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結合組織 connective tissue とは?

結合組織という名称は、何かと何かを結び付けるための組織というイメージを与えてしまいます。そのような定義・説明をしている教科書もよく見かけます。しかし、これは単にネーミングがイマイチだっただけと考えて、名称には囚われないほうが、理解への早道ではないかと思います。

ウィーター 図説で学ぶ機能組織学 ELSEVIER 原著第6版 の教科書を開いてみたら(66ページ)、

支持(結合)組織 supporting / connecting tissueとは、一般的な構造支持、機械的強度、空間部分の充填(身体の形作り)、そして特殊な例では物理的・代謝的な土台を与える組織に用いられる用語である。

と説明されていました。なんという明解な説明でしょう。何と何を結合するという言い方が排除されていました。そもそも結合組織という言葉だけでなく、支持組織という言葉を前に出していました。

  1. Wheater’s Functional Histology  Seventh edition 2023/7/21
  2. ウィーター 図説で学ぶ機能組織学 ELSEVIER 原著第6版:大判の本で、組織学の写真もデカいものが多いので、見ていて迫力を感じます。でっかい美しい組織の写真が目の前に広がるので、子供のときに絵本を拡げて読んでいたような感覚を味わえます。

もっとも、教科書によっては「支持組織」を分類した中の一つとして「結合組織」という言葉を使っているものもあります。学問分野によっても多少定義が異なる可能性がありますので、あまり厳密な定義を追い求めても仕方ないかもしれません。自分が所属している学問分野で定評のある教科書の定義に従えばいいのでしょう。

 

質問:結合組織 connective tissue の定義は?別に、何かと何かを結合する組織というわけじゃないのね。ミスリーディングな術語だね。

回答(Gemini3):「結合組織(Connective Tissue)」という名前から、「AとBを繋ぐ接着剤」のような役割を想像しがちですが、実際にはもっと広範で、「生体のバルク(体積)と構造を形作る、細胞以外の成分が主役の組織」を指します。解剖学・組織学的な定義を整理すると、スッキリするかもしれません。


結合組織の定義

結合組織とは、以下の3つの要素で構成される組織の総称です。

  1. 細胞(Cells): 線維芽細胞、マクロファージ、脂肪細胞など。

  2. 線維(Fibers): コラーゲン線維、弾性線維など。

  3. 基質(Ground Substance): ヒアルロン酸やプロテオグリカンなどのゼリー状物質。

最大のポイントは、「細胞」よりも「細胞外マトリックス(線維+基質)」の方が圧倒的に多いということです。上皮組織が細胞同士でギチギチに詰まっているのに対し、結合組織は広いプール(細胞外マトリックス)の中に細胞がポツポツと浮いているようなイメージです。


なぜ「結合」という名前が紛らわしいのか?

おっしゃる通り、単に「繋ぐ」だけではない多様な役割があるため、名前が実態をカバーしきれていません。結合組織には、以下のような「繋ぐ」以外のバリエーションが含まれます。

  • 支持・骨格: 骨や軟骨(体を支える)

  • 貯蔵・断熱: 脂肪組織(エネルギーを蓄える)

  • 運搬: 血液・リンパ(液体ですが、分類上は「特殊結合組織」です)

  • 防御: 免疫細胞の活動の場

分類表(ざっくり)

分類 具体例 役割
固有結合組織 真皮、腱、靭帯 結合、弾力維持、強度の提供
特殊結合組織 骨、軟骨 身体の支柱、保護
特殊結合組織(液体) 血液、リンパ 物質輸送、免疫
脂肪組織 皮下脂肪、内臓脂肪 クッション、エネルギー貯蔵

結論:名前の由来と実態

この用語は、英語の “Connective” の直訳ですが、現代的な解釈としては「組織と組織の隙間を埋め、身体のパッケージング(支持・包囲・栄養補給)を担うシステム」と捉えるのが正解に近いです。「接着剤」というよりは、「建物のコンクリート(基材)+鉄筋(線維)+インフラ配管(輸送路)」がセットになったものと考えると、その多様性が理解しやすくなるはずです。

質問:connective tissue って誰が名付けたの?

回答(Gemini3):「結合組織(Connective tissue)」という言葉を最初に生み出した(造語した)のは、18世紀ドイツの解剖学者、**ヨハネス・ペーター・ミュラー(Johannes Peter Müller)**であるとされています。1830年頃、彼はドイツ語で “Bindegewebe”(結合する組織)という言葉を提唱しました。これが英語に翻訳され、現在の “Connective tissue” になりました。


命名の背景:なぜ「結合」だったのか?

当時はまだ顕微鏡の性能も限られており、現代のような分子レベルの理解はありませんでした。彼らが肉眼や初期の顕微鏡で観察したとき、この組織は以下のように見えていました。

  • 筋肉、神経、血管などの「特定の機能を持つ主要なパーツ」の隙間を埋めている

  • それらのパーツをバラバラにならないよう繋ぎ止めている

つまり、当時の解剖学者にとっては、中身(実質)ではなく**「パーツとパーツを繋ぐパッキンや詰め物」**に見えたため、”Bindegewebe”(Bind=縛る、Gewebe=組織)と名付けられたのです。

概念を完成させたのは「細胞説」の父

ミュラーが名前を付けましたが、この組織が「細胞外マトリックスを主役とするグループである」という現代的な組織学的概念として確立させたのは、彼の弟子である**フリードリヒ・グスタフ・ヤコブ・ヘンレ(Friedrich Gustav Jakob Henle)**だと言われています。ヘンレは1841年の著書で、上皮、筋肉、神経と並んで、この「結合組織」を基本組織の一つとして体系化しました。現代の解剖学者が今の知識を持って名付け直すなら、おそらく「結合」ではなく、以下のような名前になっていたかもしれません。

  • 支持組織(Supportive tissue): 体を支えるから。

  • マトリックス組織(Matrix tissue): 細胞外成分がメインだから。

  • 環境組織: 細胞が生きるための「場」を提供しているから。

医学部生および医療系学生のための解剖学の教科書:定番とお勧め わかりやすい解剖学の教科書のまとめ

解剖学は、単なる記載に過ぎない教科書を読もうとすると挫折するでしょう。人間の体がたった一つの細胞である受精卵から始まったことを考えれば、発生学を勉強しながら解剖学を勉強したほうが、頭の中ですっきりとした理解ができるのではないかと思います。また、生理学と併せて解剖生理学を学ぶ、さらに、臨床的な帰結とあわせて臨床解剖学を学ぶというアプローチが、現実的なのではないでしょうか。

村上 小説みたいに楽しく読める解剖学講義

小説みたいに楽しく読める解剖学講義 2023/6/26 村上 徹 (著)は、文字通り読む解剖学の本です。網羅的ではないと思いますが、特に解剖学の実習の際に遭遇することを中心に、解剖学実習中継みたいな書き方になっています。医学部の学生向けに書かれているのだと思います。解剖学実習に望む医学部の学生でなければ、必ずしも解剖実習に沿った説明の順番である必要はないので、他のオーソドックスな教科書のほうがとっつきやすいということがあるかもしれません。

ネッター

著者のネッターは医学者であると同時に画家でもあったというべきでしょう。イラストの精密さと美しさでは、他の教科書のイラストとは全く別格だと思います。しかも、解剖学を学ぶものが「見たいところを見せてくれる」センスが素晴らしいのではないでしょうか。この部分はどうなってるんだろうという疑問を解消しようと解剖の本をいろいろ見てまわっていますが、そんなときにネッターの解剖学アトラスには、自分が知りたいところが描かれている(!)ということが何回もありました。よくできた本だなあと感心しています。

  1. Penis Penile Fasciae and Structures https://www.netterimages.com/penile-fasciae-and-structures-labeled-anatomy-atlas-4e-general-anatomy-frank-h-netter-4634.html 陰茎の解剖学的な構造がよくわかるイラスト
  2. Differentiation of External Genitalia https://www.netterimages.com/differentiation-of-external-genitalia-unlabeled-80959.html 発生学的に起源が同一である男性外生殖器と女性外生殖器の部分の対比がわかりやすいイラスト
  3. Development of Kidney: Nephron Formation https://www.netterimages.com/development-of-kidney-nephron-formation-unlabeled-urology-frank-h-netter-64573.html 集合管の部分にネフロン(間葉系細胞の凝集により発生してきた「腎小体(糸球体+ボーマン嚢)、近位尿細管、ヘンレのループ、遠位尿細管」)が接続される様子が良く分かるイラスト
  4. Development of the Face: 4 to 6 Weeks https://www.netterimages.com/development-of-the-face-4-to-6-weeks-labeled-cochard-1e-embryology-frank-h-netter-6628.html 口窩 stomodeum の構造や口咽頭膜(破れかけて、貫通しかけているところ)などがよくわかるイラスト
  5. Development of the Face: 3 to 4 Weeks https://www.netterimages.com/development-of-the-face-3-to-4-weeks-labeled-cochard-1e-embryology-frank-h-netter-6568.html 顔の発生の初期段階でまだ神経溝が閉じきらずに開いた状態になっている(anterior neuropore)ところ。

原書は第8版が出ています。

Netter Atlas of Human Anatomy, 8th ed. – Classic Regional Approach 著者 : F.H.Netter 出版社 : ELSEVIER ISBN : 978-0-323-68042-4 ページ数 : 421pp.(556illus.) 出版年 : 2023年 定価20,779円(本体18,890円 + 税) 南江堂 https://www.nankodo.co.jp/g/g9780323680424/

アマゾンKindle版 (電子書籍) ¥9,420

ネッター解剖学 フルセット版【電子書籍付】(原書第7版): アトラス・別冊学習の手引き・Bonus Plates 大型本 – 2022/1/24

Moore ムーアの臨床解剖学

Moore’s Clinically Oriented Anatomy (Lippincott Connect) ペーパーバック – 2023/4/1 英語版 Arthur F. Dalley II PhD FAAA (著), Anne M. R. Agur B.Sc. (OT) M.Sc PhD (著) 1200ページ Kindle版 (電子書籍) ¥17,293 https://www.amazon.co.jp/Clinically-Oriented-Anatomy-Lippincott-Connect/dp/1975209540/

膨大なページ数でちょっと圧倒されます。

Clinically Oriented Anatomy 2013/1/1 Keith L. Moore and Arthur F. Dalley https://www.amazon.co.jp/dp/9387963683/ Kindle版 (電子書籍) ¥17,120  これはリッピンコットのオンラインアクセス教材とセットになったもののようです。

 

 

グレイ解剖学

Gray’s Anatomy for Students 2023/3/24 英語版 Richard L. Drake PhD (編集), A. Wayne Vogl PhD (編集), Adam W. M. Mitchell MB BS FRCS FRCR (編集)  1168ページ 出版社 ‏ : ‎ Elsevier

Gray’s Atlas of Anatomy (Gray’s Anatomy) 2020/3/3 英語版 Richard L. Drake PhD (著), A. Wayne Vogl PhD (著), Adam W. M. Mitchell MB BS FRCS FRCR (著), Richard Tibbitts (著), Paul Richardson (著) 648ページ

 

 

 

 

 

松村 イラスト解剖学

出版社サイトでサンプルを見られますが、親しみやすいイラストや文章で、とっつきにくい解剖学の勉強が楽しくなりそうです。前書きから明らかなように姉妹書の解剖学イラスト事典とは異なり、こちらのイラスト解剖学は医学部が解剖学を学ぶための手助けとして書かれています。

初版発行以来,一貫して守り続けてきたのは「どうしたら解剖学に食いついてもらえるか」ということである.医学教育における解剖学は,落語で言えば「マクラ」,漫才で言えば「つかみ」にあたる.ここで転けると後々苦労するのだ.学生を転けさせるわけにはいかない.‥ 興味を持てなければ,解剖学の講義は学生にとって「無間地獄」に他ならない.‥となれば,解剖学書は「地獄に落ちた学生を救い出す蜘蛛の糸」でなければならない.‥ 本書も「憶えるのではなく,へえ!なるほど!を繰り返す」というコンセプトを貫いてきた(つもりである).(改訂10版の序 より抜粋)

イラスト解剖学 第10版 2021/4/19 松村 讓兒 (著)  912ページ 中外医学社(出版社サイトでは電子版が購入できます

目次 第I章 解剖学の基礎知識 人体の区分 身体表現のきまり 細胞について 組織について 腫瘍について 器官と器官系について ヒトの発生について 妊娠齢の診断 胎盤について 胎盤のホルモン 胎膜(卵膜)って? 羊水について 流産・早産・正期産 受精から二層性胚盤まで 胚と呼ばれる時期 妊娠週数と胚・胎児の大きさ 三層性胚盤と胎児期以後 鰓弓(咽頭弓)って何? 鰓性器官について 咽頭囊に由来する器官 第II章 体幹の運動器系 【骨・筋の基礎知識】 骨と骨組織 骨の役割 ヒトにはなぜ骨があるのか (以下略)

 

松村 解剖学イラスト事典

解剖学イラスト事典と同著者によるイラスト解剖学との違いは何だろうと思ったのですが、イラスト解剖学が医学部の学生向けでかなり分厚く、解剖学イラスト事典はコメディカル向けで内容が絞られているようです。また文字通り「事典」として使えるように工夫されているようです。

医療従事者をめざす人たちは「解剖学はとにかくたくさんの用語を憶える科目」と思っているようだ.そして,解剖学の授業が始まるとともに「訳の分からない解剖用語」が「津波のように押し寄せてくる」と感じるという.その結果,たくさんの人が「解剖用語の海」の中で溺れてしまうらしい.‥ 本書は,すでに溺れてしまった人も含め,「解剖用語の海」を泳ぐための手助けになるように,との願いを込めて作られた「解剖学事典」である.また「事典」としてばかりはでなく,見開き読み切り形式の「解剖学入門書」としても使えるよう,かつて「解剖用語の海で溺れかけた著者」が「ワラをもつかむ」気持でアレンジした.(はじめに 解剖学イラスト事典)

解剖学イラスト事典 第4版 2023/8/11 松村 讓兒 (著) 526ページ 中外医学社(出版社サイトでは電子版が購入できます)【目次】 第1部 人体構造の概観 第2部 上肢 第3部 下肢 第4部 背部 第5部 胸部 第6部 腹部 第7部 骨盤部 第8部 頭頚部 第9部 中枢神経系

胸腺とは

胸腺とは?胸腺の役割

胸腺というのは T細胞をつくるためだけにあるといってよい臓器で、「腺」という名前がつ
いていますが、ホルモンの分泌を行う臓器ではありません。… 骨髄で造血幹細胞から分化する過程でB 細胞はそのまま骨髄でつくられますが、T 細胞になるべき前駆細胞は胸腺へ移行し、T細胞は胸腺でつくられます。(「免疫細胞はどこで、どんな細胞からつくられるの?」河本宏)

 

B細胞とT細胞はそれぞれ骨髄、胸腺で一応の成熟を遂げて、血液中へ出て行きます。(一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう!

 

胸腺の位置

胸腺は、心臓に覆いかぶさるように存在するリンパ組織です。(免疫恒常性研究チーム IMS)

  1. 胸腺付きの心臓模型 

胸腺は胸骨の裏側心臓の前側にあり、幼少期には免疫を担う大切な役割を果たします。胸腺は成人するまでには脂肪に置き換わっていきます(胸腺摘除術)

 

胸腺は胸の真ん中の骨(胸骨)の真下で、心臓の上、上大静脈、大動脈の前にあるやわらかい脂肪のような臓器です。大人で50g程度のものです。(胸腺摘出術について med.nagoya-cu.ac.jp)

 

胸腺マッサージ

  1. 免疫について QINOWA 動画あり

 

胸腺の大きさ

誕生時には10グラムから15グラム、思春期には最大の30グラムから40グラムになります、その後は徐々に小さくなり、成人以後は、脂肪の一部のようにみえます。(胸腺腫・胸腺がん(きょうせんしゅ・きょうせんがん) 希少がんセンター 国立がん研究センター)

 

 

胸骨とは

メッチャ効く!胸骨を筋膜リリースすると負の感情が一気に吹き飛び、楽になる!【腰痛 治し方 ストレッチ】How to release the sternum 2020/08/20 藤井翔悟

 

胸腺腫・胸腺がんと重症筋無力症

胸腺腫の多くは30歳以上に発症し、特に40~70歳に多い。40~50%の患者は症状がないが、腫瘍によって肺や心臓など周囲の大切な臓器に食い込んだり、圧迫したりすることによって、胸痛、咳、呼吸困難などの症状が出る場合がある。また、進行がゆっくりである半面、手足の筋肉に力が入りにくくなる重症筋無力症、赤血球が減る赤芽球癆(せきがきゅうろう)、低γ-グロブリン血症多発筋炎などの腫瘍随伴症状が起こることがあるのが特徴だ。(国立がん研究センター・希少がんセミナーより未だ保険診療で使える治療薬がない胸腺がんの現状福島安紀=医療ライター がんナビ

 

胸腺腫とは

胸腺腫(きょうせんしゅ)と胸腺がんは胸腺からでるがんです。腫とは腫瘍(しゅよう)という意味です。腫瘍は細胞が自立的に分裂してかたまりを形成したものです。胸腺腫は発育の比較的遅いがんなので対応しやすい病気です。(胸腺腫と胸腺がんの基礎知識 東京慈恵会医科大学付属 柏病院)