アビガンは効果が確認されておらず、しかも、催奇形性を持つため、個人がむやみに服用していい薬ではありません。それにも関わらず、個人輸入代行業の会社のウェブサイトを見ると、「アビガン・ジェネリック(ファビピラビル)」の取扱いがあるようです。幸いどこも売り切れになっていますが。また、SNS(ツイッター)を見ると、アビガンは効果があるのだから承認すべきという声も多数見つかります。科学的に否定された事実が、なぜか世間一般では受け入れられずに、陰謀だなどという批判とともに頑なに信じられているのが、とても不思議な現象に思えます。昔、STAP細胞が研究不正として認定されたあとも、不正を働いた筆頭著者を擁護する論調がいつまでも一般の人の間に残っていたのにも似ています。科学研究は、科学者が認定する事実も実験条件の違いで二転三転する可能性もなくはないので、最新の知見を把握する必要があります。さて、アビガンはCOVID-19に効果があるのでしょうか。
2022年5月
- アビガン転用、頓挫か 新型コロナ治験、打ち切り 毎日新聞 2022/5/16 東京朝刊 有料記事 今年3月で臨床試験(治験)が打ち切られた
2022年3月
- タイ赤十字 コロナ治療薬をアビガンからモルヌピラビルに変更するよう提言 2022/3/18 バンコク週報 新型コロナウイルス感染症の治療薬であるが、タイ赤十字社新興感染症臨床センターのオパート所長は3月17日、現在使われている抗インフルエンザウイルス薬のファビピラビル(アビガン)をより効果があるとされる経口抗ウイルス薬のモルヌピラビルに変更するよう提言した。
2021年12月
- アビガン投与の医師「事前に相談進めていればと深く反省」 2021/12/07 22:28 読売新聞オンライン 千葉県いすみ市の公立病院「いすみ医療センター」で8~9月、厚生労働省の通知に違反して内服薬の「アビガン」が新型コロナウイルスの自宅療養者に処方されていた問題で、同センターは7日、記者会見を開いた。‥ 平井医師は、観察研究を含む臨床研究に参加するための手続きに必要な倫理審査委員会も開いていないことも明かした。厚生労働省は研究に参加する医療機関に対して倫理審査を求めているが、事後でも良いとしている。
2021年11月
- アビガン米国治験有意性出ず 富士フイルム開発は難路に 2021年11月13日 22:00 [有料会員限定] 日本経済新聞 富士フイルムホールディングスの抗ウイルス薬「アビガン」について、カナダの開発協力企業は12日、新型コロナウイルス治療薬への転用を目指し米国などで実施した最終段階の臨床試験(治験)で「統計的な有意性を確認できなかった」と発表した。
2021年10月
- 富士フイルム富山化学の制御できぬ“国策薬”、コロナ治療薬候補「アビガン」 2021.10.7 4:25 会員限定 DIAMOND ONLINE アビガンに付けられた予算は粛々と執行され、研究も依然として進められていた。そんななか、ついに恐れていた出来事が発生する。妊娠していた可能性のある患者に、アビガンを投与してしまったのだ。
2021年9月
- 結局、アビガンはCOVID-19に効果があるのか?2021/09/13 倉原優(近畿中央呼吸器センター) 日経メディカル ファビピラビル(商品名アビガン)、シクレソニド(オルベスコ)といえば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期によくコロナ病棟で処方されていた薬剤です。‥ 現在は中等症I以上への抗ウイルス薬としてはレムデシビル(ベクルリー)が用いられ、軽症例への吸入ステロイドについてはブデソニド(パルミコート他)が有効ではないか、と考えられています。‥ タイの国民医療保障事務局(NHSO)は、国内のCOVID-19患者の治療に用いるためファビピラビルを購入しています。
2021年4月
- 「アビガン」新たな臨床試験を開始…コロナ治療薬として承認申請 2021/04/21 21:11 読売新聞オンライン アビガンは、子会社の富士フイルム富山化学が開発した新型インフルエンザ治療薬。新型コロナ治療薬として、昨年10月に承認申請を行ったが、厚労省の審議会は昨年12月、その時点の臨床試験の結果などでは判断できないとして、継続審議としていた。新たな臨床試験は、20日に開始。基礎疾患があるなど、重症化リスクが高い50歳以上の患者が対象となる。発熱などの症状が出てから72時間以内に投与を始め、重症化を抑えられるかどうかを確認する。臨床試験は10月末まで行い、患者約300人のデータを集めるという。
2021年3月
- 「アビガン」200万人分備蓄へ コロナ治療薬承認審査中 厚労省 2021年3月19日 21時51分 NHK 厚生労働省によりますと、ことし1月に富士フイルム富山化学から55万人分を購入し、さらに79万人分を購入する契約を19日付けで結んだということです。購入費用は合わせて139億円で、すでに備蓄しているおよそ70万人分と合わせて、計画どおり200万人分を確保したことになります。‥ 厚生労働省は「製薬企業がすでに契約の準備を進めていたことに加えて、感染が拡大している中で危機管理の観点から必要と判断した。承認されれば治療薬として使いたい」などとコメントしています。
- アビガン使用 国が計画する 備蓄量の約0.5%のみ 2021年3月18日 NHK政治マガジン 去年4月、政府は、当時治療薬が限られていた新型コロナウイルスへの効果も期待できるとして、今年度中に200万人分を備蓄する計画をまとめました。厚生労働省は、すでに備蓄しているおよそ70万人分に加えて、ことし1月に富士フイルム富山化学から55万人分を購入し19日、さらに79万人分を購入する方針です。費用は合わせておよそ139億円を見込んでいます。‥ 日本感染症学会の理事長で、東邦大学の舘田一博教授は、「去年4月は手探りのなかで少しでも効果があるならと備蓄が決められたが、まだ臨床研究が続いていて、効果が証明されていない」としたうえで、「計画どおりに備蓄するのか、一度立ち止まるのかを考えていかなければならない。これまでに得た情報をもとに、ほかの治療薬を活用することも含めて改めて検討すべきだ」と指摘しています。
2021年2月
- アビガンが承認下りないのも不思議でない根拠 期待されたコロナ治療薬候補の知られざる実力 村上 和巳 2021/02/13 13:00 東洋経済ONLINE アビガンの動物実験ではサル、マウス、ラット、ウサギの4種類の動物で催奇形性が認められており、ラットでは初期の受精卵(初期胚)が死滅したことも報告されている。
- アビガンが今になっても承認下りない根本理由 2021/02/12 14:00 村上 和巳東洋経済ONLINE 現時点で使用可能な薬は、従来感染症に使われ、新型コロナの重症肺炎患者で死亡率を低下させることが報告されたステロイド薬のデキサメタゾン、アメリカでの臨床試験を基に5月に特例承認された、ウイルス増殖を抑える抗ウイルス薬のレムデシビルの2種類のみだ。‥ パンデミック初期の昨年2月、中国科学院武漢ウイルス研究所はアビガンが試験管内で新型コロナウイルスに対して効果を示したと報告。同5月には安倍晋三前首相が「今月中の承認を目指したい」とまで言及した。
2020年10月
- アビガン数奇な23年 研究員は上司に内緒で探し始めた 2020年10月26日 7時00分 有料会員記事 真海喬生、江口英佑 朝日新聞アピタル 6月末に都内で開かれた、アビガンを開発した富士フイルム富山化学の親会社、富士フイルムホールディングスの株主総会は活気に満ちていた。6人の株主が質問に立ち、うち4人がアビガンについて尋ねた。質疑後には株主から「頑張って」という声もかかる。最後は社長が「治療薬を早く届けたい。全力を挙げている」と話して総会は終わった。
2020年7月
- アビガンはなぜ「特効薬」の座から滑り落ちたのか「正しい価値」は科学に徹頭徹尾、正対する道しかない 2020年07月24日 ニュースイッチ中国で緊急避難的に実施された新型コロナ患者へのアビガンの投与結果が「良好」らしいとの情報が伝わるや否や、2月29日に安倍首相自らが会見で、「アビガン」「カレトラ」「ベクルリー」の3つのクスリが新型コロナ感染症に対する有力な治療薬の候補だと挙げ、アビガンについては国の備蓄分を使って患者への投与をスタートしたと表明した。‥ 3月28日の会見で安倍首相は、「すでに症状の改善に効果が出ているとの報告もある」と強調したうえで、「正式承認に向けた治験プロセスを開始する」と踏み込んだ。4月7日の緊急事態宣言の発令後に開いた会見では、「アビガンの備蓄量を現在の3倍の200万人分まで拡大する」と宣言。20年度補正予算の中にアビガンの増備として139億円を付けた。さらに、緊急事態宣言の延長を決めた5月4日には、「今月中の承認をめざしたい」とまで言い切った。‥ タレントの石田純一さんや脚本家の宮藤官九郎さんなどが相次いで、アビガンが効いたという趣旨の体験談を公表。‥ 6月以降、安倍首相の口からは、血税を投入したにもかかわらず、アビガンという言葉が発せられなくなった。 ‥ 藤田医科大が7月10日、特定臨床研究の最終報告において「ウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、統計的有意差には達しませんでした」と結論付けた
2020年5月
- アビガンの受託生産に乗り出す企業続々 増産目指し原薬製造や製造工程で協力 2020/05/20 04:50 ミクスOnline 5月19日には、三谷産業(本社:石川県金沢市)の子会社で、医薬品原薬の開発・製造を手がけるアクティブファーマ(東京都千代田区)が、原薬製造を7月に開始すると発表。ニプロファーマ(大阪市中央区)も9月からの生産を予定していると発表した。‥ 製造販売元の富士フイルム富山化学が生産体制を拡大し、増産を開始している。同社では、グループ会社の富士フイルム和光純薬で医薬品中間体の生産設備を増強するほか、原薬や原料の製造や製剤の工程に、国内外15社程度が協力し、同剤の増産を推進するとしていた。アクティブファーマやニプロファーマのほか、すでに医薬品開発支援機関(CRO)のシミックホールディングスや日医工(本誌既報)などが、受託生産を開始すると明らかにしている。
アビガンの催奇形性とPMDAの承認
T705の動物実験で確認された「初期胚の致死並びに催奇形性の確認」という副作用への懸念が、治験の最終段階になっても払拭できなかった
富山化学は2011年に「A型またはB型インフルエンザウイルス感染症」の効能効果で医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認を申請
PMDAでは3年間という異例の審査期間を経た後、「新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)」という効能効果でもってアビガンを承認した。(アビガンはなぜ「特効薬」の座から滑り落ちたのか 2020年07月24日 ニュースイッチ)
アビガンの開発
開発したのは、感染症領域の創薬に伝統的に強かった旧富山化学工業(現、富士フイルム富山化学)と白木公康・富山大学名誉教授。「T705」の開発コードで、新しいインフルエンザ治療薬を目指して治験が進められた。当時、鳥インフルエンザウイルスH7N9型が猛威を振るい、さらに、代表的なインフルエンザ治療薬であったスイス・ロシュ社製の「タミフル」は耐性ウイルスを出現させやすいという点が医療現場から憂慮されていた。(アビガンはなぜ「特効薬」の座から滑り落ちたのか 2020年07月24日 ニュースイッチ)