科研費が採択されるために必要な要素は、人によって考えかたがいろいろでしょうが、業績が大事だということに異論を唱える人はいません。じゃあ、業績があれば採択されるのかというと、そうでもないのです。業績があることが伝わって初めて採択に近づきます。業績欄のページに業績リストを載せて安心していませんか?
業績欄は、科研費の申請書の後ろのほうにあります。審査委員によっては業績を気にせずに最初のページから順番に読んでいく人も結構います。そして、途中まで読んで良い印象を持たなかった場合には、業績のページに到達する前に「不採択」の判断を下してしまっているかもしれません。ページをめくって業績が多少あることに気付いたとしても、一度決めた決定を覆すのは難しいでしょう。
今どきの科研費は業績だけ見せれば通るほど甘くはないのです。研究目的や研究計画がきちんと説明できていない研究者にたとえ業績が多少あったとしても、それは指導者が論文を書いてあげていただけなんじゃないの?と勘繰られます。論理的な文章を書けない人に論文業績だけあるのは不自然だからです。
そんなわけで、業績がありますアピールは、申請書の最初のほうからしておく必要があります。どのくらい最初かというと、概要でもいいです。市販されている科研費の教科書を読むと、概要では文献の引用はしないと教えているものもありますが、それは別に絶対的なルールではありません。絶対に見落とされたくない素晴らしい論文を最近出したのであれば、概要で(もちろん本文でも)示してあげて、業績アピールしても全然かまいません。あとは、背景、着想に至った経緯、独自・創造性、国内外の研究動向と本研究の位置づけ、研究計画、準備状況、どこでも構いません。自分の論文業績を引用できそうなところで、どんどん引用してアピールしましょう。
謙虚な性格な人は、そんなにアピールしたら審査委員が反感をもったり嫌悪感を持ったりするのではないかと心配してしまうかもしれません。まあ、日常生活や学会で会って話をしているときに、最近論文を出しましたアピールをすると、場合によっては嫌な感じと思われるかもです。しかし、科研費の申請書というのは特別な場所です。どれだけ自分の業績をアピールしても、それが嫌味になることはありません。審査委員が審査するのを楽にしてあげるだけのことです。
業績欄に、最近出した素晴らしい論文や、総説や、症例報告が入り混じった十数報のリストがあったとして、審査委員がその中からパッとトップジャーナルの論文を見つけ出してくれるでしょうか?審査委員は審査の作業でくたくたに疲れているので、おそらく、なんだ臨床報告のリストかと思って素通りするだけでしょう。審査委員の興味はファーストオーサーでトップジャーナルもしくはその研究領域で認められているジャーナルに最近論文がどのくらい出ているのかです。それが一瞬でわかるような業績リストでなければ、業績リストを載せた効果はあまりありません。査読付き原著論文と総説と症例報告は、分けて、別々のリストとして表示しましょう。