蛋白質を構成するアミノ酸は20個あります。丸暗記するのはきついですが、構造が似ているものを分類しながら覚えれば、なんとか覚えられそうです。
1番簡単な構造のグリシンとアラニン
一番簡単な構造のアミノ酸1つ:グリシン
側鎖はH- なので、20個のアミノ酸の中で唯一α炭素が不斉炭素ではありません。
炭素の鎖のみからなるアミノ酸4つ:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン
アラニンは、側鎖がメチル基のみ CH3-。グリシンの次に簡単な構造と言えます。
分枝(ぶんし)鎖アミノ酸3つ
分枝(ぶんし)鎖アミノ酸(Branched Chain Amino Acids; BCAA)は、サプリなどでBCAAとしてお馴染みだと思います。アラニンの先にメチル基が2つついて枝分かれした構造なのが、バリン (CH3)2-CH2-
バリンより一つ分、炭素の主骨格が長いのがロイシン。(CH3)2-CH2-CH2-
ロイシンの枝分かれしたメチル基がひとつ根元側にずれたのがイソロイシン。
CH3-CH2(-CH3)-CH2-
これで6個覚えられました。
*自分はうっかり間違えて、Branchedの「分枝」を「分岐」と書き間違えて「ぶんき」と呼んでいたことに最近気づきました。「分枝」は「ぶんし」で、「ぶんき」は「分岐」ですね。日本語はややこしい。
硫黄を含むアミノ酸2つ
つぎに、硫黄を含む2つを覚えましょう。
HS-C- の構造をもつのがシステイン。HS-CH2-
ちょっとかわっていて炭素と炭素の間に硫黄が挟まれて、
H3C-S-CH2-CH2- の構造をもつメチオニン。
水酸基を含むアミノ酸2つ
つぎは、水酸基をもつアミノ酸を覚えましょう。ベンゼン環に水酸基がついたチロシンはあとまわし。
アラニンの先端に水酸基がついた HO-CH2- を側鎖にもつのがセリン
炭素2個からなる骨格の内側のほうに水酸基がついた H3C-CH(-OH)- が スレオニン
さて、いよいよ、酸性アミノ酸と塩基性アミノ酸を覚えましょう。
酸性アミノ酸2つ
酸性になる理由はカルボキシ基を持つからです。アラニンの先にカルボキシ基がついたらアスパラギン酸(英語だとaspartate)。HOOC-CH2-
炭素の鎖が一つ分ながいのがグルタミン酸。HOOC-CH2-CH2-
酸性アミノ酸がアミドになった 2つ
カルボキシ基のOHがH2N-とおきかわってアミドになったもののうち、アスパラギン酸に対応するのが、アスパラギン。2HN-C(=O)-CH2-
グルタミン酸に対応するのが、グルタミン。2HN-C(=O)-CH2-CH2-
塩基性アミノ酸2つ
塩基性、いきます。炭素4つの鎖の先にアミノ基がついてイオン化しているのが
H3N(+)-CH2-CH2-CH2-CH2- リジン。炭素4つの鎖。
側鎖の先のほうから考えた場合、先端の炭素に2つのアミノ基がついて、窒素を介したあと炭素が3つつながる主骨格の構造を持つのが、アルギニン。
H2N-C(=NH2 +) -NH- CH2-CH2-CH2- これも間にNが入っていますが、炭素の数は4つ。
ベンゼン環をもつアミノ酸2つ
さて次にベンゼン環をもつ2つを覚えます。
アラニンの先端にフェニル基がついた、そのまんまの名前のフェニルアラニン
フェニルアラニンのパラの位置に水酸基がついた、チロシン。さきほど水酸基をもつアミノ酸として、セリンとスレオニンを覚えましたが、チロシンにも水酸基があります。ただし、覚える都合上ベンゼン環をもつ2つとして覚えておくほうが覚えやすいと思います。
これで17個覚えました。残り3つは、環状構造を持ったアミノ酸です。
他の環の構造を持つアミノ酸3つ
イミダゾール(五員環で、Nが2つ)と炭素がつながったものを側鎖にもつのが、ヒスチジン。
インドール(六員環と五員環が複合した構造で五員環の角のひとつが窒素)と炭素を側鎖にもつのがトリプトファン。
さて20個目が、プロリンです。プロリンは構造が、ほかと比べると異質です。なにしろアミノ酸の共通要素であるαアミノ基が、側鎖と合体して環状構造を作ってしまっているのです。α炭素もその環状構造の一部になっています。
以上20個のアミノ酸でした。
ヒスチジン(イミダゾール)とトリプトファン(インドール)は少し覚えにくいので、何回も構造を紙に書き出してみる必要があります。窒素が入った環構造の化合物は一気に覚えたほうが、苦手意識が払しょくできます。
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窒素を含む有機化合物、生体に重要な化合物の構造を全部、丸暗記する方法
あとは、比較的覚えやすいと思います。視覚的に形で覚えることプラス、構造を要素(官能基)にわけて、どんな要素(官能基)からなるかを覚えること。その際、酸性、塩基性などの性質も併せると頭の中で整理しやすいと思います。
必須アミノ酸
20個のアミノ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、グルタミンサン、アスパラギン、グルタミン、リジン、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、プロリンの内、必須アミノ酸は、9個あり、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、スレオニン、リジン、フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファンです。乳幼児の場合はこれらに加えてアルギニンも必須アミノ酸になります。
必須アミノ酸9個の覚え方ですが、構造を先に覚えていれば、
炭素の分岐を持つアミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン
二重結合を含む環を持つアミノ酸、ただしチロシンはフェニルアラニンを水酸化すればいいので除外:フェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン
塩基性アミノ酸ただしアルギニンは乳幼児のみ:リジン、(アルギニン)
残り一つがメチオニンです。
炭素の枝分かれだったり、二重結合を含む環だったり、ぱっと見複雑な構造を持つものというイメージでいいのではないでしょうか。それプラス、塩基性アミノ酸、そして、メチオニンと。
なお、上の構造式の図はケムスケッチ(Chem-Sketch)を利用しました(デフォルトで用意されているアミノ酸の構造式そのままです)。折れ線の角の点や分岐の中心の点は、炭素およびそれに結合した水素が省略されています。つまり折れ線の角の点は、-CH2- の意味です。分岐の場合(他の官能基が付いている場合)は、もちろん、炭素の手の合計が4本になるように水素の数がかわります。折れ線の端のメチル基CH3- は、省略してしまう描き方もありますが、ここではわかりやすさのためにあえて描いているようです。
また、アミノ酸のカルボキシ基やアミノ基は、生理的な条件下では電離していると思いますが、ここでは電離していない状態の構造が描かれています。
参考資料
- Chem-Sketch(構造式を描画するソフトウェア)
- Bruice Organic Chemistry