T細胞の疲弊(T cell exhaustion):細胞も疲れるの?

最近、疲弊T細胞という言葉を聞きます。T細胞も疲れちゃったりするのでしょうか。

T細胞の疲弊とは

下の説明が、概念的にも具体的にも一番わかりやすい。

「T細胞」は「がん組織」に潜り込み、そこで刺激を受けて活性化します。しかし、刺激を受けるのは一度だけではなく、何度となく刺激を受けることになります。そして刺激を受けているうちに、「T細胞」の機能が低下してくることが知られています。これを「免疫疲弊」と呼び、一度この状態に陥ると自力での回復が難しいと言われています。 具体的には、「がん」を攻撃して殺すTNF-αやIFN-γを産生する能力や「T細胞」の増殖および活性化を行うインターロイキン-2(IL-2)の産生能力が低下していることが報告されています。 「免疫疲弊」を起こした「T細胞」をよく観察してみると、ある物質が発現していることがわかりました。このある物質は「疲弊分子」と呼ばれ、「T細胞」を「疲弊」させる元凶となっています。実はこの「疲弊分子」の代表が、あの「免疫チェックポイント分子」なのです。刺激を受けるごとに「免疫チェックポイント分子」が発現し、PD-1であればPD-L1およびPD-L2に、CTLA-4であればCD80[B7-1]/ CD86にそれぞれ結合します。また、PD-1やCTLA-4の他にも、Tim-3LAG-3Nr4aという転写因子が「免疫疲弊」を引き起こすと言われています。そして「T細胞」の機能が段階的に低下し、アポトーシス(細胞死)へと導かれ、最終的には排除されてしまいます。(T細胞が疲れちゃう❓ 【がん微小環境内のT細胞】  Vol.39 がん免疫療法コラム 同仁がん免疫研究所)

  1. Tumor Immunity 腫瘍免疫の基礎知識(垣見の腫瘍免疫学) 免疫細胞治療学講座で実施している研究のベースとなる腫瘍免疫に関する基礎知識、考え方を概説します。 5.がんとの闘いを司令官として考えてみる
  2. CD8+ T Cell Exhaustion in Cancer Front. Immunol., 20 July 2021 T cell exhaustion is a blanket term covering all of the dysfunctional states that exist within antigen-specific CD8+ T lymphocytes as first described in the framework of chronic viral infection, where these cells persist but are unsuccessful in clearing a pathogenic threat.
  3. 抗原の長期的な曝露によって,T細胞上にPD-1CTLA-4TIM-3などさまざまな共抑制分子が誘導される結果,T細胞が機能不全状態に陥ること (疲弊 実験医学Online)
  4. 癌と化学療法 抗腫瘍T 細胞の疲弊プロファイルと免疫チェックポイント阻害剤反応性のかかわり 癌と化学療法 Volume 49, Issue 6, 609 – 614 (2022)
  5. 実験医学 2020年12月号 Vol.38 No.19 イムノメタボリズムとT細胞の疲弊・老化 免疫機能不全を克服する新たなターゲット T細胞機能不全をイムノメタボリズムから理解する
  6. T細胞疲弊は、多くの慢性感染やがんにおいて生じるT細胞の機能不全状態である。T細胞疲弊は、限定されたエフェクター機能抑制性受容体の持続的な発現、機能的なエフェクターT細胞や記憶T細胞とは異なる転写状態によって特徴付けられる。 免疫学:CD8 T細胞疲弊の調節 2019年7月11日 Nature 571, 7764
  7. CD8 T Cell Exhaustion During Chronic Viral Infection and Cancer Annual Review of Immunology Vol. 37:457-495 (Volume publication date April 2019) Early use of lymphocytic choriomeningitis virus (LCMV)-specific TCR transgenic CD8 T cells revealed exhaustion of the virus-specific CD8 T cell response through the physical deletion of these cells during chronic infection (3). The concept of a persisting yet functionally compromised CD8 T cell, however, was first revealed by Zajac et al. (4) and Gallimore et al. (5), who identified CD8 T cells responding to chronic LCMV infection that remained present and detectable by tetramer staining throughout infection but were unable to efficiently elaborate effector functions.
  8. Defining ‘T cell exhaustion’ Published: 30 September 2019
  9. 慢性ウイルス感染では、ウイルスや持続的な炎症による刺激の繰り返しが引き金となって、T細胞の“疲弊”が起こる。この過程では、そのウイルスに特異的なT細胞が次第に機能を失い、最終的には死んでしまう。(T細胞の疲弊 Nature Immunology 2013年5月6日)慢性感染を引き起こす系統のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を感染させたマウスから“疲弊した”T細胞を単離して、急性感染を引き起こす系統のLCMVを感染させたマウスに移植すると、このT細胞が増殖して効果的な免疫応答を引き起こす
  10. T 細胞の疲弊とは, 抗原の長期的な曝露による T 細胞抗原受容体 (TCR)レパートリーの狭小化TCR シグナル伝達 系 の 機 能 低 下,T 細胞膜上に programmed death 1(PD-1),cytotoxic T lymphocyte associated protein 4(CTLA-4),T cell immunoglobulin and mucin domain 3(TIM-3)などさまざまな共抑制分子が誘導される結果,IL-2 の産生障害活性化障害増殖障害をはじめとして,T 細胞が機能不全状態に陥ることである(T 細胞の疲弊とインターロイキン -15 ―高齢者敗血症の新たな治療戦略―)2007年

CAR-T療法とは

  1. CAR-T細胞療法(NOVARTIS)
  2. 近年、がん患者さんからT細胞を分離しがん細胞を攻撃できるように遺伝子を導入したT細胞(CAR-T)を、再び患者さんの体内に戻すCAR-T療法が次世代のがん免疫療法として注目されています。(KOMPAS)
  3. CAR-T療法は、がん患者の末梢血由来T細胞に体外でがんを認識する遺伝子CARを導入して増やし、がん細胞を攻撃できるようにしてから患者へ再び戻す治療法です。(疲弊したT細胞を若返らせ、強い抗腫瘍効果をもつT細胞の作製に成功―がん免疫療法における新規CAR-T療法の開発― AMED
  4. 代謝リプログラミングによるステムセルメモリーT 細胞の誘導とがん免疫療法への応⽤ 近藤泰介 慶應義塾大学医学部 微生物学免疫学教室 平成 30 年度 血液医学分野 若手研究者助成 研究成果報告書 【結 果】 我々はCAR-T細胞Notchリガンドを発現するフィーダー細胞と共培養することでiTSCM様のCAR-T細胞、CAR-iTSCM細胞 を誘導することに成功した。またCAR-iTSCM細胞の誘導にはミトコンドリアの代謝リプログラミングが重要であること特定した。 Notchシグナルはミトコンドリア新生および脂肪酸合成を誘導し、これらの特性はiTSCM細胞誘導過程で重要なイベントであっ た。さらに我々はNotchシグナルの下流因子であるFOXM1を同定し、FOXM1がこれらの代謝学的変化およびiTSCM細胞の誘 導に重要であることを見出した。Notchリガンドを発現するフィーダー細胞との共培養で作成されたCAR-iTSCM細胞と同様に FOXM1の強制発現でCAR-iTSCMと同等の細胞が得られ、これらのTSCM細胞様CAR-T細胞はヒト白血病モデルマウスにおい て強い抗腫瘍効果を示した4)。

T細胞の分化

  1. T細胞記憶とT細胞疲弊の分子メカニズム

T細胞の分化と代謝リプログラミング

After T-cell activation, naive CD8+ T cells differentiate into either effector T cells or memory T cells via transcriptional regulation, in a process supported by metabolic reprogramming to meet different energy demands. For instance, naive T cells in a state of metabolic quiescence use oxidative phosphorylation (OXPHOS) for energy production. After activation, naive T cells undergo a metabolic switch governed by the phosphatidylinositol-3-kinase–protein kinase B–mammalian target of rapamycin (PI3K–Akt–mTOR) pathway; this switch supports differentiation into effector T cells, which rely on aerobic glycolysis for their rapid expansion and effector functions.(Metabolic and epigenetic regulation of T-cell exhaustion 21 September 2020  Nature Metabolism

細胞性免疫

  1. 獲得免疫におけるT細胞の応答  Hemapedia 免疫基礎講座 T細胞の疲弊のメカニズム