「このお風呂の水、栓を抜いてから何分で抜けるか答えよ」という問いに対して、
理学部「風呂の容積と水の粘性、栓の径を考えると…5分です」
工学部「実際に同様の装置を作り計測したところ…5分です」
医学部「このように2件の報告があり共に5分と報告されているので5分です」
と、学部によってアプローチが違うことを面白く紹介したツイートがありました。
このお風呂の水、栓を抜いてから何分で抜けるか答えよ
理学部
風呂の容積と水の粘性、栓の径を考えると…5分です工学部
実際に同様の装置を作り計測したところ…5分です医学部
このように2件の報告があり共に5分と報告されているので5分です— Tomzo (@Tomzo1) March 4, 2020
実際に、どういう計算をすれば5分とわかるのかわからなくて、ChatGPTに訊いてみたら、即座に回答してくれました。
風呂の水が抜ける時間を求めるには、トリチェリの定理(Torricelli’s Law)と連続の式(Equation of Continuity)を使って排水流速を求め、それを積分して水位がゼロになる時間を計算します。
1. 基本の物理法則
(1) トリチェリの定理
排水口を通る水の流速
v は、重力加速度
g と水面から排水口までの高さ
h で決まります:
v=2ghこの式は、エネルギー保存則(Bernoulliの定理)から導かれ、粘性や流れの損失を無視した理想流体の近似です。
(2) 連続の式
水の流れは、浴槽の水面積
Abath と排水口の面積
Adrain の間で質量保存が成り立つので、
Abathdtdh=−Adrainvここで、
dh/dt は水位の低下速度です。
これにトリチェリの式を代入すると、
Abathdtdh=−Adrain2gh整理すると、
hdh=−AbathAdrain2gdtこの式を積分すると、時間
t を求めることができます。
2. 積分して時間を求める
両辺を積分すると、
∫H0hdh=−AbathAdrain2g∫0Tdt左辺の積分は、
∫hdh=2hしたがって、
2H−20=−AbathAdrain2gT
T=Adrain2g2HAbath
3. 数値を入れて計算
仮定
- 風呂のサイズ:長さ 1.2 m × 幅 0.7 m
- 初期水深:
H=0.5 m
- 排水口の直径:
d=4 cm → 面積
Adrain=π(0.02)2=1.26×10−3 m²
- 浴槽の底面積:
Abath=1.2×0.7=0.84 m²
- 重力加速度:
g=9.81 m/s²
T=1.26×10−3×2×9.812×0.5×0.84この計算を実行します。
計算の結果、お風呂の水が完全に抜けるのにかかる時間は 約213秒(約3分33秒) となりました。
仮に排水口の流れに対する抵抗(粘性の影響や排水口の形状による流量制限)を考慮すると、もう少し時間がかかる可能性がありますが、理想流体の近似ではこのような結果になります。
5分に近い時間にするには?
- 排水口が少し小さくなる(例:3.5cm径) → 流速が落ちて時間が延びる
- 水の粘性や排水口の形状による影響(流れがスムーズでない) → 実際の流量は理論値より小さくなる
もし、5分(= 300秒)で抜けるとすると、排水口の有効面積が実際より少し小さい、または流れの抵抗が効いている可能性が考えられます。
水の粘性を考慮すると、Poiseuilleの法則(粘性流体の流れ)やオリフィス流れの流量係数を導入して修正が必要です。
1. 粘性を考慮する必要性
トリチェリの定理は**理想流体(粘性ゼロ)**を前提としていますが、実際の水流には粘性があるため、排水口周囲で流速が落ち、流量が理論値より小さくなります。
この影響を考慮するために、以下の要素を加えます:
- 流量係数
Cd(ディスチャージ係数): 実際の流出速度は理論値の Cd 倍となる。 - Poiseuille流れによる圧力損失: 排水口が長いと流れが減衰する。
一般的に、排水口の**短いオリフィス(単なる穴)**の場合、経験的に
Cd≈0.6 とされています。
2. 修正された流速
トリチェリの流速を流量係数で補正すると、
vactual=Cd2ghこの影響を排水時間の計算に反映させると、
Tviscous=CdAdrain2g2HAbathこれを計算します。
粘性を考慮した場合、お風呂の水が完全に抜ける時間は 約356秒(約5分56秒) となりました。
まとめ
- 理想流体(粘性無視): 約3分33秒
- 粘性を考慮(流量係数
Cd=0.6 を適用): 約5分56秒
この結果から、実際のお風呂の排水時間が5分前後になるのは、水の粘性や排水口の流れの損失を考慮した影響があるためと考えられます。
もし、排水口の形状や流体の流れにさらに影響を与える要素(例えば排水管の長さ、曲がり、排水口のメッシュなど)が加わると、時間はさらに長くなる可能性があります。
水の粘性を考慮するためには、動粘性係数やレイノルズ数を用いて流れの種類を分類し、それに応じた修正を加えます。
1. 水の粘性(粘性係数 μ)
水の動粘性係数 (
ν) および動的粘性係数 (
μ) は以下の値になります(温度 20℃):
- 動的粘性係数(absolute viscosity)
μ:μ=1.002×10−3 Pa\cdotps
- 動粘性係数(kinematic viscosity)
ν:ν=ρμ=1000 kg/m31.002×10−3 Pa\cdotps=1.002×10−6 m2/s
ここで、
ρ=1000kg/m3 は水の密度です。
2. レイノルズ数 Re
排水口の流れが層流か乱流かを判定するため、レイノルズ数
Re を求めます。
Re=μρvdここで、
v=2gH はトリチェリの式で求めた流速
d=0.04 m(排水口の直径)
μ=1.002×10−3 Pa·s(水の粘性)
レイノルズ数を計算し、流れの種類を確認します。
計算の結果、レイノルズ数
Re は 約125,034 となりました。
3. 流れの分類と粘性の影響
レイノルズ数の一般的な分類:
Re<2000 → 層流
2000<Re<4000 → 遷移流
Re>4000 → 乱流
今回の
Re は 125,034 なので、完全に乱流に分類されます。
この場合、Poiseuilleの法則(層流向けの理論)は適用できません。
代わりに、**エネルギー損失(摩擦損失)**を考慮する必要があります。
4. Darcy-Weisbachの式による粘性の考慮
流れのエネルギー損失はDarcy-Weisbachの式で近似できます。
hf=fdL2gv2ここで、
hf は摩擦による水頭損失(m)
f は摩擦係数(Moody diagram より求める)
L は排水口の長さ(通常、短いオリフィスなら d 程度)
d は排水口の直径
v は流速
g は重力加速度
摩擦係数
f は、Colebrook-Whiteの式または経験則により、乱流時は次の近似式で求まります:
f≈Re0.250.079この摩擦損失を考慮して、実際の流速を補正し、排水時間を再計算します。
粘性と摩擦損失を考慮した場合、お風呂の水が完全に抜ける時間は 約302秒(約5分2秒) となりました。
結論
- 理想流体(粘性無視): 約3分33秒
- 粘性を考慮(流量係数
Cd=0.6 ): 約5分56秒 - 粘性 + 摩擦損失考慮(Darcy-Weisbach式適用): 約5分2秒
→ 約5分前後となり、実際の体感と一致する値になりました。
この結果から、粘性と摩擦によるエネルギー損失が、実際の排水時間を数十秒~2分程度増加させることがわかります。