先行研究を調べる方法

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臨床研究を行う際に出発点となるのは「診療上の疑問」、すなわちクリニカル・クエスチョン(Clinical question)を抱くことです。Clinical questionが生じたら、今度は、それが既に誰かによって答えられていないかどうかを調べなければなりません。つまり先行研究の論文があるかどうかです。

クリニカルクエスチョンは、漠然としたものですが、それをもう少し具体的な形に落とし込んで検証可能な形にしたものが、リサーチ・クエスチョンと呼ばれます。リサーチ・クエスチョンは、いわゆるPECO/ PICOの構造を持ちます。

  • P: Patients あるいは Participants 患者 あるいは 研究への参加者
  • E: Exposure 暴露因子
  • I: Intervention 介入
  • C: Control 比較対照
  • O: Outcome イベントなどの結末

簡単に言えば、「E/IによってOがどうなるかをPとCで比較して調べる」というのがリサーチ・クエスチョンの典型です。さて話を先行研究の調べ方に戻しますと、このPECO/PICOのうちのE/IとOにあたる語句をキーワード検索に用いて検索すれば、関連論文が拾ってこれます。

先行研究を調べるためには文献データベースを検索してヒットするかどうかを見ます。また論文がヒットしたらその論文が引用している論文を調べます。最新のレビュー論文を見るのも、手っ取り早く過去の論文を調べる方法です。類似論文をもとに、それが最近のどの論文で引用されたかを検索することもWeb of Scienceを使えば可能です(つまり過去の文献から、現在の方向に向かって検索)。

先行研究をチェック

自分が抱いたクリニカルクエスチョンが既に誰かによって答えられていないかどうかを調べるためには、先行研究をチェックする必要があります。既に論文になっていればまた別のクエスチョンを考えるか、論文化された内容の先をいくクエスチョンを考えなおすことになります。一つもの問題を考えたときに、それに対する答えが得られると、また新たなその先の疑問が生じるものです。突き詰めてものを考えるようにすれば、疑問がすべて解き明かされることはそうそうないのです。

先行研究の検索で難しいのは、先行研究や類似研究が存在しない場合に、本当に存在しないという確証を得ることです。慣れていないと単に検索のやり方がまずかっただけということが十分考えられます。研究開始時には検索しても先行研究がないと思っていたのに、研究を始めて改めて検索したら実はすでに同じ研究が論文になっていたことに気付くということが起きると悲劇です。

自分が思いついた研究は、本当に誰も行ったことがない研究なのかどうか、また、先行研究があったとしても、新しい視点で再検討する価値のある領域なのかどうか、系統的に確認を取っておく必要がある。(138ページ 先行研究の調査 『臨床研究と論文作成のコツ』)東京医学社 2011年)

参考

  1. Evidnce-Based Dentistry入門 世界のエビデンスを日々の診療にいかす 角舘直樹
  2. 臨床研究と論文作成のコツ 東京医学社 2011年 先行研究の調査 138~141ページ
  3.  臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年 6章 研究論文を読む 先行研究サーチ法 311~318ページ
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