「着想の経緯」と、「動向・位置づけ」の2つに分けて書く
科研費申請書(研究計画調書)の「1研究目的、研究方法など」の(3)として、「本研究の着想に至った経緯や、関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」を書く欄があります。(3)は2つに分けて、「本研究の着想に至った経緯」、「関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」のそれぞれの項目を立てたほうが、審査委員にとって読みやすくなることでしょう。
なお、動向と位置づけは表裏一体なので、「動向」と「位置づけ」を分けて書くことはお勧めできません。
上手く書けていないことをセルフチェックで知る方法
さて、その「関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ」をどう書くかについてですが、失敗例から考えるのがわかりやすいです。
一番初歩的なミスは、文献の引用が全く行われていないというもの。研究動向を説明する以上、発表論文の紹介がゼロというのはあり得ません。
次にありがちなのが、関連する論文の紹介の羅列になっているもの。~という報告がある。~という報告もある。と言った感じです。
自分を含めたその研究領域の共通の目標は何か
このセクションを書き始める前に考えるべきことは、一体関連論文というのは何に関連した論文ということか?ということです。それはもちろん、申請者の提案する研究計画に関連した論文です。言い換えると、申請者の研究目的と同じ研究目的をもった世界中の人たちは、どんな研究論文を発表しているのか、そんな中にあって申請者の提案する研究はどう位置づけられるのかを書かないといけないのです。競争がない研究というものはあまりありません。大抵の場合、世界中でみんなが同じようなことを考えて、同じような目標に向かって思い思いのアプローチで研究を進めているわけです。ですから、そういった他人の研究のアプローチの限界や弱点を指摘して、自分の研究アプローチの利点を明確に述べることによって自分の位置づけを明確にすることが求められているのです。。別に他人をディスれと言っているのではありません。他のアプローチの限界点を示し、自分がその限界をどう突破する研究方法を使うのかを書きなさいということです。
関連する国内外の研究動向は、研究のゴールを意識していないと書けません。そしてここでいう「研究のゴール」の捉え方は、広くもとれるし、狭くもとれます。例えば、がんの遺伝子治療に関する科研費テーマで申請書を書いているとします。そのとき研究のゴールは、「がんの治療」と大きくとらえることもできますし、「がんの遺伝子治療」と狭めることもできます。さらに自分の計画が遺伝子治療の中でもウイルスベクターを用いるものなのであれば「ウイルスベクターを用いたがんの遺伝子治療」にまで狭めることもできます。ゴール設定の大きさによって、紹介すべき関連論文も変わってきます。
このセクションの書き方でよくある失敗として、もう一つあげるなら、それは研究のゴールがズレた内容に関して書いてしまっているというもの。書いている本人は、関連した内容を書いているので案外気付かないのです。例えば、がんの遺伝子治療について書かないといけないのに、なぜか、がんの疫学的研究を紹介しているといった具合です。フォーカスする内容がちょっとズレるだけで、説得力が激減するので要注意です。
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