ビタミンB3はナイアシンとも呼ばれ、ニコチン酸とニコチンアミドを合わせた総称です。ビタミンB3欠乏症は、ペラグラで、その症状はいわゆる3Dすなわち皮膚炎・下痢・認知症です。
ビタミンB3(ナイアシン)欠乏症:ペラグラの症状
ナイアシンとは、ビタミンB₃ のことで、体の中では NAD⁺ という物質になって、食べ物からエネルギーを作るときに使われます。たとえていうなら、スマホでいうと「バッテリーに電気を充電・放電する回路」みたいな役割。ナイアシンすなわちビタミンB3が欠乏するとどうなるかというと、エネルギーをよく使う場所ほどダメージを受けます。その代表が 皮膚・腸・脳になります。
皮膚炎(Dermatitis)
皮膚は毎日新しい細胞に入れ替わっていて、エネルギーが必要です。ナイアシン不足だと、細胞の修復が追いつかず、紫外線や摩擦のダメージが残ります。特に日光に当たる部分が赤くただれ、やがて色素沈着やかさぶたになります。
下痢(Diarrhea)
腸の内側の粘膜細胞も新陳代謝が激しい細胞です。ナイアシンが足りないと、腸の表面がボロボロになって炎症を起こし、水分の吸収ができなくなります。その結果、下痢が続きます。
認知症(Dementia)
脳は24時間エネルギーを使い続ける器官です。ナイアシン不足でエネルギーが作れなくなると、神経細胞の働きが弱り、混乱・記憶障害・幻覚などが起こります。これは進行すると命に関わります。
これら3つをまとめて、3D症状と呼ばれます。
- Dermatitis(皮膚炎) → 皮膚が炎症を起こ
- Diarrhea(下痢) → 腸粘膜の炎症で水分吸収ができない
- Dementia(認知症) → 脳がエネルギー不足で働けない
💡 どれも「新しい細胞を作ったり、ずっと働き続けたりする場所は、エネルギーが切れると真っ先に壊れる」という共通点があります。
(ChatGPT 5)
energy-hungry(エネルギーをよく使う) な組織に影響が出やすいと理解できます。
ナイアシン欠乏症の症状
ナイアシン(ビタミンB₃)欠乏症で皮膚や粘膜に症状が出やすいのは、
細胞がエネルギーをつくる仕組み(酸化還元反応)が強く依存している組織だからです。
1. ナイアシンの役割
- ナイアシンは NAD⁺(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) や NADP⁺ の材料。
- これらは細胞内で 酸化還元反応(エネルギー産生や代謝のカギ)に不可欠。
- エネルギーをたくさん使う組織ほど、ナイアシン不足の影響を強く受けます。
2. なぜ皮膚・粘膜が特にやられるか
- 代謝が活発
- 皮膚の表皮細胞や消化管の粘膜細胞は、寿命が短くて常に新しく作り替えられています。
- 再生には大量のATP(エネルギー)が必要 → NAD⁺が足りないと細胞分裂や修復が滞る。
- 紫外線や機械的刺激によるダメージ
- 皮膚は紫外線、粘膜は摩擦や消化液などの刺激を受けやすく、常に修復を要する部位。
- 修復にはNAD⁺依存のDNA修復酵素(PARPなど)が関わりますが、ナイアシン不足で修復力が低下 → 炎症やびらんが起こる。
- エネルギー不足+酸化ストレス
- NADP⁺は抗酸化物質(グルタチオンなど)の再生にも必要。
- 不足すると活性酸素による細胞障害が増え、炎症や色素沈着を招きます。
3. 症状例(ペラグラ)
- 皮膚炎(特に日光曝露部):紅斑 → 色素沈着 → 落屑
- 口内炎・舌炎:粘膜の萎縮とびらん
- 下痢:腸粘膜の萎縮と炎症
- 認知障害(進行例):中枢神経も高エネルギー依存組織
つまり、
皮膚や粘膜は「代謝が活発で、損傷を受けやすく、修復に大量のNAD⁺が必要」
→ ナイアシン不足の影響が真っ先に現れる
というわけです。
(ChatGPT 5)
ビタミンB3(ナイアシン)の化学構造式
ニコチン酸アミド https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチン酸アミド
ニコチン酸 https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチン酸
ビタミンB3は、補酵素NADや補酵素NADPの材料となります。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
NADやNADPは、酸化還元反応において電子の運搬に関わる最重要分子です。電子供与体と呼ばれます。
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
ビタミンB3摂取の効能
NAD+は、免疫機能や炎症などの加齢に関連した複数の経路に関与する中心的な分子として注目されており、ヒトや動物では加齢とともに減少することも知られている。https://medical-tribune.co.jp/news/articles/?blogid=7&entryid=565542
- ビタミンB3はCOPD患者の肺の炎症を軽減する? 2024年12月5日 13:52 MedicalTribune https://medical-tribune.co.jp/news/articles/?blogid=7&entryid=565542
ニコチン
ニコチンはニコチン酸と名前が似ていますが、構造は多少違います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ニコチン
ニコチンはタバコに多く含まれており、ニコチン性アセチルコリン受容体のリガンドとして作用します。脳の、腹側被蓋野(Ventral Tegmental Area: VTA)と呼ばれるところにあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合することにより、ドーパミンやβ-エンドルフィンを放出させる働きがあり、これらの脳内物質は「多幸感」をもたらします。そのためニコチン摂取は依存性があります。
トウモロコシを主食とする地域でなぜペラグラが出やすいのか
これは栄養学的にとても有名な話で、理由は大きく 2つ あります。
1. トウモロコシ中のナイアシンが“利用できない形”
- トウモロコシにはナイアシン自体は含まれていますが、
ニコチン酸が“ニコチン酸結合型”として繊維やタンパクに強く結合しており、そのままでは消化吸収されにくい。 - この形を人間の消化酵素ではうまく切り離せないため、食べても体内で利用できるナイアシンがほとんど増えません。
💡 中南米の先住民は、石灰水(アルカリ液)でトウモロコシを処理する “ニシュタマリゼーション” という方法を使っていました。
このアルカリ処理でナイアシンが遊離し、吸収されやすくなるのでペラグラはほぼ発生しませんでした。
2. トリプトファンが少ない
- ナイアシンは食べ物から直接とるだけでなく、必須アミノ酸トリプトファンから体内で合成することもできます。
- しかしトウモロコシはトリプトファン含量が少ないため、この合成ルートも使えない。
まとめ
トウモロコシ主食地域でペラグラが出やすいのは、
① ナイアシンが吸収されにくい結合型で含まれている
② トリプトファンも少なく、体内合成もできない
という二重の理由によります。
なぜ中南米ではペラグラが少なかったのに、アメリカ南部では多発したのか。これは栄養の話と文化・歴史の話がきれいに絡む典型例です。
1. 中南米では伝統的な調理法があった
- マヤやアステカなど中南米の先住民は、何世紀も前からニシュタマリゼーション(nixtamalization) という調理法を使っていました。
- これは トウモロコシを石灰水(アルカリ液)や灰汁で煮る 方法。
- アルカリで処理すると、
① 結合型ナイアシンが遊離して吸収されやすくなる
② トリプトファンやカルシウムの利用率も上がる - そのため、主食がほぼトウモロコシでもナイアシン欠乏症(ペラグラ)はほぼ発生しませんでした。
2. アメリカ南部では調理法が伝わらなかった
- 19世紀後半~20世紀初頭、アメリカ南部の貧困層(特に農村部・黒人コミュニティ)ではトウモロコシが主食でした。
- しかし、中南米式のアルカリ処理の文化はほとんど伝わらず、精製して粉にしたコーンミールをそのまま焼いたり煮たりして食べていました。
- そのため、
- ナイアシンは結合型のままで吸収されず
- トリプトファンも少ない
→ ペラグラが大流行。
3. 実際の歴史的背景
- アメリカ南部では1900年代初頭にペラグラが社会問題化し、「南部の病気」と呼ばれました。
- 当初は感染症や遺伝が疑われましたが、1910年代にゴールドバーガー(Joseph Goldberger)医師が食事との関係を証明。
- 1930年代にナイアシンが発見され、食品への強化(enrichment)が始まり、急速に減少しました。
まとめ
中南米:アルカリ処理文化あり → ナイアシン利用可能 → ペラグラ少ない
アメリカ南部:アルカリ処理文化なし → ナイアシン吸収不可+トリプトファン不足 → ペラグラ多発
(ChatGPT 5)