上皮間葉転換(EMT)とは

上皮間葉転換とは

上皮間葉転換(EMT)は、様々な増殖因子刺激(TGFβ、EGF、HGFなど)に応じて、上皮細胞が上皮マーカーであるE-カドヘリン(細胞同士を連結して繋ぎ止める分子)の発現を失い、運動能の高い間葉系細胞の性質を獲得する現象です。EMTは器官形成創傷治癒組織線維化など、様々な生理的・病理的生命現象に関与しますが、細胞が高い運動能を獲得して浸潤・転移する際にも重要であることが知られています。(新規ERK基質分子MCRIP1による上皮間葉転換の制御~ERKシグナルによる癌抑制遺伝子のジーン・サイレンシング~ Molecular Cell Vol.58, 35-46, 2015年4月2日 東京大学医科学研究所

 

χ2乗検定とは

暴露因子Eの有無とアウトカムOの有無が表のようになった場合、

アウトカム あり アウトカム なし
暴露因子 あり a b e = a + b
暴露因子

なし

c d f  = c + d
g = a + c h = b + d n = a + b + c + d

観察値と期待値の差の2乗を期待値で割った値を、項目ごとに合計した値をχ0 2乗 と呼びます。この値は、自由度(2-1)x(2-1)のχ2乗分布に従うことが知られています。

暴露因子ありでアウトカムありの観察値a の期待値は、e* g/n となります。

他も同様。

χ0 2乗 = (a – eg/n)^2 / (eg/n) + …

 

参考

  1. 臨床研究と論文作成のコツ 東京医学社 172ページ

マスク着用で体育の授業を受けた児童が死亡

大阪府高槻市

高槻市教育委員会によりますと、今年2月18日、市内の小学校での体育の授業で小学5年生の男子児童が、自らのペースで走る5分間走を行った後に体調が急変し病院に救急搬送後、死亡したということです。(小5児童が体育の5分間走後に倒れる“搬送時にはあごにマスク”病院で死亡 更新:2021/05/27 12:04 MBS NEWS Mainichi Broadcasting System)

中国

複数の中国メディアは、先月中旬から下旬にかけて、東部の浙江省、内陸部の河南省湖南省で、体育の授業で長距離走などをしていた生徒が急死する事故が3件相次いだと伝えました。いずれもマスクをつけていたということで、中には、「N95」と呼ばれる医療用の高性能マスクをつけていた生徒もいたということです。(中国 マスクつけて体育の授業受けた中学生の死亡事故相次ぐ 2020年5月11日 6時52分 NHK WEB

SGLT2阻害薬とは 糖尿病のお薬 慢性腎臓病(CKD)の治療にも

腎臓での再吸収

腎臓の働きに関して勉強していると、腎臓ははなぜ一度全部排出してから一部を再吸収するのか?なぜ排出したいものだけを最初から排出しないのか?という疑問が湧きます。

血液が腎臓に流れ込むと、腎臓の「糸球体」という場所で老廃物有害物質、余分ななどがろ過されて原尿(おしっこの元)が作られます。‥ 原尿には、体に必要な栄養素などがたくさん含まれており、尿細管を通るときに必要な成分が再吸収されます。実は、原尿の約99%(ほとんどは水分)がここで再吸収され、残った1%が「おしっこ」として体の外に出されているのです。(おしっこについて知っていますか KISSEI kissei.co.jp 監修:順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学 教授 堀江 重郎 先生)

  1. 5分でわかる!濃縮率 トライイット

腎臓で再吸収する理由

老廃物を尿として体外に排出することが腎臓の働きの目的ですが、老廃物だけを選択的に血液から尿へと移す仕組みというものがないため、まずは目の粗いフィルターで、老廃物及びそれよりもサイズが小さな分子を部尿(原尿)に移して、必要なもの(グルコース、水、ナトリウムなど)はあとから再吸収し、老廃物はもちろん再吸収することなくそのまま体外に捨て去るという戦略がとられています。

ごみの溶け込んだ水」―おしっこは、一言で言えばそうなります。全身の細胞で使われた老廃物やホルモンといった”ごみ”の溶け込んだ水がおしっこだからです。‥ 糸球体毛細血管には、毛細血管内皮細胞と足細胞に挟まれた「基底膜」というふるいの働きをするバリアのような層があります(図6)。血液中の赤血球などの細胞や大きなタンパク質はここを通過できませんし、比較的小さなタンパク質でもあるアルブミンも基底膜の外側にある足細胞がバリアとなって通過できません。しかし、アミノ酸やナトリウムなどの小さな物質や水分といった老廃物は全てこれらのバリアを通過して、「ボーマン腔(くう)」という隙間へ落ちていきます。いわば、糸球体は、血液中の不要な老廃物をまとめて捨てているごみ処理場のようなところです。(1章 おしっこの作られ方と役割 MedicalTribune)

上のリンクの説明記事にある腎臓の図は、腎動脈から入って腎静脈から出ていくまでの途中でどんな構造があって何が起きるのかを理解するうえで、とてもわかりやすいと思いました。

  1. 尿」で知る腎臓の病気 adpkd.jp

SGLT2とは

Sodium-glucose cotransporter-2 (SGLT2)は、腎近位尿細管(renal proximal tubules)に存在しており、グルコースの再取り込みに関わっています。ナトリウムイオンとグルコースとが同時に同じ方向に取り込まれます。

SGLT2 is mainly expressed in the renal proximal tubules, where it is responsible for the reabsorption of about 90% of filtered glucose. It is a high-capacity, low-affinity transporter that transports glucose and other monosaccharides in a 1:1 ratio with sodium ions. SGLT2 is also a secondary active transporter that uses the electrochemical gradient of sodium ions to drive the transport of glucose against its concentration gradient. The activity of SGLT2 is regulated by various factors, including insulin, glucagon, and sodium ions. (Unlocking the Full Potential of SGLT2 Inhibitors: Expanding Applications beyond Glycemic Control IJMS Volume 24 Issue 7 10.3390/ijms24076039)

SGLT2阻害薬について

SGLT2は尿として出されるグルコースの再取り込みを行うタンパク質ですので、SGLT2を阻害するということは、尿から血液に戻ってくるグルコースを減らす作用となります。血糖値を下げる方向に作用するため糖尿病薬として用いられます。

2型糖尿病だけではなく、いまや心不全の治療薬として適応が拡大されたSGLT2阻害薬。‥ ダパグリフロジンエンパグリフロジンが左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象とする大規模臨床試験で心不全イベントリスクを低下させ(N Engl J Med 2019; 381: 1995-2008、N Engl J Med 2020; 383: 1413-1424)、2020年以降に心不全への適応が拡大された。‥ 2型糖尿病の有無にかかわらず左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者に対しても、大規模臨床試験でダパグリフロジンとエンパグリフロジンが心不全イベントを抑制することが明らかになり(N Engl J Med 2021; 385: 1451-1461、N Engl J Med 2022; 387: 1089-1098)、HFpEFでも適応となった。(2学会がSGLT2阻害薬の適正使用を勧告 日本循環器学会・日本心不全学会 2023年06月16日 16:10 MedicalTribune)

 

慢性腎臓病(CKD)におけるSGLT2阻害薬の使用

SGLT2は腎臓においてグルコースの再吸収を担う分子ですが、糖尿病の治療に使われているSGLT2阻害薬に腎保護効果があることがわかり、SGLT-2阻害薬は慢性腎臓病(CKD)の治療薬としても使われているのだそうです。

  1. CKD 治療における SGLT2 阻害薬の適正使⽤に関する recommendation 策定 (PDF) 2022 年 11 ⽉ 29 ⽇ ⽇本腎臓学会
  2. 国内で初めて承認された慢性腎臓病(CKD)治療薬(SGLT2阻害薬ダパグリフロジン)の費用対効果を 産学連携国際共同研究により報告 ~医療経営・政策の質向上に貢献する実務型研究プログラムの成果~ 2024.05.23 YCUポータル CKDは、腎臓の尿細管間質線維化がその中核的病態を構成し、進行して不可逆的なCKDを直接改善できる治療薬がこれまで存在せず、重要なアンメット・メディカル・ニーズが存在していました。しかしながら、最近では、進行したCKDの悪化速度を有意に抑制できる薬剤も開発されています。
  3. SGLT2阻害薬により腎機能が高度に低下した糖尿病患者の予後が改善 透析導入・心腎イベント・DKAリスクの低さと関連 2024.05.15

スタチンとは

スタチンとは

急性冠症候群(ACS)など冠動脈疾患(CAD)の予防では、スタチンを中心とするLDLコレステロール(LDL-C)低下療法が重要となる。近年、国内外のガイドラインは積極的な脂質低下療法を推奨する傾向にあり、新たな脂質異常症治療薬も登場しているが、投与開始前にスタチンが効きにくい患者(スタチン反応性低下例)を予測する方法は確立されていない。国立循環器病研究センターの九山直人氏らは、血中PCSK9濃度とスタチン反応性低下の関係を検討。(スタチン不応例の予測法とは 血中成熟型PCSK9濃度が有用か 2021年05月27日 15:32 Medical Tribune)

 

M1マクロファージとM2マクロファージ

M1・M2という概念の形成

M1マクロファージ、M2マクロファージという言い方をよく聞きますが、これはM1やM2という2種類のマクロファージが存在するという意味ではありません。同じマクロファージの2つの状態をそれぞれM1、M2と呼んでいるのです。M1,M2マクロファージという考え方は2000年頃にHillらによって提唱されたもの(Mills  et al., 2000; J Immunol 164:6166-6173)だそうです。「状態」なので2つの状態を行き来する可能性もあります。

  1. マクロファージ学~その歴史と現在地 佐藤 荘 実験医学2018年9月号 疾患を制御するマクロファージの多様性

M1マクロファージとM2マクロファージの特徴

Macrophages undergo specific differentiation in different tissue environments, and can be divided into two different polarization states: M1 type macrophages (M1) and M2 type macrophages (M2). M1 can respond to dangerous signals transmitted by bacterial products or IFN-γ, which attracting and activating cells of the adaptive immune system; an important feature of M1 is that it can express nitric oxide synthase (iNOS) and reactive oxygen species (ROS) (15–17) and cytokine IL-12 (18). M1 also has the function of engulfing and killing target cells. M2 expresses a large number of scavenger receptors, which is related to the high-intensity expression of IL-10, IL-1β, VEGF and matrix metalloprotein (MMP) (19, 20). M2 has the function of removing debris, promoting angiogenesis, tissue reconstruction and injury repairments, as well as promoting tumorigenesis and development (4). It is worth noting that the polarization of macrophages into M2 appears to be oversimplified. Some people have classified M2 macrophages into M2a (induced by IL-4 or IL-13), M2b (induced by immune complexes combined with IL-1β or LPS) and M2c (induced by IL-10, TGFβ, or glucocorticoid), and M2d (conventional M2 macrophages that exert immunosuppression) (21, 22). https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.583084/full

M1マクロファージとM2マクロファージとのバランス

Patients with M2/M1 < 3 had significantly improved progression-free survival and overall survival compared with patients with M2/M1 > 3. M1 and M2 macrophages elicited opposite effects on colon cancer progression via the FBW7-MCL-1 axis. https://www.nature.com/articles/s12276-020-0436-7

マクロファージの多様性

役割によってM1型・M2型に大別されると考えられているが、佐藤荘准教授は、単純なM1・M2という振り分け方ではなく、生体内には更に多様なマクロファージが存在すると仮定。実験により、様々な疾患に特異的に働くマクロファージが複数存在していることを立証した。(https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/9w5cyp

  1. 疾患特異的マクロファージの機能的多様性 佐藤 荘 みにれびゅう  Journal of Japanese Biochemical Society 91(4): 561-564 (2019) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910561

M1マクロファージ、M2マクロファージと1型免疫応答、2型免疫応答との関係

  1. M1-MΦ炎症性サイトカインを高発現し,抗菌活性が強いことが特徴である.しかしながら,M1-MΦへの分極化が過剰な形で長期間持続することにより,M1-MΦの組織傷害性に基づく病態が形成される.そのような宿主にとって不都合な状態を回避するために,抗炎症・免疫抑制機能を持つ,いわゆる「alternatively activated macrophage,別名M2マクロファージ(M2-MΦ)」に分極化したポピュレーションが誘導される.M2-MΦは,抗炎症性メディエーターを産生し,組織の損傷反応の終息とその後の組織修復へと導く ‥ 典型的なM1-MΦは,IL-12, IL-23の発現量が高く,IL-10の発現量はきわめて低いことが特徴であり,細胞毒性の発現に関わる活性酸素分子種(reactive oxygen species:ROS)や活性酸化窒素分子種(reactive nitrogen species:RNS),さらにはIL-1β, TNF-α, IL-6などの炎症性サイトカインを高レベルで産生する.したがって,M1-MΦはTh1応答の誘導,ひいては細胞内寄生性病原体に対する生体の感染防御機構を支える役割を果たしている.これに対して,M2-MΦはIL-12やIL-23の発現量がきわめて低く,逆にIL-10を高発現することから,Th2タイプに偏向した免疫の形成に寄与しているものと考えられる.(Mycobacterium avium complexの感染で誘導されるユニークなマクロファージによるT細胞の分化活性化の制御 多田納 豊1,冨岡 治明2,3 発行日:2016年10月25日 生化学)

参考

  1. Microglial Adenosine Receptors: From Preconditioning to Modulating the M1/M2 Balance in Activated Cells Cells Volume 10 Issue 5 10.3390/cells10051124 Cells 2021, 10(5), 1124; https://doi.org/10.3390/cells10051124
  2. Mer regulates microglial/macrophage M1/M2 polarization and alleviates neuroinflammation following traumatic brain injury Journal of Neuroinflammation volume 18, Article number: 2 (2021) Published: 05 January 2021
  3. Regulation of Human Macrophage M1–M2 Polarization Balance by Hypoxia and the Triggering Receptor Expressed on Myeloid Cells-1 Front. Immunol., 07 September 2017 | https://doi.org/10.3389/fimmu.2017.01097
  4. Differential Roles of M1 and M2 Microglia in Neurodegenerative Diseases Yu Tang & Weidong Le Molecular Neurobiology volume 53, pages1181–1194 (2016)
  5. 特集 がん・免疫・代謝・発生におけるM1/M2分類を超えたマクロファージの機能 細胞工学 ; vol. 33 no.12 (2014)
  6. JSI Newsletter Vol.22 No.1 2018/10/18 日本免疫学会会報
  7. M1 and M2 macrophages derived fromTHP-1 cells differentially modulate the response of cancer cells to etoposide Genin et al. BMC Cancer (2015) 15:577 DOI 10.1186/s12885-015-1546-9
  8. Role of Microglial M1/M2 Polarization in Relapse and Remission of Psychiatric Disorders and Diseases Yutaka Nakagawa1 and Kenji Chiba2,* Pharmaceuticals (Basel). 2014 Dec; 7(12): 1028–1048. doi: 10.3390/ph7121028 PMCID: 
  9. Macrophages within NSCLC tumour islets are predominantly of a cytotoxic M1 phenotype associated with extended survival C. M. Ohri, A. Shikotra, R. H. Green, D. A. Waller, P. Bradding European Respiratory Journal 2009 33: 118-126; DOI: 10.1183/09031936.00065708

科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」に係る事後評価報告書

領域略称名:細胞運命制御領域番号:3209 平成27年度科学研究費補助金「新学術領域研究(研究領域提案型)」に係る事後評価報告書「(研究領域名)多方向かつ段階的に進行する細胞分化における運命決定メカニズムの解明」(領域設定期間)平成22 年度~平成26年度平成27 年6月領域代表者(東京大学・医科学研究所・教授・北村俊雄)

病原体が体に侵入してから抗体ができるまでの免疫反応の大筋の流れの解説

特異的な抗体がB細胞によって産生される仕組み

病原体が体内に侵入⇒樹状細胞がそれを貪食し分解物を細胞表面に提示(抗原提示)⇒樹状細胞はリンパ節へ異動する⇒樹状細胞によって呈示された抗原をたまたま認識できる受容体を発現していたヘルパーT細胞がそれを認識し自分自身を活性化

他方、同じ病原体をたまたま認識できる抗体を細胞表面に持っていたB細胞はその病原体を貪食して分解物を細胞表面に提示⇒さきのヘルパーT細胞がそれを認識しそのB細胞を活性化⇒抗体を産生するB細胞に分化し水溶性の抗体を産生する

参考

  1. 抗原の情報はどうやってT細胞からB細胞へ伝わるの?一般の方向け記事:免疫のしくみを学ぼう!河本宏研究室(京大)

 

 

新型コロナウイルス南アフリカ型の日本国内における感染状況

2021年5月

新型コロナウイルス感染症(変異株)の患者等の発生について(空港検疫)令和3年5月21日(金) 厚生労働省 海外から到着した者で、検疫により確認された新型コロナウイルス感染症の患者等について、国立感染症研究所で検査したところ、英国で最初に検出された変異株が19例、南アフリカで最初に検出された変異株が7例、日本でブラジルからの渡航者に最初に検出された変異株が1例、フィリピンで最初に検出された変異株が1例確認されました。

  • ※No.49、73、78~80、115、147は南アフリカで最初に検出された変異株
  • No. 到着地 到着日 年代 性別 滞在国 症状
  • 49 成田 4月21日 40代 男性 ウガンダ 無症状
  • 73 羽田 4月26日 60代 男性 インド 無症状
  • 78 成田 4月27日 50代 女性 フィリピン 無症状
  • 79 成田 4月27日 50代 女性 フィリピン 無症状
  • 80 成田 4月27日 20代 男性 フィリピン 無症状
  • 115 成田 4月30日 20代 女性 ネパール 無症状
  • 147 成田 5月2日 20代 女性 アメリカ合衆国 無症状

福岡県で500人コロナ感染、県内初の南アフリカ型変異株を確認 5月19日発表 2021年5月19日 午後7時05分 腹囲新聞 福岡県は2021年5月19日、新型コロナウイルスに感染した4人が死亡し、500人の陽性が判明したと発表した。これまでに計上した感染者1人から、県内初となる南アフリカ型の変異株を確認したことも明らかにした。

2021年3月

フィリピン、南ア型コロナ変異株を初確認 ワクチン効果に懸念 2021年03月02日(火)15時37分 Newsweek REUTERS [マニラ 2日 ロイター] – フィリピン保健当局は2日、新型コロナウイルスの南ア型の変異株の感染者が6人確認されたと明らかにした。同国で南ア型変異株の感染が確認されるのは初めて。‥ 確認された6人中3人は国内感染で、2人は海外から帰国したフィリピン人。残りの1人は現時点で感染経路が特定できていないという。

2021年2月

<新型コロナ>南アフリカ型変異株に2人感染 神奈川で初、50代女性と10代男性 2021年2月5日 11時06分 東京新聞 厚生労働省と神奈川県は4日、南アフリカで拡大している新型コロナウイルスの変異株に、県内の50代女性とその濃厚接触者の10代男性が感染したと発表した。県によると、国内で南ア型の変異株が空港検疫以外で見つかるのは初めて。‥ 女性は1月にアフリカ地域から帰国し、成田空港での検疫では陰性だったため、自家用車で帰宅した。女性は国の要請に基づく2週間の自宅待機中だった同月中旬に、10代男性は同月下旬に、それぞれ発熱などの症状が症状が出てコロナ陽性が判明。

臨床研究における後ろ向き研究(後方視的研究)とは

人を対象とした研究、すなわち臨床研究においては、研究のデザインというものがいくつか存在します。研究のデザインをどう分類するかは、教科書によって多少異なることもあるのですが、大きく分けるとまず、「介入研究」と「観察研究」があります。介入研究は研究者が研究対象となる人達を2つの群、対照群と実験群に分けて、実験群に対して「介入」すなわち何らかの操作を行います。操作は薬剤投与など何かしら効果を試したい内容のものです。一方、観察研究では研究者は何かの要因に基づいて研究対象を2つに分けて比較します。その場合、研究者が何か操作をするわけではなく、もともと存在した要因(暴露因子)に基づいてグループ分けをします。例えば、喫煙者と非喫煙者といった具合です。

観察研究は、「暴露」と「イベント」(例えば、暴露として喫煙、イベントとして肺がんを罹患すること)が、時間的に追って分析しているか、同時に分析しているかにより、「縦断研究」と「横断研究」とに分類されます。縦断研究は、前向き研究と後ろ向き研究とに分けられます。前向き研究では、研究開始時に暴露群と対照群を設定し、これらの「コホート」(集団)を時間的に追跡調査して、例えば喫煙者と非喫煙者で将来肺がんに罹患する人がどれくらいいるかを調べます。これに対して、後ろ向き研究では、研究開始時点ですでに、患者のデータが出そろっています。つまりカルテなどの診療記録に基づいて過去の喫煙歴とその後の肺がんの罹患の有無を調べるわけです。

後ろ向き研究は、観察研究を後ろ向きに行うものなので、後ろ向き観察研究とも呼ばれることもあります。

後ろ向き研究(rerospective study)は研究開始時点からさかのぼってデータを収集し解析する観察研究の一種で、臨床研究における”対象”、”イベント”、”エンドポイント”は重要な要素ですが、後ろ向き研究ではこれらの情報はすでに”収集され”、”発生した”ものです。それらを電子カルテなどから”拾ってきて”データベースを構築することになります。(臨床研究アウトプット術 中外医学社 105ページ)

後ろ向き研究の中には、後ろ向きコホート研究と症例対照研究とがあります。後ろ向きコホート研究では、「暴露群」と「非暴露群」とにまずわけて、両群がその後どれくらい病気を発症したかを調べます。症例対照研究では、まず最初に病気を発症した群と、発症していない群とを定めて、それぞれに関して過去における暴露の有無を調べます。

稀な疾患の場合には、症例対照研究に利点があります。逆に、暴露が稀な場合には、暴露の有無が研究の起点となる後ろ向きコホート研究に分があります。

参考

  1. 臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年2月25日
  2. 感染症集団発生事例調査 の基本ステップ 平成16年度 国立感染症研究所 感染症情報センター 中島一敏
  3. 表2-1 疫学の研究デザインのまとめ
  4. 疫学の研究方法