自然免疫記憶のメカニズム
自然免疫に記憶が存在し、病原体感染によるエピゲノム変化の持続がその記憶メカニズムであることを明らかにしました。 … これまで、病原体に感染したことを記憶するのは獲得免疫だけとされていましたが、いくつかの現象から自然免疫にも記憶が存在することが示唆されていました。しかし、その記憶メカニズムが不明なため、自然免疫の記憶の存在を疑問視する声もありました。 … 自然免疫の記憶は特定の抗原の情報を特異的に認識する獲得免疫の記憶と異なり特異性がない、という特徴を持つことが分かりました。 … 自然免疫に記憶が存在するかどうかは、免疫学の根本的な重要課題であると共に、… 米国の科学雑誌『Nature Immunology』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(8月31日付け:日本時間9月1日)に掲載されます。(自然免疫の記憶メカニズムを解明-病原体感染によるエピゲノム変化が鍵- 2015年9月1日 理化学研究所)
- 自然免疫の記憶メカニズムを解明した研究者 2016年4月5日 理研
自然免疫記憶の例:BCG
In 2018, Netea’s team published a more direct test. They showed BCG stimulates initial immune defenses enough that it at least partly blocked another virus given experimentally a month later. (Could old vaccines for other germs protect against COVID-19? THE ASSOCIATED PRESS April 14, 2020 at 12:05 JST The Asahi Shimbun)
自然免疫記憶の例:BCGとCOVID-19
BCG接種したのは幼少期なのに、なぜ大人になってからも、COVID19に対する抵抗性が強いのでしょうか。ここが興味深いところです。実は、自然免疫の活性化は「記憶」されることが近年わかってきました。ここでいう「記憶」とは、自然免疫に係る遺伝子がすぐに発動できるように、クロマチン(DNAがパックされた構造体)がほどけた状態で維持されているということです。(自然免疫の記憶:BCGがコロナ抵抗性を上げる訳 自然免疫応用技研株式会社)
- Trained Innate Immunity, Epigenetics, and Covid-19 List of authors. Alberto Mantovani, M.D., and Mihai G. Netea, M.D. September 10, 2020 N Engl J Med 2020; 383:1078-1080 DOI: 10.1056/NEJMcibr2011679
- Safety and COVID-19 Symptoms in Individuals Recently Vaccinated with BCG: a Retrospective Cohort Study Cell Reports Medicine Volume 1, Issue 5, 25 August 2020, 100073
- Trained Immunity: a Tool for Reducing Susceptibility to and the Severity of SARS-CoV-2 Infection Cell 181, May 28, 2020
- Impact of Routine Infant BCG Vaccination on COVID-19 Masako Kinoshita Masami Tanaka Published:August 11, 2020DOI:https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.08.013 Journal of Infection VOLUME 81, ISSUE 4, P625-633, OCTOBER 01, 2020
- Why does Japan have so few cases of COVID‐19? Akiko Iwasaki Nathan D Grubaugh EMBO Mol Med (2020)12:e12481 2020 May 8 https://doi.org/10.15252/emmm.202012481
新型コロナウイルスとの闘いの一環として、BCGへの期待が高まっているようです。BCGワクチンを接種するという臨床試験がオランダで行われるそう。
They will recruit 1000 health care workers in eight Dutch hospitals who will either receive the vaccine, called bacillus Calmette-Guérin (BCG), or a placebo. BCG contains a live, weakened strain of Mycobacterium bovis,a cousin of M. tuberculosis,the microbe that causes TB. (The vaccine is named after French microbiologists Albert Calmette and Camille Guérin, who developed it in the early 20th century.) (Can a century-old TB vaccine steel the immune system against the new coronavirus? By Jop de VriezeMar. 23, 2020 , 6:25 AM Sciencemag.org news)
自然免疫記憶:その他の例
今回J Neherたちは、末梢で与えた炎症刺激も、脳内で急性の免疫訓練と免疫寛容を誘導し、長期生存する脳内常在性のマクロファージであるミクログリアで、特異的なエピジェネティック再プログラム化を引き起こすことを明らかにした。(https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/91904)
この研究では最初から、マクロファージがLPSなどで刺激された後、新たな刺激に反応しない現象はマイクロRNAが媒介すると決めて研究している。LPS刺激前後でmiRNAを比べmiR222のレベルがLPSで上昇し、これに合わせてマクロファージの反応性が低下することを明らかにする。miR222の機能をさらに調べるため、miR222をマクロファージに導入して刺激に対する反応低下の分子メカニズムを調べると、TNFのようにサイトカインが直接の標的になっている場合もあるが、ほとんどのサイトカインはクロマチンをオープンにするBAF複合体のコンポーネントBrg1の翻訳が抑えられ、STAT1/2を会する転写が抑制されることを発見する。(https://aasj.jp/news/watch/8635)