解剖学は、単なる記載に過ぎない教科書を読もうとすると挫折するでしょう。人間の体がたった一つの細胞である受精卵から始まったことを考えれば、発生学を勉強しながら解剖学を勉強したほうが、頭の中ですっきりとした理解ができるのではないかと思います。また、生理学と併せて解剖生理学を学ぶ、さらに、臨床的な帰結とあわせて臨床解剖学を学ぶというアプローチが、現実的なのではないでしょうか。
村上 小説みたいに楽しく読める解剖学講義
小説みたいに楽しく読める解剖学講義 2023/6/26 村上 徹 (著)は、文字通り読む解剖学の本です。網羅的ではないと思いますが、特に解剖学の実習の際に遭遇することを中心に、解剖学実習中継みたいな書き方になっています。医学部の学生向けに書かれているのだと思います。解剖学実習に望む医学部の学生でなければ、必ずしも解剖実習に沿った説明の順番である必要はないので、他のオーソドックスな教科書のほうがとっつきやすいということがあるかもしれません。
ネッター
著者のネッターは医学者であると同時に画家でもあったというべきでしょう。イラストの精密さと美しさでは、他の教科書のイラストとは全く別格だと思います。しかも、解剖学を学ぶものが「見たいところを見せてくれる」センスが素晴らしいのではないでしょうか。この部分はどうなってるんだろうという疑問を解消しようと解剖の本をいろいろ見てまわっていますが、そんなときにネッターの解剖学アトラスには、自分が知りたいところが描かれている(!)ということが何回もありました。よくできた本だなあと感心しています。
- Penis Penile Fasciae and Structures https://www.netterimages.com/penile-fasciae-and-structures-labeled-anatomy-atlas-4e-general-anatomy-frank-h-netter-4634.html 陰茎の解剖学的な構造がよくわかるイラスト
- Differentiation of External Genitalia https://www.netterimages.com/differentiation-of-external-genitalia-unlabeled-80959.html 発生学的に起源が同一である男性外生殖器と女性外生殖器の部分の対比がわかりやすいイラスト
- Development of Kidney: Nephron Formation https://www.netterimages.com/development-of-kidney-nephron-formation-unlabeled-urology-frank-h-netter-64573.html 集合管の部分にネフロン(間葉系細胞の凝集により発生してきた「腎小体(糸球体+ボーマン嚢)、近位尿細管、ヘンレのループ、遠位尿細管」)が接続される様子が良く分かるイラスト
- Development of the Face: 4 to 6 Weeks https://www.netterimages.com/development-of-the-face-4-to-6-weeks-labeled-cochard-1e-embryology-frank-h-netter-6628.html 口窩 stomodeum の構造や口咽頭膜(破れかけて、貫通しかけているところ)などがよくわかるイラスト
- Development of the Face: 3 to 4 Weeks https://www.netterimages.com/development-of-the-face-3-to-4-weeks-labeled-cochard-1e-embryology-frank-h-netter-6568.html 顔の発生の初期段階でまだ神経溝が閉じきらずに開いた状態になっている(anterior neuropore)ところ。
原書は第8版が出ています。
Netter Atlas of Human Anatomy, 8th ed. – Classic Regional Approach 著者 : F.H.Netter 出版社 : ELSEVIER ISBN : 978-0-323-68042-4 ページ数 : 421pp.(556illus.) 出版年 : 2023年 定価20,779円(本体18,890円 + 税) 南江堂 https://www.nankodo.co.jp/g/g9780323680424/
アマゾンKindle版 (電子書籍) ¥9,420
ネッター解剖学 フルセット版【電子書籍付】(原書第7版): アトラス・別冊学習の手引き・Bonus Plates 大型本 – 2022/1/24
Moore ムーアの臨床解剖学
Moore’s Clinically Oriented Anatomy (Lippincott Connect) ペーパーバック – 2023/4/1 英語版 Arthur F. Dalley II PhD FAAA (著), Anne M. R. Agur B.Sc. (OT) M.Sc PhD (著) 1200ページ Kindle版 (電子書籍) ¥17,293 https://www.amazon.co.jp/Clinically-Oriented-Anatomy-Lippincott-Connect/dp/1975209540/
膨大なページ数でちょっと圧倒されます。
Clinically Oriented Anatomy 2013/1/1 Keith L. Moore and Arthur F. Dalley https://www.amazon.co.jp/dp/9387963683/ Kindle版 (電子書籍) ¥17,120 これはリッピンコットのオンラインアクセス教材とセットになったもののようです。
グレイ解剖学
Gray’s Anatomy for Students 2023/3/24 英語版 Richard L. Drake PhD (編集), A. Wayne Vogl PhD (編集), Adam W. M. Mitchell MB BS FRCS FRCR (編集) 1168ページ 出版社 : Elsevier
Gray’s Atlas of Anatomy (Gray’s Anatomy) 2020/3/3 英語版 Richard L. Drake PhD (著), A. Wayne Vogl PhD (著), Adam W. M. Mitchell MB BS FRCS FRCR (著), Richard Tibbitts (著), Paul Richardson (著) 648ページ
松村 イラスト解剖学
出版社サイトでサンプルを見られますが、親しみやすいイラストや文章で、とっつきにくい解剖学の勉強が楽しくなりそうです。前書きから明らかなように姉妹書の解剖学イラスト事典とは異なり、こちらのイラスト解剖学は医学部が解剖学を学ぶための手助けとして書かれています。
初版発行以来,一貫して守り続けてきたのは「どうしたら解剖学に食いついてもらえるか」ということである.医学教育における解剖学は,落語で言えば「マクラ」,漫才で言えば「つかみ」にあたる.ここで転けると後々苦労するのだ.学生を転けさせるわけにはいかない.‥ 興味を持てなければ,解剖学の講義は学生にとって「無間地獄」に他ならない.‥となれば,解剖学書は「地獄に落ちた学生を救い出す蜘蛛の糸」でなければならない.‥ 本書も「憶えるのではなく,へえ!なるほど!を繰り返す」というコンセプトを貫いてきた(つもりである).(改訂10版の序 より抜粋)
イラスト解剖学 第10版 2021/4/19 松村 讓兒 (著) 912ページ 中外医学社(出版社サイトでは電子版が購入できます)
目次 第I章 解剖学の基礎知識 人体の区分 身体表現のきまり 細胞について 組織について 腫瘍について 器官と器官系について ヒトの発生について 妊娠齢の診断 胎盤について 胎盤のホルモン 胎膜(卵膜)って? 羊水について 流産・早産・正期産 受精から二層性胚盤まで 胚と呼ばれる時期 妊娠週数と胚・胎児の大きさ 三層性胚盤と胎児期以後 鰓弓(咽頭弓)って何? 鰓性器官について 咽頭囊に由来する器官 第II章 体幹の運動器系 【骨・筋の基礎知識】 骨と骨組織 骨の役割 ヒトにはなぜ骨があるのか (以下略)
松村 解剖学イラスト事典
解剖学イラスト事典と同著者によるイラスト解剖学との違いは何だろうと思ったのですが、イラスト解剖学が医学部の学生向けでかなり分厚く、解剖学イラスト事典はコメディカル向けで内容が絞られているようです。また文字通り「事典」として使えるように工夫されているようです。
医療従事者をめざす人たちは「解剖学はとにかくたくさんの用語を憶える科目」と思っているようだ.そして,解剖学の授業が始まるとともに「訳の分からない解剖用語」が「津波のように押し寄せてくる」と感じるという.その結果,たくさんの人が「解剖用語の海」の中で溺れてしまうらしい.‥ 本書は,すでに溺れてしまった人も含め,「解剖用語の海」を泳ぐための手助けになるように,との願いを込めて作られた「解剖学事典」である.また「事典」としてばかりはでなく,見開き読み切り形式の「解剖学入門書」としても使えるよう,かつて「解剖用語の海で溺れかけた著者」が「ワラをもつかむ」気持でアレンジした.(はじめに 解剖学イラスト事典)
解剖学イラスト事典 第4版 2023/8/11 松村 讓兒 (著) 526ページ 中外医学社(出版社サイトでは電子版が購入できます)【目次】 第1部 人体構造の概観 第2部 上肢 第3部 下肢 第4部 背部 第5部 胸部 第6部 腹部 第7部 骨盤部 第8部 頭頚部 第9部 中枢神経系