コレステロールとは?役割、種類など

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コレステロールの発見と命名

コレステロール(choresterol)という名前は、、chole (胆汁 bile)とstereos (固い solid)、-ol(アルコールであること、つまり水酸基をもつ)という言葉から作られた造語で、このように名付けられたのは発見のいきさつに由来しています。フランスの化学者ラフランソワ・プルティエ・ド・ラ・サール (François Poulletier de la Salle 1719-1788)が、胆石に含まれる成分として1769年にコレステロールを発見しました。

ステレオが「固い」の意味?と思うかもしれませんが、日本語でも ステレオタイプ=固定的な考え という意味で使われています。

  1. History in medicine: the story of cholesterol, lipids and cardiology Vol. 19, N° 9 – 13 Jan 2021 Kuijpers Dr. Petra M.J.C. Kuijpers European Society of Cardiology (ESC)

コレステロールの生合成

コレステロールの合成経路の始まりはアセチルCoAです。アセチルCoA(炭素2つ)が2つ組み合わされてアセトアセチルCoAになります(炭素4つ)。アセトアセチルCoA(炭素4つ)にアセチルCoA(炭素2つ)がさらに結合してヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)(炭素6個)になります。このあとHMG-CoA還元酵素により還元、脱炭酸により炭素5個からなるイソペンテニル二リン酸(isopentenyl diphosphate, IPP)になります。この反応がコレステロール生合成の律速段階であり、HMG-CoA還元酵素阻害剤スタチンは非常に有名な薬です。なぜイソペンテニル二リン酸の略号がIDPでなくIPPなのかというと、旧名がisopentenyl pyrophosphate(IPP)だったからで、略号だけはいまだに使われているということのようです。IPPと、その異性体であるジメチルアリル二リン酸(DMAPP)が結合して炭素10個からなるゲラニル二リン酸(GPP)ができます。GPPにIPPがついて炭素15個からなるファルネシル二リン酸になり、それが2量体になって炭素30個のスクアレンになります。スクアレンが環状になってラノステロールをへてコレステロールになります。

  1. マクマリー生化学反応機構122ページ
  2. Condensation of Acetyl-CoA to HMG-CoA Wikimedia Commons
  3. Aldol reactions in metabolism Khan Academy アセチルCoAエノラートの説明など。手描きなのに見やすい。

 

コレステロール合成の阻害薬スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)

スタチンは、コレステロール合成の律速段階であるHMG-CoAの還元を司るHMG-CoA還元酵素の阻害薬であり、いわゆる悪玉コレステロール(多すぎると、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞を発症させる恐れがある)として有名な低密度リポプロテイン(LDL)の血中濃度を低下させる作用を持ち、冠動脈疾患の予防と治療に世界じゅうで広く使われている高脂血症治療薬です。

スタチンの発見

スタチンが発見された経緯は、研究が進むのがいかに一筋縄にはいかないものかがわかってとても興味をそそられます。

  1. 1971年(昭和46年)遠藤章氏、コレステロールの律速段階の反応を司る酵素「HMG-CoA還元酵素」の阻害物質の探索研究を開始。2年間で菌類(カビとキノコ)約6000種の培養液を調べて阻害活性物質ML-236Bを発見。
  2. ML-236Bはin vitro実験で強い活性を示すも、ラットを用いたin vivo実験で効果が見いだされず、会社が研究を打ち切りを決定。
  3. 遠藤章氏はここであきらめずに、もともと血中コレステロールが高いメンドリを実験動物として用いた場合に、ML-236Bが血中コレステロールを下げることを見出し、ビーグル犬を用いても同様の結果を得て、ML-236Bプロジェクトを会社が再開。
  4. 1976年 家族性高コレステロール血症(FH)ホモ接合体細胞と健常人の培養細胞を用いた実験を開始。
  5. 1978年11月 慶應義塾大学で臨床試験(フェーズ1)開始
  6. 1979年(昭和54年)1月1日 遠藤章氏は三共を離れ、東京農工大学農学部助教授に
  7. 1987年(昭和62年) 米国でロバスタチン承認
  8. 1989年(平成元年) 三共がプラバスタチンを販売開始
  9. 2005年 スタチン製剤の売上合計が年間約3兆円を記録

参考

  1. 遠藤章ウェブサイト(http://endoakira.com/)
  2. 平成の30年間に世界で一番使われた薬【平成の医療史30年◆スタチン編】 2019年5月31日 平成の医療史30年 m3.com
  3. 動脈硬化のペニシリン“スタチン”の発見と開発 遠藤章先生に聞く
  4. スタチンの誕生 遠藤章 日農誌 2016
  5. スタチンの発見者,遠藤章氏に聞くインタビュー 2014.06.16 医学界新聞
  6. ラスカー賞に遠藤章・東京農工大特別栄誉教授 2008/9/15 けむすて

 

コレステロールに関する参考サイト

  1. コレステロール(ウィキペディア)

 

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