造血の場所?成体の血液は骨髄で作られ、胎児期は肝臓で作られる

血液(赤血球)が体の中でどの臓器で作られているのか?知識を整理したいと思いました。

骨髄が造血の場所

赤血球は骨髄で作られます。骨髄には、「造血幹細胞」という、赤血球に限らずさまざまな血液細胞に分化するもとになる細胞が存在しています。骨髄は造血の場所だったわけですね。

  1. 血球はどこで作られるの? 看護roo!

腎臓がエリスロポエチンを産生して造血を指示

血液中の赤血球の量が少なくなると、腎臓でそれが感知されて、腎臓からはエリスロポエチンというホルモンが分泌されますエリスロポエチンは骨髄に働きかけて赤血球の増産を促します。

  1. 血はどのようにしてつくられる?
  2. 血液細胞の発生と分化 仲 野 徹 化学 と生物 Vol. 38, No. 2, 2000 赤血球生のホルモンともいうべきエリスロポエチンを欠損するマウスでは,後述する一次造血は正常であるが,二次造血において赤血球がまったく生されずに子宮で貧血により死亡してしまう.
  3. 腎臓の構造と働き 日本腎臓学会 腎臓の間質で作られるエリスロポエチンは、赤血球の前駆細胞に働きかけ赤血球の産生を亢進させます。慢性腎臓病が進行すると、エリスロポエチンの産生が不十分となり、貧血になります。これを腎性貧血と言います。

脾臓でのヘモグロビンの分解

  1. ヘモグロビン

胎児期の造血のメカニズム

人間の体は不思議なもので、生体と胎児ではメカニズムが異なることがあります。造血もその例の一つ。

血液の細胞は、造血幹細胞から作られます。造血幹細胞は、その前駆細胞である血管内皮細胞から作られます。造血幹細胞は胎生期に、大動脈の血管内皮細胞から、プレ造血幹細胞を経て発生してきます。プレ造血幹細胞から造血幹細胞への発生には、stem cell factor (SCF)と、トロンボポエチン(TPO)の2つの因子が必要で、プレ造血幹細胞にはそれぞれに対する受容体があります。トロンボポエチン(TPO)は、肝芽細胞が産生しており、プレ造血幹細胞大動脈内腔SCFシグナルに曝されたのち、肝臓に移動して今度はTPOシグナルに曝されて、造血細胞へと分化していくのです(胎生12日頃)。

  1. 科学新聞2024年8月30日 「造血幹細胞の発生過程 試験管内で再現に成功」(熊本大学)PNAS7月23日付

髄外造血について

  1. 髄外造血とは,骨髄以外の部位での異常な造血であり,造 血能の低下をみとめる疾患に合併することがある.髄外造血 のおこる部位としては脾臓や肝臓が主であるが,その他の部 位でも髄外造血巣をみとめることがある 1)2) .https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054010027.pdf

 

以下の通り、造血に関してclaude.aiにまとめてもらいました。

造血細胞の最上流に位置する細胞は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する「多能性幹細胞」です。この細胞から始まり、段階的に分化して最終的に造血幹細胞が形成されます。以下に、その系譜を示します:

  1. 多能性幹細胞(胚性幹細胞) |
  2. 中胚葉 |
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト) |
  4. 造血内皮細胞 |
  5. 造血幹細胞

この過程の詳細は以下の通りです:

  1. 多能性幹細胞: 胚盤胞の内部細胞塊に由来し、すべての胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に分化する能力を持つ。
  2. 中胚葉: 胚発生の過程で形成される3つの胚葉の1つ。血液系を含む多くの組織の起源となる。
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト): 血管と血液細胞の両方に分化できる共通の前駆細胞。
  4. 造血内皮細胞: 血管内皮の特徴を持ちながら、造血能力も有する特殊な細胞。主に卵黄嚢や大動脈-生殖腺-中腎領域で観察される。
  5. 造血幹細胞: すべての血液細胞系統に分化する能力を持つ、成体の造血システムの基盤となる細胞。

この過程は主に胚発生期に起こり、その後、造血幹細胞は自己複製能を獲得し、成体の骨髄で維持されます。

造血細胞系譜の発生過程に関する参考文献

  1. 多能性幹細胞(胚性幹細胞)
    • タイトル: “Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts”
    • 著者: Thomson JA, et al.
    • 雑誌: Science
    • DOI: 10.1126/science.282.5391.1145
  2. 中胚葉
    • タイトル: “Mesodermal commitment and differentiation: from foxes to hedgehogs”
    • 著者: Kimelman D.
    • 雑誌: Nature Reviews Molecular Cell Biology
    • DOI: 10.1038/nrm2009
  3. 血管芽細胞/血球芽細胞(ヘマンジオブラスト)
    • タイトル: “In vitro generation of lymphohematopoietic cells from endothelial cells purified from murine embryos”
    • 著者: Nishikawa SI, et al.
    • 雑誌: Immunity
    • DOI: 10.1016/s1074-7613(00)80165-x
  4. 造血内皮細胞
    • タイトル: “Runx1 is essential for hematopoietic commitment at the hemangioblast stage of development in vitro”
    • 著者: Lacaud G, et al.
    • 雑誌: Blood
    • DOI: 10.1182/blood-2002-04-1024
  5. 造血幹細胞
    • タイトル: “Identification of a novel hierarchy of endothelial progenitor cells using human peripheral and umbilical cord blood”
    • 著者: Asahara T, et al.
    • 雑誌: Blood
    • DOI: 10.1182/blood.V100.9.3527

造血の場の移動

胎生期の造血の場所

  1. 卵黄嚢(Yolk sac)
    • 時期:胎生初期(ヒトでは約2~3週)
    • 特徴:原始造血と呼ばれ、主に赤血球を産生
  2. 大動脈-生殖腺-中腎領域(AGM region: Aorta-Gonad-Mesonephros region)
    • 時期:胎生中期(ヒトでは約3~6週)
    • 特徴:最初の定住性造血幹細胞が出現する場所とされる
  3. 胎盤(Placenta)
    • 時期:胎生中期から後期
    • 特徴:造血幹細胞の増幅や維持に重要な役割を果たす
  4. 肝臓(Liver)
    • 時期:胎生中期から後期(ヒトでは約6週から出生まで)
    • 特徴:胎児期の主要な造血器官。造血幹細胞の増幅と分化が活発に行われる
  5. 脾臓(Spleen)
    • 時期:胎生後期
    • 特徴:補助的な造血器官として機能
  6. 胸腺(Thymus)
    • 時期:胎生中期から後期
    • 特徴:T細胞の発生・分化に特化
  7. 骨髄(Bone marrow)
    • 時期:胎生後期から生後(ヒトでは妊娠後期から)
    • 特徴:出生後の主要な造血器官。胎生期後期から造血が始まり、徐々に肝臓からの造血の場の移動が完了する