでC6(H2O)6と水和の形で化学式が書けます。これはアルデヒドなので、

HC(=O)-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH と書けます。アルデヒド基がついた炭素が1番で、順番に番号が振れますが、縦にかいたとき、4,5,6番の炭素の右側に水酸基が来ます。3番目だけ左側に水酸基。で、2番目も右側に水酸基。これで、異性体に関しても正しく書いたことになります。

まず最初の反応は、グルコースのリン酸化です。六炭糖はhexose(ヘキソース)。ヘキソースをリン酸化する酵素なのでヘキソキナーゼが触媒します。ヘキソキナーゼが、ATPからもらったリン酸基を、グルコースの6位の炭素の水酸基に転移します。この反応で、ATPが1分子、消費されグルコース6リン酸が生成します。

反応①:酵素ヘキソキナーゼが、グルコースにATPのγ‐リン酸を転移し、グルコース6リン酸を生成するする。ATP1分子がここで使われた。ATPはADPに加水分解された。

グルコース6リン酸

HC(=O)-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2O-PO3 2-  名称は、glucose 6-phosphate

さて、次の反応は、異性化です。異性化(isomerization)なので使われる酵素はイソメラーゼ(isomerase)。グルコース6リン酸を異性化する酵素なので、glucose-6 phosphate isomarase(グルコース6リン酸イソメラーゼ)。酵素名は、そのまんまやんけ!覚えるなと言われても、すでに覚えてしまっていますね。

反応②:グルコース6リン酸イソメラーゼが、グルコース6リン酸を異性化して、アルデヒドの部分をケトンに変える。それによって名前がフルクトースに変わるので、生成物は、フルクトース6リン酸です。

フルクトース6リン酸

CH2(OH)-C(=O)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2OPO3 2- 名称はfructose 6-phosphate(フルクトース6リン酸)

次に、再びATPを使って、1位の炭素の水酸基にリン酸を付加します。fructose phosphateは、別名、phosphofructoseです。phosphofructoseをリン酸化するリン酸化酵素(kinase)なので、使われる酵素は、phosphofructokinaseです。この酵素名も、そのまんまなので、覚えられますね。

反応③:ホスホフルクトキナーゼが、フルクトース6リン酸の1位の炭素の水酸基に、ATPのγ‐リン酸基を転移して、フルクトース1,6リン酸を生成します。これですでにATPを2つも使ってしまいました。ATPを産生する目的のはずの解糖系で、いきなりATPを2分子も使っちゃっていいのか?って不安になる人がいるかもしれませんが、このあと、ATPを4つつくることになるので、差し引きで、正味2分子のATPが解糖系で作られることになります。ご安心ください。

フルクトース1,6リン酸

CH2(OPO3 2-)-C(=O)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2OPO3 2- 名称は fructose 1,6-bisphosphate(フルクトース1,6リン酸)

さて、ここまではC6(炭素6個)化合物でした。次の反応で、このC6が真っ二つに分かれて、C3化合物になります。わかれる場所は、

CH2(OPO3 2-)C(=O)-CH(OH)-CH(OH)-CH(OH)-CH2OPO3 2-

CH2(OPO3 2-)C(=O)-CH(OH)- ココの結合  -CH(OH)-CH(OH)-CH2OPO3 2-

さて、アルデヒド基とヒドロキシ基の両方の官能基を持つ化合物はアルドール(aldol)と呼ばれるそうです。今の場合、アルデヒド基というかケトン基ですが、aldolを開裂させる(分解させる)のでその酵素名がaldolase(アルドラーゼ)というのだと思います。

反応④:アルドラーゼが、炭素6つからなる化合物のフルクトース1,6リン酸を、真っ二つに分けて炭素3つからなる分子にする。水酸基側は、端がアルデヒド基になる。

  1. CHEM 407 – 解糖系 – 4 – アルドラーゼのメカニズム  Biochemistry with Dr. Mauser(YOUTUBE)
  2. アルドール開裂/縮合 アルドラーゼにより3炭素の化合物へ分解 生体分子有機化学 2014年12月11日分第10回:糖の代謝(続) 担当:岸村 顕広  この講義ノートは非常に詳しくてわかりやすいと思います。開裂する前に、なぜグルコースをフルクトースに変えたのかが、解説されていて、なるほどと思いました。
  3. 第24回 エノール・エノラートの反応(1)(PDF) 名城大学理工学部応用科学科 わかりやすいくて詳細な説明。
  4. アルドール反応・アルドール縮合:酸・塩基によるエノラート合成 Hatsudy:総合学習サイト

アルドール開裂は、アルドール(付加)反応の逆反応です。アルドール反応は有機化学の世界で非常に重要な反応なそうで、知識を別記事で纏めておきます。

アルドール反応とは

グリセルアルデヒド3リン酸:開裂してC3化合物に

左側半分は、

CH2(OPO3 2-)-C(=O)-CH2(OH) になり(ジヒドロキシアセトンリン酸)、右半分は

HC(=O)-CH(OH)-CH2-OPO3 2-  (グリセルアルデヒド3リン酸)になります。酸素や水素の数は前後で変わりません。ジヒドロキシアセトンリン酸は、イソメラーゼによって、グリセルアルデヒド3リン酸になりますので、ここまでで、グルコース1分子から、2分子のグリセルアルデヒド3リン酸が生成されました。

反応⑤:トリオースリン酸イソメラーゼが、ジヒドロキシアセトンリン酸を異性化して、グリセルアルデヒド3リン酸にします。これにより、グルコース1分子から、グリセルアルデヒド3リン酸が2分子できたことになります。

トリオースというのは、三炭糖のことです。

1,3‐ビスホスホグリセリン酸:高エネルギーリン酸結合

反応⑥:グリセルアルデヒド3リン酸デヒロゲナーゼが、グリセルアルデヒド3リン酸の1位の炭素の水素を奪い、NAD+に渡して(NAD+ →NADH)、グリセルアルデヒド3リン酸の1位の炭素に無機リン酸をリン酸基として付加することにより、1,3-ビスホスホグリセリン酸(1,3-bisphosphoglycerate)

O=C~(OPO3 2-)-CH(OH)-CH2-OPO3 2-  ができます。ここで~で表したのは、いわゆる高エネルギーリン酸結合です。ここに来る前のリン酸基の結合は、高エネルギーリン酸結合ではありません。1位の炭素には酸素が二重結合しているので、マイナスチャージが近いところにマイナスチャージをたくさんもったリン酸基がついているため、エネルギー的に不安定で「高エネルギー」な状態なのだと思います。

さて、これでATPを産生する準備ができました。この高エネルギー結合のリン酸基がADPに渡されてATPを生成します。

3-ホスホグリセリン酸

反応⑦:ホスホグリセリン酸キナーゼが1,3-ビスホスホグリセリン酸を脱リン酸化することにより、

O=C(OH)-CH(OH)-CH2-OPO3 2-   3-phosphoglycerateができます。キナーゼは本来リン酸化酵素の意味ですが、ここでは逆反応も触媒するため、キナーゼという名前になっています。

2-ホスホグリセリン酸

次に、

反応⑧:2-ホスホグリセリン酸ムターゼにより、リン酸基が3位から2位の炭素のほうに移されます。

O=C(OH)-CH(-OPO3 2- )-CH2-OH

ホスホエノルピルビン酸:高エネルギーリン酸結合

反応⑨:エノラーゼという酵素により2-phosphoglycerateが脱水されて、また、炭素間に二重結合が導入され、

O=C(OH)-C(~OPO3 2- )=CH2 phosphoenolpyruvate(ホスホエノルピルビン酸)になります。enolaseは、phosphopyruvate hydrataseとも呼ばれます。このリン酸基は高エネルギー結合になります。そして、この高エネルギー結合のリン酸基がADPに渡されてATPを生成します。それにより

ピルビン酸

反応⑩:ピルビン酸キナーゼが、ホスホエノルピルビン酸を脱リン酸化し、そのリン酸をADPに与えてATPを産生します。ホスホエノルピルビン酸は、ピルビン酸 O=C(OH)-C(=O)-CH3  になります。

以上、10個の反応でした。覚えるまで紙に書いていると、4~5回書くうちに、覚えてしまいます。

 

解糖系を理解するには、どのステップの反応で高エネルギー結合のリン酸ができたかを押さえておくと、その次でATPが産生されるので、理解が深まると思いました。

ピルビン酸の構造式を覚えるためには、ピルビン酸は、α‐ケト酸だと覚えておけば、思い出して書けそうです。グルコースが2つに割れてできたので炭素3つの化合物であり、酸なのでカルボキシ基をもっており、そこから数えてαの位置にケトン基があるというわけです。

 

乳酸

酸素が無い状態だと、ピルビン酸がTCA回路に入るためにアセチルCoAにならずに、さらに代謝されて乳酸になります。

反応⑪:乳酸デヒドロゲナーゼが、ピルビン酸に水素をあたえて乳酸 HOOC-CH(OH)-CH3 にします。この酵素は逆反応も触媒するので、逆反応の場合は脱水素酵素ということでこの名があります。

 

参考図書

  1. マークス臨床生化学 原書 964ページ  FIGURE 22.6 Reaction of glycolysis.

参考ウェブサイト

  1. 生化学II 講義補助資料:解糖系の諸反応説明 bio.tottori-u.ac.jp/~mizobata
  2. 2)解糖の10段階反応 Bio-Science~生化学・分子生物学・栄養学などの『わかりやすい』まとめサイト~

解糖系を歌で覚える方法

  1. グルコース解糖系のゴロ、覚え方 「もしもしかめよ〜」の音程で歌おう
  2. The Glycolysis Song bcpprojects (YOUTUBE)
  3. Glycolysis! (Mr. W’s Music Video) sciencemusicvideos(YOUTUBE) 説明が細かくて、ノリも良い動画。
  4. Glycolysis Time sciencemusicvideos(YOUTUBE)
  5. Glycolysis Do Re Mi englishgalmd (YOUTUBE)

 

生化学の教科書

  1. マークス臨床生化学第5版(原書)第22章 Generation of adenosine triphosphate from glucose, fructose, and galactose: Glycolysis   page 953~
  2. 畠山 生化学(医学書院)第4章 糖質代謝 1解糖系 p74~

血液型と抗原と抗体、血液型不適合臓器移植について

血液型は、A型、B型、AB型、O型がありますが、これらは特異的な抗原の有無によって分類された型です。A型の人は、A型抗原を、B型の人はB型抗原を、AB型の人はA型抗原とB型抗原を持っており、O型の人はA型抗原もB型抗原も持っていません。

血液型により持っている抗体も異なります。A型の人は、B型に対する抗抗体を持ち、B型の人はA型に対する抗体を持っています。AB型の人は、どちらの抗原に対する抗体も持っていません。O型の人は、両方に対する抗原を持ちます。

  1. 「血液型不適合腎移植:血液型が異なる場合の腎移植」 亀田メディカルセンター

臓器移植のことを考えた場合、血液が不一致だと移植できない(拒絶反応が起きる)というわけではなくて、移植提供者側の血液型の抗原に対する抗体を受ける側の人が持っているかどうかが決めてになります。

AB型の人は、抗体を持っていないのでA型の人もB型の人も移植臓器の提供者になれます。O型の人は抗体を両方のタイプ持っているので、O型の人に移植できるのはO型の人のみになります。

血液型が「不一致」でも「適合」になる場合があるというわけです。

なお医療技術が進展した今の時代、「不適合」だから腎臓移植ができないということでもなくて、レシピエントから、抗体を除去して移植するという方法(血液型不適合腎移植)があるそうです。

  1. 患者さんが腎移植に抱く3つの誤解(今井直彦)寄稿 2013.06.03 医学会新聞

血液型不適合腎移植

  1. 【腎臓病の体験談】出産の夢をかなえた患者さん。膠原病から腎不全になり、透析から血液型不適合の腎移植を成功して26年目 NPO法人 腎臓サポート協会 2015年08月18日
  2. ABO 血液型不適合腎移植 Update 高橋公太 日腎会誌 2008;50(7):880-886.

血液型不適合肺移植

  1. 血液型不適合で肺移植、10代女性に 京大病院が世界初  2022年4月12日 20:46 日本経済新聞

 

参考

  1. ABO血液型不適合腎移植は、生存・生着を改善するか/Lancet 2019/05/13
  2. 2010年 臓器移植法改正 本人の書面による同意がなくても家族の承諾だけで提供可能に
  3. 1997年10月 臓器移植法 施行  脳死者からの臓器提供が合法化

C型肝炎ウイルスについて

C型肝炎ウイルスの感染者数

日本人のC型肝炎患者数は推計100万~150万人。 https://news.yahoo.co.jp/articles/0c52a59a73da4d09d7687bc37427a331b7fa6ea6

国内にはC型肝炎ウイルスのキャリアは約200万人いるとされています。 https://medical-checkup.info/article/44965342.html

C型肝炎ウイルス感染の経過

約15~45%の感染者では、治療を受けなくても感染後6か月以内に自然にウイルスが排除 残る60~80%の感染者は、慢性HCV感染症へと進展 https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/12081116.html

C型肝炎ウイルスに感染すると70%が持続感染者となる。 https://news.yahoo.co.jp/articles/0c52a59a73da4d09d7687bc37427a331b7fa6ea6

治療でウイルスを排除しなければ肝臓の線維化が進み、「慢性肝炎→代償性肝硬変→非代償性肝硬変→肝臓がん」と進行。非代償性肝硬変、肝臓がんでは死に至るリスクもある。https://news.yahoo.co.jp/articles/0c52a59a73da4d09d7687bc37427a331b7fa6ea6

沈黙の臓器」ともいわれる肝臓は、肝硬変となっても、はじめのうちは特に症状を感じることはありません。こうした自覚症状がほとんどない状態を「代償性肝硬変」と呼びます。しかし、実際には肝臓の機能は正常よりも低下しており、肝臓が無理に働き続けるため、肝機能の低下が進みやすい状態です。肝機能の低下がさらに進むと、肝臓が本来の働きを発揮しきれなくなることで、腹水や黄疸、肝性脳症、浮腫(むくみ)などの様々な症状が自覚されるようになります。この状態を「非代償性肝硬変」と呼びます。https://www.hcvcanbecured.jp/kankohen/decompensation/

C型肝炎に感染すると約70%の割合で慢性肝炎に移行する https://cgatakanen-support.net/before/liver_cancer.html

慢性肝炎は自覚症状がないまま10年~30年が経過し、肝硬変に進行する。https://cgatakanen-support.net/before/liver_cancer.html

日本の肝がんの原因の65%がC型肝炎と言われ、年間3万人以上が肝がんで亡くなっています。 https://cgatakanen-support.net/before/liver_cancer.html

肝癌の90%以上は肝硬変を伴っていることから、肝硬変の死因の60%以上は肝癌によるもの http://www.kanazawa-med.ac.jp/~hiromu/new_page_10.htm

肝癌による死亡者数は全世界で年間70万人にも上ります※3肝癌のうち約60-70%はC型肝炎ウイルス(HCV)感染が原因とされています。https://www.osaka-cu.ac.jp/ja/news/2017/170920

肝がんで亡くなる人の数は、肺、大腸、胃、膵臓に続き5番目 https://cgatakanen-support.net/before/liver_cancer.html

C型肝炎ウイルス感染の治療

今年8月、直接的抗ウイルス薬のひとつ「エプクルーサ」が適応拡大となり、C型肝炎の進行にかかわらず使えるようになった。しかも1日1回1錠、12週間服用すればよく、安全性が高い上に、ウイルスを100%排除できる。より使い勝手のいい薬https://news.yahoo.co.jp/articles/0c52a59a73da4d09d7687bc37427a331b7fa6ea6

今では「直接的抗ウイルス薬」という飲み薬が複数種類登場しており、ほぼ全員がウイルスを排除できる。https://news.yahoo.co.jp/articles/0c52a59a73da4d09d7687bc37427a331b7fa6ea6

抗ウイルス薬はC型肝炎患者の95%以上を完治 https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/12081116.html

2014年以後、DAA(Direct acting antivirals; 直接型抗ウイルス薬)の開発に伴い、C型肝炎患者数が減少。 https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000781258.pdf

C型肝炎治療(第ガイドライン8 2020版)年7月日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会編 https://www.jsh.or.jp/lib/files/medical/guidelines/jsh_guidlines/C_v8_20201005.pdf

肝硬変

慢性肝炎が肝硬変まで進行すると、手掌紅斑と言って手のひらが赤くなってきたり、からだが黄色くなる黄疸という症状が出現したり、むくみが出たり、おなかに水がたまる腹水によって妊婦さんのようにお腹が膨らんだりすることがあります。さらに鼻血などが出やすくなったり、出血が止まりにくくなったりする症状がみられることがあります。
https://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/c_gata.html

肝臓がん・肝癌

肝臓がんの治療 http://keijinkai-hp.net/chiryo/kanzo.html

肝臓がんの統計と他との比較

https://jams.med.or.jp/event/doc/123013.pdf

肺癌による死亡者数 死亡数(2020年) 75,585人(男性53,247人、女性22,338人)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html

大腸癌による死亡者数 死亡数(2020年) 51,788人(男性27,718人、女性24,070人)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html

胃癌による死亡者数 死亡数(2020年) 42,319人(男性27,771人、女性14,548人)

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/5_stomach.html

肝癌による死亡者数 死亡数(2020年) 24,839人(男性16,271人、女性8,568人)