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先行研究とは?

科研費の申請書に、自分の以前の研究のことを「先行研究」と書く人が多いので気になって確認してみました。

先行研究(せんこうけんきゅう)は、ある研究対象について、既に自分の研究よりも先んじて発表された研究を指す。通常は他の研究者による学術論文や専門書などを指す[1]

ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/先行研究

自分のこれまでの研究のことは、先行研究とは言いません。不用意に先行研究という言葉を使うと、他人の研究だと思われるか、混乱させられてストレスになるので、正しい言葉遣いで書くことが大事です。

当たり前すぎて誰も教えてくれない科研費申請書の書き方の作法、暗黙のルール

当たり前なので誰も言わないけれども、初心者にとっては当たり前でないことが、科研費研究計画調書(申請書)の執筆において重要になります。

申請書を書く際の態度について(*最重要)

研究計画だから、まだデータが出ていないことを書くべきだと誤解する初心者が多いですが、そうではありません。実験データが得られていても「論文化(受理;アクセプト)されていないものは、何も行われていないものと同じ」いうスタンスで書くのが、申請書を書く際の原則です。ですから、もう研究が一通り終わっていると思われると研究費がもらえないのではないか?という初心者にありがちな心配は無用です。

建前の本音が大きく矛盾しているのですが、だからこそ公で誰もはっきりとは言わないことなのですが、ほとんど研究が上手くいっているくらいの状態でデータをバンバン申請書に盛り込んでいるほうが採択されます。なぜなら、研究計画の実現可能性に疑問が挟まれないからです。実験なんてほとんどは思った通りの結果は出ないということは審査委員もみな知っていますので、机上の空論を書かれても真に受けるわけにはいかないのです。

事務が聞いたら怒りそうですが、研究費が得られたら本来の計画書に書いた実験ではなく、「次の」研究のアイデアを纏めるための新たな実験に使ったほうがいいのです。そうしないと、次の申請のときに採択可能性がさがります。「研究費をもらって、実験して論文化」というサイクルではなく、「研究費をもらって、さっさと論文化を済ませて、次に申請するための実験をして論文化の準備をする」というサイクルを回し続けることが、研究者として生き残るための条件なのです。

これは成功している研究者を見れば、皆があたりまえにやっていることです。悪い環境で研究を孤独にやっていると、こういう当たり前のことを教えてくれる人がいないという不幸なことになります。

自分はアメリカのRO-1(大型研究予算)の申請書や、日本の基盤研究(A)の申請書などを見たことがありますが、ぱっと見ほとんど「論文」でした。主要なデータがきちんと論文レベルのクオリティで図として埋め込まれているのです。金額が大きければおおきいほど「ほとんど論文」の傾向が強い(それが要求される)と思いますが、少額である基盤研究(C)や若手研究であっても、基本的な考え方は同じです。

申請書に書くべきこと

申請書には、やることを書きます。また、なぜやるのかという理由も書きます。なぜその研究が大事なのかという説明を書きます。科研費の申請書は、将来の希望を書くための書類ではありませんし、心情を吐露するためでもありません。主観を排して客観的に、すなわち、文献や予備実験データに基づいて、論理的に話を進める場所です。唯一主観を交えて書いても良い場所が、本研究の着想に至った経緯のセクションです。申請者が何を考えているのかを書くべきですが、それは根拠のない思い付きや心情を書くということではなく、どうロジカルに考えた結果そのような主張をしているのかがわかるように書くべきなのです。

3年なら3年という限られた年数の間に、何をやって何を明らかにするつもりなのかを書く代わりに、医療の発展に寄与したいとか、あやふやな願望ばかり書いていては、採択はおぼつきません。

申請書はいくつかのセクションに分かれていて、このセクションにはこれを書くというのがある程度決まっています。研究目的なら、研究目的のセクションに書くわけです。当たり前ですね?このあたりまえのことを守らない人も結構います。書くべきことを書いていなかったり、逆に、書く必要のないことを書いていたりします。そんな申請書は、もちろん採択されるわけがありません。

申請書作成にあたっての態度

なぜ申請書に書かれた指示を守らない書き方を平気でするのか?それは一言でいうと、独りよがりだからです。独りよがりは物事に対する態度なので、申請書のいたるところでその独りよがりぶりが見てとれます。例えば、論文の図などをコピペした際の英語のフォントが小さく読めないのに気にしないなど。独りよがりでない、すなわち、読み手を意識して読みやすい申請書を作成する心の態度ができている人は、ちゃんと読める大きさに図を作ったり、理解しやすいように英語の部分を全部日本語に直したりといった工夫をするわけです。「独りよがりな人=実験データを客観的に解釈できず、自説に引き寄せてしまう人」の恐れが大きいため、研究者としての評価が低くなり、審査委員にしてみれば研究費をあげたい人には入らないでしょう。

申請書の言葉遣いに関する掟

研究目的のセクションに、研究目的を書かずに、研究目的の意義を書く人もたくさんいます。「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにする」というのが研究目的だったとしたら、研究目的のセクションに「細菌叢を解析することにより、疾患Aとの関連性を明らかにすることにより効果的な治療戦略の開発に貢献できる」などと書くのが典型的な失敗例です。研究目的の文と、その意義を述べる文は一続きの文にせず、2文に分けましょう。

プロポーズするときに、「あなたと結婚したらきっと幸せな家庭が築けると思うよ」と言っても、言われた相手はプロポーズされたとは思わないでしょう。「あなたと結婚したい」と言わなきゃだめです。科研費の研究目的の書き方も、それと同じです。

申請書は書き言葉で書きます。話し言葉やくだけた表現を用いてしまうのもよくある失敗例です。また、ラボで飛び交う日常語と正式な言葉とは使い分けましょう。ラボでは、「サザン」をするというかもしれませんが、書くとときは「サザンブロット法」です。「それで、」とは書かず、「そこで、」と書きます。「そして」も普通使いません。「また」あるいは「その後」といった言葉を使います。使う言葉で、その人がプロフェッショナルな研究者なのかそうでないのかは、一瞬でバレてしまいます。

概要で書くべきこと

概要は、指示にもある通り、本文の要約です。この指示を無視して、本文に書いていない情報を盛り込む人が多数います。これは申請書に整合性がないもの判断される材料になるでしょう。

概要で大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書いたからといって、本文でいきなりASと書くのは、「概要は本文の要約」という鉄則に反した行為です。本文でも繰り返しになって全然OKなので、初出時は大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)と書きましょう。そもそも本文のスペースが十分余裕があるのであれば、わざわざASなどど略さなくてもよいでしょう。

概要のところを10行分くらい空けておき、本文4ページ分を書きあげてから4ページ分の要約を概要に書けば、上のようなつまらないミスは起こしようがありません。様式をダウンロードしたあと、まず概要を書き、続けて本文を書き進むといった作成方法をしている人は要注意です。

背景に書くべきこと

その次に来る学術的な問いの妥当性を客観的に説明するために書きます。客観性を出すためには、文献を引用しながら書くのが鉄則です。自分の個人的な体験や考えをただ書いても説得力が出ません。

ただし2025年度科研費から、着想に至った経緯が(1)に入ってきたので、ある程度自由度があるかもしれません。

着想に至った経緯

業績がほぼない臨床医であれば、日常臨床でどのようなクリニカルクエスチョンを得てそれをリサーチクエスチョンとしたのかを書いてもいいでしょう。しかし、研究業績のある人で、テーマに関連する論文の積み上げがある人であれば、自分の論文業績に基づいて書くのが普通です。

2025年度科研費(2024年度応募)から様式に変更があり、着想に至った経緯は、(3)の中ではなく、(1)に書くことになりました。毎年、前年度の申請書のコピペで申請書を作っている人は要注意です。背景~着想~問い はひと続きに書いても、それぞれ分けて書いても、どちらでもいいと思います。ただし、背景を書く目的がそもそも問いを導くためなので、このセクションは一まとまりで書くほうが自然のような気がします。

学術的な問いに書くべきこと

あくまで明らかにしたい学術的な問いであって、「こんな研究は可能か?」という疑問を書くのではありません。日常語としての「問い」の意味に引きずられないようにしましょう。

学術的な問いは、文字通り「学術的な問い」です。ある実験系においてどういう結果が出るか?という具体的なものではなく(それは研究目的)、もっとその研究領域の他の研究者とも共有されるような大きなものであるべきです。「抽象度ー具体度」の軸で考えると、研究目的よりも学術的な問いのほうが抽象度が高くないとおかしいのです。思い付きで例を挙げると、以下の項目は上ほど抽象度が高く、下に行くほど具体性が増します。

  • がんの撲滅
  • 抗体医薬の開発
  • 免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株を用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証
  • ヒト大腸がんの細胞株の担癌マウスを用いた免疫チェックポイント阻害抗体の効果の検証

学術的問いと研究目的を設定する場合、どの「大きさ」で設定するかは本人次第ですが、どうであれ、問いは目的より抽象度を高くした記述になっているのが普通です。ただし、「同じ」というのもあり得ます(問いと研究目的が、言葉としては裏返しの関係)。

研究目的に書くべきこと

初心者でときどき勘違いしている人がいて、研究目的として、がんを撲滅して人類に貢献したいといった内容を書く人がいます。これは将来の願望や希望であって、このセクションに書くべきことではありません。通常の日本語でいう「目的」であれば、がんの撲滅は立派な目的ですが、申請書における研究目的とは、「何をどう研究して何を明らかにするのか」という意味です。研究期間内(3~4年)の間に何をやるかを書くのです。将来的な目標を書く場所ではありません。通常の日本語に惑わされないようにしましょう。これは、採択されている人間にとっては当たり前すぎることですが、初めて科研費に応募する人の中にはわかっていない場合があります。どうしても将来的な目標まで書きたければ、期間内の目標と将来のことをハッキリと書き分けましょう。

「研究目的は、~を目的として~を行うことである。」と書いてしまうと、前半部分だけが目的のようになって、分かりにくくなりますので、「研究目的は、~を明らかにするために~を行うことである。」と書いたほうがよいでしょう。

独自性に書くべきこと

「他に論文報告がない研究だから独自性がある」と書くのがダメです。重要な研究なのになぜ誰もやっていないのか、できなかったのか、なぜ自分ならできるのかを説明しましょう。誰もやっていないということは、誰も興味を持たないくらいに面白くない研究テーマであることが多いはずです。

「本研究は~を~して~を明らかにする点で独自性がある」と書く人も多数います。「本研究は~を~して~を明らかにする」の部分が、単に研究目的に書いたことそのままだとしたら、それは独自性を説明したことには全くなりません。AならばAである、とトートロジーを述べているようなものです。独自性=他者と比べて何がどうなのか という説明が必要です。

創造性に書くべきこと

創造性という言葉の意味が広すぎて、人によって書くべきことのイメージが大きく異なる可能性があります。アイデアの斬新さや、研究成果の波及効果(社会に対する貢献や、おなじ研究領域の他の研究者に対する貢献、ベネフィット)を書けば良いでしょう。ぶっちゃけ、審査委員(=同じ研究領域の研究者)が自分たちの役に立つと思ってくれればよいのです。

もう一つの考え方として、自分の研究に将来的な広がりがあるという観点で書くのもありでしょう。しかし、上で書いたことのほうが強力です。自己的な人より他己的な人のほうが評価されるのは当たり前。

創造性という言葉はかなりビッグワードなので、~という点で創造性があると書いても、日本語として不釣り合いなことが多いです。そういうときは、~という点に特色がある。程度で済ませましょう。いろいろな意味でバランスが悪い人は、研究能力も低いのではないかと疑われます。

 

研究動向と位置づけ

他人の研究と自分の研究を紹介すればそれが動向であり位置づけになりますので、動向と位置づけは表裏一体であって、分けて書かないほうがいいと思います。また研究動向はあくまでその申請書の研究テーマに関する研究動向(それくらい広く捉えるかはケースバイケースで正解はない)であって、あまり関係がない研究を紹介するのは意味不明です。

「着想に至った経緯や、研究動向と位置づけ」という指示があるせいか、着想を書いて、そのあと書くことがなくてなのかスペースがなんとなく埋まったせいなのか、動向・位置づけを何もかかずに済ませる人がいます。これは絶対にダメです。着想は主観を書く場所なので、評価のポイントになりえません。しかし動向と位置づけは、客観性をもってその研究の意義をアピールするために必須なので、それを書かなければ採択されるはずもありません。

本研究で何をどのように、どこまで明らかにするのか

このセクションはいわゆる研究計画欄であって、方法や計画、実験課題を具体的に書きます。具体的といっても何を何ml採取して何と混ぜてとか、何gで遠心してなどとプロトコールを書いてはいけません。実験をやり慣れている人が読んだときに何をするのかが分かる程度の詳しさで十分です。遺伝子発現を調べるのであれば、RNAseqなのかreal time PCRなのかウエスタンブロットなのか免疫組織なのかといったことを書く必要があります。関連する実験の論文を多数出している人は、細かいことを書かなくても信用してもらえますし、関連論文ゼロの人は自分がその実験をできるんだというアピールが必要です(予備データを見せるとか、publishableなデータでなくても少なくとも自分のいる研究で自分自身で実験をこなせることを示す写真を見せるとか)。

また、実験の作業工程をえんえんと書いてお仕舞いにしても、読んだほうにはちんぷんかんぷんですので、それぞれの実験を行う意図や目的を必ず書きます。このセクションの最初と最後には実験目的や得られる結果の予測と結論などを書きましょう。

準備状況

予備実験データなどがあればそれを書いてもいいでしょう。予備実験データは計画欄においてもいいですし、背景などもっと前のほうにおいてもいいと思います。ただ単に、準備は万端整っていて採択されれば確実に研究計画を実施可能である。と書いてもあまり説得力がありません。準備できているのなららその中身を書いて、判断は審査委員に委ねましょう。

研究者の遂行能力

ここはいわゆる業績欄で、昔は単に論文のリストを書く場所でした。科研費の様式も変遷を経ていて、今ではかなり自由に何を書いてもよいことになっています。そうは言っても、論文リスト+それらの論文の解説というパターンで書く人がほとんどでしょう。

  1. 査読付き原著英語論文(筆頭著者論文、責任著者論文、共著論文)
  2. 査読付き原著和文論文、英語論文(総説)、症例報告論文、和文商業誌の記事、論文
  3. 学会発表(筆頭演者)

人によって考え方が違うかもしれませんが、上のようなことを書くといいと思います。特に、研究計画に関連する論文はしっかりとアピールします。関連論文がないなら、関連性が薄い論文でもなんでもとにかく余白を作らないように書けるだけ書きます。

関連論文の内容を、場合によっては図なども提示しながら日本語の文章で解説するというのもありです。論文数が少ないほど、日本語の文章が増えることになります。

研究分担者の業績も書きますが、分担者の業績が大半を占めるのはNGです。代表者の業績が少なければ、より詳細に説明することにより、スペース的には代表者がメインになるように印象付けましょう。分担者が他大学の他の専門領域の人の場合で、相補的な関係がある場合は、分担者も代表者と同じ程度にしっかりかくというのは当然のことです。

研究環境

2ページのうち1ページを遂行能力、1ページを環境に当てる人もいますが、それはバランスが悪すぎます。環境は半ページ以下で十分。4~5行でも十分です。研究遂行能力に十分なスペースを割きましょう。

経費

経費を非常に細かく人がいますが、ある程度ざっくりでも大丈夫です。分子生物学用試薬10万円など。抗体は一つ5万円くらいしますので、経費の説明で何に対する抗体かも書いたりしたほうが良いと思います。経費は雑に書いても採択される人は採択されますが、ボーダーライン上のどんぐりの背比べの中に入っている人は、少しでも印象を良くするために、経費の理由をきちんと、研究計画と整合性があるように書きましょう。誰であれ、整合性がないことを書くと、印象が非常に悪くなります。

国内学会の出張費に10万円などと書かれていると、自分はちょっと高くない?と思ってしまいます。東京の研究者が横浜の学会に行くのか、沖縄や札幌の学会に行くのかで旅費は全然違ってくるでしょうから、第XXX回XXX学会(福岡市)などと具体的に書いて常識的な経費を申請したほうが印象が良くなります。逆に海外の学会でヨーロッパ15万円などと書いていると、それで行けるの?と思ってしまいます。エコノミーの座席で格安航空券を買うにしても、宿泊代と航空運賃合わせて30~40万円はかかるのではないでしょうか。

基盤研究(C)や若手研究の助成金額の上限は500万円ですが、それを458万円などとしている人もいます。まず、金額を低くすれば採択可能性が上がるかと言うと、そういうことは全くありません。希望金額と採否は無関係です。また、採択された場合の充足率(実際にもらえる金額)は70%くらいです(最近の挑戦的研究は、100%の充足率になって、話題を呼びましたが)。真面目に書いてしまうと30%削られた金額しかもらえないので、馬鹿正直に書くより少し多めに書いておいてちょうどよくなるということは知っておくべきでしょう。採択されても30%減ということは、それくらいが誤差と考えて金額を書いてもいいのだと自分は思っています。英文校正費用が5万円で済むところを6万円と書いてもなんの問題もないでしょう。

熱量

レベルの高い競争だと、熱意があるのが当たり前なのでそこで差がつくことはないですが、若手研究くらいだと、きちんと申請書を書いていて熱意が感じられるほうが印象が断然よいと思います。採否のボーダーラインにたくさん並んでしまった場合には、熱量があるものが拾われることもあるのではないでしょうか。誠心誠意頑張っているのが伝わる申請書を採択させるという審査委員の言葉を聞いたことがあります。もちろんボーダーライン上でどんぐり状態になった場合の話だとは思いますが。熱量というのは言葉であからさまに表現するものではなくて、申請書の隅々にまで神経がいきわたっていることも、熱量を感じさせる大きな要素になります。

科研費の教科書

いちばんわかりやすい科研費申請書の教科書」(amazon.co.jp)は発売日が2023年9月7日のため、まだ中身を読んでいませんが、科研費.comさんの著作ですので期待が持てます。アマゾンで予約購入すると発売日当日に到着するように発送してもらえるようです。 買って読みました。参考になること(他の類書に書いていないこと)がいくつもあって、自分には非常に参考になりました。

科研費 採択される申請書のまとめ方」(amazon.co.jp)は、近年のベストセラーだと思います。特に審査委員がどうやって審査しているのかという実際や審査委員がどう感じるのか、どう考えるのかといったことも細かく紹介されており、それを踏まえてどのように申請書を作成すればいいのかがわかるようになっています。繰り返し読んで血肉とすべき良書でしょう。

科研費獲得の方法とコツ」(amazon.co.jp)はベストセラーかつロングセラーで、系統だって書かれた正統派教科書の趣があります。初心者はまずこれを読んでから執筆にとりかかるのが良いでしょう。それに対して、「科研費 採択される申請書のまとめ方」は、何度も応募していて書きなれてはいるけれども採択されたことがない人に一番効果がありそうです。

科研費申請書の書き方

科研費申請書で業績が少ないときの業績欄の埋め方

申請書には、研究計画の実行可能性を示すため、研究者の遂行能力を書く欄があります。論文がいくつかある人は論文リストを見せることが多いのですが、論文が一報しかなかったり、原著英語論文が一報もない場合には何を書けばよいのでしょうか?

そもそも基盤研究(C)の場合、査読付き英語原著論文が0~1報で採択される可能性は非常に低いです。ただしゼロではありません。その場合は、審査種目(小区分)選びが重要です。0~1報の論文業績でも採択された人を自分は知っています。

若手研究の場合は、今は博士号取得者しか出せませんので少なくとも1報は論文がある(=学位論文)ということになるかと思います。ただし大学医学部の紀要に和文で博士論文を出して学位を取る人もいるかもしれませんので、英語論文ゼロで若手研究を狙うという状況もあり得るでしょう。

さて、そういう論文業績が少ない応募者がとるべき戦略とは何でしょうか?研究計画の実現可能性がどうやって測られるのかというと、予備実験データが出ているか、過去に関連する研究で論文が出ているかの2つだと思います。論文がないのなら、予備実験データを見せることは必須です。どっちもないと無理でしょう。

それで業績欄の埋め方の話に戻りますが、まず余白を作らないことです。余白=業績ゼロということです。よく、筆頭著者論文しか載せてはいけないんでしょうか?とか、学会発表は載せたらだめですよね?とか、考える人がいます。余白よりマシというのが私の答えです。余白をつくるくらいなら、臨床医なら臨床経験を語り、症例報告の論文を紹介し、学会発表や和文商業誌の論文でもいいので示すべきです。実のところ、臨床医の場合、臨床医としての経歴を最初に書いている人も(それで採択されている人も)結構います。臨床研究の場合は、臨床医であることも立派な「実現可能性の判断要素」になります。臨床医であることを明示しない限り、読み手には応募者が医師なのかどうかはわかりません。医師であることを正式に書く場所というものは申請書に存在しないからです。

論文が一報しかなければ、その論文の紹介を日本語の文章で書きましょう。論文がないならせめて熱意だけでも示すべきです。論文が多い人は、当然学会発表もしているのが普通なので、学会発表の記載は一切しなくても全く問題ありません。査読付き原著英語論文に勝るものはないからです。

科研費の教科書

  

科研費申請書の書き方

科研費申請書の書き方の作法:審査委員が審査しやすいように書く!

科研費の審査委員は、一人あたり80件~100件程度の応募書類を限られた期間内で審査するそうです。もちろん大学教員として講義を持っていたり、実習を担当していたり、自分の研究をして論文の執筆をしたり、学会に出かけたり、大学運営のためのさまざまな学内の委員会、会議に出席したり、学生の指導に当たったり、臨床医であれば診療に従事したり、そしてもちろん家庭との時間を大切にしたりと、超、超、超多忙ななかで審査をします。そうなるとどう頑張っても、一件あたりに割ける時間というのは限られており、自分が聞いたところでは15分~20分で一件を終わらせないと審査業務を期間内に終えられないとのことです。10分読んで5分で評価(コメント作成、評点)あるいは15分読んで5分で評価といったところでしょうか。15分x80件でも1200分(=20時間)です。毎日2時間やっても10日間かかります。20分x100件だと2000分(=33.3時間)です。毎日2時間やっても17日間かかります。こうしてみると、どれだけ審査委員の負担が大きいかがわかることでしょう。

申請書を一読するだけでも15分かかるのではないでしょうか。すると一読して理解できなかった申請書をもう一度読み直す時間があるでしょうか?そう考えると、一回読んだだけでは理解できないような申請書が高い評価を受ける可能性は低いということがわかります。審査委員は理解できなかった研究計画に高評価を付けることはありえません。

頭からじっくり読むと15分では読み切れないとしたら、概要を読んで内容をつかんで、いきなり学術的な問いや研究目的を読み、最も重要なセクションである研究計画を読むということも考えられます。まずは業績欄を見るという審査委員もいるでしょう。

ここまで考えてきてわかることは、頭から読まれてもスムーズに読み進めてもらえるように書かれていないといけないだけでなく、いきなり研究計画を読まれても内容が理解してもらえないといけないということです。つまり、各セクションをできるだけ独立させるということです。研究計画欄にいきなり実験課題の作業手順をダラダラ書き始めるのではなく、冒頭には研究目的を簡潔に書く必要があります。研究計画の最後は、作業工程の説明で切れさせるのでなく、以上の実験課題を遂行することで何が明らかにできるのかを再度まとめて、締めの言葉とすべきです。

申請書にぎっちり書いて、そもそも各セクションがどこにあるのか何秒もかかて探さないといけないというのは大きなストレスです。ページをめくった瞬間にパッと何がどこに書いてあるのかがわかるように、セクションタイトルは太字で強調したり空白をうまくつかったり、網掛け(ハイライト)を利用したりといった工夫をしましょう。

研究計画欄に実験課題を書くときも、各実験の項目を立てて、それらの項目を読むだけで研究の流れがわかるようにしておくことが大事です。実験手技名で項目を立てる人も多いですが、それだと研究音流れが見えません。かならず実験目的名で項目を立てましょう。

科研費の審査種目(小区分)の選び方:プライドは捨てて実を取れ!

医学部の先生は科研費の審査種目(小区分)を、自分の所属する診療科名で選ぶ人が多いようです。神経内科医なので神経内科学関連。消化器外科なので消化器外科学関連。循環器内科医なので循環器内科学関連。基礎系の研究者であれば、免疫学講座に所属しているので、免疫学関連。こうやって、なんとなく当たり前のように審査種目を選ぶ心理だけでなく、自分は~医だから~学関連で採択されたい、~学関連の審査委員の先生たちに認められたいというプライドもあるような気がします。自分が所属する研究者コミュニティに自分の研究を認めて欲しいと思う気持ちはとっても自然なことで理解できます。しかし、それはそれ、科研費は科研費。分けて考えましょう。

実のところ、日本は免疫学は世界のトップレベルなので免疫学関連は大激戦区ですし、伝統的な診療科の名前がついているような審査区分は一般的に激戦区になっていることが多いと思います。科研費の小区分リストを眺めていると、そういった伝統的な名称ではないものがたくさんあります。医用システム関連とか医工学関連とか、学際的なものですね。また、伝統的な分野であっても、「業績格差」で採択されやすい審査区分というものがあります。

実は、科研費で採択されている人はみな、そうやって楽に勝てそうな審査区分を探し回ってそこに応募しているのです。プライドがあったとしても、そんなプライドは科研費採択には不要です。不採択になるよりどこの審査区分でもいいので採択されたほうがよいのは明らかでしょう。だれも、採択された人の審査区分なんて気にしません。「あの人は科研費に採択された人」と思われるだけです。

自分で思いつけない審査区分の候補をどうやって見つければよいのか?というと、自分の研究のキーワードでKAKENを検索してみればよいのです。初めて聞く名前の審査区分で採択されているものが見つかることでしょう。

テーマと審査種目とのマッチングも大事です。科研費の審査の手引きなどの資料を見ると、分野違いだからという理由で低評価をつけてはならないということが書かれています。しかし、研究の意義を認めるかどうかとなると、どうしても、その研究テーマが審査委員にとって重要と思えるかどうかという主観が入るはず。なので、あまりにも場違いなところに応募してしまうと、正しく評価してもらえないでしょう。類似課題(キーワードが一致する課題)がその小区分で採択されているかどうかはしっかり確認しましょう。キーワードがあっていても不十分で、研究の方法などまであっているかどうかも大事なことがあります。しっかりと吟味して決めてください。

科研費研究計画調書(申請書)研究者の遂行能力(業績欄)の書き方

書く内容の配分

科研費研究計画調書(申請書)の様式の後半に、研究者の遂行能力(業績欄)を書く場所があります。遂行能力と研究環境を2ページで書けという指示がありますが、それぞれ1ページずつ書くわけではありません。配分は本人に任せられていますが、常識的に考えて、遂行能力のほうが圧倒的に重要なのでそっちで大部分を埋めましょう(少なくとも1ページ半)。研究環境は半ページ以下、5~6行でも十分です。

余白について

業績欄に余白があると、業績が足りない人という印象を与えてしまいますので、最後の1行まで使い切る必要があります。書くことがないので余白が2~3行できたけど諦めるという態度ではいけません。科研費は他人の申請書との比較で採否がきまるので、他のみんなが2ページを書き切っていたら自分の申請書は見劣りするという当たり前の事実を認識することが大事です。

論文業績が少ない場合の書き方

論文が少ないので書くことがありませんという人もいると思います。その場合は、その少ない論文の内容を紹介すればいいのです。ただ内容説明するのではなく、自分の研究能力をアピールするようにメリハリのある文章にしましょう。審査委員は研究内容そのものに興味があるのでなくそのような研究成果をあげたあなたの能力を測りたいだけですので。

書くことがないので、自分の履歴を書いたり(大学卒業年度、博士取得年度、働いた研究機関など)、学会発表のリストや症例報告のリストをつけたりする人もいるでしょう。それはそれで採択されている例も見たことがありますので、ダメということは全然ありません。しかし、評価対象としての重要度、優先度はパブリケーションです。

査読付き英語原著論文>症例報告論文>学会発表 の順だと思います。

査読付き英語原著論文が一報しかない業績であっても、審査種目(小区分)をうまく選び、研究紹介をうまく書けば採択される可能性はあり、実際にそういう例を見たことがありますので、希望を捨てずに頑張りましょう。

科研費の申請書がうまく書けない理由:やりたいことが頭の中で整理されていない

やりたいことが頭の中で整理されていない状態で科研費の申請書を書いていても、うまく書けるわけがありません。紙面を埋めることができたとしても、論理展開が不明瞭で、同じようなことを繰り返し述べているだけだったり、無関係なことを書いてしまっていたりしています。

研究計画調書を書き始める前に一番大事なことは、研究計画のあらすじをたてておくことです。JSPSからダウンロードしてきた様式の空白のページにいきなり文章を書きだしてはいけません。

まずは、計画の全体像を、箇条書きにしてみましょう。何をしりたいので、何をする。どういう方法でそれをする。という論理的な構成が大事です。

研究のデザインをするためには、知りたいこと、ある生命現象のメカニズムに関する作業仮説をしっかりと立てることです。それを、一枚の図(俗に言うポンチ絵)にまとめることが大事です。作業仮説の図を申請書に掲載するかしないかで、審査委員の労力が劇的にかわります。

作業仮説の図が書けないということは、研究のアイデアが十分にクリアにはなっていないということです。申請書作成の大部分の時間は、作業仮説のわかりやすい図の作成に費やされるべきなのです。作業仮説の図が完成すれれば、それを見ながら文章を書いていけば、楽に書けます。審査委員はそれを見ながら文章を読んでいけば、楽に理解ができます。

あなたが書いた申請書に、作業仮説の図や、実験構想の図がありますか?もし、まだなければ、今すぐ作りましょう。

ダメな科研費申請書を書いてしまったことを知るためのセルフチェック方法

科研費申請書(研究計画調書)は、自分で書いていると、不備に自分では気づけません。自分の頭の中には全てが常識として入っていて、自分の中ではしっかりつながっているからです。しかしながら、自分が書いた申請書の日本語の文章がきちんと論理的につながっているとは限りません。分野買いの人が読んだときに、適切な順番で情報が与えられていないと、理解できないということになります。自分では気づけない、上手く書けていないことを知るためのセルフチェック方法をご紹介いたします。

背景のセクションに引用論文がありますか?

背景と問いを書きなさいというセクションを書く目的は、立てた問いが問うに値する重要性を持っていることを審査委員に納得させるためです。そのためには客観的に議論を進める必要があります。客観性=発表論文です。一つも論文を引用していないで背景を書いていたとしたら、それは審査委員を納得させるには不十分ということになります。

背景と問いのセクションに「問い」が明示されていますか?

非常に多くの人が、本研究の学術的な問いは~である。という書き方をしていません。しかし、審査委員は評価ポイントとして問いの重要性を評価しなければならないため、問いはどこに書いてあるんだろうと思って読みます。このセクションを最後まで読んだのに、何が問いだかわからなかったとしたら、問いが不明確という判断を下されてしまうでしょう。

独自性・創造性

論文報告がないのでこの研究には独自性があると言える。と書いていませんか?論文報告がないのでこの研究には独自性があるとは、言えません。取るに足らないことなので誰もやっていないだけなんじゃない?と突っ込みをいれられたら、どう答えますか?その答えこそ、ここに書くべきことなのです。

国内外の研究動向と位置付け

国内外の研究動向というからには、しっかりと他人の論文を引用して議論をしていないといけません。このセクションで論文がひとつも引用されていないとしたら、それは、このセクションをうまく書けていない証拠になります。

研究動向の研究って、なんの研究だかわかりますか?当たり前のことですが、それは研究目的に書いたような研究、あるいは学術的な問いとして書いたようなことを目指す研究です。全然違う研究の紹介をしてしまっていませんか?

研究計画

解析する。どうやって?検討する。どうやって?比較する。どうやって?どんな統計学的手法を用いて解析するのかは書かれていますか?多変量解析すると書いた場合に、独立変数は何と何で、従属変数は何でしょうか?多変量解析ができるほどに十分な例数がありますか?独立変数の数と、必要な症例数の数との関係を知っていますか?

研究計画に書いた実験がすべて期待した通りの結果となったときに、その結果から導きだされる結論=研究目的の関係になっていますか?そうなっていない研究計画調書を書いてしまっている人がたくさんいます。同じ落とし穴にかからないようにしましょう。

研究分担者を置いた場合には、彼らはどんな実験を担当するのでしょうか?教授を研究分担者にしておいて、教授の役割=研究の指導なんて書いてしまっていませんか?教授に指導していただくと書く初心者さんが多数いますが、そう書いた瞬間に、則、不採択です。

科研費の教科書

  1. http://ikagaku.jp/archives/8202#toc19

科研費申請書の書き方

科研費申請書の書き方:業績欄をどう書くか

科研費の基盤Cや若手研究は、業績欄が2ページあります。研究者の遂行能力と研究環境を書きなさいというセクションです。2つ書くから1ページずつ、じゃあありません。遂行能力と研究環境のどっちが審査委員にとって重要かといえば、もちろん遂行能力(=過去の業績)なわけですから、分量としては、1.5ページ以上を業績の記述に割き、半ページ~4分の1ページ程度、環境について書くくらいが適当なバランスだと思います。

臨床系の人は、原著論文と、症例報告と、総説その他エディトリアルなどをごちゃまぜに書く人がいますが、それは全くお勧めしません。なぜなら、原著論文こそが最重要であって、それ以外は、さほど重みがないからです。審査委員がこのセクションで知りたいことは、ファーストオーサーの論文が何本あるのか、どのジャーナルに出しているのか(トップジャーナルに出しているか)、最近の仕事かどうかです。それが瞬時にわかるように書かないと、意味がないのです。古い先生は昔と同様に論文リストを書いてお終いにする人が多いのですが、それだけだとアピール不足。やはり、過去の論文のどれが、どんなふうに今回の研究計画に関連するのかをしっかり日本語の文章でも書いたほうが良いです。科研費の採択は、他人の書いた申請書と比べられて決まるわけですから、楽して書いたものと精魂込めて丁寧に書かれたものとが比べられたときに、どちらが好印象を残すかは明らかでしょう。

審査委員目線で自分が書いた申請書をチェックできる客観性を備えた人のほうが、採択される可能性は高いといえます。

論文業績が無い場合の書き方

博士号を持っていないため基盤研究(C)に出すのだが、英文の原著論文が筆頭では一方もないとか、若手研究に出すのだが博士論文の一報しか発表論文がないとか、業績が少なくて困っている人は、どう業績欄を埋めればいいのでしょうか。

まず大事なことは、業績がなくても業績欄の2ページは最後の行まで書ききることです。業績はなくても誠意、熱意があることを示しましょう。で、何を書くかですが、一報でも論文があるのなら、その論文の紹介を図なども交えてしましょう。研究計画と関連性が薄くても構いません。研究遂行能力、計画の実現可能性を示すことが、このセクションを書く目的だからです。論文がないなら学会発表の内容でもいいので、とにかく書きましょう。論文になっていないけれどもデータが何かあるのなら、その図を載せて解説しましょう。臨床経験しかないのなら、日常の臨床業務のことでも書いたほうが、余白を残すよりはましです。基盤研究(C)で研究分担者を置いている場合は、もちろん研究分担者の業績も書きます。ただし、研究代表者よりも多くのスペースを割くのはバランスが悪いので気を付けましょう。

科研費申請書の書き方:勝てないケンカはしない

書き方というよりも、採択されるための戦略の話なのですが。どんなに頑張って科研費の申請書を書いても、しょせん科研費にはライバルが存在しており、相対的な評価で序列が付けられて採否が決まります。研究テーマや研究計画が十分練られた研究計画調書が集まってくると、最後は業績の良し悪しが効いてきます。つまり、どれほど申請書の完成度を上げたとしても、かなわないときにはかなわないのです。

自分は神経内科医だから神経内科学関連、自分は循環器医だから循環器内科学関連などと、科研費を応募する審査種目を決めつけてしまってはいませんか?自分の研究計画のキーワードを用いて、KAKENを検索してみてください。類似した研究テーマは実はいろいろな審査種目で採択されていることがあります。

そして採択課題、研究代表者、リサーチマップ(もしリンクがなければグーグル検索)、あるいはその研究者の所属する大学の教員データベースなどを調べて、どれくらい業績のある人がその審査種目で採択されているかを眺めてみましょう。もちろん、ここでのポイントは、どれくらい業績が無い人でも採択されているのか?です。

審査種目の競合の強さを調べて、ここなら自分の業績でも太刀打ちできると思えるような、勝てる土俵で勝負しましょう。科研費は参加することに意義があるオリンピックではないのです。応募して採択されてナンボです。

同じような申請書を、不採択になった翌年、審査種目を変えて出しただけで採択されたという例があることは、皆さんも聞いたことがあるはず。世の中は、不均一にできているのです。

科研費申請書の書き方

 

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