PCT出願と審査請求との関係がよくわからず頭が混乱したので、Geminiに訊いてみました。(頭の整理が追いつかず、要領を得ない質問を繰り返して、まどろっこしいやり取りになってしまいました。)
質問:PCT出願の場合、審査の依頼は必要?審査は日本で行われるだけ?だから通常通り、日本で審査のお願いを3年以内にするってこと?
Gemini 2.5 Pro:はい、「審査の依頼(出願審査請求)」は絶対に必要です。ただし、ご質問には非常に重要な誤解が含まれています。審査は、日本だけで行われるわけではありません。PCT出願(WO出願)は「世界特許」ではありません。あくまで「各国への出願手続きを束ねる」ためのものであり、審査と権利化は各国ごとに行われます。
1. 🇯🇵 日本で特許が欲しい場合 (ご質問のケース)
おっしゃる通り、日本で権利が欲しい場合は、日本の特許庁に対して3年以内に「出願審査請求」をする必要があります。
- 国内段階への移行(Entry into the National Phase):まず、PCT出願をした後、定められた期間内(通常、優先日から30ヶ月以内)に、日本の特許庁へ「日本で審査を希望します」という国内移行の手続きを行います。
- 出願審査請求: そして、その国内移行手続きとは別に、「出願審査請求」を行う必要があります。この期限は、PCT出願の「国際出願日」から3年以内です。
- 審査の実行: この請求があって初めて、日本の特許庁(JPO)の審査官が、日本の法律に基づいて審査を開始します。
もし3年以内に審査請求をしなければ、その出願は日本において「みなし取下げ」となり、権利化できなくなります。
2. 🇺🇸 🇪🇺 🇨🇳 他の国で特許が欲しい場合
ここがPCT出願のキモです。もし、日本と同時にアメリカでも特許が欲しい場合、
- 国内段階への移行:アメリカの特許庁(USPTO)に対しても、「国内移行の手続き」を行います(期限は同じく30ヶ月以内)。
- 審査請求(米国の手続き): アメリカの制度に従って、審査手数料をUSPTOに支払います。(※アメリカは日本のような「審査請求」という独立した手続きではなく、出願や移行の手続きと同時に審査料を払うのが一般的です)
- 審査の実行: USPTOの審査官が、アメリカの法律に基づいて、日本とは「別に」審査を行います。
結論
PCT出願(WO出願)とは、各国での審査の「予約券」を一括で取った状態にすぎません。
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日本で特許が欲しければ → JPOに「国内移行」+「3年以内に審査請求」
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米国で特許が欲しければ → USPTOに「国内移行」+「審査料の支払い」
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欧州で特許が欲しければ → EPOに「国内移行」+「審査請求」
このように、権利が欲しい全ての国(官庁)で、個別に審査の手続き(と費用の支払い)が必要になります。日本の審査官が、アメリカや欧州の分の審査まで行うことはありません。
質問:PCT出願というのは、日本での通常の出願とかねているということ?日本だと3年以内に審査請求が必要だけど、米国の場合だと、何年以内に「各国移行」が必要なの?
Gemini 2.5 Pro:いいえ、それは少し違います。PCT出願(国際出願)は、日本の通常の出願とは別の手続きです。そして、米国への「国内移行」の期限は、原則として30ヶ月です。この「30ヶ月」と、日本の「3年」が非常に混同しやすいポイントですので、整理してご説明します。
1. 「PCT出願」と「日本の出願」の関係
PCT出願は、それ自体が自動的に「日本での通常の出願」を兼ねるわけではありません。
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PCT出願とは?
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あくまで「各国共通の出願予約券(出願日を確保する権利)」のようなものです。
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この「予約券」を使って、「日本で権利が欲しい」「アメリカで権利が欲しい」と後から宣言する必要があります。
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国内移行とは?
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この「後から宣言する」手続きが、「国内移行(National Phase Entry)」です。
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PCT出願をした後、定められた期限内に「日本の特許庁」や「米国の特許庁」それぞれに国内移行の手続きをして、初めてその国での「通常の出願」として扱われ、審査の土俵に乗ります。
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2. 米国の期限:「国内移行」と「審査請求」
ご質問の核心である「期限」について、2つのステップに分けて考える必要があります。
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ステップ①:国内移行の期限(パークへの入場期限)
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これは「この国で審査を受けたいです」と宣言する期限です。
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この期限は、「優先日」(※)からカウントされます。
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米国: 30ヶ月
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日本: 30ヶ月
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欧州: 31ヶ月
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中国: 30ヶ月
(※「優先日」とは、一番最初に出願した日(例えば、PCT出願の前に日本の国内出願をしている場合はその日)のことです。もし最初の出願がPCT出願なら、その「国際出願日」からカウントします。)
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ステップ②:審査請求の期限(審査を開始させる期限)
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これは「国内移行」をした後に、「審査を開始してください」と依頼する期限です。
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日本:
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おっしゃる通り、国際出願日から3年以内に「出願審査請求」が必要です。
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(国内移行の30ヶ月(=2.5年)の期限とは別に、3年の期限が設定されています。)
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米国:
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日本のような明確な「審査請求」制度はありません。
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「国内移行」の手続き(30ヶ月以内)を行う際に支払う手数料の中に、審査料も含まれています。
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そのため、実質的には「国内移行」の期限である30ヶ月が、審査をスタートさせるための手続き期限となります。
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まとめ
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Q. PCTは日本の出願を兼ねる?
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A. いいえ。日本で権利化するには、PCT出願とは別に「国内移行」の手続き(優先日から30ヶ月以内)が必要です。
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Q. 米国の移行期限は?
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A. 優先日から30ヶ月以内です。これは日本の移行期限(30ヶ月)とほぼ同じです。
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Q. 日本の「3年」との違いは?
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A. 日本の「3年」は、「出願審査請求」の期限です。
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米国にはその制度がなく、移行期限(30ヶ月)までに審査料を払うことで審査が始まります。
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質問:日本国内の出願とPCT出願の両方をしたいときに、まず最初に日本で出願して、しばらくしてからPCT出願するってあり?逆に最初にPCT出願して、それから「各国移行」の手続きとして日本に出願するのもあり?
Gemini 2.5 Pro:はい、どちらのパターンも「あり」です。どちらも、日本の出願人が国際的な権利取得を目指す上で、日常的かつ合法的に使われている主要な手続きです。
1. 🇯🇵 パターンA:日本出願(先) → PCT出願(後)
(最も一般的な方法です)
これは「パリ条約に基づく優先権」を利用する方法です。
- 最初の手続き:まず、日本の特許庁に通常の「日本国特許出願」を行います。(例:2025年11月16日)
- 1年間の猶予:この最初の日(日本の出願日)から1年以内に、その出願を「優先権の基礎」として「PCT出願(国際出願)」を行います。(期限:2026年11月16日)
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メリット:
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1年間の「考える時間」が手に入ります。この1年間で、その発明が本当に有望か、どの国で権利が欲しいか、市場調査や追加実験を行うことができます。
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まずは日本語の明細書で出願できるため、発明者とのやり取りや書類作成がスムーズです。
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1年後にPCT出願が不要と判断すれば、そこでやめることも可能です。
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2. 🌍 パターンB:PCT出願(先) → 日本へ国内移行(後)
これは、最初のアクションとしてPCT出願を行う方法です。
- 最初の手続き:最初から「PCT出願」を(通常、日本の特許庁を窓口=受理官庁として)行います。(例:2025年11月16日)
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この時点で、日本を含む権利が欲しい国を「指定」しておきます。
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- 後の手続き(各国移行):この国際出願日(=優先日)から30ヶ月以内に、日本に対して「国内移行」の手続きを行います。(期限:2028年5月16日)
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(もちろん、米国や欧州など他の国にも、それぞれの期限内に「国内移行」を行います。)
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- 審査請求(日本):国内移行とは別に、国際出願日から3年以内に、日本の特許庁へ「出願審査請求」を行う必要があります。(期限:2028年11月16日)
まとめ
- パターンA(日本が先):日本企業や大学の圧倒的多数がこの方法を選びます。「まず日本で出願し、1年以内に国際出願(PCT)を検討する」という流れです。
- パターンB(PCTが先):最初からグローバル展開が確定している場合や、何らかの事情で1年間の猶予が不要な場合に選ばれます。
どちらを選んでも、最終的に各国(日本を含む)で審査請求(またはそれに準ずる手続き)が必要になる点は同じです。
質問:PCT出願を先にした場合、日本に対しても各国移行の手続きが必要なの?あとから通常の出願をするのではなく?「各国移行」という行為には、日本での審査請求は含まれていない?別に行うの?
Gemini 2.5 Pro:はい、その2つのご質問は、PCT出願のプロセスで最も重要なポイントです。結論から申し上げますと、
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PCT出願を先にした場合でも、日本に対して「国内移行」の手続きは絶対に必要です。
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「国内移行」の手続きと「出願審査請求」は、完全に別々の手続きです。
1. 🇯🇵 なぜ日本への「国内移行」が必要なのか?
「PCT出願」は、日本の特許庁(JPO)を窓口(受理官庁)として出願したとしても、それはあくまで国際的な手続き(予約)をしたに過ぎません。
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PCT出願 = 世界各国共通の「予約券」
この「予約券」を使って、実際に各国で審査のテーブルに着くためには、権利が欲しい国すべてに対して「国内移行(National Phase Entry)」という手続きを個別に取る必要があります。
これは、出願人の「自国」である日本も例外ではありません。
もしPCT出願(WO出願)をしただけで、日本への国内移行手続き(優先日から30ヶ月以内)を行わなければ、その出願は日本において「みなし取下げ」となり、権利化の道が閉ざされてしまいます。(ご質問の「あとから通常の出願をする」のではなく、この「国内移行」こそが、PCT出願を日本の審査の土俵に乗せるための正式な手続きとなります。)
2. 🚦 「国内移行」と「審査請求」は別物
ここが最も混同しやすい点ですが、この2つは目的も期限も全く異なります。
A. 国内移行(エントリー手続き)
- 目的:PCT出願(予約券)を、日本の特許庁の正式な審査対象リストに載せるための「エントリー(参加表明)」手続きです。
- やること:日本の特許庁に「国内書面」を提出し、国内移行のための手数料を支払います。(もしPCT出願を外国語でしていれば、翻訳文も提出します)
- 期限:原則として優先日から30ヶ月以内
B. 出願審査請求(審査開始スイッチ)
- 目的: エントリーさせた出願について、「今から中身の審査(新規性や進歩性の判断)を開始してください」と正式に「依頼」する手続きです。
- やること: 日本の特許庁に「出願審査請求書」を提出し、高額な審査請求料を支払います。
- 期限: PCT出願の国際出願日から3年以内
まとめ
PCT出願を先にして日本で権利が欲しい場合、両方のアクションが必要です。
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30ヶ月以内に「国内移行」の手続きをする。(=審査の土俵に乗る)
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3年以内に「出願審査請求」の手続きをする。(=審査の開始を依頼する)
「国内移行」は単なるエントリーフィー(参加費)の支払いに過ぎず、審査のスイッチは押してくれません。実際に審査をしてもらうには、「出願審査請求」という別のアクション(と高額な費用)が別途必要になります。
質問:それはアメリカに「各国移行」する場合も同じ?審査請求はあらためて米国の特許局に対して必要ってこと?自動で審査は始まらないの?
Gemini 2.5 Pro:いいえ、そこがアメリカと日本との大きな違いです。アメリカには、日本のような「出願審査請求」という独立した手続き(と、3年という期限)は、ありません。その代わり、アメリカでは「国内移行」の手続きと「審査の依頼」が、事実上一体化しています。
🇺🇸 アメリカの場合 (USPTO)
アメリカでは、「国内移行」の手続きの際に、審査料(Examination Fee)も一緒に支払うのが一般的です。
- 期限: 優先日から30ヶ月以内に、USPTO(米国特許商標庁)へ「国内移行」の手続きを行います。
- 手続き(ここが重要): この時、出願料(Filing Fee)や国内移行手数料(National Fee)などと一緒に、「審査料 (Examination Fee)」も支払います。
- 審査の開始: この「審査料」の支払いが、実質的に日本の「審査請求」の役割を果たします。この支払いをもって「審査を依頼した」とみなされ、順番が来たら審査が開始されます。
したがって、「自動で審査が始まる」わけではありません。30ヶ月以内に国内移行の手続き(と審査料の支払い)をしなければ、その出願はアメリカにおいて放棄 (Abandoned)されたものとして扱われ、権利化できなくなります。
🇯🇵 日本の場合 (JPO) との比較
ご存知の通り、日本はこの2つのステップが明確に分離しています。
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国内移行: 優先日から30ヶ月以内
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審査請求: 国際出願日から3年以内
このため、日本では「ひとまず国内移行だけしておいて、審査請求(と高額な費用の支払い)は、3年目のギリギリまで様子を見てから決める」という戦略的な遅延が可能です。しかし、アメリカでは30ヶ月の移行期限までに審査料も払う必要があるため、その判断を日本より早く(30ヶ月の時点で)下さなければならない、ということになります。
まとめ
- 日本: 「国内移行」(30ヶ月)と「審査請求」(3年)は別々の手続き。
- アメリカ: 「国内移行」(30ヶ月)の手続きの中で「審査料」も一緒に支払う。この支払いが「審査請求」の役割を果たす。