研究医への道:研究医を養成する制度・大学入試に受験制度がある大学

研究医養成に関しては、過去に国を挙げての助成事業もあったようです。

  1. 基礎研究医養成活性化プログラム(令和3年度選定)文部科学省 申請件数:6件、選定件数:2件
    1. 金沢大学 秋田大学、金沢医科大学 医歯工法連携による次代の法医学者およ び地域関連人材の養成
    2. 滋賀医科大学 京都府立医科大学,大阪医 科薬科大学 地域で活躍するForensic Generalist, Specialistの育成
  2. 基礎研究医養成活性化プログラム(平成29年度選定)文部科学省 申請件数:20件 選定件数5件【国立4件、公立1件】
    1. 筑波大学 自治医科大学、獨協医科大学 病理専門医資格を担保した基礎研究医育成
    2. 千葉大学 群馬大学、山梨大学 病理・法医学教育イノベーションハブの構築
    3. 東京大学 福島県立医科大学、順天堂大学 福島関東病理法医連携プログラム「つなぐ」
    4. 名古屋大学 名古屋市立大学、岐阜大学、三重大学、浜松医 科大学、愛知医科大学 人体を統合的に理解できる基礎研究医の養成
    5. 横浜市立大学 琉球大学、北里大学、龍谷大学 実践力と研究力を備えた法医学者育成事業

 

国からの助成はともかくとして、研究医養成コースを用意している大学がいくつか目につきますが、なかでも神戸大学の学部を一度休学して大学院に入るというシステムにはぶったまげました。苦心の策というか、こんなことやっていいのか?とう驚きもあります。

神戸大学医学部 基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム

MD-PhD コース 4年次か5年次で医学部医学科を一旦休学して、飛び入学で大学院博士課程へ進み、若い時期での学位取得を可能にします。 早期に研究を開始し、医学医療の急速な進歩や社会的要請に対応できる医学研究者を育成することを目的としたコースです。

基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム 真のクリニシャン・サイエンティストを目指せ! https://www.med.kobe-u.ac.jp/kiso/index.html

  1. 基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム 真のクリニシャン・サイエンティストを目指せ! 55ページPDF
  2. 2023年 神戸大学リトリート~基礎・臨床融合による基礎医学研究医の養成プログラム研修会~
  3. 「基礎・臨床を両輪とした医学教育改革によるグローバルな医師養成」事業結果報告書 (PDF) 仮説を立て論理的に実証する科学的思考法を修得させる研究教育を取り入れている

順天堂大学 医学部 研究医特別選抜

2025年入試 定員2名(増員予定)

募集要項 https://www.juntendo.ac.jp/assets/2025_JuntendoMed_NyugakuShikenYoukou_Ippan.pdf

慶應義塾大学 医学部 研究医養成プログラム(MD-PhDコース)

医学部医学科6年+大学院医学研究科博士課程3年の合計9年間のプログラムになっています。医学部医学科第3学年より、学部の講義・実習に加え、大学院医学研究科博士課程講義を受講し、第3学年9月から第4学年7月にかけて研究室に配属され、研究をおこないます。医学部卒業と同時に、大学院に入学し、3年間で学位取得します。https://www.med.keio.ac.jp/education/md-phd/index.html

研究医の必要性・研究医に進む医師の割合

東大医学部の場合、研究者の道に進む医師の割合は、近年では1986年がピークで、約100人の卒業生のうち約2割という状況。ところが、その後は減少し、私が医学部長に就任した2007年度前後には年に1、2人にとどまっていました。

研究医不足は10年後、20年後の日本の医療にとって危機

米国には、MSTP(Medical Scientist Training Program)という、NIHと各大学が半分ずつ資金を出し合い、協力して研究医を育成するプログラムがあります。

教員は医学生にとって一番近い存在。「研究は面白い」という姿を見せ、いい成果を出す。研究の魅力を伝えることが大切です。

研究医がいなくなれば、大学の基礎医学教育が崩壊するだけでなく、医薬品や医療機器の産業にも影響が及ぶことは目に見えています。

https://www.m3.com/news/open/iryoishin/663312

研究医という生き方と医学部の学生の心理

  • 医学部に入学した学生のほとんどが臨床医を志して入学
  • 基礎医学の重要性を聞いてはいても、その実態は知らず、自分とは縁遠いものと捉えている。
  • 研究志向の学生であっても基礎研究者の道を選べば、比較的早い段階で実質的に臨床医の道が閉ざされてしまうと考え、将来に不安を感じるため取り敢えず臨床医の道を選び、そして研究もしようと考える
  • 神戸大学では多くの研究志向の学生は臨床に進み研究を行っている。
  • 本医学研究科の基礎系教員の中には、一度は臨床医の道に進み、研究も続けているうちに研究への魅力を感じ、基礎研究者への道に進路変更した人も少なからずいる。

国立大学医学部長会議 全国の医学部における研究医養成の取り組み *第19回*  (H25.9.19UP) 神戸大学における基礎医学研究医養成の取組み 文責:神戸大学医学部医学部医学科長  https://www.chnmsj.jp/kenkyuui_torikumi19.html

フィジシャンサイエンティスト(研究医)という生き方について

豊原 臨床と基礎研究の両方に携わっていると,近年は基礎研究の知見が迅速に臨床応用されていることを実感できます。臨床と基礎研究それぞれの経験を他方に生かせれば,双方がより興味深く感じられモチベーションが高まります。ベッドサイドとベンチサイドの双方をつなげることがフィジシャンサイエンティストの理想の姿です。

豊原 関係が見えなかった点と点がいつの間にかつながって,異なる臓器や異なる分野,そして予想だにしない全く別の発見につながることも基礎研究の大きな魅力です。また,フィジシャんサイエンティストとしての人生も「万事塞翁が馬」です。その時々それぞれの場所で,幅広い視野を持ちながら興味のあることに一生懸命取り組んでいるとひらけてくる世界があると思います。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2021/3435_01

臨床研修の必修化が医学部での基礎研究与えた影響について

  • 臨床研修の必修化によって、基礎医学に進む人材が激減している。
  • 1クラス100名の卒業生の中で、卒後すぐに研究をめざす者は多くて1?2名で、0名という医学部も少なくないのではないか。
  • 大学の講座の約半数は基礎医学なのに、これほど少ない人材でどのように研究を賄ってきたかというと、それは臨床医学からの供給に頼っていた
  • 多くの研修医は症例の豊富な大学外の市中病院での研修を希望し、大学からは若手が姿を消して、臨床講座ですら深刻な労働力不足に陥り、そのツケは末端である基礎講座に押し寄せ、基礎講座には大学院生は来なくなった
  • 毎年数名の新入生のうち、おおよそ半数は医学部出身者だったのが、研修必修化が始まってから2年間はひとりも医学部から大学院生が来ない

https://nakayama-lab.org/message/message3/m02/

臨床研修の必修化が医学部教育に与える影響について

(医学部教育で身につくもの)

医学部で受ける教育というのは並大抵のものではない。まず解剖学(=正常構造)や生理学(=正常機能)を習い、その異常としての病理学(=異常構造)や臨床医学(=異常機能)を習う。つまり人間というひとつの生物に関して、構造・機能についての正常・異常をありとあらゆる角度から6年間にわたって徹底的に叩き込まれる。その結果、人間という生物に対して「個体レベルでの理解」が感覚的に芽生えてくる。これは他学部の人には絶対にない感覚で、それを独学で学ぶことはまず不可能であるし、私は医学部を出ていないのにこの感覚を身につけている人に出会ったことがない。それは医学部6年間で得る知識の量が膨大なだけでなく、実際に解剖を行ったり、患者を診察したりしなければわかならないことばかりだからである。

  • このまま現在の状況がつづけば、基礎医学研究の世界から医学部出身者は払底する。当然、非医学部出身者が医学部の基礎講座の教官ポストを埋めることになるだろう。つまり医学教育を受けたことのない人たちによって医学教育が行われるようになる。
  • 医学教育を受けたことのない教官だけが明日の医学を担う若者の教育を行うことに対しては、以下の理由によって反対である。
  • 医学教育は6年かかり、他学部にくらべれば2年のまわり道ではあるが、この「人間個体レベルの理解」は、ライフサイエンスを行っていくうえで絶大な力を発揮する。それは当然医学教育に対しても同様である。

https://nakayama-lab.org/message/message3/m02/

医師の働き方改革が医学部での基礎研究に与える影響について

【豊田氏】総診療負担は変わらないと仮定しまして働き方改革をした場合,私が心配するのは,今,診療を中心にエフォートしている人材と,研究と診療と両方やっている人材があるわけですよね。診療を担っている人材が働き方改革で診療エフォートを縮小した場合にその余分の負担は誰がカバーするかということになるわけですが,研究と診療の両方を一生懸命やっている人たちがカバーしないといけないとなると,研究者の研究エフォートが減っちゃうわけです。私も若い頃は,毎日,午前様でやっていました。昼間は教育と診療をやりまして,夜に研究をやるわけですけど,毎日,午前様でやってきたわけですが,そういう研究と診療の両方をやっている先生方についても,そんなに夜遅くまでいるなということになりますと,さらに研究エフォートが減ると。そうしますと,働き方改革で臨床医学の研究力がかなり減る懸念があるんじゃないかなと,私自身は思っているわけです。これは何とか防がないといけない。

今後の今後の医学教育の在り方に関する検討会(第6回)議事録1.日時令和6年1月24日(水曜日)今後の医学教育の在り方に関する検討会(第6回)議事録1.日時令和6年1月24日(水曜日)16時00分 https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/124/gijiroku/mext_00003.html