強直性脊椎炎とは
とくに背骨および骨盤を中心に全身の腱や靱帯に原因不明の炎症が起こり、長い年月の中で「強直」して運動制限が生じる病気です。脊椎関節炎(spondyloarthritis: SpA)という疾患群のひとつに分類されます(図1)。初期には背骨や骨盤の関節に付着する腱・靭帯が炎症を起こしますが、進行するとその腱・靭帯に石灰が沈着して骨のように硬くなり、背骨が曲がらなくなってしまいます。(KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト)
脊椎関節炎(Spondyloarthritis)とは
脊椎や仙腸関節などの体の軸に存在する関節や、手指、足趾などの末梢の関節に原因不明の炎症を示す疾患です。関節リウマチと異なった関節炎の分布様式を示し、付着部炎(アキレス腱など腱や筋が骨に付着する箇所の炎症)や特有の皮膚症状や眼症状などを伴うことがあります。(しらいわ内科・リウマチクリニック 神奈川県鎌倉市大船)
Spondyloarthritis is an umbrella term for several inflammatory diseases that primarily affect the spine and other joints. (arthritis.org)
脊椎関節炎とは 脊椎関節、胸鎖関節や仙腸関節などの体軸関節(いわゆる体幹部の関節)と手指関節などの末梢関節(肩や股より先の関節)に炎症が生じる疾患です。若年男性に発症しやすいとされています。ヒト白血球抗原の一つであるHLA-B27という遺伝子のタイプに関連すると考えられています。脊椎関節炎(spondyloarthritis: SpA)は更に、強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う関節炎、ぶどう膜炎関連脊椎関節炎などのタイプに分類されます。(日本リウマチ学会)
脊椎関節炎(spondyloarthritis;SpA)の発生機序
発症機序の仮説
インターフェロン(IFN)によって、マクロファージの小胞体内でHLA-B27が産生されるが、HLA-B27の重鎖(heavy chain)の折れ曲り構造の異常が起こり(図1左下段、図2)、細胞内に蓄積し、このために、マクロファージからIL-23が産生され、Th17細胞が活性化され、炎症を惹起させる。(小林茂人(順天堂大学医学部附属 順天堂越谷病院内科(リウマチ・膠原病)先任准教授)中外製薬医師向けサイト)
日本における脊椎関節炎(spondyloarthritis;SpA)の治療の歴史
日本での有病率は欧米と比較すると非常に稀な疾患と考えられてきたが,昨今,生物学的製剤を含めた治療進歩に伴い,その疾患概念や特徴が認知され,日常診療では関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の鑑別疾患として重要な疾患群と考えられている (岸本 暢将 岡田 正人 日内会誌 103:2431~2439,2014)
HLA-B27の保有率が0.3%と極端に少ない日本ではその有病率も少なく、そのため臨床経験が少ないことから適切に診断、治療されてこなかった歴史があった。さらには誤診により不必要な投薬、手術が行われた患者も存在した。また薬物療法においては、従来は非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)が主な治療であり治療に難渋することも多かったが、近年になってTNF-α阻害薬(tumor necrosis factor-α inhibitor)やIL-12/IL-23に対する抗体などの生物学的製剤が登場しその有効性が示され、治療の選択肢が増えるとともに治療の目標も変化してきている。(順天堂大学医学部付属順天堂病院 膠原病・リウマチ科)
近年では生物学的製剤のような分子標的治療の進歩によって、関節リウマチと同様に早期からの適切な治療により関節機能障害を防止する道筋ができたことから「体軸性脊椎関節炎」という概念が誕生し、その中で強直性脊椎炎のX線基準を満たさない場合には「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」と呼称することとなり(表1)、その国際的な分類基準も策定されました(文献1)
(変革期を迎えている脊椎関節炎の診断と治療 東邦大学医療センター大橋病院膠原病リウマチ科)
脊椎関節炎の概念と分類
破壊性関節炎の代表的疾患として関節リウマチがある。… これらの関節炎とは別のカテゴリーとして脊椎関節炎が存在する。仙腸関節や脊椎などの体軸関節に炎症を来たす体軸性脊椎関節炎(分類名)と、四肢関節やDIP関節などに炎症をきたす末梢性脊椎関節炎(分類名)に分類され、体軸性脊椎関節炎を呈しやすい疾患として強直性脊椎炎、末梢性脊椎関節炎を呈しやすい疾患として乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎などがある。… 脊椎関節炎の疾患概念には強直性脊椎炎(68%)、乾癬性関節炎(13%)、SAPHO症候群(5%)、反応性関節炎(4%)、炎症性腸疾患関連脊椎関節炎(2%)、ぶどう膜炎関連脊椎関節炎、未分類脊椎関節炎などが含まれる。HLA-B27との関連性が指摘されているが、本邦では一般のB27保有率が0.3~0.5%と低く、脊椎関節炎の有病率も10万人あたり0.48と稀である。(大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)