血清療法は今でも使われているの?

論文 「動物におけるジフテリアと破傷風の血清療法について」1890年エミール・フォン・ベーリング(1901年ノーベル生理学医学賞)、北里柴三郎 von Behring E, Kitasato S. Ueber das Zustandekommender Diphtherie-Immunität und der Tetanus-Immunitätbei Thieren. Deutsche Medicininischen ochenschrift1890;49:1113-4.

血清療法とは、人工的に作られたポリクローナル抗体(ヒト、他の動物)を含む血清(抗毒素・抗血清とも呼ばれる)を投与して治療すること

当時、ドイツでは「破傷風菌の純粋培養は不可能である」というのが定説だったのです。北里はちょっとしたことをヒントに、破傷風菌が酸素を嫌う「嫌気性菌」であることを見抜いたのでした。さっそく北里は酸素を排除できる細菌培養装置を自作し、ついに1889年、破傷風菌の純粋培養に成功 https://www.serum-therapy.com/about/

  1. Remembering Emil von Behring: from Tetanus Treatment to Antibody Cooperation with Phagocytes Stefan H E Kaufmann 1, mBio. 2017 Feb 28;8(1):e00117-17. doi: 10.1128/mBio.00117-17 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5347343/
  2. Emil von Behring: translational medicine at the dawn of immunology Stefan H. E. Kaufmann (2017) https://cursos.peledigital.com/wp-content/uploads/2021/01/Emil-von-Behring-translational-medicine-at-the-dawn-of-immunology.pdf Emil von Behring (1854–1917) discovered passive immunization as an effective treatment for diphtheria and tetanus. Moreover, he brought this discovery from bench to bedside, and his serum therapy markedly reduced deaths from diphtheria — the ‘strangling angel of children’ — which at the time was feared as the deadliest disease of infants. Thus, together with Paul Ehrlich (1854–1915) and Elie Metchnikoff (1845–1916), he is considered one of the founders of immunology. With the subsequent introduction of vaccines and antibiotics, serum therapy left the limelight. However, the emergence of new pathogens with pandemic potential and antibiotic resistance has rekindled interest in serum therapy using tailormade monoclonal antibodies.
  3. A centennial review; the 1890 tetanus antitoxin paper of von Behring and Kitasato and the related developments S S Kantha 1 Affiliations  Keio J Med . 1991 Mar;40(1):35-9.  10.2302/kjm.40.35. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kjm1952/40/1/40_1_35/_article

 

血清療法は今でも使われているの?

血清療法は現在でも特定の状況で使用されていますが、現代の医療では抗生物質やワクチンの普及により、その使用範囲は大きく制限されています。以下に、血清療法の現代での役割をまとめます。


1. 現在の血清療法の使用例

血清療法は、特定の毒素や病原体に対して即効性のある治療が必要な場合に利用されます。

ジフテリア

  • ジフテリア抗毒素(diphtheria antitoxin)は、現在もジフテリア患者に対して使用されることがあります。抗毒素は、病原体が分泌する毒素(ジフテリア毒素)を中和するために使用されます。
  • ただし、ワクチン(DPTワクチン)の普及により、ジフテリア自体の発生が非常に稀になり、抗毒素の使用は限定的です。

破傷風

  • 破傷風抗毒素(tetanus antitoxin)は、ワクチン未接種者が破傷風に罹患した場合や、予防的に使用されることがあります。

蛇毒や毒素中毒

  • 蛇毒抗毒素(antivenom)は、毒蛇に噛まれた際の治療に使われます。毒素を迅速に中和するため、血清療法が現在でも重要な治療手段です。

ウイルス感染症

  • 一部のウイルス感染症では、回復者血漿療法(recovered plasma therapy)が使用されます。
    • 例: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やエボラ出血熱において、一時的に回復者血漿が治療法として試みられました。
    • これは厳密には血清療法ではありませんが、抗体の利用という点で類似しています。

2. 血清療法が減少した理由

血清療法は過去に多くの病気で利用されていましたが、次の理由から使用頻度が減っています。

  1. 抗生物質の普及
    • 細菌感染症の治療には抗生物質がより効果的かつ安全です。
  2. ワクチンの開発
    • ジフテリアや破傷風など、多くの感染症はワクチンで予防可能になりました。
  3. 血清療法のリスク
    • 異種由来(例: 馬由来)の血清を使用する場合、アナフィラキシーや血清病(免疫反応による副作用)のリスクがあります。
    • ヒト由来血清療法では供給の難しさやコストの問題があります。
  4. モノクローナル抗体の台頭
    • 近年ではモノクローナル抗体(遺伝子組換え技術で作られる特異的抗体)が登場し、より安全で効率的な治療が可能になりました。

3. 血清療法の現代医学における位置づけ

血清療法は、次のような状況で依然として重要です:

  • 希少疾患や緊急事態: 毒蛇咬傷やジフテリアなどの緊急治療。
  • 新興感染症: ワクチンや他の治療法が利用できない場合の抗体療法。

血清療法の発展は現代医学の礎を築いたものであり、現在でも補完的な治療法として活用されています。ただし、現代の医療では他の治療法に取って代わられている分野が多いのが実情です。

(ChatGPT)