Rasスーパーファミリー
Gタンパク質のGは、GTPのGで, G proteinsはGTP-binding proteinsの略です。そして、GプロテインはGTPase活性を持ちます。Gタンパク質にはαβγの3量体からなるタイプと、単量体で働く低分子量Gタンパク質と呼ばれるファミリーとがあります。Rasは低分子量Gタンパク質のほうに属します。ちなみにRasはスーパーファミリーを形成していて、そのスーパーファミリーの名前でもあります。そしてRasスーパーファミリーは5つのファミリーからなります。そのファミリーの一つもRasというわけ。
The Ras superfamily (>150 members in humans) is divided into five main families based on sequence identity and function: Ras, Rho, Rab, Arf, and Ran. (Ras superfamily GEFs and GAPs: validated and tractable targets for cancer therapy? 2010年)
Rasの活性をオン、オフにするメカニズム
RasはGTP結合タンパク質であり、GTPase活性があるわけで、Rasが機能する際にはGTPを分解してGDPにし、その際の自由エネルギーの変化分が利用されるのかと漠然と思っていました。しかし、GTP結合型が活性型、GDP結合型が不活性型という記述を読んで、わからなくなってしまいました。そのあたりをハッキリ説明した論文があったので、その部分を紹介します。
Ras superfamily proteins possess intrinsic guanine nucleotide exchange and GTP hydrolysis activities. However, these activities are too low to allow efficient and rapid cycling between their active GTP-bound and inactive GDP-bound states. GEFs and GAPs accelerate and regulate these intrinsic activities.
Alternation between the active GTP-bound and inactive GDP-bound states of the small GTPase is controlled by guanine nucleotide exchange factors (GEFs), which stimulate the exchange of GDP for GTP, and by GTPase activating proteins (GAPs), which terminate the active state by stimulating GTP hydrolysis. In their GTP-bound state, small GTPases bind effectors to activate biochemical processes. (Ras superfamily GEFs and GAPs: validated and tractable targets for cancer therapy? 2010年)
やはり通常の説明通り、GTP結合型が活性あり、GDP結合型が活性なしで、GTP型からGDP型へ移行するのは、GTPとGDPの交換ではなく、GTPの加水分解でした。ただしGTPase活性を高めるためにGAPタンパク質というプレーヤーが存在していました。また、GDP結合型からGTP結合型への意向はGEFタンパク質というプレーヤーが関与していました。
なぜGEFとGAPが必要かというと、上で説明されていますが、もともとRasが持っているGTPase活性や、GDP-GTP交換活性は弱すぎて、効果的に働かないからだそうです。助けが必要なわけですね。
Rasの活性のオフからオンへの切り替えは、GEFがGDPをGTPに交換することによって達成され、Rasno活性のオンからオフへの切り替えは、GAPの働きによってRasのGTPase活性が発揮されてGTPが加水分解されてGDPになることによって達成されるということのようです。
これですっきりしました。
guanine nucleotide exchange factor;GEF
- グアニンヌクレオチド交換因子(ウィキペディア)低分子量Gタンパク質は単量体で働き、Small GTPaseともいわれる。GEFが活性化するGTP結合タンパク質は、このタイプのGTP結合タンパク質である。
- Grb2 Is a Negative Modulator of the Intrinsic Ras-GEF Activity of hSos1 2006年
- Ras蛋白質のGDP/GTP交換因子mouse Sos1の機能解析 1998 Ras GEFとしてはCdc25,Sdc25,Ras-GRF,Sosなどが見出されている。
- Sos/K-Ras 結合を介して Ras シグナル伝達を制御する新しい低分子阻害剤 CYTOSKELETON NEWS 2014年7月号
参考