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筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)の予後予測因子

ALSの予後は個人差が非常に大きく、予後予測ができればより個人個人に合った治療が選択できるであろうということで、予後予測因子を同定するための研究が盛んです。ALSの進行の度合いを評価するスコアとして、ALS機能評価尺度(ALSFRS‐R)が良く使われます。

ALSの予後予測マーカーに関するレビュー論文

  1. Are Circulating Cytokines Reliable Biomarkers for Amyotrophic Lateral Sclerosis? Int. J. Mol. Sci. 2019, 20(11), 2759; https://doi.org/10.3390/ijms20112759 Interleukins comprise of a large family of cytokines that can exert both pro-inflammatory and anti-inflammatory actions. They are mainly synthesized by T cells, macrophages and endothelial cells promoting the development and differentiation of T and B cells, and hematopoietic cells. Numerous interleukins have been found elevated in CSF and/or blood from ALS patients compared to the levels measured in controls and/or patients with other non-inflammatory neurological disorders (OND): IL-1Ra, IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-10, IL-12p70, IL-13, IL-15, IL-17, IL-17A, IL-18 and IL-21.
  2. Fluid-Based Biomarkers for Amyotrophic Lateral Sclerosis Lucas T. Vu & Robert Bowser Neurotherapeutics volume 14, pages119–134(2017) Published: 08 December 2016

ALSのバイオマーカー、予後予測因子に関する論文

  1. Longitudinal biomarkers in amyotrophic lateral sclerosis 09 June 2020 https://doi.org/10.1002/acn3.51078 Annals of Clinical and Translational Neurology Volume7, Issue7 July 2020 Pages 1103-1116
  2. Peripheral proinflammatory Th1/Th17 immune cell shift is linked to disease severity in amyotrophic lateral sclerosis. Sci Rep. 2020; 10: 5941. Published online 2020 Apr 3. doi: 10.1038/s41598-020-62756-8
  3. Interleukin 6 (IL6) level is a biomarker for functional disease progression within IL6R358Ala variant groups in amyotrophic lateral sclerosis patients Marlena Wosiski-Kuhn,James B. Caress,Michael S. Cartwright,Gregory A. Hawkins &Carol Milligan Received 22 Feb 2020, Accepted 18 Aug 2020, Published online: 14 Sep 2020 Amyotrophic Lateral Sclerosis and Frontotemporal Degeneration 
  4. Development and validation of a 1-year survival prognosis estimation model for Amyotrophic Lateral Sclerosis using manifold learning algorithm UMAP Vincent Grollemund, Gaétan Le Chat, Marie-Sonia Secchi-Buhour, François Delbot, Jean-François Pradat-Peyre, Peter Bede & Pierre-François Pradat Scientific Reports volume 10, Article number: 13378 (2020)
  5. Does including machine learning predictions in ALS clinical trial analysis improve statistical power? Nina Zhou Paul Manser First published: 30 August 2020 ANNALS of Clinical and Translational Neurology The three candidate models were RF, super learner (SL), and a linear mixed effects model with random intercepts (LME).
  6. Model-Based and Model-Free Techniques for Amyotrophic Lateral Sclerosis Diagnostic Prediction and Patient Clustering.  Neuroinformatics, 01 Jul 2019, 17(3):407-421
  7. Prognosis for patients with amyotrophic lateral sclerosis: development and validation of a personalised prediction model. VOLUME 17, ISSUE 5, P423-433, MAY 01, 2018 THE LANCET Neurology (本文は有料)a repository copy
  8. Serum C-Reactive Protein as a Prognostic Biomarker in Amyotrophic Lateral Sclerosis  JAMA Neurol. 2017;74(6):660-667.
  9. JaCALS ALS の進行,予後規定因子 臨床神経 2011;51:903-905 発症から各エンドポイントまでの期間に影響する因子として,性別,発症年齢,病型,入院治療を要する外傷歴の有無, 全身麻酔を要する手術歴の有無,喫煙歴の有無,改訂版 El Escorial 診断基準適合度を候補として,単変量解析(Log-rank test)でスクリーニングをおこない,p 値が 0.05 を下回った因 子について Cox 比例ハザードモデルをもちいた多変量解析 をおこなった.

ALSFRS-R

  1. 筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール改訂版 (ALSFRS-R:ALS Functional Rating Scale-Revised
  2. ALSFRS-R

ALSの予後予測因子

  1. 病型,病態,病因,経過(予後) 神経内科Clinical Questions & Pearls 運動ニューロン疾患 鈴木則宏  シリーズ監修 / 青木正志  編集 http://chugaiigaku.jp/ 発症部位に規定される病型が経過,予後に影響することは数多くのコホートスタディによって示されている. … 発症年齢は進行・予後を左右する因子

参考記事

  1. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリテーション治療 Jpn J Rehabil Med 2018;55:539-544

腎臓の移植(腎移植)の実際

腎臓の移植というのは、言葉としてはよく耳にしますが、実際のところどうするのかは知りませんでした。自分はてっきりもとの腎臓と他人から頂いた腎臓とを交換するのだと思っていましたが、そうではないそうです。移植する腎臓は腹腔内に入れて、もともと持っていた腎臓はそのままにするのだそうです。そもそも機能していなかたわけで、自然に退縮するのだそう。

心臓移植ならおそらく「交換」するのでしょうから、腎臓移植もてっきり同様だろうと勝手に思い込んでいました。

ドナーから摘出した腎臓を、多くの場合、右下の下腹部に移植します。手術は全身麻酔で行います。自分の元の腎臓は、ほとんどの場合はそのまま残します。(腎移植手術はどのような手術ですか?

臨床研究のデザイン

基礎研究で動物を用いた実験を行うのであれば、対照群と実験群とを無作為に割り付けて薬剤投与などを行うのが一般的で、臨床研究でいう「介入」実験がほとんどです。ですから、わざわざ研究のデザインを考えることはあまりないと思います。しかし臨床研究の場合には、さまざまな制約から無作為な割り付けというものがそもそも不可能なことも多く、介入実験ではなく、観察研究というものもよくあるため、基礎系の実験デザインよりもずっと多くのバリエーションがあります。

血中薬物濃度-時間曲線下面積(AUC)とは?

AUCは体循環血液中に入った薬物量比例します。(薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC) 治験ナビ)

Area Under the Curve One of the most important pharmacokinetic parameters is the area under the drug concentration versus time curve within the dosing interval (AUC) because AUC relates dose to exposure. Because the dosing interval is typically once daily or every 24 h on safety studies, the reported AUC is typically AUC0–24 h. AUC is the quantitative measure of the apparent amount of compound at the site from which samples were collected and concentrations measured, which in most cases is the systemic circulation. When sampling occurs from the systemic circulation, it is often an indication of systemic exposure. The simplest method for calculating AUC is the linear trapezoidal rule (Gibaldi and Perrier 1982). (sciencedirect.com)

鑑別診断をあげる

「鑑別診断をあげる」という言葉を聞いたのですが、一体これはどういう意味でしょうか?

⑥ 鑑別診断を挙げるコツ 音声(YOUTUBE)

このようにして鑑別診断(differential diagnosis)をあげるには,知識をillness scriptの形で利用できること,そしてproblem representationを提示できることが前提になる.(鑑別診断のあげ方

同時に鑑別診断も挙げさせよう。突拍子もない鑑別診断を挙げるようならよくわかっていない証拠。反対に稀だけど見逃してはいけない鑑別診断をきちんと挙げさせるのも大事。(第1回 忙しいERで教育なんてできる?

その難しさには,① まだ指 導医自身がうまく鑑別診断を挙げることができないと感じている場合と② 後輩がちゃんと所見や検査データを チェックしていながら次の診断治療過程に反映できていないことについて何を指摘すればよいのかわからない場合, の2種類があると思われます。(誰も教えてくれなかった診断学

病歴を取り、身体診察をして、目の前の患者さんが鑑別診断にあがった疾患(=疑った疾患)を持っている確率がどの程度か、見積もってみる。(鑑別診断なしの検査に待った【実名臨床道場】診断に結び付く検査値の読み方を野口善令氏が伝授実名臨床道場事務局2014年2月19日)

排泄とは

日本語の日常的な言葉としての「排泄」は、おしっこをする、うんちをするで、排せつ物を体外に出すことだと思いますが、医学用語としては、腎臓において老廃物などを尿中に排出することも「排泄」と呼ぶようです。知りませんでした。

薬の排泄とは、体から薬が除去されることです。すべての薬は最終的に体から排泄されます。化学的に変化(代謝)してから排泄されることもあれば、そのまま排泄されることもあります。大半の薬、特に水溶性の薬とその代謝物は、主として腎臓から尿中に排泄されます。

尿中への薬の排泄 薬のある特性など、薬を排泄する腎臓の能力に影響を及ぼす要因がいくつかあります。薬や代謝物が尿中に十分に排泄されるためには、水溶性でかつ血液中のタンパク質にあまり強く結合しないものである必要があります。(MSDマニュアル家庭版

体から除去されることが排泄だが、尿中に出ることも、まだその尿が体の中にあるのにもかかわらず、排泄というようですね。

グリオーマ幹細胞とは

そもそもがん幹細胞とは何でしょうか?

がん幹細胞

がん幹細胞の概念はもともと「移植腫瘍を形成するためには一個の腫瘍細胞の移植では不十分で、必ず多数の腫瘍細胞を移植する必要がある」という古くから知られた事実を説明するために生まれてきた概念である。(脳外誌24巻6号2015年6月 jstage.jst.go.jp

がん幹細胞というのは、最初は概念だったんですね。実体が明かになる前に、まず概念が確立しその実体を追い求めて研究が進むというのは科学研究の世界ではよくあることです。

透析とは

 

透析とは

透析とは、働かなくなった腎臓の代わりにする治療(血液透析)(血液透析について)のこと。

ドライウェイト(DW)とは

透析終了時の目標体重をドライウェイト(DW)として設定します。 透析を始めるまで、特に腎機能が正常なときは、体重の増減は、「太ったか、痩せたか」によって自然に決まっていましたが、透析を始めると、透析ごとに機械的にDWで終了するので、「太ったか、痩せたか」がわかりません。そこで、約1ヶ月ごとに適正なDWを、むくみや血圧、心胸比(心臓と胸郭との比;CTR)などを参考にして決める必要があります。(血液透析における注意点(特に自己管理について) 腎臓内科 東京女子医科大病院)

ドライウェイト(DW)とは? DWは、1967年Thomsonにより提唱されたもので、「臨床的に浮腫などがなく、透析によって最大限体液量を減少させた(除水した)時の体重で、それ以上、除水すれば、血圧低下やショックが必ず起きるような体重」とされました。しかし、現在のDWの考え方はそこまで厳しいものではなく、日本透析医学会のガイドラインでは、「体液量が適正であり、透析中の過度な血圧低下をおこすことなく、且つ、長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。(ドライウェイトのお話(2) 横浜第一病院 院長 大山 邦雄 よくわかる透析の基礎知識)

ドライウェイトの概念 患者の血圧・心胸比・HANP・BNP・ECF生理検査・自覚症状を元に決定するがこれは絶対的なものでは無い!!適正なDWの設定が安定透析の条件だが現在まで絶対的な指標が存在しない DRやスタッフの経験から推定される事もある (どうしてる? ドライウェイトの設定 大垣徳洲会病院 透析室 久富 俊宏)

除水・除水量とは

毎回の透析ごとに透析前体重を測り、前回透析終了時のドライウェイトとの、すなわち増えた体重分を除水します。(じんラボ

透析の実際

腕の血管に血液を取る側(脱血)と返す側(返血)の2本の針を刺し、血管と透析機器をチューブでつなぎます。… 1回の血液透析にかかる時間はおよそ4〜5時間で、一般的に週3回行います。(透析のいろいろを知ろう ADPKD.JP)

 

腎臓の役割とは?尿をつくること、体液恒常性維持

腎臓の役割

腎臓の役割はいくつもあります。

  1. 老廃物を排泄
  2. 体の水分量を調節
  3. 血圧の調節
  4. 電解質(ミネラル)の恒常性の維持
  5. 血液pHの恒常性の維持(弱アルカリに保つ)
  6. 血液を産生するホルモン(エリスロポエチン)の分泌
  7. ビタミンDの活性化

参考

  1. https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/060/070/01.html

尿をつくること

腎動脈を通って血液が腎臓に流れ込み、腎臓で老廃物や余計な水分がろ過されて取り除かれ、綺麗になった血液が腎静脈を通って出ていく。腎臓は尿を作っている場所。老廃物は尿として体の外に排出される。つまり、腎臓の大事な仕事の一つは、血液から尿を作ること。

  1. 尿のつくられ方 (「尿」で知る腎臓の病気 [監修]東京女子医科大学 第四内科学 血液浄化療法科 教授 土谷 健(つちや けん)先生)血液をろ過して尿がつくられる 腎臓で尿を作っているのは、「ネフロン」という構造です。ネフロンは腎臓の最小単位の構造物であり、腎臓1個に約100万個あります。
  2. おしっこについて知っていますか(キッセイ) おしっこは、腎臓で血液から作られることを知っていますか?

腎臓の構造

糸球体glomerulusは,毛細血管の糸玉である。糸玉のまわりをボウマン嚢Bowman’s capsuleという袋が取り巻き,濾過された尿を受け止める。糸球体とボウマン嚢を合わせて,腎小体renal corpuscle(マルピギー小体)と呼ぶ。(初心者のための腎臓の構造 坂井建雄順天堂大学医学部解剖学第1)

糸球体という毛細血管の張りめぐらされた場所(糸球体とボーマンのう~腎臓のミクロな構造~ 本田内科クリニック 千葉県市川市市川)

  1. MSDマニュアル家庭版 腎臓 腎臓、ネフロン、遠位曲尿細管、ヘンレ係蹄、近位曲尿細管、糸球体、ボーマン嚢 などの構造や位置関係がわかる

再吸収とは

腎臓の生理学を勉強していると「再吸収」という言葉が当たり前のように使われています。しかし、当たり前すぎるのか、再吸収とは何かが案外説明抜きで使われていることが多いように思います。腎臓は血液中の成分を尿中へと排出するか、排出せずに保持するかを決めているわけですが、いったん排出したものを、その先で再び血液に戻す(再吸収)するという作業をしています。

再吸収とは・・・・・血液に戻すこと   分泌とは・・・・・・・尿中に捨てること (泌尿器のしくみと働き

1日におよそ150㍑の原尿から体に必要な電解質を99%再吸収し、残り約1%(1.5リットル)を尿として出し、からだの電解質の濃度を一定に保っています。(腎臓の働きと検査 広島大学)

尿細管で再吸収されるという図をよく見ますが、尿細管から体の内部に取り込まれる絵が描かれていて、どうして血液に入れるの?と疑問を持ったことがありました。

  1. 腎臓の構造的ヒエラルキー —機能を支えるプラットホーム—日腎会誌 2018;60(8):1224‒1228. 第 4 回腎臓セミナー・Nexus Japan プロシーディング シンポジウム:腎臓の構造と機能異常

いろいろな解説記事を読むと、尿細管のまわりには血管があって、血管に入っていくということですが、その部分が省略されて描かれていなかっただけのようです。

糸球体から出た細動脈性の輸出動脈近位尿細管および遠位尿細管纏わりつくように尿細管周囲毛細血管網を形成し,再び集まって細静脈となり,小葉間静脈に流入する.(生理学ものがたり第 12 回 浸透圧および溶液の移動 その 2 滋賀医大名誉教授 北里 宏)

  1. 腎臓の働き 東京女子医科大病院

体液とは

体液という日本語は日常用語としては、血液、リンパ液、精液、汗など様々なものを指す言葉だと思いますが、腎臓内科学で使われる体液という語句はどういう意味をあらわすのでしょうか?

体液(細胞外液と細胞内液)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/103/9/103_2074/_pdf

参考

  1. 腎臓による体液恒常性維持機構とその破綻 佐々木 成 日本内科学会雑誌 第103巻 第 9 号・平成26年 9 月10日

自然リンパ球とは

自然リンパ球とは

近年の研究から,生体,特に粘膜組織において,抗原受容体をもたないリンパ球が数多く存在することが明 らかとなり,粘膜バリア機能の維持や感染初期応答などの粘膜免疫におけるキープレーヤーとして注目されてい る.これらのリンパ球はリンパ球系共通前駆細胞(Common lymphoid progenitor; CLP)を起源とし,細胞質が 乏しいリンパ球様の形態をもつことから自然リンパ球 (Innate lymphoid cell; ILC)と命名された(1).今日ILC と呼ばれる細胞群は,1975年に発見されたウイルス感染細胞や腫瘍細胞に対する障害活性をもつNK(Natural Killer)細胞(2),1997年に発見されリンパ組織形成に重 要なLTi(Lymphoid Tissue inducer)細胞(3)やその近縁細胞(4, 5),2001年に報告されたIL-25依存的にTh2免疫応答を誘発する非T非B細胞(6)をはじめ2010年以降発見されたNH(Natural Helper)細胞(7)やNuocyte(8)な どを包含する概念である.現在,ILCは機能的な観点か ら1型,2型,3型に分類されている.さらに,「NK細胞はILCではあるが,細胞障害活性をもつという点で 1‒3型のILCとは区別される」との概念が定着してきた(9).一方,ILC同様に迅速な応答を起こすリンパ球としてインバリアント鎖をもつMAITiNKT細胞γδT 細胞,natural IgMを産生するB1細胞や脾臓辺縁帯に存在するMarginal Zone (MZ) B細胞が知られ,免疫初期 応答における重要性が報告されている.これら非典型的 T細胞,B細胞はILCとは別にinnate lymphocyteと呼 ばれることもあるが,日本語の自然リンパ球はILCなら びにinnate lymphocyte両方の概念を含んでおり,しば しば混乱を招く.本稿では自然リンパ球としてILCのみ を紹介し,innate lymphocyteは他稿を参照していただ きたい.(自然リンパ球(ILC: Innate Lymphoid Cell)の役割 澤 新一郎 化学と生物 Vol. 53, No. 2, 2015)

抗原特異的な受容体を発現し獲得免疫で働くT細胞、B細胞に対し、抗原受容体を持たず自然免疫で働くリンパ球をInnate lymphoid cells (ILC)と呼ぶことが定着してきた。3つのサブセットに分類されるILCの中でもILC2は、寄生虫感染やアレルギー性疾患で発現するIL-25IL-33によって活性化し、IL-5IL-13などの2型サイトカインを産生することで寄生虫感染に対して急速な防御反応を示し、一方でアレルギー症状を悪化させる原因細胞となることが明らかになっている。(2型自然リンパ球が関与する多様な疾患 学友会セミナー:2018年06月26日 東京大学医科学研究所)

抗原レセプター を持たないリンパ球にはNK細胞のほかに自然リンパ球(ILCs:innate lymphoid cells)がある。ILC1はインターフェロンγを,ILC2はIL-5,IL-13を,ILC3は IL-17ないしIL-22を産生して機能を果たす。(獲得免疫と自然免疫

 

自然リンパ球の発見

当時大学院生の茂呂和世さんが、腹腔の腸管膜辺りを観察したときに、これまでに報告のないリンパ球細胞の集積を見つけました。研究テーマを探していた彼女は、この集積を調べてみることにしました。細胞表面のマーカータンパク質を調べると、教科書に載っていない新しいタイプのリンパ球が含まれていたのです。最初は、リンパ球の前駆細胞未分化なのだと考えました。それで分化するのではと2年間調べましたが、何の細胞にも分化しなかったのです。Th2型サイトカインの発現が高いことが分かり、また細胞を刺激すると、多量のIL5とIL13を産生したのです。この細胞は、寄生虫感染の初期(感染後約2日目)からIL5やIL13を分泌し、Th2細胞が働き始めるまで、寄生虫を攻撃していることが分かったのです。この細胞は抗原特異的受容体を持たないことから、自然免疫の細胞と考えられ、ナチュラルヘルパー細胞と名付けました。(自然リンパ球の開拓者 小安 重夫 Nature ダイジェスト Vol. 11 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2014.140117)

最近,新たな白血球として,「自然リンパ球」と呼ばれる細胞集団が発見されました。最近の研究で,自然リンパ球の活性化がアレルギー疾患自己免疫性疾患がんなどに関係しているらしいことがわかってきましたが,まだまだはっきりしない点が多く,さらなる研究が必要 です。(当院にて2013年1月から2018年12月の間に生体検査または手術を受けられた患者さんへ ― 「自然リンパ球関連疾患の探索研究」について ― 京都大学 kuhp.kyoto-u.ac.jp)

ILC2は腸間膜に存在するリンパ球集積 ”Fat associated lymphoid cluster (FALC)”で発見され、当初NH(ナチュラルヘルパー)細胞と名付けられました。 (大阪大学免疫学フロンティア研究センター)

自然リンパ球の分類

グループ1に属するILCはインターフェロンγおよび TNFに代表される 1型サイトカイン群を産生し、NK細胞およびILC1を含む。

グループ2に属するIL-4, IL-5, IL-9, IL-13のような2型サイトカイン群を産生する。 ILC2は寄生虫に対する2型サイトカイン応答に決定的な役割を示す。

グループ3に属するILCは IL-17A または IL-22 を産生する能力により特徴付けられる。ILC3、およびリンパ組織誘導細胞 (lymphoid tissue-inducer (LTi) cells)を含む。(自然リンパ球  ウィキペディア)

自然リンパ球に関するレビュー論文

  1. The expanding family of innate lymphoid cells: regulators and effectors of immunity and tissue remodeling Hergen Spits & James P Di Santo Nature Immunology 28 November 2010 ; volume 12, pages21–27(2011) https://www.nature.com/articles/ni.1962

参考

  1. 自然リンパ球とアレルギー 松本健治 アレルギー65(3):153-158