外科手術後の癒着には、ご質問の**線維性癒着(せんいせいゆちゃく)の他に、その前段階であるフィブリン性癒着(フィブリンせいゆちゃく)**があります。
この2つは、癒着が形成される時間経過と組織の状態で分類されます。
1. フィブリン性癒着 (Fibrinous Adhesion)
-
時期: 手術直後~数日以内(早期)
-
特徴:
-
手術による炎症で、血液や体液に含まれる「フィブリン」というタンパク質が糊(のり)のように臓器の表面を覆い、くっついた状態です。
-
まだ組織としては固まっておらず、薄い膜(膜様)のようにもろいのが特徴です。
-
血管はほとんど含まれていません(無血管性)。
-
-
経過: 本来、体にはこのフィブリンを溶かす仕組み(線溶系の働き)があり、多くの場合、この段階で自然に溶けてなくなります。
2. 線維性癒着 (Fibrous Adhesion)
-
-
時期: 手術後数日~数週間(後期)
-
特徴:
-
フィブリン性癒着がうまく溶けずに残ると、そこへ線維芽細胞(せんいがさいぼう)などが集まってきます。
-
フィブリンがコラーゲンなどの線維組織に置き換わり、強固で丈夫な組織になります。これが「線維性」と呼ばれる理由です。
-
多くの場合、新生血管を含み(血管性)、組織として定着します。
-
-
- 経過: 一度この状態になると自然に消えることはほぼなく、これが腸閉塞(イレウス)や痛み、不妊などの長期的な問題を引き起こす原因となります。
まとめ
癒着は「①フィブリン性(早期・もろい)」から「②線維性(後期・強固)」へと進行します。
-
フィブリン性癒着: 手術直後の「仮の癒着」。多くは自然に治る。
-
線維性癒着: 仮の癒着が治らずに「本格的な癒着(瘢痕組織)」になったもの。腸閉塞などの原因となる。
外科手術で問題となるのは、主にこの線維性癒着の方です。
(Gemini 2.5 Pro)