科研費がどのように審査されるのかは、審査委員にしかわからないということはありません。ある程度は情報が公開されています。
応募者のこれまでの実績だけで判断するのではなく、応募者が研究計画調書に記載した内容に基づいて、学術的独自性、創造性、実行可能性、研究目的の明確さ等を評価する。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf
上の文書では、わざわざ「実績だけで判断するのではなく、」とくぎを刺していますが、自分が知り合いに訊いて回った限り、年配の審査委員経験者は「業績が無いと‥」という人もいますが、年齢が若い研究者ほど「業績はあまり気にしない」と言っているような気がします。
評定要素以外の要素(審査区分、所属機関、年齢など)で採否を判断してはいけない。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf
ネットの匿名掲示板などで、東大、京大を始めとする有力大学のラボの方が科研費は通りやすいといった悲観的な地方大学・私立大学の研究者の書き込みを見たことがありますが、「所属機関で採否を判断してはいけない」と注意書きがありますので、それはないと思います。有力ラボが科研費に採択されやすい理由は、彼らは先輩研究者らがみな科研費の採択経験が豊富なので、研究計画調書の書き方に関するノウハウが蓄積されていてそれが新人の研究者にも伝わっているからなんじゃないかと勝手に想像しています。もしくは、優秀な人たちしか入れないラボだからということかもしれません。
審査委員は研究計画調書を読んでそれぞれに、「総合評価」として4,3,2,1点のいずれかを付けます。その際、絶対評価ではなく相対評価でつけることになっています。自分が割り当てられた小調書の数の10%が4,20%が3,40%が2,30%が1となるように割り振らないといけません。4が最高点、1が最低点です。(下のnote.comの記事参照)
- 審査する側で科研費申請を考える 2024年8月3日 19:44 note.com
課題の意義の大きさ、研究計画の具体性、申請者の遂行能力と環境といった評点の項目ごとにも点数がつけられますが、こちらは絶対評価で4点満点です。面白いのは、それぞれの項目につけた点数と総合評価は必ずしも連動してなくていいという点です。
審査にあたり、高い総合評点を付す研究課題は、必ずしも、全ての個別要素において高
い評価を得た研究課題である必要はありません。研究分野の特性など、学術研究の多様性に配慮しつつ、幅広く重要な研究を見いだし、学
術研究が進展するよう、適切な評価を行ってください。https://www.jsps.go.jp/file/storage/grants/j-grantsinaid/01_seido/03_shinsa/data/h30/h30hyoutei03_ja_general.pdf
JSPSが定めた個別要素が必ずしもあらゆる研究分野にぴったりマッチするものでもないでしょうから、個別要素での評点と総合点はズレてもいいんですよということのようです。「研究分野の特性など、学術研究の多様性」があるので、臨機応変にお願いということなのでしょう。実際、自分は知り合いの研究者で不採択だった人で、各評点は採択者の平均を全て上回っていたのになぜか落ちたとぼやいていた例を知っています。そんなこともあるんだとビックリでした。まあかなり稀な例なのでしょうが。採択された人には審査結果は開示されないので、採択されたときの評点の分布というのは誰にも知り得ないことです。
基盤研究などは「二段階審査」方式がとられています。1次審査のときに申請書に対してコメントを記入する場所があり、2次審査では他人のコメントが読めます。
科研費の審査は「書面審査を行った審査委員」が、他の審査委員の審査意見等を参照し、自身の審査内容を再検討できる審査システムとなっています。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_g_1860/r6_siryou2.pdf
【1段階目の審査における審査意見の記入】
1段階目の審査においては、全ての研究課題の「審査意見」欄に、当該研究課題の長所と短所を中心とした審査意見を必ず記入してください。なお、2段階目の審査では審査意見を付す必要はありません。この審査意見は、2段階目の審査において新たな総合評点を付す際に、各審査委員が研究課題への理解をより深めるために、他の審査委員に提示します。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_01_03_shinsahyoutei_2024-1/r6hyoutei03_ja_wakate.pdf
聞いたところによれば、2次審査に回るのは1次審査の調書全部ではなく、一部だそうです。おそらくですが、ボーダーライン上のものや、審査委員によって意見が大きく割れたものなどが2次審査に回るのではないかと思います。その際、審査委員は他人のコメントが読めるので、考え直す機会があるということのようです。(下の公開資料参照)
〔2段階目の審査における総合評点〕
1段階目の書面審査の結果に基づき2段階目の審査対象となった各研究課題の採択について、上記(1)~(3)の評定要素に着目しつつ、同じ研究課題の審査をしている全ての審査委員が付した審査意見等も確認し、総合的な判断の上、下表右欄に基づき別途示される評点分布に従って4段階評価を行い、総合評点を付してください。
なお、2段階目の審査対象とする研究課題を設定するにあたっては、1段階目の書面審査の結果における順位が採択予定件数付近にある研究課題のほか、一部の審査委員が極端に低い評点を付した研究課題についても考慮しています。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_01_03_shinsahyoutei_2024-1/r6hyoutei03_ja_wakate.pdf
審査委員にはコメントを書く手間があるというのは結構重要なポイントだと自分は思っています。何回読み返しても何が書かれていたのかが理解しにくい研究計画調書は、コメントが書きにくいわけで、印象を大きく下げることでしょう。研究目的、長所、短所が書きやすい申請書に仕上げるという意識も大事だと思います。研究目的や研究方法が一言で完結に表現できるほうが、コメントは書きやすいはず。審査委員がコメントを書くのに困って考えこむような申請書では採択はおぼつかないでしょう。
ちなみにコメントは200字程度(300字が上限)らしいです。
研究課題の長所や短所など) をシステム上の『審査意見』欄に200字程度で記入してください(システム上の. 『審査意見』欄は、最大300字まで入力が可能です)。
令 和 4 ( 2 0 2 2 ) 年 度 科 学 研 究 費 助 成 事 業 基盤研究( … (グーグル検索結果)