血管の病気:大血管症、細小血管症、大血管炎、中血管炎、小血管炎

大血管症、細小血管症とは?

大血管症(だいけっかんしょう)と細小血管症(さいしょうけっかんしょう)は、血管の太さによって分類される血管の病気で、特に糖尿病の合併症としてよく知られています。高血糖の状態が続くことで、全身の血管がダメージを受けることが主な原因です。


## 大血管症 (Macroangiopathy)

大血管症は、心臓や脳、足などにある太い血管が動脈硬化(どうみゃくこうか)を起こし、狭くなったり詰まったりする病気です。動脈硬化は、高血糖に加えて高血圧、脂質異常症(悪玉コレステロールの増加など)、肥満、喫煙などが重なることで進行が加速します。

主な病気

  • 虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん): 心臓に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)が狭くなる**狭心症(きょうしんしょう)や、詰まってしまう心筋梗塞(しんきんこうそく)**が含まれます。胸の痛みや圧迫感が特徴です。
  • 脳血管障害(のうけっかんしょうがい): 脳の血管が詰まる**脳梗塞(のうこうそく)**や、破れる脳出血などがあります。手足の麻痺や言語障害などの症状が現れます。
  • 末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん): 主に足の血管が動脈硬化を起こし、血流が悪くなる病気です。歩くと足が痛む、足が冷たい、しびれるなどの症状が見られ、進行すると潰瘍や壊疽(えそ)に至ることもあります。

## 細小血管症 (Microangiopathy)

細小血管症は、目や腎臓、神経などにある非常に**細い血管(毛細血管)**が傷ついて、その働きが悪くなる病気です。大血管症と比べて、より糖尿病に特有の合併症と言われています。これらは自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な検査が非常に重要です。

主な病気(糖尿病の三大合併症)

  • 糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう): 目の奥にある網膜(もうまく)の細い血管が傷つき、視力低下をきたす病気です。進行すると失明に至る可能性があり、成人の中途失明原因の上位を占めています。「めじ」の「」にあたります(視覚の「し」)。
  • 糖尿病腎症(とうにょうびょうじんしょう): 腎臓で血液をろ過する役割を持つ毛細血管の塊(糸球体)が傷つく病気です。初期は無症状ですが、進行すると体内の老廃物を尿として排出できなくなり、人工透析が必要になることがあります。「しじ」の「」ではありませんが、「しめ」の「」にあたります(腎臓の「じ」)。
  • 糖尿病神経障害(とうにょうびょうしんけいしょうがい): 手足の末梢神経や、内臓の働きを調整する自律神経が傷つく病気です。足先のしびれや痛み、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。感覚が鈍ることで怪我に気づきにくくなることもあります。「しめ」の「」と「」以外の「」にあたります(神経の「し」)。

まとめ

大血管症 細小血管症
影響を受ける血管 太い血管(動脈) 細い血管(毛細血管)
主な原因 高血糖、高血圧、脂質異常症などによる動脈硬化 長期間の高血糖
代表的な病気 心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患 糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害

大血管症と細小血管症は、どちらも生命や生活の質(QOL)に深刻な影響を及ぼす可能性があります。予防や進行を遅らせるためには、血糖値のコントロールを基本として、血圧や脂質の管理、禁煙などの生活習慣の改善が不可欠です。

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中血管症という言葉は無いようです。

中血管症ってある?

はい、ご質問ありがとうございます。良い点に気づかれました。

結論から言うと、「大血管症」や「細小血管症」のように一般的に使われる**「中血管症(ちゅうけっかんしょう)」という医学用語は、通常ありません。**

しかし、血管の太さで病気を分類する考え方は存在し、特に**「血管炎(けっかんえん)」**という自己免疫に関連する病気のグループでは、中くらいの太さの血管が侵されるものが明確に分類されています。

「中血管炎」という分類

大血管症」や「細小血管症」が主に糖尿病の合併症として、動脈硬化や高血糖による血管のダメージを指すのに対し、「血管炎」は血管そのものに炎症が起きる病気です。

この血管炎は、炎症が起きる血管の太さによって「大血管炎」「中血管炎」「小血管炎」に分類されます。

中血管炎(Medium-vessel vasculitis)とは

主に、各臓器につながる動脈など、中くらいのサイズの動脈に炎症が起こる病気の総称です。

代表的な病気

  • 結節性多発動脈炎(けっせつせいたはつどうみゃくえん): 全身の中くらいの太さの動脈に炎症が起こり、血管が狭くなったり、瘤(こぶ)ができたりします。発熱、体重減少、関節痛、筋肉痛、皮膚の症状など、多彩な症状が出ます。
  • 川崎病(かわさきびょう): 主に4歳以下の乳幼児に発症する病気で、全身の中くらいの血管、特に心臓に栄養を送る冠動脈(かんどうみゃく)に炎症を起こしやすいことが特徴です。高熱、目の充血、発疹、手足の腫れなどの症状が現れます。

まとめ

  • 「中血管症」という言葉は一般的ではない。
  • 「大血管症」「細小血管症」は主に糖尿病合併症の文脈で使われる。
  • 血管の太さによる分類は存在し、特に**「血管炎」の領域で「中血管炎」**という分類が用いられる。
  • 「中血管炎」には、結節性多発動脈炎や川崎病といった特定の病気が含まれる。

したがって、「中くらいの血管の病気」という概念は確かに存在しますが、それを「中血管症」と呼ぶことは稀(まれ)である、とご理解ください。

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大血管炎、中血管炎、小血管炎とは?

血管炎(けっかんえん)とは、血管の壁に炎症が起こる病気の総称です。免疫システムの異常により、自身の血管を攻撃してしまうことで発症すると考えられています。

血管炎は、炎症が起きる血管の「太さ」によって、主に大血管炎中血管炎小血管炎の3つに分類されます。この分類は、現れる症状や影響を受ける臓器を理解する上で非常に重要です。

大血管炎・中血管炎・小血管炎の主な違い

分類 大血管炎 (Large-Vessel Vasculitis) 中血管炎 (Medium-Vessel Vasculitis) 小血管炎 (Small-Vessel Vasculitis)
侵される血管 大動脈とその主要な分枝 (例:心臓から出てすぐの太い動脈、首や腕へ向かう動脈) 各臓器へ血液を送る中くらいの動脈 (例:腎臓、肝臓、腸の動脈、心臓の冠動脈) 臓器の中にある細い動脈、毛細血管、細い静脈
代表的な病気 高安動脈炎(たかやすどうみゃくえん) • 巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん) 結節性多発動脈炎(けっせつせいたはつどうみゃくえん) • 川崎病(かわさきびょう) ANCA関連血管炎  - 顕微鏡的多発血管炎  - 多発血管炎性肉芽腫症  - 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 • IgA血管炎
好発年齢層 高安動脈炎: 40歳以下の若い女性 巨細胞性動脈炎: 50歳以上の高齢者 結節性多発動脈炎: 中年 川崎病: 主に4歳以下の乳幼児 中年~高齢者に多い
主な症状・特徴 血管が詰まることによる虚血症状が中心腕や足: 脈が触れにくい、血圧の左右差、手足のだるさ・冷感 • 頭部: めまい、失神、頭痛 • 顎・首: 噛むと顎が疲れる(顎跛行)、首の痛み • 視覚: 一時的な視力低下、失明 全身症状と各臓器の多彩な症状全身: 発熱、体重減少、倦怠感 • 皮膚: 皮下結節、潰瘍、網目状の皮疹 • 神経: 手足のしびれ、麻痺(多発単神経炎) • 消化器: 腹痛、下血 • 腎臓: 高血圧、腎梗塞 • 心臓: (川崎病で)冠動脈瘤 皮膚・腎臓・肺の症状が特徴的皮膚: 点状出血(紫斑)、特に下肢に多い • 腎臓: 血尿、蛋白尿(急速進行性糸球体腎炎) • : 咳、血痰、呼吸困難(肺胞出血) • 鼻・耳: 鼻血、中耳炎、鞍鼻(鼻が低くなる) • 関節: 関節痛

各分類の詳細

1. 大血管炎

体の中心となる太い血管が「水道管の元栓」のように炎症を起こし、その先へ血液が流れにくくなることで症状が出ます。

  • 高安動脈炎: 若い女性に多く、「脈なし病」とも呼ばれます。腕の脈が弱くなったり、血圧に左右差が出たりするのが特徴です。
  • 巨細胞性動脈炎: 高齢者に多く、こめかみを通る側頭動脈の炎症による頭痛や、ものを噛むときの顎の痛みなどが特徴的です。視力障害をきたすことがあるため、早期の治療が重要です。

2. 中血管炎

各臓器に枝分かれする中くらいの動脈が障害されます。そのため、全身の様々な臓器に多彩な症状が現れるのが特徴です。

  • 結節性多発動脈炎: 発熱や体重減少といった全身症状とともに、皮膚の結節や潰瘍、手足のしびれなどがみられます。
  • 川崎病: 乳幼児に多く、高熱や発疹などに加え、心臓の冠動脈に瘤(こぶ)ができることがあるため、注意深い経過観察が必要です。

3. 小血管炎

臓器の中の非常に細い血管が障害されます。特に毛細血管が豊富な腎臓、そして皮膚に症状が出やすいのが特徴です。

  • ANCA関連血管炎: 自己抗体の一種である「ANCA」が関連する血管炎の総称です。腎臓の機能が急激に悪化する「急速進行性糸球体腎炎」や、肺からの出血(肺胞出血)など、重篤な臓器障害を起こしやすい病気です。
  • IgA血管炎: 子供に多く見られ、足の紫斑、腹痛、関節痛が特徴的です。以前はアレルギー性紫斑病やヘノッホ・シェーンライン紫斑病と呼ばれていました。

このように、血管炎は侵される血管の太さによって、原因となる病気や症状が大きく異なります。いずれも専門医による正確な診断と、ステロイドや免疫抑制薬を用いた適切な治療が必要な病気です。

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