筋肉はどうやってエネルギーを得ているのか:ATP産生の3つの経路

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生体内でエネルギー通貨と呼ばれているのがATP(Adenosine Triphosphate;アデノシン三リン酸)です。しかし、筋肉の細胞内には1秒足らずの筋収縮を可能にする量のATPしか存在しないそうです。そこで消費したATPをすぐに元にもどすために、筋肉に多量に存在するクレアチンリン酸が使われます。クレアチンキナーゼという酵素の働きにより、クレアチンリン酸からリン酸基が取られてクレアチンになり、そのリン酸基はADPに移されてATPが再生します。このクレアチンリン酸を利用したエネルギー供給は、クレアチンリン酸が枯渇する10秒程度しか持続しないようです。酸素の供給がない場合には、解糖系と合わせて、このようなエネルギー供給経路が働くそうです。酸素が十分あれば、解糖系の産物であるピルビン酸はアセチルCoAに変換されて、クエン酸回路がまわりますが、酸素が少ない場合には、ピルビン酸は乳酸にまで変換されます。

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筋肉に乳酸が溜まるとよくいう、あれですね。昔は、乳酸が溜まることが筋肉疲労の原因と考えられたそうですが、今は、この「乳酸=疲労物質」説は否定されているそうです。乳酸は筋肉からは排出されて、肝臓で再びグルコースに変換されます。そうしてできたグルコースが再び筋肉に運ばれて、取り込まれて使われるわけで、循環するのですね(コリ回路と呼ばれる)。

筋肉で産生された乳酸(lactic acid; lactate 化学式:C3H6O3、 構造式:CH3CH(OH)COOH)は血中を通って肝臓に取り込まれ、乳酸デヒロゲナーゼという酵素の働きで水素原子が2つとれて、ピルビン酸(CH3(C=O)COOH)に変換されます。乳酸は、一つの炭素にメチル基-CH3と水酸基-OHとカルボキシ基-COOHが結合したものと覚えれば、覚えやすいですね。

解糖系の最後のステップで、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸ができる過程は不可逆反応であるため、糖新生においては、このステップを逆行できません。そのためピルビン酸はミトコンドリアに入って、ピルビン酸カルボキシラーゼの働きで(二酸化炭素とATPを用いて)オキサロ酢酸を作ります。このオキサロ酢酸は、クエン酸回路を逆行してリンゴ酸になり、ミトコンドリアから外にでて再びオキサロ酢酸に変換され、さらにホスホエノールピルビン酸に変換されます。あとは解糖系を逆行していき、最後、フルクトース1,6-ビスリン酸からフルクトース6リン酸になるステップと、グルコース6リン酸からグルコースになるステップは、、フルクトース1,6-ビスフォスファターゼ、グルコース6ホスファターゼという、肝臓にしかない酵素によって触媒されます。

  1. 畠山『生化学』p91
  2. 乳酸(にゅうさん)  e-ヘルスネット

強度がそれほど強くない、持久走などの有酸素運動の場合は、ATP産生に酸素を使うのが主要な経路になります。

このように、筋肉を使う運動の場合は、酸素がどれくらい豊富に使えるかとタイムコースによって、3つのATPを供給する経路が使われているということになります。(1)クレアチンリン酸、(2)解糖系(乳酸にまで至る代謝系)、そして、(3)「解糖系および脂肪酸のβ酸化ークエン酸回路ー電子伝達系」の3つです。クエン酸回路に入る物質はアセチルCoAであり、アセチルCoAは、解糖系においてピルビン酸から作られる経路と、脂肪酸のβ酸化によって作られる経路とがあります。(1)と(2)の代謝経路は、酸素を必要としません。(3)は電子伝達系において酸素が消費されます。解糖系の出発材料であるグルコースは、グリコー ゲンの分解によって作られます。

  1. 1-3.筋肉を動かす3つのエネルギー供給系 DNSZONE
  2. 呼吸と筋収縮で捉える「ATP」 ZKAI

 

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