神経板の表皮になる部分との境目あたりは、神経堤細胞になります。神経堤細胞は末梢神経などになる重要な細胞系譜のため、その分化過程は詳細に調べられています。
Molecular signaling directing neural plate border formation Published: 9 July 2024 Int. J. Dev. Biol. 68: 65 – 78 (2024) https://doi.org/10.1387/ijdb.230231me Vol 68, Issue 2https://ijdb.ehu.eus/article/230231me
Fig. 4. Shh- and Noggin-expressing cells prevent or down-regulate Slug expression in the dorsal neural tube and influence the expression of other dorsal neural tube genes.
Figure 2 Induction of Floor Plate Cells in Response to Shh and Chordin In Vivo (N and O) Coexpression of (N) Shh and (O) chordin in the HH st-10 caudal notochord.
Effects of Shh and Noggin on neural crest formation demonstrate that BMP is required in the neural tube but not ectoderm Development (1998) 125 (24): 4919–4930.
https://journals.biologists.com/dev/article/125/24/4919/40053/Effects-of-Shh-and-Noggin-on-neural-crest
神経堤の分化
神経板と表皮の間の部分は神経堤に分化します。神経管が閉じたあと(ニワトリの場合。他の動物種によっては閉じる直前もしくは同時みたい)、神経堤細胞は上皮間葉転換により運動性を獲得して移動します。神経堤細胞は、感覚神経、自律神経、顔面の頭蓋などに分化することから非常に重要な役割を担う細胞であり、何がこの神経堤細胞を規定するのかは非常に重要なテーマで膨大な研究の蓄積があります。
下の論文は非常に興味深いです。神経板にはFGFが発現していて神経板の分化に必要(誘導でなく、誘導された状態の維持に必須)ですが、神経堤においては、「中程度」にまでFGFシグナリングの強さが弱まっている必要があります。どうやって弱めているかというと、FGFシグナリングの細胞内情報伝達機構のいくつかのシグナル分子をマイクロRNAによって抑制しているというものです。2024年ノーベル生理学医学賞はマイクロRNAの発見者2人に贈られました。もともとは線虫のある遺伝子の発現を抑制するしくみとしてマイクロRNAが発見されましたが、マイクロRNAは線虫に特有の現象などではなく、実は動物全体に普遍的に存在する遺伝子発現制御機構でした。その例として、下の論文が挙げられると思います。
Post-transcriptional tuning of FGF signaling mediates neural crest induction PNAS December 21, 2020 117 (52) 33305-33316
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2009997117