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日本の大学の数、一覧

日本の大学数

日本には大学がいったいいくつあるのでしょうか?文部科学省のサイトに拠れば、令和3年5月1日現在、国立大学86校、公立大学98校、私立大学619校で、合計803校の大学が存在しています。

  1. 公立大学について 文部科学省

国立大学86校は、お茶の水女子大学、愛知教育大学、愛媛大学、旭川医科大学、一橋大学、茨城大学、宇都宮大学、横浜国立大学、岡山大学、岩手大学、岐阜大学、宮崎大学、宮城教育大学、京都教育大学、京都工芸繊維大学、京都大学、金沢大学、九州工業大学、九州大学、熊本大学、群馬大学、広島大学、弘前大学、香川大学、高知大学、佐賀大学、埼玉大学、三重大学、山形大学、山口大学、山梨大学、滋賀医科大学、滋賀大学、鹿屋体育大学、鹿児島大学、室蘭工業大学、秋田大学、小樽商科大学、上越教育大学、信州大学、新潟大学、神戸大学、政策研究大学院大学、静岡大学、千葉大学、総合研究大学院大学、帯広畜産大学、大阪教育大学、大阪大学、大分大学、筑波技術大学、筑波大学、長岡技術科学大学、長崎大学、鳥取大学、電気通信大学、島根大学、東京医科歯科大学、東京海洋大学、東京外国語大学、東京学芸大学、東京芸術大学、東京工業大学、東京大学、東京農工大学、東北大学、徳島大学、奈良教育大学、奈良女子大学、奈良先端科学技術大学院大学、浜松医科大学、富山大学、福井大学、福岡教育大学、福島大学、兵庫教育大学、豊橋技術科学大学、北海道教育大学、北海道大学、北見工業大学、北陸先端科学技術大学院大学、名古屋工業大学、名古屋大学、鳴門教育大学、琉球大学、和歌山大学です。

ちなみに九州芸術工科大学は、2003年に九州大学に統合されたのを機に廃止されて、九州大学芸術工学部になっています。

  1. 国立大学 文部科学省の関係機関リンク集教育
  2. 九州芸術工科大学(ウィキペディア)

公立大学98校は、釧路公立大学、公立はこだて未来大学、公立千歳科学技術大学、札幌市立大学、名寄市立大学 、札幌医科大学、青森県立保健大学、青森公立大学、岩手県立大学 、宮城大学、秋田県立大学、国際教養大学、秋田公立美術大学、山形県立保健医療大学、山形県立米沢栄養大学、会津大学、福島県立医科大学 、茨城県立医療大学、群馬県立県民健康科学大学、群馬県立女子大学、高崎経済大学 、前橋工科大学、千葉県立保健医療大学、埼玉県立大学、東京都立大学 、東京都立産業技術大学院大学、神奈川県立保健福祉大学、横浜市立大学、新潟県立看護大学、新潟県立大学、三条市立大学、長岡造形大学、都留文科大学、山梨県立大学、公立諏訪東京理科大学 、長野県看護大学、長野県立大学、長野大学、富山県立大学、石川県立大学、石川県立看護大学、金沢美術工芸大学、公立小松大学 、福井県立大学、敦賀市立看護大学、岐阜県立看護大学、岐阜薬科大学、情報科学芸術大学院大学、静岡県立大学、静岡文化芸術大学、静岡社会健康医学大学院大学、静岡県立農林環境専門職大学、愛知県立大学、愛知県立芸術大学、名古屋市立大学、三重県立看護大学、滋賀県立大学、京都市立芸術大学、京都府立大学、京都府立医科大学、福知山公立大学、大阪府立大学、大阪市立大学、神戸市看護大学、神戸市外国語大学、兵庫県立大学、芸術文化観光専門職大学、奈良県立医科大学、奈良県立大学、和歌山県立医科大学、公立鳥取環境大学、島根県立大学、岡山県立大学、新見公立大学、尾道市立大学、県立広島大学、叡啓大学、広島市立大学、福山市立大学、下関市立大学、山口県立大学、山陽小野田市立山口東京理科大学、香川県立保健医療大学、愛媛県立医療技術大学、高知県立大学、高知工科大学、北九州市立大学、九州歯科大学、福岡県立大学、福岡女子大学、長崎県立大学、熊本県立大学、大分県立看護科学大学、宮崎公立大学、宮崎県立看護大学、沖縄県立芸術大学、沖縄県立看護大学、名桜大学です。

もともと私立大学だったのが公立化した例がいくつもあります。例えば高知工科大学は2009年4月に公立大学になりました。山陽小野田市立山口東京理科大学は、もともと山口東京理科大学(学校法人東京理科大学)でしたが2016年に公立化しています。公立諏訪東京理科大学も同様で、2018年に公立化したものです。

  1. 公立大学 文部科学省関係機関リンク集  教育
  2. 高知工科大学(ウィキペディア)
  3. 山陽小野田市立山口東京理科大学(ウィキペディア)
  4. 公立諏訪東京理科大学(ウィキペディア)

私立大学は、廃止や統合、新設などの動きがあるため、大学の数が毎年少しずつ変動(増加)しています。文科省のサイトによれば令和3年4月1日時点で620校あるようです。

旭川大学、札幌大学、札幌大谷大学、札幌学院大学、札幌国際大学、札幌保健医療大学、星槎道都大学、天使大学、北洋大学、日本医療大学、日本赤十字北海道看護大学、函館大学、藤女子大学、北翔大学、北星学園大学、北海学園大学、北海商科大学、北海道医療大学、北海道科学大学、北海道情報大学、北海道千歳リハビリテーション大学、北海道文教大学、酪農学園大学、稚内北星学園大学、青森大学、青森中央学院大学、柴田学園大学、八戸学院大学、八戸工業大学、弘前医療福祉大学、弘前学院大学、岩手医科大学、岩手保健医療大学、富士大学、盛岡大学、石巻専修大学、尚絅学院大学、仙台大学、仙台白百合女子大学、東北医科薬科大学、東北学院大学、東北工業大学、東北生活文化大学、東北福祉大学、東北文化学園大学、宮城学院女子大学、秋田看護福祉大学、日本赤十字秋田看護大学、ノースアジア大学、東北芸術工科大学、東北公益文科大学、東北文教大学、医療創生大学、奥羽大学、郡山女子大学、東日本国際大学、福島学院大学、茨城キリスト教大学、筑波学院大学、つくば国際大学、常磐大学、日本ウェルネススポーツ大学、流通経済大学、足利大学、宇都宮共和大学、国際医療福祉大学、作新学院大学、自治医科大学、獨協医科大学、白鴎大学、文星芸術大学、育英大学、関東学園大学、共愛学園前橋国際大学、桐生大学、群馬医療福祉大学、群馬パース大学、上武大学、高崎健康福祉大学、高崎商科大学、東京福祉大学、浦和大学、共栄大学、埼玉医科大学、埼玉学園大学、埼玉工業大学、十文字学園女子大学、城西大学、尚美学園大学、女子栄養大学、駿河台大学、聖学院大学、西武文理大学、東京国際大学、東都大学、東邦音楽大学、獨協大学、日本医療科学大学、日本工業大学、日本保健医療大学、日本薬科大学、人間総合科学大学、文教大学、平成国際大学、武蔵野学院大学、明海大学、ものつくり大学、愛国学園大学、植草学園大学、江戸川大学、開智国際大学、亀田医療大学、川村学園女子大学、神田外語大学、敬愛大学、国際武道大学、三育学院大学、秀明大学、淑徳大学、城西国際大学、聖徳大学、清和大学、千葉科学大学、千葉経済大学、千葉工業大学、千葉商科大学、中央学院大学、東京基督教大学、東京情報大学、了徳寺大学、麗澤大学、和洋女子大学、麻布大学、神奈川大学、神奈川工科大学、神奈川歯科大学、鎌倉女子大学、関東学院大学、相模女子大学、松蔭大学、湘南医療大学、湘南工科大学、情報セキュリティ大学院大学、昭和音楽大学、星槎大学、聖マリアンナ医科大学、洗足学園音楽大学、鶴見大学、田園調布学園大学、桐蔭横浜大学、東海大学、東洋英和女学院大学、日本映画大学、フェリス女学院大学、八洲学園大学、横浜商科大学、横浜創英大学、横浜美術大学、横浜薬科大学、湘南鎌倉医療大学、青山学院大学、亜細亜大学、跡見学園女子大学、上野学園大学、SBI大学院大学、桜美林大学、大妻女子大学、大原大学院大学、嘉悦大学、学習院大学、学習院女子大学、北里大学、共立女子大学、杏林大学、国立音楽大学、グロービス経営大学院大学、慶應義塾大学、恵泉女学園大学、工学院大学、國學院大學、国際基督教大学、国際仏教学大学院大学、国際ファッション専門職大学、国士舘大学、こども教育宝仙大学、駒澤大学、駒沢女子大学、産業能率大学、事業構想大学院大学、実践女子大学、芝浦工業大学、社会情報大学院大学、順天堂大学、上智大学、昭和大学、昭和女子大学、昭和薬科大学、女子美術大学、白梅学園大学、白百合女子大学、杉野服飾大学、成蹊大学、成城大学、聖心女子大学、清泉女子大学、聖路加国際大学、専修大学、創価大学、大学院大学至善館、大正大学、大東文化大学、高千穂大学、拓殖大学、多摩大学、玉川大学、多摩美術大学、中央大学、津田塾大学、帝京大学、帝京科学大学、帝京平成大学、東京有明医療大学、東京医科大学、東京医療学院大学、東京医療保健大学、東京音楽大学、東京家政大学、東京家政学院大学、東京経済大学、東京工科大学、東京工芸大学、東京歯科大学、東京慈恵会医科大学、東京純心大学、東京女子大学、東京女子医科大学、東京女子体育大学、東京神学大学、東京聖栄大学、東京成徳大学、東京造形大学、東京通信大学、東京電機大学、東京都市大学、東京農業大学、東京富士大学、東京未来大学、東京薬科大学、東京理科大学、東邦大学、桐朋学園大学、東洋大学、東洋学園大学、二松學舍大学、日本大学、日本医科大学、日本歯科大学、日本社会事業大学、日本獣医生命科学大学、日本女子大学、日本女子体育大学、日本赤十字看護大学、日本体育大学、日本文化大学、ハリウッド大学院大学、文化学園大学、文化ファッション大学院大学、文京学院大学、法政大学、星薬科大学、武蔵大学、武蔵野大学、武蔵野音楽大学、武蔵野美術大学、明治大学、明治学院大学、明治薬科大学、明星大学、目白大学、ヤマザキ動物看護大学、立教大学、立正大学、ルーテル学院大学、和光大学、早稲田大学、東京国際工科専門職大学大学、東京保健医療専門職大学、情報経営イノベーション専門職大学、デジタルハリウッド大学、ビジネス・ブレークスルー大学、LEC東京リーガルマインド大学院大学、敬和学園大学、国際大学、事業創造大学院大学、長岡大学、長岡崇徳大学、新潟医療福祉大学、新潟経営大学、新潟工科大学、新潟国際情報大学、新潟産業大学、新潟食料農業大学、新潟青陵大学、新潟薬科大学、新潟リハビリテーション大学、健康科学大学、身延山大学、山梨英和大学、山梨学院大学、佐久大学、清泉女学院大学、長野保健医療大学、松本大学、松本歯科大学、開志専門職大学、高岡法科大学、桐朋学園大学院大学、富山国際大学、金沢医科大学、金沢学院大学、金沢工業大学、金沢星稜大学、金城大学、北陸大学、北陸学院大学、仁愛大学、福井医療大学、福井工業大学、朝日大学、岐阜医療科学大学、岐阜協立大学、岐阜女子大学、岐阜聖徳学園大学、岐阜保健大学、中京学院大学、中部学院大学、東海学院大学、静岡英和学院大学、静岡産業大学、静岡福祉大学、静岡理工科大学、聖隷クリストファー大学、常葉大学、浜松学院大学、光産業創成大学院大学、愛知大学、愛知医科大学、愛知学院大学、愛知学泉大学、愛知工科大学、愛知工業大学、愛知産業大学、愛知淑徳大学、愛知東邦大学、愛知文教大学、愛知みずほ大学、一宮研伸大学、桜花学園大学、岡崎女子大学、金城学院大学、至学館大学、修文大学、椙山女学園大学、星城大学、大同大学、中京大学、中部大学、東海学園大学、同朋大学、豊田工業大学、豊橋創造大学、名古屋音楽大学、名古屋外国語大学、名古屋学院大学、名古屋学芸大学、名古屋経済大学、名古屋芸術大学、名古屋産業大学、名古屋商科大学、名古屋女子大学、名古屋造形大学、名古屋文理大学、南山大学、日本赤十字豊田看護大学、日本福祉大学、人間環境大学、藤田医科大学、名城大学、名古屋柳城女子大学、皇學館大学、鈴鹿医療科学大学、鈴鹿大学、四日市大学、四日市看護医療大学、成安造形大学、聖泉大学、長浜バイオ大学、びわこ学院大学、びわこ成蹊スポーツ大学、びわこリハビリテーション専門職大学、大谷大学、京都医療科学大学、京都外国語大学、京都華頂大学、京都看護大学、京都光華女子大学、京都産業大学、京都情報大学院大学、京都女子大学、京都精華大学、京都先端科学大学、京都造形芸術大学、京都橘大学、京都ノートルダム女子大学、京都美術工芸大学、京都文教大学、京都薬科大学、嵯峨美術大学、種智院大学、同志社大学、同志社女子大学、花園大学、佛教大学、平安女学院大学、明治国際医療大学、立命館大学、龍谷大学、藍野大学、追手門学院大学、大阪青山大学、大阪医科薬科大学、大阪大谷大学、大阪音楽大学、大阪学院大学、大阪河﨑リハビリテーション大学、大阪観光大学、大阪経済大学、大阪経済法科大学、大阪芸術大学、大阪工業大学、大阪国際大学、大阪産業大学、大阪歯科大学、大阪樟蔭女子大学、大阪商業大学、大阪女学院大学、大阪成蹊大学、大阪総合保育大学、大阪体育大学、大阪電気通信大学、大阪人間科学大学、大阪物療大学、大阪保健医療大学、大阪薬科大学、大阪行岡医療大学、関西大学、関西医科大学、関西医療大学、関西外国語大学、関西福祉科学大学、近畿大学、滋慶医療科学大学、四條畷学園大学、四天王寺大学、摂南大学、千里金蘭大学、相愛大学、太成学院大学、帝塚山学院大学、常磐会学園大学、梅花女子大学、羽衣国際大学、阪南大学、東大阪大学、桃山学院教育大学、桃山学院大学、森ノ宮医療大学、大和大学、芦屋大学、大手前大学、関西看護医療大学、関西国際大学、関西福祉大学、関西学院大学、甲子園大学、甲南大学、甲南女子大学、神戸医療福祉大学、神戸海星女子学院大学、神戸学院大学、神戸芸術工科大学、神戸国際大学、神戸松蔭女子学院大学、神戸情報大学院大学、神戸女学院大学、神戸女子大学、神戸親和女子大学、神戸常盤大学、神戸薬科大学、園田学園女子大学、宝塚大学、宝塚医療大学、姫路大学、姫路獨協大学、兵庫大学、兵庫医科大学、兵庫医療大学、武庫川女子大学、流通科学大学、畿央大学、帝塚山大学、天理医療大学、天理大学、奈良大学、奈良学園大学、高野山大学、和歌山信愛大学、鳥取看護大学、岡山学院大学、岡山商科大学、岡山理科大学、川崎医科大学、川崎医療福祉大学、環太平洋大学、吉備国際大学、倉敷芸術科学大学、くらしき作陽大学、山陽学園大学、就実大学、中国学園大学、ノートルダム清心女子大学、美作大学、岡山医療専門職大学、エリザベト音楽大学、日本赤十字広島看護大学、比治山大学、広島経済大学、広島工業大学、広島国際大学、広島国際学院大学、広島修道大学、広島女学院大学、広島都市学園大学、広島文化学園大学、広島文教大学、福山大学、福山平成大学、安田女子大学、宇部フロンティア大学、至誠館大学、東亜大学、徳山大学、梅光学院大学、山口学芸大学、四国大学、徳島文理大学、四国学院大学、高知学園大学、聖カタリナ大学、松山大学、松山東雲女子大学、高知リハビリテーション専門職大学、高松大学、九州栄養福祉大学、九州共立大学、九州国際大学、九州産業大学、九州情報大学、九州女子大学、久留米大学、久留米工業大学、産業医科大学、純真学園大学、西南学院大学、西南女学院大学、聖マリア学院大学、第一薬科大学、筑紫女学園大学、中村学園大学、西日本工業大学、日本経済大学、日本赤十字九州国際看護大学、福岡看護大学、福岡大学、福岡工業大学、福岡国際医療福祉大学、福岡歯科大学、福岡女学院大学、福岡女学院看護大学、保健医療経営大学、西九州大学、活水女子大学、鎮西学院大学、長崎外国語大学、長崎国際大学、長崎純心大学、長崎総合科学大学、九州看護福祉大学、九州ルーテル学院大学、熊本学園大学、熊本保健科学大学、尚絅大学、崇城大学、平成音楽大学、日本文理大学、別府大学、立命館アジア太平洋大学、九州保健福祉大学、南九州大学、宮崎国際大学、宮崎産業経営大学、鹿児島国際大学、鹿児島純心女子大学、志學館大学、第一工科大学、沖縄大学、沖縄科学技術大学院大学、沖縄キリスト教学院大学、沖縄国際大学、サイバー大学。

  1. 私立大学 私立大学 令和3年4月1日時点 文部科学省 関係機関リンク集  教育

大学の学校コード

大学名だけで情報収集しようとすると、ある大学名が別の大学名に含まれていたり(例、九州大学と西九州大学)して、検索しづらいことがあります。大学コードを使って情報検索や情報整理ができたら便利です。文部科学省では、大学、短期大学、高等専門学校に対して学校コードを付けています。

  1. 文科省 最新の学校コード一覧 令和3年5月1日時点(暫定版)大学、短期大学、高等専門学校 エクセル形式(Excel:125KB)

上のリンク先の表では、学校種は、F1:大学 F2:短期大学 G1:高等専門学校、また、設置区分は、1:国立、2:公立、3:私立 のように整理されています。これによれば、東京大学の学校コードは、「F113110102700」、早稲田大学の学校コードは「F113310103581」となっていました。学校コードにはいろいろ種類があって、統一されていないようです。「海外留学支援制度 学校コード表」というものもありますが、ここでは、東京大学は104003ですし、早稲田大学は304076です。

  1. 2022年度海外留学支援制度(大学院学位取得型)日本学生支援機構 学校コード表(エクセルファイル)

KAKENデータベースの機関番号

科研費のデータベースであるKAKENでも、大学や研究機関に番号が振られていますが、この番号も上記とはまた異なるようです。

  1. 機関番号一覧 https://www-kaken.jsps.go.jp/kaken1/kikanList.do

糖尿病とは 糖尿病を診断するためのブドウ糖負荷試験

血糖値の正常な範囲

食事により血糖値は上昇します。空腹時の正常な人の血糖値は70-110mg/dLとされています。食事をしてから3時間くらい経過すれば、この範囲に戻ります。食後2時間での上限としては140mg/dLが目安。食後2時間経っても血糖値が低下せず140㎎/dL以上の高い値が続く状態は、「食後高血糖」と呼ばれます。なお、空腹時血糖値の基準値は2008年に改定され、正常域の上限が110mg/dLから100mg/dLに引き下げられています。日本糖尿病学会によれば、100-109mg/dLを「正常高値」と呼ぶそう。また、110-125mg/dLは「境界型」と呼ばれます。

  1. 血糖値とは何か?正常値、上昇する仕組みを分かりやすく解説 大正製薬
  2. 高血糖とは 食後高血糖~血糖値パターン~ 知りたい!糖尿病
  3. 糖尿病予備群といわれたら 糖尿病情報センター

ブドウ糖負荷試験

糖尿病の診断を行うためのブドウ糖負荷試験というものがあります。空腹時にまず採血して血糖値を測定します。それから、ブドウ糖75gを溶かした水を飲み(ブドウ糖負荷)、その後採血をします。空腹時血糖値が110mg/dl未満かつ2時間後血糖値140mg/dl未満の場合は、正常型と判定。空腹時血糖値が126mg/dl以上または2時間後血糖値200mg/dl以上の場合は糖尿病型と判定。正常型にも闘病病型にも当てはまらない場合には、境界型と判定します。

  1. ブドウ糖負荷試験 やまもと内科クリニック

糖尿病とケトーシス

糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は糖尿病の急性代謝性合併症で,高血糖,高ケトン血症,および代謝性アシドーシスを特徴とする。DKAは主に1型糖尿病で生じ、2型糖尿病患者では比較的まれ。

  1. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 執筆者:Erika F. Brutsaert, MD, New York Medical College レビュー/改訂 2022年 9月 MSDマニュアルプロフェッショナル版

ChatGPT 4oに訊きました。

糖尿病における ケトーシス(とくにケトアシドーシス)1型糖尿病で主に起こる理由を、代謝のメカニズムから簡潔に説明します。


🔍 ケトーシスが1型糖尿病で起こる理由:

✅ 1型糖尿病では「インスリンがほぼ完全に欠如」しているから


【詳しいメカニズム】

🍚 正常時:

  • 血糖値が上がるとインスリンが分泌され、
    → 細胞はブドウ糖を取り込み、
    → エネルギーとして使う or 脂肪として蓄える
  • インスリンには「脂肪分解を抑制する作用」もある

😷 1型糖尿病:

  • インスリンがまったく足りない
  • → ブドウ糖は血中にあるのに、細胞は「飢餓状態」と誤認
  • → 体は脂肪を分解してケトン体を大量生成
  • → それが進行すると**ケトアシドーシス(血液の酸性化)**になる

🧪 2型糖尿病では?

  • インスリン抵抗性があるが、ある程度は分泌されている
  • → 脂肪分解が完全には暴走しない
  • → よって、重度のケトーシスやケトアシドーシスはまれ

🧠 たとえ話で言うと…

状態 説明
1型糖尿病 🔒鍵(インスリン)が完全に失われている → 扉が開かず、エネルギー飢餓 → 脂肪分解暴走 → ケトン体大量発生
2型糖尿病 🔑鍵が壊れ気味だが、多少は動く → エネルギー不足は軽く、脂肪分解も部分的に抑制

💡 まとめ

  • ケトーシスが1型で主に起こるのは、インスリンの「絶対的欠乏」によって脂肪分解が抑えられなくなるから。
  • 2型はインスリン抵抗性があっても、分泌がある程度残っているため、ケトーシスは起こりにくい。

 

ケトアシドーシスが生じる理由(ケトン体産生で血液が産生に傾く理由)

ケトアシドーシス(ketoacidosis) が「酸性」になるのは、“ケトン体”のうち特定の物質が酸性を示すからです。


🔬 ケトン体(ketone bodies)とは?

肝臓で脂肪から作られる3つの物質の総称です:

  1. アセト酢酸(Acetoacetate)
  2. β-ヒドロキシ酪酸(β-Hydroxybutyrate)
  3. アセトン(Acetone)(揮発性で呼気からも排出される)

⚠️ 酸性の原因は?

主な「酸性物質」はこの2つ:

  • アセト酢酸(AcAc)
  • β-ヒドロキシ酪酸(β-HB)

これらはカルボン酸(-COOH)を含む弱酸性の物質であり、
血液中に大量にたまると pHが下がり、アシドーシス(酸性血症) になります。


💡 なぜこの2つが増えるの?

  • インスリン欠乏 → 脂肪分解が亢進 → 遊離脂肪酸が肝臓に流入
  • → 肝ミトコンドリアでβ酸化 → アセチルCoAが過剰に生成
  • クエン酸回路(TCA)が処理しきれず
    余ったアセチルCoAがケトン体に変換される

✨ 補足:アセトンは?

  • アセト酢酸の一部が自然分解で**アセトン(中性)**になる
  • 呼気から排出 → 甘酸っぱいにおい(フルーツ臭)

✅ まとめ

物質名 酸性度 ケトアシドーシスへの寄与
アセト酢酸 弱酸性 ⭕ 酸性に寄与
β-ヒドロキシ酪酸 弱酸性 ⭕ 酸性に大きく寄与(特にDKA)
アセトン 中性 ❌ 酸性に寄与しない

つまり、ケトアシドーシスの原因は、「アセト酢酸」と「β-ヒドロキシ酪酸」という酸性ケトン体の蓄積です。
β-ヒドロキシ酪酸は特に、重症例ほど増えやすいとされています。

 

ケトーシスとケトアシドーシスの違い

ChatGPT 4oに訊きました。

それぞれの違いをわかりやすく整理すると以下の通りです:


ケトーシス(ketosis)

  • 定義:体が炭水化物(糖質)不足の状態で、脂肪をエネルギー源として使うときにケトン体が生成される代謝状態
  • 原因:絶食・低炭水化物ダイエット(ケトジェニックダイエット)・運動・妊娠など
  • 血中ケトン体:やや上昇(通常1〜3 mmol/L程度)
  • pH(血液の酸性度)正常(代謝的な適応で酸性化は抑えられる)
  • 症状:基本的に無症状か軽度(口臭、軽い吐き気など)
  • 生理的な状態:はい(=病気ではない)

🚨 ケトアシドーシス(ketoacidosis)

  • 定義ケトン体の過剰産生により血液が酸性化する、生命にかかわる病的状態
  • 代表的原因
    • 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA):1型糖尿病のインスリン欠乏でよく見られる
    • アルコール性ケトアシドーシス(AKA)
    • 飢餓性ケトアシドーシス(極度の栄養不足時)
  • 血中ケトン体:著しく上昇(しばしば10 mmol/L以上)
  • pH低下(アシドーシス)
    • 血液が酸性に傾く(pH < 7.35)
  • 症状:吐き気、嘔吐、腹痛、深く早い呼吸(クスマウル呼吸)、意識障害など
  • 治療が必要?はい。緊急治療対象

📝まとめ(比較表)

特徴 ケトーシス ケトアシドーシス
状態 生理的 病的(緊急)
ケトン体 軽度上昇 著明に上昇
血液のpH 正常 酸性(pH低下)
主な原因 ダイエット、絶食 糖尿病、アルコール中毒等
症状 ほぼ無症状 吐き気、意識障害など重篤

 

インスリン抵抗性

In diabetes, especially type 2 diabetes, insulin resistance occurs when the body’s cells become less responsive to insulin’s action. This resistance affects multiple tissues, each at a different “action point” in glucose metabolism.


🔍 Main action points of insulin resistance:

1. Liver (Hepatic insulin resistance)

  • Normal insulin action: Suppresses hepatic glucose production (gluconeogenesis & glycogenolysis)
  • In insulin resistance:
    🔺 Liver continues to produce glucose even when blood glucose is high
    🔺 → Fasting hyperglycemia

2. Muscle (Skeletal muscle insulin resistance)

  • Normal insulin action: Stimulates glucose uptake via GLUT4 transporters
  • In insulin resistance:
    🔻 Glucose uptake is impaired
    🔻 Less glucose is stored as glycogen
    🔻 → Postprandial hyperglycemia

3. Adipose tissue (Adipocyte insulin resistance)

  • Normal insulin action:
    • Suppresses lipolysis (fat breakdown)
    • Promotes fat storage
  • In insulin resistance:
    🔺 Lipolysis is increased
    🔺 More free fatty acids (FFA) are released into the blood
    🔺 FFAs worsen hepatic insulin resistance and promote ketogenesis

4. Brain (Central insulin resistance, under debate)

  • Insulin may regulate appetite and energy balance in the hypothalamus
  • Resistance may impair satiety signaling, contributing to overeating and obesity

🧠 Summary Table

Tissue Normal Insulin Action Effect of Insulin Resistance
Liver Suppress glucose output ↑ Hepatic glucose production
Muscle Promote glucose uptake (GLUT4) ↓ Glucose uptake → ↑ blood glucose
Adipose Inhibit lipolysis ↑ Free fatty acids → ↑ insulin resistance
Brain Appetite regulation (Possible) ↑ Food intake, weight gain

 

 

糖尿病と腎臓との関係

高血糖状態が長期間続くと、糸球体が障害を受けてたんぱく尿が出るようになり、腎臓のろ過機能が低下します。https://www.adpkd.jp/yomoyama/vol06_02.html

なぜ高血糖だと腎臓が障害を受けるのでしょうか?

糖尿病で高血糖の状態が長く持続すると、組織のたんぱく質に血液中のブドウ糖が結合した物質が増えて、全身の小さな血管を傷めつけ血管が詰まったり破れたりします(糖尿病性細小血管症)。腎臓の濾過装置である糸球体は細い血管が多いのでこれが起こりやすく、その結果腎機能が低下したものを糖尿病性腎症と呼んでいます。

糖尿病性腎症 e-ヘルスネット)

  1.  Vascular complications of diabetes: mechanisms of injury and protective factors Christian Rask-Madsen and George L. King Cell Metab. 2013 Jan 8; 17(1): 20–33. doi: 10.1016/j.cmet.2012.11.012  Overproduction of reactive oxygen species (ROS) as a result of altered glucose metabolism and formation of advanced glycation end-products (AGE) further amplifies this process by activating nuclear factor κB (NFκB) and other proinflammatory pathways.
  2. Inhibition of NADPH Oxidase Prevents Advanced Glycation End Product–Mediated Damage in Diabetic Nephropathy Through a Protein Kinase C-α–Dependent Pathway

インターフェロンとは?その種類と効果、セルシグナリング、発見と製剤の開発の歴史 

インターフェロンと聞くと、自分が子供の頃に聞いた「夢の特効薬」というキャッチフレーズが頭に浮かびます。何十年も前の記憶ですが、インターフェロンがそもそも何なのか、何の病気に対して特効薬なのか、体の中で普段どんな働きをしている物質なのか、大人になった自分が実は何もわかっていないことに気付きました。

夢の特効薬インターフェロン

インターフェロンの名前が一般社会に登場したのは、それまで良い薬がなかった、がんやウイルス性の病気の治療薬としてでした。

新聞,テレビなどのマスコミの爼上に,IFNという名前がひんぱんにのせられだしたのは10年ほど前からであったと思う。「夢の新薬」とか,「がんの特効薬」などという華々しい取り上げられかたで,科学専門誌とはまったく無縁と思えるような週刊誌などにまで登場し,社会的にも大きい反響を与えてきた。

有効な治療法の少ない悪性腫瘍(がん)ウイルス病を退治できるような「新薬」として,IFNが本当に活躍してくれるのであれば,長い間この物質に関する基礎や開発研究を続けてきた筆者にとってもうれしいことであり,人類社会にとっても素晴しいトピックスになろう。だが,マスコミ上での華々しさにくらべると,実際のIFN研究あるいは臨床応用化への道程は遅々としたものであった。(インターフェロンの開発と将来の展望 小林茂保 線維と工業 Vol.43(9) 1987年

  1. インターフェロンの開発と将来の展望 小林茂保 線維と工業 Vol.43(9) 1987年
  2. インターフェロン市販へ・夢のガン特効薬 福井新聞 1980年(昭和55)04月11日
  3. 三石 巌『夢の新薬インターフェロンの効用―ガンはもう怖くない』講談社 1978年

 

インターフェロンの名前の由来

インターフェロンが何者かを知るには、その名前の由来となった研究を知ることが早道です。動物が2種類のウイルスに感染したときに、一方のウイルスが他方のウイルスの増殖を抑制する現象、つまり、ウイルス同士の干渉(interference)が起きることが知られていました。

  1. W Henle, G Henle. INTERFERENCE OF INACTIVE VIRUS WITH THE PROPAGATION OF VIRUS OF INFLUENZA Science . 1943 Jul 23;98(2534):87-9. doi: 10.1126/science.98.2534.87.

このinterferenceの研究をしていたAlick IsaacsとJean Lindenmannが、この干渉を起こす物質が未知の蛋白質であることを突き止めて、与えた名前がインターフェロン(interferon)でした。彼らは、ウイルスに感染した組織が分泌したタンパク質性の物質には、ウイルス感染を抑制する働きがあることを見出しました。

In 1957, Alick Isaacs (1921–1965) and a post-doctoral Swiss student, Jean Lindenmann, were studying the phenomenon of “viral interference”—the ability of one virus to inhibit the replication of another virus. When 10-day-old chick chorioallontoic membranes from chick embryos were infected with heat or UV inactivated influenza virus, a material was produced that interfered with subsequent viral replication.  (Interferons by Milton W. Taylor)

  1. Interferons by Milton W. Taylor. Viruses and Man: A History of Interactions. 2014 Jul 22 : 101–119. Published online 2014 Jul 22. doi: 10.1007/978-3-319-07758-1_7 PMCID: PMC7123835
  2.  Isaacs, A., Lindenmann, J. (1957). Virus interference. I. The interferon. Proceedings of the Royal Society of London Series B, Containing papers of a Biological character Royal Society, 147(927), 258–267.

 

インターフェロンの種類

インターフェロンはI型とII型、さらに最近(2003年)に発見されたIII型に分類されています。I型に属するものはインターフェロンα、インターフェロンβなど、II型インターフェロンに属するものはインターフェロンγのみ、III型インターフェロンに属するものはインターフェロンλです。アルファとベータはアミノ酸配列に相同性があり、受容体も同一なのに対して、ガンマ型はアルファやベータとは配列が完全に異なっており受容体も異なります。

図 https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1038%2Fnri1604/MediaObjects/41577_2005_Article_BFnri1604_Fig1_HTML.jpg

  1. Differential Regulation of Type I and Type III Interferon Signaling Int. J. Mol. Sci. 2019, 20(6), 1445 Published: 21 March 2019
  2. Kotenko, S.V.; Gallagher, G.; Baurin, V.V.; Lewis-Antes, A.; Shen, M.; Shah, N.K.; Langer, J.A.; Sheikh, F.; Dickensheets, H.; Donnelly, R.P. IFN-lambdas mediate antiviral protection through a distinct class II cytokine receptor complex. Nat. Immunol. 2003, 4, 69–77.
  3. Sheppard, P.; Kindsvogel, W.; Xu, W.; Henderson, K.; Schlutsmeyer, S.; Whitmore, T.E.; Kuestner, R.; Garrigues, U.; Birks, C.; Roraback, J.; et al. IL-28, IL-29 and their class II cytokine receptor IL-28R. Nat. Immunol. 2003, 4, 63–68.

 

インターフェロンの細胞内情報伝達機構

インターフェロン受容体の下流のシグナル経路は、JAK-STAT経路です。I型インターフェロンは、TYK2とJAK1およびSTAT1とSTAT2を、II型インターフェロン(つまりインターフェロンγ受容体)は、JAK1, JAK2とSTAT1を使っています。

  1. ZBP1 mediates interferon-induced necroptosis 10 May 2019
  2. James E. Darnell Jr., Ian M. Kerr, George R. Stark. Jak-STAT Pathways and Transcriptional Activation in Response to IFNs and Other Extracellular Signaling Proteins  Science , Vol. 264, No. 5164 (Jun. 3, 1994), pp. 1415-1421

 

インターフェロンの作用と役割

インターフェロンはウイルスに感染した細胞が放出し、全身に対する「警報」として働くと教科書的にはよく説明されています。警報を受けた細胞では、ウイルスの増殖を妨げるほか、MHCクラスI分子の発現を亢進することで活性化キラーT細胞が働きやすくなるようにします。

I型IFNの主要な機能の1つは、真核生物翻訳開始因子2a(eIF-2a)の不活性化であり、それにより、ウイルスタンパク質の合成が阻害されます。そのうえ、I型IFNはRNase Lを活性化し、細胞質内のssRNAを切断し、ウイルス複製をさらに阻害します。(インターフェロンの概要 ThermoFisher Scientific )

インターフェロンは、抗ウイルス作用だけでなく、抗腫瘍作用や免疫調節作用もあります。

  1. いまさら聞けない!~インターフェロン療法(もう一度おさらいしましょう)~  下田 哲也 共立製薬株式会社
  2. インターフェロンのシグナルダイナミズムとその生体防御系における調節作用 相互に関与しあうⅠ型とⅡ型のインターフェロン(北大)

 

インターフェロンによるC型肝炎の治療

肝炎のインターフェロンによる治療とは、インターフェロンの投与によって肝炎ウイルスを体内から排除する治療であり、B型肝炎なら約3割、C型肝炎なら約5〜9割の患者が完治するとされているそうです。

  1. C型肝炎治療ガイドライン(第8版)2020年7月日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会編
  2. インターフェロン治療 朝日新聞DIGITAL 2008年11月12日

第105回 看護師国家試験 午後問題16 C型慢性肝炎に使用するのはどれか。

  1. ドパミン
  2. インスリン
  3. リドカイン
  4. インターフェロン

インターフェロン製剤

  1. 遺伝子組換え型インターフェロン-γ製剤 製造販売元 塩野義製薬株式会社
  2. ペグインターフェロンーα-2a製剤 ペガシス皮下注90マイクログラム 180マイクログラム 中外製薬株式会社

 

インターフェロンによるB型肝炎の治療

  1. B型肝炎治療ガイドライン (第3.3版)2021年1月日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会編

 

インターフェロンに関する最近の研究

  1. インターフェロンγは細胞傷害性T細胞によるがんゲノムの免疫エディティングに必要である IFN-γ is required for cytotoxic T cell-dependent cancer genome immunoediting 2017年2月24日 Nature Communications 8 : 14607 doi: 10.1038/ncomms14607

インターフェロンに関するセミナー動画

Hertzog P (2014): Interferon Signalling WEHI Seminars (Walter and Eliza Hall Institute Postgraduate lecture 14 April 2014 Professor Paul Hertzog Monash Institute of Medical Research)

参考

  1. B型及びC型ウイルス性肝炎の医療費助成を行っています! 新潟県
  2. COVID-19 に対する薬物治療の考え方 第8版(2021年7月31日)

臨床研究のデザイン 暴露因子(介入)とアウトカムとの関係に影響を与える第3の因子:交絡因子、中間因子、予後因子、効果修飾因子

臨床研究をデザインするときに、因果関係を見たいことが多いわけです。暴露因子の存在の結果、アウトカムがどうなるかを知りたくて研究を計画するとします。その時に、暴露因子とアウトカムをそれぞれ定量的に測定できれば、両者の関係が示されるのかというとそう話は単純でありません。暴露因子やアウトカムに関係する第三の因子があった場合に、折角、実験、測定を行っても正しい結論が導かれない恐れがあるのです。第三の因子が何かを把握して、それにたいする対処をしておくことが研究を成功させるためには重要です。

交絡因子(confounder)とは

マッチやライターを持っていると、肺がんになりやすいのではないかという仮説を検証したいと思って研究をデザインするとしましょう。マッチやライターの所持が「暴露因子あり」に相当します。アウトカムは、肺がんになることですね。

マッチやライターの所持群(E) / 非所持群(C) ⇒ 肺がんを罹患(O)

これで研究をしてみたらおそらくマッチやライターの所持群で、肺がんの罹患率が高いという結果になるでしょう。そういう結果が得られたからといって、マッチやライターが肺がんを引き起こすと結論づけていいものでしょうか。もちろん、それはどう考えてもあり得ない話です。交絡因子(confounder)とは、EやCに関連すると同時にOの原因になっているもののことです。「喫煙の習慣」がある人は、マッチやライターを所持しています。そして、喫煙の習慣がある人は肺がんになりやすいわけです。

喫煙の習慣(交絡因子)⇒ マッチやライターの所持

喫煙の習慣(交絡因子)⇒ 肺がんを罹患(O)

交絡因子の存在に気付かずに実験をデザインしてしまうと、結論を誤る恐れがあります。

効果修飾因子とは

効果修飾因子は、文字通り、「暴露」や「介入」の、アウトカムに対する効果を修飾する因子です。例えば薬剤Aの治療効果を調べたいとしたとき、もしも薬剤Aは実は女性にしか効果がなかったとしたら、「性別」という効果修飾因子が、存在すると言えます。「性別」は、暴露因子にもアウトカムにもそれ自体は何も影響していません。

  1. The difference between ‘Effect Modification’ & ‘Confounding’ 4th June 2015 by Deevia Kotecha

中間因子とは

中間因子は文字通り、暴露因子⇒アウトカムという因果関係の間に来るものです。

暴露因子⇒中間因子⇒アウトカム

予後因子とは

暴露因子⇒アウトカム

の関係を検証したいわけですが、第3の要素として予後因子が何かあったとすると、

予後因子⇒アウトカム

の関係になります。

参考

  1. 臨床研究の道標 第2版 上巻第2章 77ページ~
  2. Directed acyclic graphs: a tool for causal studies in paediatrics Pediatric Research volume 84, pages487–493 (2018)

中村 哲 医師の著作

中村 哲 医師は半生をアフガニスタンに捧げました。

憲法第9条について

「向こうに行って、9条がバックボーンとして僕らの活動を支えていてくれる、これが我々を守ってきてくれたんだな、という実感がありますよ。体で感じた想いですよ。武器など絶対に使用しないで、平和を具現化する。それが具体的な形として存在しているのが日本という国の平和憲法、9条ですよ。それを、現地の人たちも分かってくれているんです。だから、政府側も反政府側も、タリバンだって我々には手を出さない。むしろ、守ってくれているんです。9条があるから、海外ではこれまで絶対に銃を撃たなかった日本。それが、ほんとうの日本の強味なんですよ。」

「アフガニスタンにいると『軍事力があれば我が身を守れる』というのが迷信だと分かる。敵を作らず、平和な信頼関係を築くことが一番の安全保障だと肌身に感じる。単に日本人だから命拾いしたことが何度もあった。憲法9条は日本に暮らす人々が思っている以上に、リアルで大きな力で、僕たちを守ってくれているんです」

中村 哲 ウィキペディア)

 

2019年に現地で凶弾に倒れましたが、生前、心を打つ多数の本を書いています。

 

中村 哲『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと』 NHK出版 Oct 25, 2021

中村哲『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』 西日本新聞社 December 17, 2020

中村 哲『天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い』October 24, 2013

『医者よ、信念はいらないまず命を救え! 〜アフガニスタンで「井戸を掘る」医者 中村哲』October 10, 2003

中村 哲『ペシャワールにて 癩そしてアフガン難民』 石風社 Mar 20, 1992

臨床研究におけるリスク(risk)、発生率(または罹患率)(incidence rate)、有病率(prevalence)の違いと計算方法

新型コロナウイルスの蔓延が連日ニュースとして報道され、疫学・医療統計学で使われる「罹患率」、「有病率」といった医学用語が日常生活にも入ってきました。それらの意味や英語での呼び方、それぞれの違いなどを纏めておきます。ちなみに罹患の読み方は「りかん」です。自分は初めて見た時、「らかん」?と読んでしまいましたが、「りかん」と読むのでした。

罹患率(発生率)(incidence rate)とは

発生率(罹患率、発病率とも呼ばれる)は、ある集団を一定期間観察したときにアウトカムが発生した人の割合ですが、罹患率の求め方としては分母に「リスク人口」を用います。すなわち観察期間内にすでに罹患した場合や脱落した場合には、それ以降の期間を計算に含めません。別の言い方をすれば、リスクとの違いは、発生率には時間(速さ)の概念が含まれることです。

例えば、5人のオリンピック参加者を10日間、毎日PCR検査したときに、新型コロナウイルス陽性者数が2日めと4日めの検査で2人出たとして、別の一人は6日めの夜に選手村から脱走して行方不明になり、残り2人が最後まで陰性だったとします。このとき1日あたりどれくらいの頻度で陽性の人が発生したかを考えてみます。考慮すべき日数としては、「その人が陽性と判定されえた日数」に限定する必要があります。例えば2日めで陽性が分かった人ののこり8日間は、発生率に無関係です。また6日めの夜に脱走した人の、7日目以降も検査ができていないので、発生率に無関係です。陽性になり得る日数を人数分考えてみると、10+10+2+4+6=32[日・人]ですので、陽性者 2[人] / 32 [日・人] =  0.0625[/日] (6.25%)が1日あたりの発生率になります。発生率が取り得る値は0以上で上限は特に決まっていません。短い時間に多数の人にアウトカムが発生すれば、大きな値になります。

新型コロナウイルスの罹患率のウェブ記事を見ると、上記のようないわゆる「人年法」ではなく単純に毎日の感染者数と人口との比を報告しているように思います。分子に対して分母が十分に大きいので、観察期間がそもそも1日単位なので上のようなややこしい計算が不要なのでしょう。また期間に幅があったとしても分母が十分に大きければ上記の算出法は不要なのかと思います。

研究対象集団の人口が小さい場合,あるいは,研究期間が比較的短く,かつ,発症・死亡した例数が多い場合などにおいては,人年法人月法などによる罹患率や死亡率を求めることを考える。しかし,研究対象集団の人口が大きく,発症あるいは死亡した症例数が比較的少ない場合には,一般的な罹患率や死亡率を計算した方が望ましいことが多い。(人年法の計算と利用方法 第26巻 日循協誌 第1号  1991年 4 月)

累積罹患率(または リスク(risk)とも呼ばれる)とは

罹患率に関連する言葉として累積罹患率(cumulative incidence, cumulative incidence rate)があり、累積罹患率はincidence propotion(発生割合)、あるいはリスクとも呼ばれます。同じ事柄を指すのにいくつもの言葉があって、すこしややこしいですね。初学者泣かせです。

臨床研究において、累積罹患率(リスクとも呼ばれる)とは、ある集団一定期間観察したときにアウトカムが発生(例えば、新たに病気を発症するなど)した人の割合を意味します。ここでアウトカムは、必ずしも病気のような望ましくないものに限定されません。また、観察期間内のいつアウトカムが発生したかも問いません。5人のオリンピック参加者を10日間毎日PCR検査したときに新型コロナウイルス陽性者数が10日間のうちに2人出たとしたら、リスク=2人/5人 = 0.4 (40%)と計算されます。ある集団の総人数に対する、アウトカムが発生した人の人数の割合なので、リスクが取り得る値は0から1です。

  1. 罹患率と累積罹患率 第30巻日循協誌第1号 津金昌一郎
  2. Incidence: Risk, Cumulative Incidence (Incidence Proportion), and Incidence Rate (bu.edu) In contrast to prevalence, incidence is a measure of the occurrence of new cases of disease (or some other outcome) during a span of time. There are two related measures that are used in this regard: incidence proportion (cumulative incidence) and incidence rate.
  3. 『臨床研究の道標』第2版下巻第4章第3節「発生の指標とは?:リスクと発生率」147ページ

リスク(risk)と発生率(罹患率)(incidence rate)の違いに関して、『臨床研究の道標』第2版下巻第4章第3節「発生の指標とは?:リスクと発生率」にわかりやすい説明と簡単な”例題”があったので、その内容を少しアレンジして、自分なりに説明してみました。

有病率(prevalence rate)とは

ある時点においてある集団内で病気になっている人の数の割合。有病率と、リスクや罹患率との違いは、有病率の場合はある時点で既に病気になっている人の割合だという点です。それに対してリスクや罹患率を計算するときには一定期間観察して新たに病気になった人を調べます。通常、人口10万人に対する割合を人数で表します。

  1. incidenceとprevalenceの違いは?【新患者とすでにその疾患を持っている人の割合】 No.4843 (2017年02月18日発行) P.65 原野 悟 (かみや町駅前クリニック院長/日本大学医学部兼任講師) 日本医事新報社
  2. 疫学用語の基礎知識 日本疫学会

 

新型コロナウイルスの罹患率

  1. 都道府県単位に見る10万人当たりの感染者数
  2. COVID-19 INCIDENCE RATE The incidence rate is a measure of the frequency with which the event, in this case COVID-19, occurs over a specific period. Numerically, it is defined it as the number of new cases for the disease within a time frame, as a proportion of the number of people at risk for the disease.
  3. Daily Case Incidence Rate Maps The seven-day incidence is calculated by taking the total number of unique cases in each county over the past seven days, divided by seven to get a daily average, divided by the U.S. census bureau county population and multiplied by 100,000 to get the incidence per 100,000 people.
  4. COVID-19 Cases And Incidence Rate Calculations

参考

  1. 『臨床研究の道標』第2版下巻第4章第3節発生の指標とは?:リスクと発生率
  2. 懺悔─有病率の計算を間違えてしまいました 2020/07/02森井大一(大阪大学感染制御学)日経メディカル
  3. 正しい年間感染率・罹患率の計算方法

境界性パーソナリティ障害(Bioloar Personality Disorder; BPD)とは

境界性パーソナリティ障害とは

境界性パーソナリティ障害は、不安定な情緒と不安定なに対人関係が特徴で、人をすぐに好きになったり、あっさりと幻滅してしまったり(脱価値化)します。また、自己イメージが安定せず(自己同一性拡散)、他人に見捨てられることに対する不安を常に抱いていて、相手の気持ちを試すために自殺をほのめかしたり企図したりすることを繰り返すことがあります。抑うつ状態を呈することが多く、大うつ病性障害を合併していることも多い。自傷や薬の大量な服用といった自殺企図により救命救急センターに搬送されることも少なくなく、死の転帰に至る危険があり注意を要する。境界性パーソナリティ障害の人は、人間的な距離がある程度ある人に対しては如才なく振る舞うことができ、一見問題がないように見えるが、両親や家族のように関係が深い相手に対しては依存的態度が強い。治療においては医師に対して恋愛感情を抱く(陽性転移)ことがあるが、それが満たされないと憎しみに変化し(陰性転移)、自傷行為などの行動化(acting out)を起こすことがすくなくない。そのため医師・治療者が患者に対して否定的な感情を抱く逆転移が生じることもある。周囲の気を引くようなアピール性の自殺行動が多く、身体的に軽症なリストカットや過量服薬を繰り返すが、本人にはアピールしている自覚はなく無意識にしていることが多い(参考:『精神科の診かた、考え方』73、127、173ページ)。

  1. レジデントノート別冊 各科研修シリーズ これだけは知っておきたい 精神科の診かた、考え方 羊土社 2014年

BPDの要因

幼児期のストレス状況が境界性パーソナリティ障害の発症に寄与している可能性がある。(境界性パーソナリティ障害(BPD) MSDマニュアル家庭版)

BPDの遺伝的要因

生活上のストレス環境に対して病的反応を生じる遺伝的な傾向が認められる場合があり,境界性パーソナリティ障害には明らかに遺伝的要素があると考えられる。境界性パーソナリティ障害患者の第1度親族は,一般集団よりこの障害を有する可能性が5倍高い。(境界性パーソナリティ障害(BPD) MSDマニュアル家庭版)

境界性パーソナリティ障害の治療法

弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy; DBT)

境界性パーソナリティ障害における、自己制御、対人関係能力や苦悩忍耐能力の欠如にフォーカスし、これらの習得を目指す。

境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは?不安定な対人関係、感受性の過敏さ,自己肯定感の低さ,両極端な判断,自己破壊的な衝動的行動などを特徴とするパーソナリティ障害の一種

 

境界性人格障害とは

境界性人格障害(borderline personality disorder; BPD)は、感情が極めて不安定で気分の波が激しく、善悪の判断が両極端で’(白か黒しかない)、自分というものをはっきり持てず、強いイライラ感が抑えきれずに怒りを爆発させることが多く、自己破壊的な行動に走ることも多いといった症状で特徴づけらるそうです。

境界性人格障害の「境界性」の意味は、神経症と統合失調症との間に位置付けられる症状を持つということだそうです。単に分類の都合で付けられた名前であって、あまりそれ自体に深い意味はなさそうです。

  1. 境界性パーソナリティ障害(BPD) 執筆者: Lois Choi-Kain , MD, Harvard Medical School MSDマニュアルプロフェッショナル版
  2. 境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)とは?(いちメンタルクリニック 大阪市中央区日本橋)

 

境界性人格障害におけるうつ病の併発

境界性人格障害の人は対人コミュニケーションがうまくないうえに繊細な感受性を持つために、他人の言動のせいで心を傷つけられることがおおく、うつを発症しやすいそうです。

  1. 境界性パーソナリティー障害、鬱など併発、診断難しく 2011/1/15 日経スタイル 1月上旬、警察庁は2010年の国内の自殺者は3万1560人と13年連続で3万人を超えた、と発表した。自殺者には鬱病の人が多いといわれるが、最近の調査で自殺未遂者の約6割が「境界性パーソナリティー障害(BPD)」と呼ぶ精神疾患と診断されたことがわかった。
  2. うつ病について(ときわ台メンタルクリニック 東京都板橋区常盤台)

 

境界性人格障害と発達障害

  1. 発達障害と不安・うつ・パーソナリティ障害の関係:「重ね着症候群」について 水谷心療内科 衣笠は、パーソナリティ障害、中でも境界型パーソナリティ障害と診断される患者さんの中に、実は発達障害を持っている人がいることを見い出し、「重ね着症候群」として提唱しました。‥(パーソナリティ障害の上着の下に隠れて、発達障害の下着があり、「重ね着」されているという意味です)

 

境界性人格障害の典型的な行動パターン

気分の変動の激しさ

気分(機嫌の良しあし、強い不快感、苛立ち、不安)が急変する。通常は、数時間しか持続しない。逆に言うと、怒りや不安に襲われて暴言を吐きまくっている人がいても、自然に収まるまで、単に数時間、時間が経過するのを待てばよいということでしょうか。

  1. 境界性パーソナリティ障害(BPD) 執筆者: Lois Choi-Kain , MD, Harvard Medical School MSDマニュアルプロフェッショナル版
  2. 人間関係がこじれがち? 「境界性パーソナリティー障害」の5つのサイン 人間関係の維持が極端に難しい? 2019/10/30 womenshealthmag.com

外部要因・他人から影響を受けやすい

自分が何をやりたいのかが明確でないため、他人の言動や情報、外部環境による影響を受けやすい。しかし、長続きはしない。

 

境界性人格障害、アダルトチルドレン、毒親、機能不全家族

 

毒になる親、精神的に未成熟な親

関連書籍

  1. 親といるとなぜか苦しい: 「親という呪い」から自由になる方法 リンジー・C・ギブソン 2023/5/24 「共感できることがありすぎて、すべてのページにマーカーを引きたい」「未熟な親のもとで育ち、自分を大切にする方法を知らなかった私のために書かれた本」「これほど人生が変わる本はなかった!」見た目は大人だが、精神年齢は子どものままの親が子どもを苦しめる。愛したいのに愛せない親を持つ人が「心の重荷」を降ろす方法
  2. 重すぎる母、無関心な父  信田 さよ子 2011/1/6 親の愛に支配され「いい子」を演じてきた子どもは成人後も「生きづらさ」に苦しむ。
  3. 機能不全家族(アダルトチルドレン)  星野 仁彦 2007/11/20

アダルトチルドレン

  1. アダルト・チルドレンの子どもたち:もう一つの共依存世代 アン・W. スミス Ann W. Smith 2005/7/30
  2. なぜいつも、あなたの恋愛はうまくいかないのか―アダルト・チルドレンの恋愛と結婚の神話 ジャネット・G. ウォイティツ Janet Geringer Woititz 1999/5/1
  3. アダルトチルドレン・シンドローム―自己発見と回復のためのステップ ウェイン クリッツバーグ 1998/5/1 私の生きづらさをズバリ解説 一般的なACに関する説明に終わる書ではなく、ACの方に対する治療法まで
  4. アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち ジャネット・G. ウォイティッツ Janet Geringer Woititz 1997/10/1 アマゾンレビュー:見ていたのか?と言う程の理解力! アダルトチルドレンの13の繰り返してしまう思考や行動の特徴とその13の繰り返しを断つ方法が具体的に書かれ この本が一番役に立ちました。
  5. アダルト・チルドレンからの出発(たびだち)―アルコール依存症の家族と生きて  スザニー ソマーズ Suzanne Somers 1997/3/1
  6. The Adult Children of Alcoholics Syndrome W.クリッツバーグ 1985年(邦訳:アダルトチルドレン・シンドローム―自己発見と回復のためのステップ)
  7. Adult Children of Alcoholics ジャネット・G. ウォイティッツ Janet Geringer Woititz 1982年 (邦訳:アダルト・チルドレン―アルコール問題家族で育った子供たち) この本がベストセラーになりアダルトチルドレンという言葉が定着したそう。
  8. It Will Never Happen to Me! Children of Alcoholics: As Youngsters – Adolescents – Adults クラウディア・ブラック 1981 (邦訳:私は親のようにならない―アルコホリックの子供たち)

資料

  1. R. Margaret CorkThe Forgotten Children: A Study of Children with Alcoholic Parents(忘れられた子供:アルコール依存症の両親の子供に関する調査)』1969年

 

参考

  1. 「生きたい」も「死にたい」も、私にとって大切な感情なんです。気持ちの変化が激しい境界性パーソナリティ障害とともに生きる咲セリさん 2018年07月10日
  2. 「生きるのがつらい…」境界性パーソナリティ障害とは?  2018年09月14日 NHK ハートネット
  3. 秋葉原無差別殺傷事件, 加害者Kの育ちと犯罪過程の考察 日本福祉大学子ども発達学論集 第 6 号 2014年1月 境界性パーソナリティー障害診断基準とKの行動傾向 判決書では精神疾患には罹患していなかったとされているが, パーソナリティー障害の診断基準が,Kの行動傾向と合致していることが注目される.
  4. Hypnosis with a Borderline Patient. Instability. Self-image. Interpersonal relationships, Mood. Emptiness. Overidealization. Over-devaluation. Depression. Irritability. Anger. Anxiety.
  5. 境界性人格障害(BPD)の妻と離婚する際の4原則

ネイチャーマスタークラス(Nature Masterclasses)の説得力のある研究助成申請書作成(Persuasive Grant Writing)

ネイチャーマスタークラス(Nature Masterclasses)は、研究支援ビジネスで、その中のコースに説得力のある研究助成申請書作成(Persuasive Grant Writing)というものがあるようです。ウェブサイトはこちらhttps://masterclasses.nature.com/grant-writing/18994906

残念ながらNature Masterclassesは大学が購入するもので、個人ではどうしようもない価格です。せめて、コースの概要でも眺めてみたいと思います。すぐに気づくことは、ストーリーを語りなさい、ナラティブが大事ということを強調していること。

  1. use narrative tools to create grant applications that resonate with the audience
  2. use your storytelling techniques consistently

ナラティブ(narrative)というのは日本語に訳しにくい英単語ですが、物語、語り口、口調といった意味だと思います。

narativeというのは、個人的な物語という意味あいであって、むしろ論理的な文章と対比されるのが通常のようです。例えば、Narrative vs Persuasive Essays Jeanie Tseng, English Specialist Mar 7, 2018 のウェブ記事を見ると、

  1. Narrative essays are written from a set point of view with sensory information, using intense adjectives and exact verbs. These essays can be anecdotal, experiential(経験に基づいた) and personal.
  2. Narrative essays are initiated by selecting an incident that occurred in real life.
  3. The narrative essay’s purpose is to tell a story, the persuasive essay aims to convince readers about an argument.

という説明があり、この記事の作者は、相対立するものとしてとらえています。しかし、ネイチャーマスタークラスの考え方はちょっと違っていて、ストーリーを語ることによって、相手を説得させることができるという戦略を取りましょうということのようです。人間は議論で納得するのではなくて、感情で納得するのです。それは科学者や研究者であっても同じこと。

ややこしいのは、「proposal narrative」、「grant narrative」という言葉があって、ここでのnarativeは物語という意味ではなく単に記述、記載、文書、本文といった程度の意味しかないようです。

  1. Tips for Writing Your First Draft of a Grant Narrative by Meredith Noble September 30th
  2. Notes on Writing your Proposal Narrative
  3. The Proposal Narrative or Project Description Budget narrative: Explain items in each budget category. May be in table format.
  4. Narrative Section of a Successful Application
  5. How to Write a Successful Budget and Budget Narrative of a Grant Proposal
  6. How to Write the Personnel Narrative on Your Grant Application By Beverly A. Browning

personnel narrativeというのは上のリンクの説明から察すると、研究助成の申請書の人員体制、研究体制に関するセクションのことのようです。personal narrative(個人の体験談)という言葉と似ていますが、全く別もの。

さて話を戻して、研究助成の申請書をいかに物語に仕立てるかについて。

物語の文章術(Narrative Writing)

narrative writing とは

Narrative writing can be broadly defined as story writing – a piece of writing characterized by a main character in a setting who encounters a problem or engages in an interesting, significant or entertaining activity or experience. https://blog.empoweringwriters.com/toolbox/what-is-narrative-writing

  1. What Is Narrative Writing? Narrative writing is, essentially, story writing.
  2. narrative writing guide 

 

参考

  1. How to Write a Grant: Become a Grant Writing Unicorn June 1, 2021 by Meredith Noble
  2. 4-6 Narrative Writing Tools(YOUTUBE)
  3. Me-Search and Re-Search: A Guide for Writing Scholarly Personal Narrative Manuscripts March 1, 2011 by Robert Nash
  4. How to write copy that sells by Ray Edwards

 

フィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)とは

フィッシャーの正確検定(Fisher’s exact test)は、フィッシャーの直接確率法とも呼ばれるもので、2x2の分割表が得られたときに有意差があるかないかを調べるときに使われます。χ2乗検定も同じ目的で使われますが、違いはデータの個数が少ないかどうかです。データの数値が5以下のものがあるときにはχ2乗検定ではなく、フィッシャーの正確検定が用いられます。データが多いと、フィッシャーの正確検定は計算に時間がかかること、データが多いと、χ2乗検定の正確さが増すことから、このようにデータの数によって使い分けます。

ウェブリオのフィッシャーの正確確率検定(直接確率)は、具体的に全部を示していてわかりやすい。そのほか、フィッシャーの正確検定のわかりやすい説明は、ウィキペディアにもあります。

フィッシャーは、そのためには小計が観測値と同じになるような場合だけを考慮すればよいことを示した。(フィッシャーの正確検定 ウィキペディア

Fisherの正確検定(oku.edu.mie-u.ac.jp)のウェブページも、わかりやすい説明の仕方でお勧め。

  1. フィッシャーの直接確率検定 データ科学便覧

実際に自分で計算してみたほうが、理解しやすいと思ってpythonで計算してみます。答え合わせが出来たほうがいいので、準1級対応統計学実践ワークブック264ページ例1の数字を使います。

コードは、

from scipy.special import comb

n_row1=7#新薬Aを処方した実験群 7人
n_row2=7#既存薬Bを処方した対照群 7人
n_col1=9#病気が治癒した人 9人
n_col2=5#病気が治らなかった人 5人
n_total=n_row1+n_row2#総数14人

def probability(a):

#変数は一つaしか自由に動かせない。aが決まると他の値b,c,dは一意に決まる。
b=n_row1-a
c=n_col1-a
d=n_row2-(n_col1-a)

data = [[a,b,n_row1], [c,d,n_row2], [n_col1,n_col2,n_total]]
p=comb(n_row1,a)*comb(n_row2,c)/comb(n_total,n_col1)

return data, p

P=0#初期値
for x in range(0,n_row1+1):#0からn_row1まで、全てについて起こる確率を調べて、極端な例(x>=a)が起こる確率を足し合わせる。
df,p = probability(x)
print(“p=”,round(p,4), df)
if x>=a:#片側検定
P=P+p
print(“P=”,round(P,3))#

#データの値がマイナスになるのはありえない。小計の小さいほうの値より大きな値は取れない。

実行した結果は、

[[0, 7, 7], [9, -2, 7], [9, 5, 14]]
[[1, 6, 7], [8, -1, 7], [9, 5, 14]]
[[2, 5, 7], [7, 0, 7], [9, 5, 14]]
[[3, 4, 7], [6, 1, 7], [9, 5, 14]]
[[4, 3, 7], [5, 2, 7], [9, 5, 14]]
[[5, 2, 7], [4, 3, 7], [9, 5, 14]]
[[6, 1, 7], [3, 4, 7], [9, 5, 14]]
[[7, 0, 7], [2, 5, 7], [9, 5, 14]]
P= 0.13286713286713286

となりました。人数がマイナスになるのはあり得ないので、そこは外して考えます。 [[6, 1, 7], [3, 4, 7], [9, 5, 14]]の分割表になる確率はそもそも0.05を超えていました。この確率0.1224よりも稀にしか起こらない確率を足し合わせると0.05を超えますので、有意差はないという結論になりました。つまり新薬Aが既存薬Bよりも優れているとは言えないということです。

pythonだと、コードを書かなくてもフィッシャーの正確検定を行う関数が用意されています。

from scipy.stats import fisher_exact

table=[[6,1],[3,4]]
oddsr, p = fisher_exact(table, alternative=’greater’)
p

出力結果は、

0.132867132867133

となり、コードで計算したものと一致しました。用意されている関数を使えば簡単なのですが、引数や返り値の意味がわからないことがあります。自分でコードを書いて、中身を理解するように努めると、そのような疑問が解けることが多いです。

 

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rTMS療法を用いたうつ病治療に関する科研費研究

  1. 培養神経細胞を用いた反復経頭蓋磁気刺激法の効果機序の解析 2021-04-01 – 2024-03-31 池田 哲朗 青森大学, 薬学部, 准教授 (10360489) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は非侵襲的に脳内に電流を発生させ、うつ病、統合失調症、神経変性疾患や脳血管障害等による高次脳機能障害に効果があると考えられている。しかし、rTMSの作用機序は不明な点が多く、その解明は急務である。申請者は、rTMSがマウス脳内で抗うつ薬の作用するノルエピネフリントランスポーター(NET)を変動することを報告した。より詳細に神経様細胞PC12でrTMSの効果を調べたところ、NETとそのドミナントネガティブ型NETbを変動していた。そこで、NETとNETb遺伝子を神経細胞に共発現し、未知のシグナルカスケードが変動するのかどうかを調べる。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  2. うつ病へのrTMS治療の機序を解明し効果予測指標を確立する包括的神経生理学的研究 2021-04-01 – 2024-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:治療抵抗性うつ病に対するrTMS治療が2019年6月に保険収載されたことは精神科臨床において画期的なことであるが、臨床効果の個人差および邦人での治療エビデンスの不足という問題が指摘されている。本研究では、多施設で臨床データを共有して豊富な症例数のもとrTMSの治療効果を予測する臨床指標を探索し、さらに生物学的指標として神経炎症マーカ―、脳画像(構造・機能)、脳波を測定し、物質レベルの異常と脳構造的・機能的結合障害を評価してrTMS治療の生物学的基盤を明らかにし、治療反応の予測指標を確立する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  3. 反復経頭蓋磁気刺激による脳の長期的な可塑性誘導を支える神経生理学的基盤の解明 2021-04-01 – 2024-03-31 中村 晋也 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20570055) 小区分51010:基盤脳科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、近年本邦においてもうつ病治療の保険適用になるなど、精神・神経疾患に対する有用な治療法として注目されている。rTMS治療においては通常数週間に及ぶ施術によりその治療効果が現れることが多く、これは長期にわたる脳の可塑的変化によるものと推定されているが、その作用機序については不明な点が多い。そこで本研究では、サルをモデル動物とした基礎実験により、rTMSが脳の長期的な可塑的変化をもたらす神経生理学的基盤について直接的な科学的根拠を提供することを目指す。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  4. アセチルコリン/GABA機能に着目した老年期うつ病へのrTMS治療の有効性の検討 2020-04-01 – 2023-03-31 喜多 彬 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20735914) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要:本研究は2019年6月に保険収載された治療抵抗性うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療の有効性について、臨床的検討が不足している老年期うつ病への有効性を明らかにすることを目標としている。なかでも老年期うつ病に併存しやすい認知機能障害の病態を神経生理学的に客観的に評価することを目標にppTMSとSAIを用いてGABA機能、アセチルコリン機能を測定する点で独自性が高い研究であり、rTMS治療の生物学的基盤の解明につながる可能性がある。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  5. 反復性経頭蓋磁気刺激による治療抵抗性うつ病の治療メカニズムの探索 2020-04-01 – 2023-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要:薬剤治療抵抗性うつ病患者に対する反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS)による治療の前後に、脳脊髄液・血液・唾液中のバイオマーカー、頭部MRI検査及び前頭葉機能検査を行い、それらの結果から認知機能障害を含むrTMSの治療効果のメカニズムを探索することを目的とした研究である。さらに、うつ病における神経炎症、特にミクログリアのうつ病における関与に着目し、得られた血液サンプルから作成できるミクログリア様細胞(induced microglia-like cells; iMG)のうつ病への関与について探索する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  6. 神経炎症・酸化ストレスに着目したうつ病へのrTMSの治療機作と反応予測指標の探索 2020-04-01 – 2023-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:
  7. rTMSの脳卒中後うつ改善効果と神経可塑性関連物質との関係性の調査 2021-03-01 – 2023-03-31 新見 昌央 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30760970) 若手研究(B) 研究開始時の概要:反経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)はうつ病に有効であることがわかっており、薬物治療とは異なる治療方法として、うつ病だけではなく、さまざまな神経疾患の新しい治療法として期待されている。しかしながら、rTMSによる治療効果がどのようなメカニズムによって生じているのかは不明な点が多い。そこで本研究では脳卒中後うつ患者においてrTMSの治療前後で生体内のバイオマーカーを測定することでrTMSが生体にもたらす影響を調査する。 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:運動療法によるリハビリテーション施行のために我々の施設に入院した30歳から90歳の慢性期脳卒中患者を対象とした。対象患者のうち、62名に対しては14日間のリハビリテーション治療と反復経頭蓋磁気刺激治療(rTMS)の併用療法を行った。対象患者のうち、33名に対しては14日間のリハビリテーション治療のみ行った。治療前後のうつ状態の評価をBeck depression inventoryにて行い、治療前後の血液検体を採取した。採取した血液検体を用いて、NMDA受容体関連物質である、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、L-セリン、D-セリンの血中濃度測定を行った。その結果、Beck depression inventoryによるうつ状態の評価において、いずれの治療群でも治療前後で有意にうつ状態は改善していた。NMDA受容体関連物質の治療前後の血中濃度変化については、リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では、リハビリテーション治療のみを行った群に比して、血中のD-セリンが有意に減少していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群ではグルタミン、グルタミン酸、グリシンが減少傾向にあり、リハビリテーション治療のみを行った群では増加していた。リハビリテーション治療とrTMSの併用治療を行った群では血中のL-セリンは増加し、リハビリテーション治療のみを行った群では減少していた。
  8. マインドフルネスへの経頭蓋直流刺激tDCSによるオーギュメンテーション法の確立 2018-04-01 – 2020-03-31 西田 圭一郎 関西医科大学, 医学部, 講師 (40567567) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:「不安」や「恐怖」は危険な時に起こる感情で、状況を解決するために動き出す動機になるなど、生きていく上で必要かつ重要である。しかし、最近は社会の変化に伴い、人前で話す、といった今までと種類の異なる「不安」を感じる状況が増加している。
    過度の「不安」は健康的で充実した毎日を送る、という人として基本的な生活を送ることが難しくなることがある。また、苦手な状況を避け続けることで社会生活に問題を抱えると、不安障害やうつ病といった、色々な精神の病気を引き起こすことがある。つまり、健康な状態でも「不安」の調節はメンタルヘルス上重要となる。このような背景のなか、「マインドフルネス」というリラックス法が近年注目されており、専門書のみではなく、一般書でも取り上げられている。
    一方脳刺激法は臨床での応用を目指して様々な試みが行われており、経頭蓋直流電気刺激法(transcranial direct current stimulation: 以下tDCS)といった手法が注目されている。tDCSは装置自体がシンプルであり、比較的小さく、安い、といった大きな利点がある。2000年代になりtDCSによって脳の神経細胞の興奮を抑えたり、上げたりできることが明らかになって以降、世界的に論文数が増えており、様々な効果報告が増えてきている。
    この研究の最終的な目的は「マインドフルネス」に「tDCS」を組み合わせ、相乗効果を生み出す手法の開発である。そのため、脳の神経ネットワークの変化に注目し、マインドフルネスと同時にtDCSを施行した時の神経活動や気分・感情の変化などを調べることを目的とする。
  9. T1w/T2w比画像と領域間時間ずれを考慮したネットワーク解析によるうつ病の研究 2018-04-01 – 2021-03-31 石田 卓也 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (10549728) 小区分52030:精神神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:今年度は、昨年T1w/T2w比画像を作成するために確立したMRI撮像プロトコルに基づいて、うつ病患者を含めたMRIの被験者の撮像を行なっている。また、T1w/T2w比画像を用いたうつ病の皮質ミエリン異常を示す脳領域間の因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法(Dynamic Causal Modelling)はこれまではstochastic modelという手法が用いられていたが、近年はより計算的に効率的でかつ正確なspectral modelの手法が開発されてきた。そこで、昨年度施行したHuman Connectome Project (HCP)から健常者100人の安静時機能的MRI画像を用いて3つのうつ病関連ネットワークである側坐核ネットワーク、扁桃体ネットワーク、腹内側前頭前野ネットワークとうつ病への治療として使用される反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の刺激箇所である左右背外側前頭前野(DLPFC)におけるDCM解析に新たにspectral DCMを行い、stochastic modelよりも安定した結果を得た。そこでは、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの機能的結合は主にうつ病関連ネットワークからDLPFCへの方向性を持った情報の流れから説明されることがわかった。さらに、もう一つの因果関係を考慮に入れた機能的結合の評価法であるGranger causal modellingの解析法を組み合わせることで、これまでの相関をとるだけの機能的結合だけではわからなかった、うつ病関連ネットワークとDLPFCとの結びつきの左右差や、DLPFCがどのうつ病関連ネットワークにより結合しているかなどを見ることができることを示した。これは、うつ病患者のrTMS治療においてどの刺激箇所が最も効果が高いかを個人のうつ病患者ごとに予測できる可能性を示している。
  10. 経頭蓋磁気刺激誘発脳波を応用した薬物治療抵抗性うつ病の神経生理学的病態の解明 2018-04-01 – 2022-03-31 野田 賀大 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (20807226) 小区分51030:病態神経科学関連 若手研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:2019年度は前年度以上にTMS-EEG実験の遂行が円滑となり、リクルートも順調に進んだ。2019年3月時点で、治療抵抗性うつ病患者の組み入れは、既に目標人数の30名に到達し、対照健常被験者は16名まで組み入れと実験を終えている。本研究では、TMS-EEG実験と同時期にマルチモーダルMRI撮像、研究採血、包括的臨床評価・認知機能検査も実施している。TMS-EEG実験では、左背外側前頭前野におけるコリン作動性神経生理機能(SAI)・GABAA作動性神経生理機能(SICI)・グルタミン酸作動性神経生理機能(ICF)・神経可塑性神経生理機能(PAS)パラダイムを実施しているが、これらの生物指標・臨床認知尺度も網羅的・包括的に測定している。現時点でのプレリミナリー解析結果では、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、ICF指標におけるグルタミン酸作動性興奮機能が相対的に上昇している可能性が示唆された。また、PAS指標による神経可塑性機能に関しては、治療抵抗性うつ病患者では、健常群と比べ、神経可塑性の誘導発現が低下している可能性が示唆された。この結果は、我々の先行研究結果(Noda et al., Depress Anxiety. 2018)を再現するものとなった。
  11. 多発性硬化症の認知機能障害に対する、経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の開発 2018-04-01 – 2021-03-31 中辻 裕司 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (20332744) 小区分59010:リハビリテーション科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:多発性硬化症(MS)患者に対して疾患修飾薬(DMD)の早期使用により、ある程度の脳萎縮進行予防効果が期待されるが、高次脳機能障害を改善できるエビデンスレベルの高い報告は無い。また視神経脊髄炎(NMOSD)も病初期から認知機能障害を呈し、有効な治療法が無い。経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)や、経頭蓋直流電気刺激療法(tDCS)はワーキングメモリー機能、脳活性化、脳の機能的接続性を高めるという報告があり、本研究ではMS、NMOSDの高次脳機能障害に対してrTMSを用いる予定であった。しかし、より非侵襲的かつ簡便であり、将来の汎用性が高いと考えられ、さらに当院での使用経験が豊富なtDCSを用いてその有効性を検証することを目的とし、以下の方法で本研究を遂行するものである。
    富山大学附属病院脳神経内科外来に通院あるいは入院されているMSおよびNMOSDの患者で本臨床研究への参加に書面で同意をいただいた患者を対象とし、2週間の経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を施行し、療法の前後で高次脳機能を評価し、その効果を検証する。ベースラインの評価としてtDCS療法前に認知機能評価をRao’s Brief Repeatable Battery of Neuropsychological Tests (BRBN)、疲労度を簡易倦怠感調査票 (BFI)、うつをベックうつ病調査表 (BDI)、重症度を重症度分類総合障害度(EDSS)で評価する。また認知機能に関連した異なる脳領域の機能的接続性の評価はresting stateでfunctional MRI (fMRI) を用いて行う。BRBN、BDI、BFI、EDSSはtDCS療法終了直後(2週)、4週、および12週に再評価し、MRI/fMRIは4週に再検する。
  12. ナビゲーションシステムを用いた小児期発症てんかんに対する反復経頭蓋磁気刺激療法 2018-04-01 – 2021-03-31 下野 九理子 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 准教授 (60403185) 小区分52050:胎児医学および小児成育学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:小児期発症の難治てんかんの治療としての反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の可能性について検討する研究である。 rTMSは刺激頻度を低頻度刺激にすることにより神経活動を抑制的導き、一方高頻度刺激をすることにより神経活動を興奮性にも誘導することができる。成人領域においてはうつの治療として保険適応があり、重篤な副作用もなく安全性も検証されている。また脳卒中後のリハビリテーションにおいて神経疎通性の向上のためにリハビリと組み合わせてTMSを行うなど様々な疾患に対象を広げている。一方、小児におけるTMS治療の経験は我が国ではほとんどなく、またてんかんの治療として使う場合にはてんかん原性領域あるいはてんかん活動の広がりを見据えた領域を対象として刺激を行う必要があるため、ナビゲーションシステムを用いてターゲットを絞って刺激することが望ましい。従って、小児期発症のてんかん治療に用いる場合にはこれらの技術的な点において課題は多い。当院ではrTMSシステムを導入し、成人においてrTMSをナビゲーション下で行うことはできるようになった。思春期以上の小児においても有害事象なく行えることを確認した。ただし刺激閾値を設定するためのMEPにはばらつきが大きく安定しないことがわかった。患者の状態および施術者の技術的な要因が考えられる。治療前後には脳波の比較により治療効果を判定する必要があることからてんかん患者の他の様々な治療の前後における脳波の解析を行い、spike rate、周波数解析を含めた指標の変化について検討を行っている。
  13. rTMSによる顕著性回路を介したアンヘドニアの治療メカニズムの解明 2018-04-01 – 2021-03-31 小高 文聰 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (10349582) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究計画は反復経頭蓋磁気刺激療法による「アンヘドニア」の治療メカニズムを探索することを目的としている。その評価に安静時機能的MRIを用いたlarage scale networkの評価と、行動指標として「アンヘドニア」にかかわる精神症状の評価と「handgrip force task」と名付けた持続握力計を用いた行動モデリングを行う予定であった。
    2019年度は治療抵抗性うつ病に対して、反復経頭蓋磁気刺激療法の治療前後の安静時機能的MRIの測定を開始した。
    神経画像の撮像に関しては、事前に撮像データのノイズ低減のための撮像パラメータ調整を行った。その結果、撮像時間を短縮しつつ位相によるノイズを大幅に減することが可能となった。被験者のエントリーは堅調に推移しており、2020年度に20例前後のデータセットが集まり次第、予備解析を行いsalience network内の脳領域の機能的結合解析を行う予定である。ドパミンあるいはノルアドレナリン神経系の機能的結合抽出のために、神経メラニンの撮像も行っている。
    行動指標に関しては、気分障害を対象として抑うつ症候とドパミン神経系にかかわる行動、特にアンヘドニアを反映する精神尺度である「SHAPS」との関係を調べるための予備評価を行った。結果は現在解析中である。「SHAPS」を用いた症状尺度に加え、アンヘドニアを測定するためのhandgrip force task(HFT)を用いる予定であった。HFTは健常者への予備実験の段階で、握力計の把持について患者負担が大きいことが予測されたため、被験者への導入は一時見送る形とし、質問紙によるeffort discounting課題に切り替えを行う予定である。
  14. うつ病重症度や自殺願望を予測する新たな臨床検査法の確立 2018-04-01 – 2021-03-31 瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850) 小区分52010:内科学一般関連 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:メンタルヘルス分野に対する客観的な臨床検査法の開発が世界規模で望まれている。我々は、質量分析装置を駆使し、臨床検体を用いた新たな検査技術の開発およびそれに基づくバイオマーカーの探索に取り組み、これまでに、未服薬のうつ病患者の検体から重症度に関連する代謝物バイオマーカーを発見するとともに、血しょうの「遊離型代謝物」に着目した新たなバイオマーカーの実証研究を進めている。検体は引き続き九州大学病院精神科との共同研究によって収集された未服薬の大うつ病患者および健常者からの血しょうを用いている。今年度は、遊離型代謝物の結合タンパク質探索を進める一方で、個々人の性格(パーソナリティ)情報を用いた層別化がうつ病の血液バイオマーカーの性能を高めるという新たな発見に遭遇し、当初想定していた以上の研究成果を得ることができた。
  15. 治療抵抗性統合失調症における興奮抑制バランスの破綻:TMS-EEG/MRS研究 2018-04-01 – 2022-03-31 中島 振一郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60383866) 小区分52030:精神神経科学関連 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:慶應義塾大学病院だけでなく関連病院の協力を得て、順調に被験者のリクルートを進めている。現時点で本研究に関する有害事象、実施計画書からの逸脱は認められていない。また脱落例も認められていなく、本研究における研究全体の基本的な手順は遵守されていると判断する。TMS誘発脳波研究の実験系を確立し、その後、TMS誘発脳波の解析パイプラインを確立し、GABA(A)受容体介在性神経生理機能(short-interval intracortical inhibition: SICI)検査およびグルタミン酸NMDA受容体介在性神経生理機能(intracortical facilitation: ICF)検査の指標を定量化することが可能となった。
  16. うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激の有効性と効果予測に関する研究 2017-04-01 – 2021-03-31 大久保 裕章 金沢医科大学, 医学部, 助教 (50792115) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)のうつ病への治療効果を包括的に検証することを目的とする。近赤外線スペクトロスコピー(near-infrared spectroscopy; NIRS)VBM(Voxel Based Morphometry)を用いて、rTMSの有効性判定におけるNIRSの有用性および脳形態との関連を明らかにするものである。本研究により、うつ病に対するrTMSの有効性を予測することが可能となれば、rTMSを新たな治療の選択肢として患者に提供できるようになることが期待できる。
    これまでに得られた結果の一部について検討し、平成29年6月に開催された第113回日本精神神経学会学術総会にて「うつ病に対する反復経頭蓋磁気刺激法の効果の検討」を発表し、優秀演題賞を受賞したことについては前年度の同報告で述べた通りである。現在、うつ病症例をさらに多数収集し、結果を論文化することを目標としている。
  17. 経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究 2017-04-01 – 2019-03-31 柴崎 千代 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 助教 (10790561) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。
    平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。
    平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。
  18. ヒト前頭前野の可塑的変化に基づく脳刺激の最適化と個別化 2017-04-01 – 2021-03-31 中村 元昭 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:令和元年度は、RCTの解析を実施して、研究計画を一部変更して発達障害者を対象としたデータも取得した。うつ病患者計25名が反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のRCTにエントリーして、7名はエントリー基準に合致せず、18名が3群にランダマイズされた。rTMS介入の前後において、頭部MRI、DTI、脳波のデータを縦断的に取得した。rTMSの総セッション数は、347セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が24.2%認められ、脱落者は1名であった。安全性情報に関しては、脳プロ・DecNef安全性検討委員会に定期報告を行い、外部委員の判断も含めて、安全性に問題のないことを確認することができた。刺激プロトコールとしては、iTBS(間歇性シータバースト刺激)やQPS(反復単相性4連発磁気刺激法)といった新規性の高い刺激プロトコールを安全に実施することができた。有効性に関しては、3群共に有効性が示されたが、QPSによる有効性が最も優れていた。認知機能については、ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)、言語流暢性課題、対連合記憶課題、作動記憶において有意な改善が認められ前頭葉機能との関連性が示唆されたが、刺激プロトコールによる違いは認められなかった。また、発達障害当事者13名と定型発達者16名に対し、iTBS・cTBS・シャム刺激のrTMSを行い、その前後で実行機能、注意機能を評価した。rTMSの総セッション数は、87セッションで、安全性に関しては一過性の頭皮痛(刺激痛)が19.2%認められ、脱落者は0名であった。
  19. 反復性経頭蓋磁気刺激による大うつ病の治療メカニズム及び治療反応性予測因子の探索 2017-04-01 – 2020-03-31 立石 洋 佐賀大学, 医学部, 助教 (50457470) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:2013年8月より治療抵抗性うつ病患者に対しrTMSを開始し、2020年3月までで、32症例に対しrTMSを実施した。これまでの検討から、rTMS治療により一部の前頭葉機能の改善及び異方分画性(fractional anisotropy: FA)の増加を認めたものの、前頭葉機能の改善とFAの増加との間には相関を認めなかった。また、rTMS治療によって、rTMS治療前後で炎症性サイトカイン単独(IL-1β, IL-6, TNF-α)では有意な変化を認めなかったが、一部の認知機能の変化量とIL-1βの変化量とが有意な相関を認めた。研究実績の概要:
  20. 認知症治療薬はミクログリアを含む脳神経血管機構にどう作用するのか 2017-04-01 – 2020-03-31 溝口 義人 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60467892) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アルツハイマー型認知症(AD)の治療で最も用いられている認知症治療薬ドネペジルには病態そのものを改善する働きはなく、進行するもの忘れに対して対症療法的にしか働かないものと報告されている。しかし、それらの報告は脳内のグリア環境を想定せず、ニューロンにのみ着目した知見による。本研究により、ドネペジルは脳内の免疫担当細胞であるミクログリアに直接働き、ADを発症させる引き金となるアミロイドβの貪食能(除去する能力)を増強する働きも持ち合わせている可能性が高いことを初めて報告した(Haraguchi, Mizoguchiら,J Neuroinflammation 2017他)。研究実績の概要:
  21. 非侵襲脳刺激法の統合失調症治療にむけた臨床症状及び客観的指標での検証 2016-04-01 – 2019-03-31 池田 俊一郎 関西医科大学, 医学部, 助教 (40772231) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:近年、経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)が注目されているが、本研究では統合失調症の認知機能障害、精神病症状に対するtDCSの有効性、安全性を検証し、臨床応用にむけたエビデンスを構築することを目的とした。うつ病患者への研究も行い国内外の学会で発表した。また、Clinical EEG and NeuroscienceとClinical Neurophysiologyなどを中心に筆頭著者として3本、その他、共著者として論文化した。結果としては、tDCSの統合失調症への効果は限定的であり、また、実験的な段階であることがわかり今後もさらに症例・経験を積むことが必要である。研究実績の概要:
  22. うつ病を伴う強迫性障害に対する経頭蓋磁気刺激法の神経画像研究 2016-04-01 – 2019-03-31 中前 貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50542891) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では強迫性障害(OCD)に対する反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性について文献的考察を行った。刺激部位の候補として、背外側前頭前皮質、眼窩前頭皮質、補足運動野が考えられたが、現時点ではどの刺激部位が最適かを結論付けることができず、さらなる知見の蓄積が必要と考えられた。
    また、OCD病態生理を解明するために、OCD群と健常群の拡散強調画像について、脳内の主要な白質線維を自動的に描出する解析手法を用いて比較したところ、OCD群における大鉗子と帯状束の異常が見出された。OCDの病態には皮質-線条体-視床回路以外の後頭葉や側頭葉領域も関与している可能性が示唆された。研究実績の概要:
  23. 「コグニティブライフシステム」の創出を目指して 2016-04-01 – 2020-03-31 野田 隆政 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 病院, 医長 (50446572) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:衝動性の神経基盤に関する検討を行い、事象関連電位において課題提示から300ms以降に生じる脳活動(P300)が衝動性のコントロールに関連している可能性を確認した。安静時の脳活動を利用していた従来のニューロフィードバック(Neurofeedback: NF)手法を改良し、課題中にフィードバックするタスク型NFを開発した。効果検証試験においてもタスク型NFは脳活動の良好な変化を認めた。また、タスク型NFトレーニングは従来法よりも短い期間で効果が発揮されることも分かった。また、NFと併用することで増強効果が期待できる知覚感度に関する自律神経系フィードバックを考案した。研究実績の概要:
  24. 神経ネットワークに着目した治療抵抗性うつ病へのECTとrTMSの治療機作の解明 2015-04-01 – 2018-03-31 山田 信一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70549716) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:双極性障害(BD)群、うつ病(MDD)群においては、HC群と比較し、脳梁を含む広範な脳領域でFA値の低下が認められた。双極性障害(BD)群において平均FA値の低下と言語性記憶課題の低成績との有意な相関が認められ、うつ病(MDD)群において平均FA値の低下と数字順列課題・トークン運動課題・符号課題の低成績との有意な相関が認められた。本研究の結果は、気分障害では白質神経線維の微細構造という解剖学的なレベルの異常が共通して存在し、それぞれにおいて特異的な認知領域と関連していることを示唆する。研究実績の概要:
  25. 口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激による治療戦略 2015-04-01 – 2019-03-31 成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 客員教授 (10155997) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究では、口顎ジストニアのQOLならびに皮質活動性に対する一次運動野への経頭蓋磁気刺激の効果を検討した。口顎ジストニアは、健常者と比較して、Symptom Checklist-90-R(SCL-90R)による抑うつと身体化、ならびに口腔QOLと身体QOLに有意な変調を示した。口顎ジストニアへの経頭蓋磁気刺激は、術前と比較して、SCL-90Rによる抑うつと身体化、口腔QOL、さらには皮質活動性(運動前野と補足運動野、一次感覚運動野)に有意な改善を示した。以上のことから、口顎ジストニア患者への経頭蓋磁気刺激は、精神心理、口腔QOL、一次感覚運動野口顎領域の皮質活動性に有意な改善を示唆した。研究実績の概要:
  26. 治療抵抗性うつ病のGABA機能評価によるrTMSの治療機作と反応性予測指標の解明 2015-04-01 – 2019-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究開始当初の目的は、治療抵抗性うつ病におけるGABA機能の障害を示し、GABA機能の障害とrTMSへの反応性の関連を明らかにすることであったが、脳の機能障害の評価には新しい脳構造・機能画像解析を用いて脳内神経ネットワーク障害でも評価することとした。うつ病に対するrTMSが治療機器の国内承認が遅れたために延期となり、脳構造・機能画像解析によるrTMSの作用機作と治療反応性の予測指標の解明を優先した。これにより、精神疾患に対する種々の脳構造・機能画像解析法を開発するとともに、それらの手法によって精神疾患の病態研究について多くの研究の成果を得ることができた。研究実績の概要:
  27. うつ病患者の自伝的記憶の概括化に対する治療法の検討 2015-04-24 – 2018-03-31 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:研究は順調に進捗し,成果をあげることができた。本年度は最終年度にあたるため,前年度から引き続き収集されたデータを統合的に解析しまとめた。具体的には,うつ症状を有する者および健常被験者を対象に,これまでの申請者の検討で治療の有効性が示唆された行動活性化プログラムを適用し,その前後で記憶の概括化の評価とfMRIによる脳機能測定を実施した。当該プログラムではその個人にとって快感情が随伴するような行動を特定し,それを増やす計画を作成・実施しながら行動を活性化することを目的として作成された心理療法プログラムである。よりうつ症状の高い症例については,将来の目標を設定しそれに沿った行動を増やすことで回避行動を減らすプログラムも加えられた。これらのプログラムはうつ病の治療に効果があることが示されているが,同時に行動を増やすことで記憶情報が増え概括化が減少する可能性が考えられたため本課題に適用した。解析の結果,プログラム前後で記憶の概括化が減少した症例が一定数みられ,その改善度とfMRIによる安静時脳機能結合性評価の得点が関連することが明らかになった。これらの検討内容は現在,関連学術領域に公表すべく準備中である。近年,うつ病患者の再発要因としての記憶の概括化に対する介入の必要性が指摘される中,効果的な治療法の開発には至っていなかった。申請者の試みはいまだ先行例がなく行動変容による記憶の概括化の変化およびその神経基盤までも明らかにしようとしたものであり,再発が多いうつ病治療への新規介入提案が実現でき大いに有益である。
  28. うつ病の神経回路病態の解明とそのリモデリングに関わる基盤研究 2015-04-01 – 2018-03-31 山脇 成人 広島大学, 医歯薬保健学研究科, 特任教授 (40230601) 基盤研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的はうつ病の病態を局所の神経活動の異常および関連する神経回路の機能異常として理解し、神経回路のリモデリングによる治療法を解明することである。本研究の成果として、① 前頭前野と前帯状皮質を含めたうつ病患者の特異的な機能的結合の同定、②ラットの前頭前野の神経活動変化による行動変化の同定、③ラットの行動変化と前頭前野における電気生理学的変化との関連、④ ①から③の基礎検討を元にうつ病患者に対してNeurofeedbackを実践し、前頭前野と前帯状皮質の機能的結合の改善、を明らかにすることができた。社会実装の観点から今後さらなる症例の蓄積や方法論において修正を重ねていく必要がある。研究実績の概要:
  29. 統合失調症におけるアセチルコリン、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連 2014-04-01 – 2017-03-31 高橋 隼 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10508021) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究の目的は、経頭蓋磁気刺激を用い、統合失調症のアセチルコリン機能、GABA/グルタミン酸機能と認知機能障害の関連を検討することである。2連発経頭蓋磁気刺激(ppTMS)を用いたGABA/グルタミン酸機能の評価では、統合失調症における皮質興奮性の増強と認知機能障害、皮質興奮性の増強と罹病期間の関連が明らかになった。アセチルコリン機能の評価については、経頭蓋磁気刺激と正中神経の電気刺激を組み合わせ、アセチルコリン機能を反映するとされるShort latency afferent inhibition(SAI)の簡便な測定法の開発に取り組み、健常者を対象にデータを収集した。研究実績の概要:
  30. 経頭蓋磁気刺激による気分変調に伴う脳活動の変化のPET測定-霊長類モデル研究 2014-04-01 – 2017-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:アカゲザルを対象として、内側前頭前皮質の腹側部(vmPFC)に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激(lf-rTMS)を行い、それが抑うつ状態を誘発することを見出した。一方で、前帯状回後部(pACC)や、その他の領域にに対する lf-rTMS では、そのような症状が誘発されることはなかった。これら3頭のサルについて、内側前頭皮質腹側部刺激、前帯状回後部刺激、および、内側前頭皮質腹側部へのシャム刺激を行った後の、安静時脳活動を fMRI にて計測した。このデータの解析によって、正常時と抑うつ状態で、どのような脳活動の違いがあるのかが明らかになることが期待される。研究実績の概要:
  31. 慢性疼痛に対する反復経頭蓋磁気刺激のメカニズム解明 ラットモデルのfMRI解析 2014-04-01 – 2017-03-31 齋藤 洋一 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (20252661) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:難治性神経障害性疼痛に対して反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の需要が高まっている。本研究は11.7Tという高磁場のMRIを用いて、坐骨神経を結紮する慢性疼痛モデルラットの詳細な画像解析をして、その病態を究明し、rTMSの最適な刺激条件を同定することを目的とした。ラットにrTMSを施行するための麻酔や磁気刺激装置、筋電図の準備を整えた。7Tの先行研究に基づいた麻酔や撮像パラメータに準じて、11.7TのMRIでの撮像を行い、解剖的MRI撮影に成功した。しかし今回の11.7TのMRIは動物を縦入れするタイプのもので、持続した麻酔した状態のラットの安静時機能的MRI撮影を安定して行うことはできなかった。研究実績の概要:
  32. 脳部位間結合性の包括的な神経生理学的検討による統合失調症と気分障害の病態解明 2014-04-01 – 2018-03-31 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:統合失調症、大うつ病、双極性障害などの白質異常をMRIで検討した。MRI拡散テンソル画像/異方性係数FA、安静時機能MRI/機能結合解析、T1/T2比ミエリン強調画像を用いた。統合失調症ではミエリン障害が広範な領域で確認され、血中ω-3脂肪酸と認知機能が相関した。双極性障害と大うつ病では共に前頭葉を結ぶ脳梁でFA値低下が解析を変えても確認された。大うつ病ではFA値と実行機能、注意機能が相関した。双極性障害では左右半球・体制感覚運動ネットワークの機能的結合が躁病スケール値と相関した。次の課題はrTMS、ω3脂肪酸による神経ネットワークの改善と治療効果の確認である。研究実績の概要:
  33. 気分障害・適応障害における反復経頭蓋磁気刺激法を応用した鑑別診断法の検討 2014-04-01 – 2017-03-31 青山 義之 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)に際する脳の反応性パターンに違いに基づき、気分障害(大うつ病性障害、双極性障害)、および適応障害の脳機能の特徴を明らかにし、鑑別診断への応用可能性を検討するものである。大うつ病性障害では、明らかな刺激中の反応を認めず、双極性障害では健常者と同様の変化を示し、適応障害でも健常者と同様の変化を示し、刺激時間として60秒間、120秒間の2設定の検討でも同様の反応を認めた。反復経頭蓋磁気刺激中の対側脳機能反応性は疾患特異的な反応を示していると考えられ,鑑別診断に利用できる可能性への示唆が得られた。研究実績の概要:
  34. 急性期脳卒中の内側皮質に対する深部rTMS 2014-04-01 – 2017-03-31 佐々木 信幸 国際医療福祉大学, 大学病院, 教授 (60328325) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:急性期脳卒中の下肢麻痺およびアパシーに対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の報告はない。21人の急性期脳卒中患者を無作為に高頻度rTMS群と偽刺激群に割り付け5日間連続介入を行った結果、下肢麻痺の改善はrTMS群で有意であった。次に13人の慢性期脳卒中患者を無作為にrTMS群と偽刺激群に割り付け、背側前部帯状回(dACC)~内側前頭前野(mPFC)へ高頻度rTMSもしくは偽刺激を5日間施行したところ、アパシーはrTMS群で有意に改善した。なお、この介入は急性期脳卒中患者のアパシーに対しても安全かつ有用であった。rTMSは急性期脳卒中に対する新たな有用なリハビリテーション介入と考えられる。研究実績の概要:
  35. 情動・注意の制御に関わる大脳皮質間神経回路の適応動態 2014-07-10 – 2019-03-31 筒井 健一郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90396466) 生物系 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:注意や情動にかかわる大脳皮質間神経回路の動態をしらべるため、経頭蓋磁気刺激による局所神経活動の操作、および、広域的な電気生理学的計測を行った。注意に関しては、前頭連合野背外側部と運動前野背側部がそれぞれ、注意や作業記憶の視空間的および運動的な側面を担っていることが明らかになった。一方で、情動や気分の制御には、内則前頭皮質の腹側部がとりわけ重要な役割を果たしており、その機能の破綻が、うつ病などの気分障害につながることが示唆された。また、特に注意や作業記憶の機能の発揮には、前頭皮質から後部皮質へのトップダウン的な情報の流れが重要な役割を果たしていることも明らかになった。研究実績の概要:
  36. 広汎性発達障害における高次連合野の刺激応答特性と神経可塑性 2013-04-01 – 2016-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:TMS(経頭蓋磁気刺激法)と脳波を組み合わせた実験の方法論を確立し、定型発達者29名、自閉症スペクトラム障害者20名のデータを取得した。前頭前野へのシータバースト刺激(TBS)前後で経時的にTMS誘発電位と認知機能を測定した。定型発達者において、TBS群はシャム刺激群と比較して、TBS実施後10分~50分においてN45成分の振幅が増幅効果を示し、20分~40分において作動記憶の一時的な増強効果を示すことが確認された。その一方で、発達障害者においては、N45成分や作動記憶の増強効果を認めなかった。前頭前野の神経可塑性様変化において、定型発達者と発達障害者の間で顕著な違いを見出すことができた。研究実績の概要:
  37. うつ病及び摂食障害の認知柔軟性を高める経頭蓋的脳刺激法に関する研究 2013-04-01 – 2017-03-31 中里 道子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10334195) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:本研究は、神経性過食症患者を対象として,経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)の効果を、過食衝動の頻度低下、食への渇望(craving)を用いた主観評価主観評価に加え、客観的な至適治療パラメータの検討を目的に、近赤外光スペクトロスコピー(NIRS)を用いて評価した。rTMSの刺激部位は、左前頭前野とし、10Hzの磁気刺激を、1セッション、合計1000パルスで実施した。rTMS実施2時間後に、食物画像を用いた課題に対する過食衝動等を0-10点で点数化し評価した。全症例に安全に施行され脱落例はなく、介入後に過食衝動が減少し、不安尺度の軽減、左前頭前野で課題遂行中のoxyHbの減少が認められた。研究実績の概要:
  38. 医療従事者の睡眠状態と脳高次機能についての生理学的研究 2013-04-01 – 2016-03-31 西多 昌規 自治医科大学, 医学部, 講師 (10424029) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:医療従事者の疲労・睡眠不足は、医療事故の温床である。本研究では研修医を対象に、当直前後での採血手技中の脳血液量変化を比較検討した。当直前後において、採血練習用の模擬血管を協力者に装着し、被験者に採血手技を行わせた。被験者にはウェアラブル光トポグラフィを装着し、関心領域を前額部付近として採血手技中の脳血液量変化を記録し解析を行った。当直後における2回の採血手技で比較したところ、2回目は1回目に比較して、右前頭前皮質領域の有意な血流量変化の減少が認められた。ヒヤリ・ハットに通じるイージーミスを発生しやすい神経学的証拠であると考えられた。研究実績の概要:
  39. 脳卒中後疼痛に対する脊髄刺激によるニューロモデユレーション 2012-04-01 – 2015-03-31 山本 隆充 日本大学, 医学部, 教授 (50158284) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:脳卒中後疼痛症例に対して、Dual-lead SCSを施行し、半身に刺激感覚を誘発することができた。また、モルヒネ、ケタミン、ラボナールを用いたドラッグチャレンジテストでは、ケタミンが有効な症例に脊髄刺激の有効例が多いことから、患者選択に有用であった。脳卒中後疼痛27例に対してDual-lead SCSを用いたテスト刺激を行い、21例(77.7%)に慢性植え込みを行った。慢性刺激開始後12カ月の結果では、excellent(60%以上VASが減少)4例、good(30-60% VASが減少)11例、fair (VASの減少が30%以下)6例で、15例(71.1%)で満足できる効果が得られた。研究実績の概要:
  40. 統合失調症の認知機能障害に対するrTMSの治療機作のGABA機能評価による検討 2012-04-01 – 2016-03-31 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:うつ病の新しい治療法である反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)が、統合失調症の認知機能障害の治療にも応用されつつある。一方で、大脳皮質のGABA機能の障害が統合失調症の認知機能障害に関与する可能性が指摘されている。そこで、rTMSの治療機作やエビデンスを、ヒトの大脳皮質のGABA機能を評価できる2連発経頭蓋磁気刺激を中心に、rTMS刺激中の皮質の血流反応性、脳機能・構造画像などを相補的に用いて検討することを本研究の目標とした。時間的制約から、rTMS治療と各種の評価を並行実施する最終段階には至らなかったが、これらの手法を用いて統合失調症をはじめとする神経・精神疾患の病態等の研究に多くの成果を得た。研究実績の概要:
  41. 情動的ストレスによる心血管系の応答に対する圧受容体機能の役割 2012 – 2016 上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50264875) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:研究実績の概要:圧受容体反射経路と情動的ストレスの回路で、共通する箇所を神経解剖学的手法で探索することを探索することを目標とした。圧受容体反射弓除神経群とSham群で、不動化(情動的)ストレスで変化する領域として不確体や淡蒼球縫線核が抽出された。そこでより上位の自律神経から影響され、また圧受容体反射経路からは上位にあたると考えられる分界条床核(BST)に注目し、その求心路を逆行性トレーサーChlera toxin b subunit(CTb)をBSTに注入し、ストレス負荷を加え、CTbと神経興奮マーカーであるc-Fosとの二重染色を行い、mappingを行った。CTbをLSDの一部と中隔海馬采や三角中隔核に注入し、側脳室に漏れた。CTb陽性細胞としては、辺縁系として知られるD1・島皮質(GI)、帯状回(Cg)、下辺縁皮質(IL)、前辺縁皮質(PrL)、背側脚皮質(DP)やそれ以外の大脳皮質としも運動野(M1、M2)、感覚野(S1, S2)の場所に見られた。また、視床下部として腹側内側核(VMH)、視索前野(LPO, MPA)、ブローカの体格帯(HDB, VDB)が見られ、小脳皮質巣小葉(Sim)、中脳の淡蒼縫線核(RPa)の場所でも観察することができた。次にCTbとcFos二重陽性は中脳の青斑核(LC)、延髄の尾側オリーブ周囲核(CPO)、視床下部室傍核(PaLM)、視床下部外側核(LH)の場所で見られた。
  42. ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 2012-04-01 – 2014-03-31 中村 元昭 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50464532) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要:平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。
    本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  43. rTMS・tDCSの定量的評価および治療応用システムの開発 2012 – 2013 特別研究員奨励費 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は脳の興奮性を変化させることができることから, うつ病, パーキンソン痛, 脳卒中の後遺症, 慢性疼痛, ジストニアなどの治療に応用されている. しかしながら, rTMSやtDCSの臨床応用に関する報告では, 疾患に対する効果や有効性は確認されているものの, 刺激を行う際の刺激条件が客観的に定められていないとう問題がある. そこで, 本研究ではrTMS・tDCSの刺激効果を定量的に評価し, 疾患を入力することで, rTMS・tDCSの最適な刺激条件が出力されるシステムの開発を行う.
    まず, 運動野において, μ波とrTMS・tDCSの刺激効果の関係性について調べた. その結果, μ波のERDは促進性の刺激であるAnodal tDCSにより, 有意的に増加し, 抑制性の刺激である1Hz110%RMT rTMSとCathdal tDCSにより有意的に減少した.
    次に, rTMSの刺激条件と刺激効果の関係性を調べるために, 抑制効果を誘発すると言われている1HzのrTMSを左半球の第一次運動野に与え, 運動誘発電位(MEP)を計測することで, 大脳皮質興奮特性の変化を評価した. 更に, その実験結果を用い, 重回帰分析によりrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 実験により, 刺激強度が強いほど, パルス数が多いほど, 抑制効果が強く生じることが分かり, MEPの振幅変化と刺激強度, パルス数の関係が非線形である可能性があることが分かった. また, 樹木モデルを計測データにあてはめ, 独立変数間の交互作用を調べた. その結果, 刺激強度とパルス数の間に交互作用がある可能性が示唆された. これらの結果から, 初期のモデルに, 刺激強度の二乗, パルス数の二乗, 刺激強度とパルス数の積を含むモデルを用い, 重回帰分析を行うことでrTMSの刺激効果予測モデルを作成した. 刺激の効果が被験者により異なることがある為, クラスター分析により被験者を分類し, モデルを分けて作成することで, モデルの精度向上を行った。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  44. 経頭蓋磁気刺激法の気分障害に対する治療プロトコールの最適化と神経可塑性変化の検討 2011 – 2012 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:薬物治療抵抗性のうつ病の患者群を対象として、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の有効性を厳密に調べるランダム化比較試験(RCT)のデザインを開発した。精度の高いシャム刺激を対照群として、複数の治療プロトコールの直接比較や、再発予防効果の検証が可能となる臨床試験である。現時点で RCT の被験者数は目標数に達していないため、rTMS前後の生物学的変化も含めた本研究の最終的な解析は RCT終了時点にて行なう。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  45. 脳卒中後歩行障害に対する機能回復型ブレイン・マシンインターフェイス開発 2011 – 2013 竹内 直行 東北大学, 大学病院, 助教 (10374498) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:脳卒中患者の運動野に陽極経頭蓋直流電気刺激、麻痺側下肢の腓骨神経に機能的電気刺激を同時に行ったが歩行機能改善効果は認めず、ブレイン・マシンインターフェイス(BMI)を歩行障害の治療に応用するため経頭蓋直流電気刺激にて運動野の興奮性を変化させ、BMIに用いる下肢の感覚運動リズムを調節できるか検討を行った。経頭蓋直流電気刺激後の足運動イメージ時のβ帯域感覚運動リズム変化は健常者と下肢切断患者では異なり、BMIを歩行障害に応用するためには、興奮性・抑制性刺激を使い分ける必要があり、BMI情報の変動に対し経頭蓋直流電気刺激が有益である可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  46. 運動療法によるストレス緩和作用の神経基盤に関する生涯発達研究 2011-04-01 – 2014-03-31 酒谷 薫 日本大学, 工学部, 教授 (90244350) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:現代社会に蔓延するストレスは、様々な疾患の主要原因の一つである。本研究では、近赤外分光法(NIRS)を用いて、前頭前野の神経活動を計測し、自律神経系・内分泌系機能及び心理状態とともに、ストレスを客観的に評価する方法を開発した。さらに本法を用いて、中高齢者における運動療法のストレス緩和効果について検討し、軽い運動でもストレス緩和効果があることを明らかにした。さらに高齢者に軽い運動を負荷することにより、前頭前野のワーキングメモリー課題に対する反応性が上昇し、パフォーマンスが向上することが示唆された。本ストレス評価法と運動療法を組み合わせることにより、ストレス性疾患を予防できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  47. 分子から社会までの統合的アプローチによる自己制御の形成・修復支援 2011-04-01 – 2016-03-31 笠井 清登 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80322056) 複合領域 新学術領域研究(研究領域提案型) 研究開始時の概要: 研究概要: 研究成果の概要:人間の精神機能は、自分自身を知り(自己意識・自我・メタ認知[=自分自身の認知・行動を対象化し、自己像として認識すること])、社会環境適応的な自己制御性を持つという、他の動物にない特長を持つ。ヒトの自己制御をその神経基盤も含めて包括的に解明し、それにもとづいて自己制御の形成・修復の支援方法を開発することは、精神疾患が急増していることを鑑みれば喫緊の課題である。本領域では、5年間の研究を通して、自己制御の障害を呈する思春期精神病理における神経基盤を明らかにし、自己制御の支援方法を具体的に提案することに成功した。研究実績の概要:
  48. アットリスク精神状態の介入指標の確立と病態解明を目指す縦断的TMS-NIRS研究課題名 2010 – 2012 辻 富基美 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10347586) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:幻聴や思考障害の基盤とされる上側頭回(STG)と前頭葉の結合性を検討するため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)中に刺激遠隔部で起こる血流変化をNIRSで測定した。対象は健常男性12名。左STG 後部をrTMS 中の左前頭部、右前頭部の血流変化をNIRS で測定した。左STG へのrTMS では、左前頭部、右前頭部において、シャム刺激中と比較し、実刺激中に有意に血流が低下した。本研究の結果から、TMS-NIRS がSTG -前頭葉の機能的結合性の指標となる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  49. 気分障害・適応障害の反復経頭蓋磁気刺激法に際する脳機能反応性の検討 2010 – 2012 青山 義之 群馬大学, 医学部, 助教 (60568351) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を行った際の脳血液量変化を近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いて測定することにより、気分障害(大うつ病性障害、双極I型障害、双極II型障害)、および適応障害における脳機能の特徴の検討,および適正な刺激条件の設定を目的とした。rTMS中の対側脳機能反応性は疾患群によって異なる反応を示し,その反応は状態像による相違を認めなかった. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  50. 経頭蓋直流刺激のうつ病治療の可能性についての研究 2009 – 2011 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 挑戦的萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:電気けいれん療法(ECT)に代わる治療法として期待されている左背外側前頭前野に対する反復陽性経頭蓋直流刺激(tDCS)の気分と認知機能に与える影響を検討した。健常男性に対し偽刺激を対照とするクロスオーバー法試験を実施したところ、視覚性再認記憶課題の正答率のみが時間とともに上昇しており、実刺激で開始した群で変化が顕著であった。これらの所見より、tDCSは特に有害な作用を示すことなく、視覚性再認学習機能を高める可能性が示唆され、うつ病の新たな治療法として検討を進める価値があると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  51. アットリスク精神状態の前向き追跡による神経生理学的介入指標の確立と発症機序の解明 2009 – 2011 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の病態仮説と関連するGABA系、NMDA系の機能を評価できる2つの神経生理学的検査を用いて統合失調症の発症早期群、超ハイリスク群を横断的に検討した。発症早期群において皮質のGABA機能の低下を認め、さらにワーキングメモリーの障害と相関することから、認知機能障害の軽減にGABA系の機能回復を目指す治療的介入が役立つ可能性が示唆された。超ハイリスク群では発症群と同様に皮質のNMDA系の機能低下が認められ、顕在発病前からの脳灰白質の体積の減少にNMDA系の機能低下が関与するとの仮説を支持した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  52. 統合失調症と漢方-認知機能障害の治療と客観的神経生理指標の確立 2008 – 2009 正山 勝 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70364081) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究の目的は統合失調症の認知機能障害の治療を漢方製剤と生物学指標によって行うことである。最初に経頭蓋磁気刺激手法を応用したshort latency afferent inhibition(SAI)を統合失調症患者群と健常対照群で測定した。SAIは患者群で有意な低下を認めた。次に漢方製剤の抑肝散により、精神症状や認知機能の改善を認めた統合失調症、妄想性障害、皮質下認知症での症例を検討した。統合失調症の認知機能障害の治療において、漢方製剤や中枢性のコリン系伝達の評価が有用であることを示唆するものと考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  53. 統合失調症の神経回路網の機能障害に対する連続経頭蓋磁気刺激の効果の検討 2008 – 2009 奥村 匡敏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00464678) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:very late onset schizophrenia like psychosisの基準を満たす薬物治療抵抗性幻聴をもち、低頻度rTMS治療を行った62歳女性についてSPECTで評価した。同時に、我々はPANSSや幻聴スケールで精神症状とBACSで認知機能を評価した。rTMS前後の血流変化は3DSRTを用いて評価した。rCBFは側頭皮質で減少し、基底核で増加していた。認知機能では言語性記憶と運動機能が改善した。側頭皮質の血流減少は既報と一致しているが、基底核での増加はvery late onset schizophrenia like psychosisの病態に起因しているのではないかと考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  54. ナビゲーションガイド下経頭蓋磁気刺激の気分障害への治療応用と治療反応性の予測因子 2008 – 2010 中村 元昭 横浜市立大学, 医学研究科, 客員研究員 (50464532) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:目的:薬物治療抵抗性の気分障害に対する反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の安全性、有効性と治療反応性を検討する。神経画像を用いてrTMS前後での脳形態の変化を調べる。
    方法:単極性及び双極性のうつ病を対象としてrTMSを計10セッション施行。刺激頻度は20Hz又は1Hzで、刺激強度は安静時運動閾値の90-100%、週の総パルス数は5000とした。頭部MRIと超音波によるナビゲーションを用いて前頭前野背外側面(DLPFC)を刺激した。
    結果:被験者51名(平均年齢:48.2歳、男36名、女15名)の中でrTMS開始前のハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は12.9±4.6点で、rTMS終了後は8.0±5.1点であり、有意な改善を認めた(Z=5.88,p<0.0001)。治療前後で50%以上の改善を認めた群は41.2%で、25%以上50%未満の部分改善群は29.4%で、25%未満の非改善群は29.4%であった。前頭葉機能の改善も認められた(言語流暢性:Z=2.62,n=40,p=0.009)。重篤な有害事象は認められなかったが、33.3%において一過性に軽度~中等度の頭皮痛を認めた。治療反応性の予測因子としては年齢や運動閾値に加えて臨床像との関連が推測された。rTMS前後の脳形態変化は刺激部位である左DLPFC(t37=5.53,p<0.0001)を中心として前帯状回などにおいても灰白質体積の増加が認められた。さらには刺激部位を中心として両側DLPFCにおいて拡散係数の低下を認めた(t20=8.12,p<0.0001)。改善群と非改善群を比較した場合に、改善群において左DLPFCの体積増加と拡散係数低下が認められた。
    結論:非盲検デザインではあるが、ナビゲーションガイド下rTMSの安全性と有効性が示唆された。rTMS後の灰白質の体積増加や拡散係数低下はrTMSによる神経可塑性変化を示唆する所見であり、抗うつ効果発現との関連が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  55. 反復経頭蓋磁気刺激と脳画像によるうつ病の治療反応性の解明 2008 – 2010 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:【実験1】ラットでのrTMS施行群ではControl 群と比較し、BrdU-positive cellsが有意に増加した。rTMSの抗うつ効果発現に海馬神経細胞新生が関与する可能性がある。
    【実験2】脳血流に関して難治性うつ病でのrTMS治療のレスポンダーでは治療前のCg25野の血流が上昇し治療後には低下した。rTMSによりCg25野が調節される可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  56. 近赤外分光法による脳血流同時測定を用いた精神疾患の経頭蓋磁気刺激治療法の開発研究 2008 – 2011 岩瀬 真生 大阪大学, 医学系・研究科, 助教 (60362711) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  57. 統合失調症と気分障害における意欲症状の脳基盤の解明と改善のためのNIRS研究 2008 – 2010 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症や気分障害における意欲症状の脳基盤を解明するために、MRI・NIRS・MEGを用いた検討を行なった。健常者においては眠気・疲労感・幼小児期の養育・協調性が前頭前野の体積や賦活反応性と関連すること、統合失調症の前頭極部機能が機能の全体的レベル(GAF)やσ1受容体・COMT遺伝子多型と関連すること、摂食障害の前側頭部機能が臨床症状と関連すること、双極性障害ではMMNm成分の潜時延長が認められることを明らかにし、前頭葉の体積や賦活反応性が健常者や精神疾患における意欲と密接に関連することを示した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  58. こころの健康増進のための脳機能自己モニタリング・システムの確立 2007 – 2008 福田 正人 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (20221533) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:脳機能の自己モニタリングを可能にするために、健常者を対象として頭部用の多チャンネル近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)装置を用いて大脳皮質の賦活反応性を検討し、さまざまな精神状態との関連を検討した。(1)頭皮上のNIRS測定チャンネル位置と標準脳における脳回との対応を確立し、fMRIやPETにおいてアーチファクトのために測定の信頼性が低いとされる前頭極部frontal pole(Brodmann 10野)についてNIRSの測定が可能であるという利点を明らかにした。(2)時間分解能が高いというNIRSの特徴を生かし、運動課題における大脳皮質の賦活反応性について、運動野については「課題区間における持続的な賦活」、体性感覚野については「課題開始時の-過性の賦活」、前頭葉については「課題区間における累積漸増的な賦活」、という時間経過の特徴があることを明ならかにした(Neurosci Res 58:297,2007)。(3)言語流暢性課題において、自覚的な軽度の眠気が前頭葉背外側面の内側部における賦活反応性と負の相関をすることを示し、高次脳機能の軽度の変化がNIRSデータに反映されることを明らかにした(Neurosci Res 60:319,2008)。(4)同じ言語流暢性課題において、自覚的な疲労感は前頭葉腹外側面の賦活反応性と負の相関を、検査前夜の睡眠時間が前頭葉背外側面の賦活反応性と負の相関を示し、眠気と疲労感の自覚はそれぞれ前頭葉背外側と腹外側によって担われることを明らかにした(Brain Res1252:152,2009)。(5)以上の結果から、「自然な状態における検査が可能」という特徴をもつNIRSは、健常者の精神状態の自覚の脳基盤を明らかにするうえで有用であり、脳機能の自己モニタリング装置として適切であることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  59. 脳磁図による機能画像を用いた統合失調症の磁気刺激療法の作用機作と有効性予測の検討 2006 – 2008 鵜飼 聡 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の治療には通常薬物療法が選択されるが、今後期待されるその他の治療法のひとつに反復的経頭蓋磁気刺激療法がある。この治療法は幻聴や陰性症状の改善に有効である可能性が指摘されているが、その作用機作は不明であり、個々の症例での有効性の予測の指標も確立されていない。本研究では脳磁図を用いた時間分解能の高い脳機能画像を得る手法を確立するとともに、それを用いて本治療法の作用機作や有効性予測の指標を確立することを最終目標として基礎的な研究をおこない、いくつかの重要な成果を得た。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  60. 低頻度反復的経頭蓋磁気刺激の抗うつ作用と認知機能に及ぼす影響に関する検討 2005 – 2006 松本 直起 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (60326361) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:難治性うつ病に対する反復的経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation、rTMS)の有効性と認知機能へ影響の検討を行った。rTMSのパラメータは直近の報告(Savitha E. Am J Psy 2007など)でも総パルス数が10000発以上が推奨されているため、本研究でも当初の予定より多くした。すなわち、左背外側前頭前野に対して、刺激強度は運動閾値の110%、刺激頻度10Hz、刺激時間5秒間、1日刺激総数1000発、刺激日数15日間、総刺激数15000発とした。症例の取り込みのためにマスメディアなどを通じて啓発活動を行った。最終的に応募者の中から除外基準に抵触しない数名の難治性うつ病患者を抽出し本研究を行った。結果は、約半数の患者においてうつ状態評価尺度であるHAM-Dスコアの軽度から中等度の改善(開始時スコアの50%以上の低下)を認めた。またその改善は、刺激期間終了後も2ヶ月にわたって持続した。Frontal Assessment Battery (FAB)、Wisconsin Card Sorting Test (WCST)による評価で認知機能に悪影響は認めなかった。また臨床上も問題となる副作用はなかったが、刺激部位の不快感ゆえ脱落する症例があった。
    既報でも難治性うつ病患者に対するrTMSの有効性は着実に追試されてきており、薬剤抵抗性の症例や高齢者において有効な選択枝となりつつある。今後も症例を重ねて有効性と安全性に関するエビデンスを集積していく予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  61. 経頭蓋磁気刺激による統合失調症患者の大脳皮質の抑制・興奮性の検討 2005 – 2006 篠崎 和弘 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40215984) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:統合失調症の生理学的指標の開発を目指して、2連発刺激による抑制効果を統合失調症患者で検討した。2連発経頭蓋磁気刺激pp-TMSで大脳運動野のGABA神経機能を、また2連発聴覚性驚愕反応(prepulse inhibition : PPI)でNMDA受容体機能を検討した。
    pp-TMSでは2,3,4msの短間隔刺激による抑制効果(SICI)と10,15msの長間隔刺激による側通効果(LICF)を検討した。刺激強度は1発目80%MT、2発目130%MTとした。統合失調症患者群は健常群と異なりSICIで障害を認めた。SICI障害は定型抗精神病薬服用群、症状重症群、認知・社会機能低下群で強く、病形では解体型で強く妄想型で軽症となる傾向があった。一部の患者ではstate markerとなる可能性が見られた。
    PPIは刺激間隔60,120,480,2000ms、一発目20ms、82dB、2発目40ms、112dB、背景雑音70dBとした。統合失調症群はISI60ms,480msにおいて有意な障害を認めた.患者背景(発症年齢、罹病期間、薬物クロールプロマジン換算量、ニコチン量)、精神症状(PANSS,GAF)、認知機能(MMSE,FAB,ATMT)との有意な関連は見出せなかったことよりtrait marker候補と考えられた.他方、olanzapine単独服用群は定型薬服用群よりPPI障害が有意に小さかったが、統制研究ではないため薬理作用によるものと結論するには至らなかった。
    この研究によりpp-TMS,PPIはそれぞれstate marker, trait markerの候補となる可能性が得ら眼球追跡運動なども含め、早期統合失調症の早期介入、初発統合失調症の最適治療管理など臨床への応用開発を目指す予定である。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  62. 反復経頭蓋磁気刺激法による発現変動遺伝子の解析 2004 – 2005 池田 哲朗 理研, 研究員 (10360489) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域では長年電気痙攣療法(ECT)が行われてきたが、最近ではより安全で非侵襲的代替療法として、磁場を応用した反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS : repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)の有用性が、多くの臨床的研究で示されている。特に、難治性うつ病、気分障害、統合失調症(精神分裂症)、アルツハイマー病、パーキンソン病等の患者で、磁場刺激による症状改善報告が示されている。磁場刺激後の変動遺伝子の解析をGeneChipで現在解析した。その結果、モノアミン神経系に関与するモノアミントランスポーターに変化があった。モノアミン神経系は上記疾患と深く関わることが知られており、rTMS刺激後のモノアミントランスポーターの機能解析を行った。モノアミントランスポーターは、セロトニントランスポーター(SERT)、ドーパミントランスポーター(DAT)、ノルエピネフリントランスポータ(NET)からなり、シナプス前膜部から放出されたモノアミン神経伝達物質を再取込みし、シナプス伝達を終結させる重要な細胞膜蛋白である。20日磁気刺激後、マウス脳においてSERT mRNA,[3H]Serotonin uptake, [3H]Citalopram bindingはいずれも増加した。一方、DAT, NET mRNA, [3H]Dopamine, [3H]Norepinephrine uptake,3H]Nisoxetine binding(not [3H]GBR12935 binding)は増加した。これらのことは20日磁気刺激がモノアミントランスポーターを変化させることを示しており、モノアミン神経系が関与していると考えられている上記疾患へのrTMSの分子メカニズムを提供するものと考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  63. Restless Legs syndromeに対する高頻度磁気刺激の治療応用 2004 – 2005 佐久間 研司 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (70311199) 若手研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激(TMS)は非侵襲に中枢神経を刺激して錐体路機能評価の他に,うつ病をはじめとする精神疾患やパーキンソン病,脊髄小脳変性症,神経リハビリテーションなどの治療目的で臨床応用が期待されている.体性感覚誘発高周波応答(high frequency oscillation ; HFO)は体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential ; SEP)のN20の主にascebding slopeに重畳する500-800Hzの電位である.前半部は視床,視床皮質路由来であり,後半部はBA 3bの第4層にあるGABA抑制性ニューロン,又は第3層にあるChattering錐体細胞などが起源であると推定されている.
    Theta burst stimulation(TBS)は動物実験ではシナプスの可塑性に影響を与えることが知られ,ヒトの運動野に対するTBSでは数十秒から数分の刺激によって運動神経シナプスの可塑性に影響を与えることを証明し,効果が数十分から一時間程度持続することがわかっている.非常に短時間の刺激で脳の可塑性に変化をきたす方法の治療応用への可能性を検討するべく本年度においてはTBS前後における体性感覚誘発電位の変化について検討を行った.18人の健常成人を対象とし,TBS前後での両側正中神経刺激にてSEPを測定した.SEP測定の方法については平成16年度のものを踏襲した.TBSは200msec間に50Hzの刺激を3回行うことをひとつの単位とし,それを2秒間刺激して8秒間休むを繰り返し合計600回刺激するまで継続する方法をiTBSとし,連続的に600回刺激する方法をcTBSとした.刺激部位はM1とし,刺激強度は80%AMTとした.
    Motor evoked potential(MEP), Short-latency intracortical inhibition(SICI)はiTBSでは増大傾向,cTBSでは減少傾向を認めた.HFOについてはiTBSにて刺激側で有意に振幅増大を認めたが,cTBSについては有意に減少した.
    TBSではMEPとSICI,HFOの動きが相関していた.SICIにはGABA抑制性ニューロンが関与しているとされており,HFO, SICIの両者に同方向め変化をきたしたことはTBSによりGABA抑制性ニューロンへの変化をきたすと考えられた.HFOの変化についてはiTBSによる促通効果は前半部に強く,cTBSによる抑制効果は後半部に強く見られた.HFOの前半部は視床,視床皮質路など皮質下由来であり,後半部は皮質領域由来と考えられ,TBSではまず表層に近い皮質神経細胞の可塑性に変化を与えて,二次的に深部である皮質下領域に影響が伝播する可能性があると考えられた.
    平成16年度の結果と合わせ,TMSにはSensorimotor integrationをmodifyする作用が確認できた.Restless legs syndrome(RLS)において磁気刺激治療を行った.運動閾値,MEP振幅,SICIについては健常人と差がなかった.M1への10Hz,1500発の治療を行った.
    足が勝手に動く症状,RLSの自覚症状,QOL, CGI(Clinical Global Impressions)について問診により変化をたずねた.結果としては明らかな前後での変動は認めなかったが副作用も認めていない. 研究成果の概要:研究実績の概要:
  64. 脳磁図と反復的経頭蓋磁気刺激による統合失調症の幻聴発生機構の解明と治療法の開発 2004 – 2005 石井 良平 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40372619) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMSを用いて、視床痛などの求心路遮断痛患者7症例について、患側の第1次運動野や前頭前野に与えたrTMS(1Hzまたは10Hz)の治療前後でのMEG、EEG、SPECTの変化と治療効果との比較検討では、MEG、EEGの改善は疼痛症状の改善と関連なくほとんどの症例で認めるのに対し、SPECTの改善は疼痛の改善を伴う症例に多く認める傾向がみられた。このことは、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法が血流変化を測定するSPECTよりもより鋭敏にrTMSによる脳活動の変化を捉えている可能性を示唆している。今後、rTMSの種々の刺激条件と、MEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化の相関を詳細に検討していくことが必要であると考えられた。
    MEGの空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で機能画像化し、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した結果、DLPFCでの活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となった。このことから、統合失調症患者において、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症群においても入力-組織制御-出力という脳内神経ネットワーク上の基本的な情報処理過程の流れは保たれていることが示された。今後は、統合失調症患者の左DLPFCの機能不全をrTMSによって活性化させることで、幻聴症状にどのような治療効果がもたらされるのかをMEG、EEGなどの神経生理学的な測定法による脳活動の変化との相関も会わせて、詳細に検討していくことが必要であると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  65. 脳磁図による脳機能画像法を用いたアスペルガー症候群の社会機能障害の神経基盤の研究 2004 – 2005 廣常 秀人 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70346203) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:アスペルガー症候群は、自閉症スペクトラムの一角をなす発達障害の一群である。最近、複数の重大犯罪に本症候群の患者がかかわったと判断されて社会問題となる一方、本症候群の病態が誤解される恐れが指摘されるなど、本症候群の病態を科学的に解明し、治療・介入・教育方法を確立することが急務となっている。本研究では、アスペルガー症候群の中心症状である社会性の障害の神経基盤を、脳内の複数の領域が関わる神経ネットワークの障害として捉え、本症候群の病態メカニズムを明らかにするために、本症候群に特徴的な高次機能障害に関連するMirror Neuron課題(模倣、感情の伝達や共有などの情動・認知能力に関連する課題)を用いて、我々が独自に開発してきた脳磁図の空間フィルタ解析による脳機能画像法により、脳内の各領域の健常群との神経活動の差異とともに、脳内神経ネットワーク全体の障害を時間・空間的に検討することかできた。MEGのSAMを用いたpost-movement ERS研究によって、成人Asperger disorder患者におけるMirror neuron systemの障害を捉えられる可能性が示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  66. 反復性経頭蓋磁気刺激のうつ病治療に対する有用性と作用機序についての研究 2004 – 2005 本橋 伸高 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (30166342) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:うつ病に対する反復性経頭蓋磁気刺激法repetitive transcranial magnetic stimulation(rTMS)の有用性と脳内^<11>C-raclopride結合に与える影響を検討した。薬物療法に反応を示さなかったうつ病の患者9名(男性4名、女性5名;平均年齢36.4±6.1歳)を対象とした。刺激部位は左背外側前頭前野とし、1回のセッションにつきmotor thresholdの100%の強度で10Hzの刺激を計1000発、合計10セッションを2週間で行った。症状評価には、Hamilton Rating Scale for Depression(HRSD)とBeck Depression Inventory(BDI)を用い、治療前後の認知機能の評価として、Mini Mental State Examination、Wechsler Memory Scale-Revised中の視覚再生と言語性対連合、Trail Making Test、生活健忘チェックリストを使用した。また、治療前後で尾状核と被殻の^<11>C-raclopride結合をPETにより測定した。rTMSにより、HRSDは17.4±2.6点から10.4±6.0点に、BDIは20.7±6.6点から13.6±7.7点にそれぞれ減少した。5人の患者が軽度の頭痛を訴えたがまもなく改善し、他の副作用は認めなかった。また、治療前後で認知機能の悪化は認めず、言語性対連合の無関係言語の即時、遅延再生、生活健忘チェックリストの得点が有意に改善した。以上より、rTMSは軽度から中等度のうつ病の治療に有効であり、重篤な副作用のない安全な治療法と考えられた。さらに、言語性記憶機能の一部を改善する可能性が示された。しかし、脳内ドーパミン系には影響を与えないことが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  67. 随意運動遂行障害に対する連続経頭蓋磁気刺激を用いた臨床応用 2004 – 2005 中馬 孝容 北海道大学, 病院, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、中枢性神経疾患やうつ病などの難治性疾患に対する臨床応用の検討が数多くの検討がなされている。今回、パーキンソン病を対象としてrTMS投与部位による影響について検討した。
    平成16年度では、13名のパーキンソン病を対象(男性3名、女性10名、平均年齢69.2±6.2歳)とし、8の字コイルを用いて低頻度rTMSを行った。rTMS投与部位は(1)前頭前野背外側部、(2)補足運動野、(3)運動前野、(4)第一次運動野の4箇所で、各々0.3Hz、50回のrTMSを投与した。rTMS前後において、短母指外転近(APB)のcortical mappingを測定し、APBのMEPの振幅の総和について比較した。結果は、(1)へのrTMS投与後においてのみ、APBのMEPの振幅は高くなり、MEPのareaは拡大する傾向がみられた。パーキンソン病に関しては、前頭前野背外側部への低頻度rTMSは大脳皮質の興奮性が増強する可能性が推測された。
    平成17年度では、9名のパーキンソン病患者を対象とし、高頻度rTMSの投与部位による影響を測定した。rTMSは10Hzの刺激頻度で総計1000回施行し、投与部位は左第一次運動野、左前頭前野背外側部の2種類とシャム刺激の3パターンについて検討した。rTMS投与前後において、運動機能(歩行・握力等)および前頭葉機能(stroop test)への影響について検討した。前頭前野背外側部刺激では、stroop test II-I時間の短縮傾向がみられた。左前頭前野背外側部への高頻度rTMSは、前頭葉機能に影響を与える可能性がある。高頻度rTMSの投与部位や刺激条件を検討する必要はあるが、前頭葉機能に対する臨床応用の可能性が推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  68. 神経生理学的脳機能画像による反復的経頭蓋磁気刺激治療の刺激条件の確立 2003 – 2005 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:本研究では、反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)治療に用いる具体的な最適刺激条件を、神経生理学的脳機能画像、脳機能測定・解析法から検討するとともに、当該治療法の作用機作を解明することを目標とした。3年間の主な研究実績は下記のとおりである。
    1.HFOsの増強効果からみたrTMSの作用機作の検討
    体性感覚誘発電位(SEP)の高周波振動(HFOs)の変化を指標として、健常者の体性感覚野に与えた低頻度rTMS(0.5Hz、50回、運動誘発閾値の80%強度)が、皮質興奮性に与える影響について検討したところ、SEPには変化を認めない一方、HFOsには有意な増強を認めた。HFOsは皮質内GABA系抑制性介在ニューロンの活動を反映すると考えられているので、低頻度rTMSによる皮質興奮性の抑制は、抑制性介在ニューロンの作用の増大を介して行われている可能性が示唆された。また、HFOsがrTMSの最適刺激条件を検討する際の客観的な指標になりえることが示された。
    2.StrooP課題遂行時における統合失調症患者の脳内情報処理のMEGによる脳機能画像化
    脳磁図の空間フィルタ解析を用いて、Stroop課題の刺激提示から回答までの短時間の神経ネットワークの振る舞いを時間窓200msの高い時間分解能で脳機能画像化する方法を開発するとともに、健常群、統合失調症の幻聴群、非幻聴群の3群での振る舞いの差異について検討した。前頭前野背外側部(DLPFC)での活動が、健常群では左優位に両側性に、幻聴群では右優位、非幻聴群では左優位となることから、左のDLPFCの機能不全と幻聴の発生の関連性が示唆されるとともに、統合失調症の臨床特性やrTMS前後で異なると想定される神経ネットワークのダイナミクスの差異を、われわれが開発したMEGの脳機能画像法が捉えうる可能性が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  69. 連続磁気刺激(rTMS),脳深部刺激(DBS)の作用機序に関する研究 2002 – 2003 宇川 義一 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)に関する研究
    rTMSの臨床効果については以下の研究を2年間で行った。パーキンソンにしては日本全国規模の効果判定を行い、シャム刺激と比較して有意な効果が得られない事を報告した(文献2)。排尿障害、急性の痛みのに関しては治療効果を認める報告をした(文献1、4)。さらに、rTMSの効果を考える時には、刺激コイル直下の大脳皮質部位だけでなく、その部位と密接な連絡を持つ離れた部位への刺激が及ぼす効果も考慮すべきであることを報告した(文献3)。さらに猿にrTMSを行い、そのときの脳の代謝の変化などを検討した。まず、猿用のコイルを作成した(図書)。このコイルにより、猿の脳でも効果的に限局した部位のみに、電流を誘発できることを証明した。このコイルにより猿の運動野を連続刺激したときの、大脳基底核でのドーパミン代謝の変化を分析した(文献5)。運動野の連続磁気刺激により、腹側線条体での内因性ドーパミンの放出が上昇した。このドーパミン代謝の上昇が、本刺激の鬱病などの治疲機序を一部説明していると考えた。今後は、マイクロダイアリシスによりドーパミンの放出を確認するサルでの実験を計画している。さらに、rTMSの今後の臨床応用が期待されるため、いくつかの神経疾患に刺激パラメータを変えて、治療を試みる予定である。
    脳深部刺激(DBS)に関する研究
    視床下核のDBSで治療を行っているパーキンソン病患者に関して、刺激オンをオフでFDG PETを行い、両者を比較した。刺激オンの時はオフの時と比べて、刺激側の前運動野と前帯状回で糖代謝の亢進が観られた。DBSがパーキンソンなど運動障害に効果を示す機序の一つとして、前運動野の機能亢進が関連していると結論した。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  70. PETによる気分障害患の病態と治療法の作用機序に関する研究 2002 – 2005 須原 哲也 独立行政法人放射線医学総合研究所, 脳機能イメージング研究開発推進室, 研究員 (90216490) 基盤研究(B) 研究開始時の概要: 研究概要:無けいれん性電気けいれん療法(mECT)は難治性うつ病等に非常に有効な治療であり臨床的に確立した治療法であるが、その機序は不明な点が多い上研究も遅れている。本研究ではmECTの適応となったうつ病患者9名を対象にmECT治療前後でのセロトニン1A受容体の変化を[^<11>C]WAY100635を用いて検討した。mECT開始前日、1クール終了1日後にPET検査および精神症状評価を行った。mECT後に9名全例で精神症状の改善を認めた。ECT前後での海馬の結合能(BP)は一部上昇傾向は認めたが統計学的には有意な変化とは認められなかった。今後は海馬5HTIA受容体以外の受容体変化を検討していく必要があると考えられた。
    抗うつ薬などの向精神薬は脳内の受容体やトランスポーターなどに結合し、その薬理作用を発揮している。そのような結合部位での動態を生体内で検討することは薬物の作用機序の解明や用量用法を決定する際に重要である。本研究では健常男性6名を対象とし、SSR1の一つ、フルボキサミンによるセロトニントランスポーター(5HTT)占有率の経時的変化を[^<11>C]DASBを用い、PET測定を行った。また、5HTT占有率の経時的変化を5HTT親和性特性(ED50値;占有率が50%を呈する値)と血中濃度の経時変化をパラメーターとしてシミュレーションし、実測値との相関を検討した。フルボキサミンによる5HTTの平均占有率は5時間後で約73%、26時間後で約50%、53時間後で約25%であった。また、シミュレーション結果は実測値と良く相関した。抗うつ薬の用量用法の決定の際には血中濃度のみならず、脳内セロトニントランスポーター占有率の経時的変化の検討が重要な指標を与えると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  71. 経頭蓋磁気刺激法(TMS)によるうつ病および強迫性障害の治療 2001 – 2002 太田 龍朗 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00109323) 萌芽研究 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激法の臨床応用は、平成13年度に当大学の倫理委員会に受理された。治療は安全性を考慮して外来では行わず、入院治療で行う事として受理されたものである。平成13年度に血液中のテトラヒドロビオブテリン測定系は完成し、いつでも運転可能となった。本年度も当院精神科および関連医療機関で、上記倫理委員会で受理された基準に基づき同治療法の適応患者を募集した。8月に1例慢性うつ病患者に実施すべく、患者および家族に治療について説明し同意を得たので、入院し、治療チームを編成したが、入院後、経頭蓋磁気刺激法の実施予定日までの間に症状が軽快し、ハミルトンスコア(うつ病重症度スコア)が10点以下にまで軽快したため協議の末実施に至らなかった。その他にも数例紹介された候補患者はあったが、いずれも治療に導入する基準(特に診断名と合併症)を満たさず、実施出来なかった。実施0例に至った事態について、その理由としてまず適応の基準が厳しかったことが挙げられる。安全な方法とはいえ、同治療法を将来定着させるためにも事故を防ぎ、きちんとした理論的根拠をもって適用し効果判定を行うにはやむを得ない事と考えている。次に、同治療法の利点である速効性、簡便性と安全性が、厳密に入院治療で実施することにしたことで、患者側のメリットが減少し、わざわざ入院するくらいなら外来での薬物療法の工夫で何とかしてほしいと思わせてしまった事がある。うつ病は生活の質を低下させるが直ちに生命を侵す疾患でないだけに、患者には、確実に治癒するのでなければわざわざ入院して、難解な説明や検査や採血を受ける必然性が無くなる。今後改善すべきことは、同治療法の利点をより明確に患者および精神科医に宣伝すること、国内では外来治療で実施している施設もあるので外来で実施可能な根拠について情報収集し、外来で実施できるよう倫理委員会に再申請することをまず行いたい。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  72. 高頻度磁気刺激による不安モデル動物作成とその機能の解明 2001 – 2002 龝吉 條太郎 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00159344) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:高頻度磁気刺激(rTMS)が、ラットにおいて不安を形成するか否かを調べる研究を計画した。不安をしらべる方法として恐怖条件付け試験、高架十時迷路、明暗箱を用いた。また選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor : SSRI)や抗不安薬であるdiazepam, alplazolam and buspironeがrTMSによる不安を抑制するか否かも調べた10日間のrTMS慢性照射は、Elevated plus maze, Black & white boxテスト,Conditioned fear stressテストによってラットに対して不安を惹起することが明らかとなった。この不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制されたがparoxetineの急性投与では抑制さえなかった。rTMSは従来うつ病や神経症の治療に使用されてきたので、我々は最初rTMSが不安を抑制するものと予想していた。しかし結果は逆であった。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。rTMSは、正常ラットではむしろ不安を惹起した。このrTMSによる不安は、paroxetineの慢性投与やdiazepam, alplazolam, buspironeの急性投与で抑制された。このことはrTMSによる不安は、セロトニンやGABA-ベンゾジアゼピン系の神経伝達が関与している可能性が考えられる。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  73. 反復的経頭蓋磁気刺激によるneurogenesisの誘導 2001 – 2002 鵜飼 聡 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80324763) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:rTMS(反復的経頭蓋磁気刺激)の作用機作についてneurogenesisの促進効果、および神経生理学的側面から検討した。
    1.neurogenesisの誘導の実証とその最適パラメータの決定のための基礎的データの取得を目指した。健常ラットを2群に分け、一方の群には磁気刺激装置でラットの前頭部を局所刺激して運動誘発閾値を決定し、その120%強度で、頻度10Hz、刺激時間5秒、1日3回刺激した。他方の群には同様の条件でシャム刺激を与えた。両群のマウスにneurogenesisのマーカーとなるBromodeoxyuridine(BrdU)を12時間おきに腹腔内に注入、本操作を14日間連続施行の後、灌流固定した。neurogenesisの指標となるanti-BrdU抗体、ニューロンの指標となるanti-NeuN polyclonal抗体で蛍光色素を変えた二重免疫染色をし、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、neurogenesis促進効果を、側脳室近傍、海馬、刺激直下の新皮質で定量し検討した。
    2.健常被験者での磁気刺激前後の誘発電位変化を体性感覚誘発電位高周波振動HFOs(high frequency oscillations)を用いて検討した。健常被験者7名に0.5Hz、50回の低頻度rTMSを実施し、刺激前後でのHFOsの変化を測定した。被験者全員にHFOsを認め、7名中6名にはHFOsのパワー値の有意な増大を認めたが、シャム刺激によるコントロール実験では変化を認めなかった。rTMSが直接皮質内GABA系介在神経細胞の活動を増大させ、介在神経細胞を通して抑制性入力を増強し、皮質興奮性を抑制するメカニズムが推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  74. パーキンソン病への経頭蓋連続磁気刺激の効果に関する運動学的解析 2000 – 2001 中馬 孝容 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋連続磁気刺激(rTMS)は、種々の中枢性変性疾患やうつ病に試みられている。8の字コイルを用いて前頭前野を局所的に刺激し、第1次運動野への影響について検討した。
    平成12年度は、パーキンソン症候群7名(男性1名、女性6名、平均年齢56.4±8.1歳)を対象とし、インフォームドコンセントを行った上で施行した。方法は8の字コイルを用いて、APBでの120%motor thresholdの刺激強度で、対側の前頭前野に0.3Hz、30回のrTMSを投与した。rTMSの前後にて、APBにおけるmotor threshold、silent period、cortical mappingを測定した。また、rTMS施行中は、ビデオ、APBの表面筋電図、脳波によるモニターを施行し、rTMSの安全性の確認も検討した。結果は、全例において,rTMS後の第1次運動野におけるAPBにおいてMEPの振幅の増大がみられた。APBのmotor threshold、silent periodの著変はなかった。以上より、前頭前野への局所的なrTMSは運動系への効果が推測された。また、全例において安全性の確認ができた。
    平成13年度は、19名のパーキンソン病(男性10名、女性9名、平均年齢62.8±11.0歳)を対象とした。方法は同様で、APBにおけるrTMS前後のcortical mappingを行った。結果では、19例中13例において、rTMS後のMEPの振幅は増大し、その中にmappingのareaが拡大していた例があった。MEPの振幅の総和におけるrTMS前後での差において、振幅の低下がみられたものは6症例あり、その中の3症例は、rTMS後のmotor thresholdが低下していた。前頭前野における局所的なrTMSは、第1次運動野への促通効果あるいは興奮性の上昇傾向があると推測された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  75. 強性水泳ラットにおける継頭蓋的磁気刺激法の効果 2000 – 2001 堤 隆 大分医大, 医学部, 助手 (60284791) 奨励研究(A) 研究開始時の概要: 研究概要:(1)、18時から6時を明期とする明暗条件下で飼育したウイスター系成熟雄性ラットを用いた。ラットは恒温(23±0.5℃)、恒湿(50±5%)で、照明時間は午後6時から午前6時までの動物舎で飼育した。水および固形資料は自由に与えた。ラットは少なくとも3週間以上飼育した後実験に用いた。(2)、ラットは2群(rTMS群、sham rTMS群)に分け実験を行った。rTMS群にはコイル径5cmの8の字コイルを用い、刺激頻度は運動閾値上で52パルス、刺激頻度15Hz、刺激時間3.5秒の磁気刺激で17-18時の間に施行した。1日または10日間連続してラットにrTMSを施行した。(3)、rTMSの第10回施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様に行った。(4)、急性実験として第1回強制水泳施行終了24時間後にラットを赤色光のもとで強制水泳を15分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察、測定した。翌日再び強制水泳を5分間行い赤外線センサー及びビデオカメラにて行動を観察・測定した。sham rTMS群も同様におこなう。(5)、記録したビデオからラットの行動を静止状態、水泳状態、登坂状態に分けてカウントした。(6)、10日間の連続施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ有意に静止状態が少なかった。単回施行においてrTMS群はsham rTMS群に比べ特に行動面では有意な変化は認めなかった。この結果よりrTMSの連続施行はラットのうつ病モデルである強制水泳において有意な抗うつ作用効果が示された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  76. 連続磁気刺激によるヒト中枢神経系の長期的興奮性変化の機序に関する研究 2000 – 2001 宇川 義一 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (50168671) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:連続磁気刺激(rTMS)がうつ病などの精神疾患、パーキンソン病などの神経疾患の治療に使用されている。この作用機序として、何らかの長期的効果が生じているはずである。この機序を解明する目的で以下の2点についてこの2年間で研究した。
    1.rTMSは直接の刺激点以外に効果を示すか。
    中枢神経は、線維を介して離れた部位が連絡し合って、その機能を発揮している。そこでrTMSの効果も、この連絡を介して発生していると考えれる。運動野を刺激した時の効果を対側運動野へのTMS(文献3,4)、同側感覚野のSEP(文献5)、SPECT、PETなどを用いて検討した。運動野のrTMSにより、同側の感覚運動野のみならず、対側の感覚運動野、同側の視床、対側の小脳などの離れた部位に機能変化が生ずることが証明された。以上より、rTMSにより刺激部位と離れた部位にも機能変化が生ずると考えた。
    2.rTMSは、刺激終了後にも持続する効果を誘発するか。
    rTMSが治療効果を発現するためには、rTMS終了後も持続する効果(after effect)を誘発しなければならない。この点を検討するために、SEP(文献5)、ABR, VEPなどを用いて、運動野へのrTMS後に持続する効果を誘発できるかを研究した。1HZ,200発のrTMSにより、2時間位続く効果を誘発できた。さらに、PET、SPECTなども用いてafter effectについて検討している。以上により、rTMSは刺激終了後も時間単位で持続する効果を誘発できると結論した。
    以上の結果から、パーキンソン病にrTMSが効果を出す機序として、rTMS後に視床に持続する変化を誘発した(functional thalamotomy)可能性を考えた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  77. 反復経頭蓋磁気刺激法の臨床応用への安全性の検討 1999 眞野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:経頭蓋磁気刺激を与えると、神経系の機能に変化を与えることが観察されるようになり、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)が中枢神経疾患の治療に用いられようとしている。そこで、rTMSの安全でかつ有効な投与法の検討が、求められている。これまで副作用として痙攣や機能異常、脳波上の異常波の誘発などの指摘がある。これらの研究は世界的規模で行われており、国内、国外の治験の集積により、より有効でかつ安全な施行方法を追求する、反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の臨床応用を検討する国際会議を開催した。
    本シンポジウムの目的はrTMSのヒトへの応用での安全性と効果であり、またそのメカニズムの解明である。シンポジウムでの結果をまとめると、rTMSでは大脳皮質の興奮と抑制をひきおこしている。rTMSで大脳の局所を刺激した時に、その反応は局所にとどまらず、経シナプス的に他部位に強い影響を及ぼす。また脳の再構築にはその闘値などの関与がある。最近低頻度rTMSが使われ始めているが、高頻度rTMSとその作用機構に質の差があることが示唆された。さらに、ヒトへの治療の応用にあたって、安全域の設定には慎重である必要があり、危険をよく知り、動物実験などの結果も重視する必要があると思われた。うつ病への応用にあたって、電気痙攣療法(ECT)を受けている患者さんにとっては、意識消失、痙攣、記憶障害などのETCの副作用を本法はさけれるため、rTMSの方がより安全であると思われる。刺激最適部位といわれる前前頭野の左右にbalance theoryが存在し大脳の左右への刺激の効果には差があると議論された。
    パーキンソン病(PD)へのrTMSの応用では、PDではうつ症状がよくなればQOLはかなり改善するといわれており、rTMSの抗うつ作用が改善に一定の役割をしていると考えられる。PDでの治療では刺激部位が運動野と前前頭野での差はあるのか、あるいは大脳への刺激が経シナプス的に基底核に影響を及ぼしているのかがさらに解明されれば、rTMSはさらに発展すると思われた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  78. 経頭蓋的高頻度磁気刺激の安全性と作用機序に関する基礎的研究 1999 – 2001 滝川 守国 鹿児島大学, 医学部, 教授 (70041423) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:精神科領域における磁気刺激療法は臨床応用が先行し、基礎的研究とその安全性、特に高頻度磁気刺激(rTMS)に関しては試行錯誤の段階が現状である。精神科に置ける電気ショック療法の歴史がその治療機序が解明されないまま、ただ臨床に効果的であるとの理由で実施されてきた。このような理論に裏付けのないrTMS療法とならないよう本研究では以下のように実施した。
    (1)動物実験に本法を適用し脳にrTMSがいかなる影響を及ぼすかを検討した。
    (2)次に臨床に置いて健常コントロール群にrTMSが及ぼす作用をこの3年間において検討し、その結果は国際誌に掲載された。
    まず、rTMSの反復刺激によりラット脳におけるc-Fos発現を分子生物学的に検討した。その結果は、神経活動変化を反映するc-Fosは、脳内の広範囲の部位に出現するが電気ショックと比べて線条体に有意に多くc-Fosが出現するという興味ある結果を得た。
    次にrTMSの脳機能に与える光誘発電位法(VEP)で経時的に調べた。
    その結果、家兎対側後頭葉のYEPは潜時(N_2,P_2成分)は短縮しその振幅は有意に増大した。このことは、rTMSの反復刺激は脳に新しい神経回路網すなわち脳の可塑性が形成されることが判明した。また、反復rTMSはヒト脳波を指標として調べた。その結果、健常コントロール群の刺激部位の周辺の脳波周波数が1Hz以上早い周波数に刺激後の2分間位ではみられた。
    このことはヒトにrTMSで治療する場合、刺激後数分間は脳機能を活性化するので、その間は異常脳波の出現に注意すべきであることが示唆された。
    上記の結果は、rTMSが脳に新しい可塑性を生じることを意味し、また、rTMS後、短時間で脳を活性化することからrTMSの精神科領域への新しい治療法となることが示唆された。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  79. 反復経頭蓋磁気刺激法のリハビリテーション医学への応用 1998 – 1999 真野 行生 北海道大学, 医学部, 教授 (20145882) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度には、経頭蓋磁気刺激法(rTMS)法の安全性を検討する目的で、行動学的に分析した。32匹の正常マウスと31匹のcytosine arabinosideを注射した運動失調マウスを対象とした。週5回3週間、運動皮質閾値の130%の強度でrTMSを施行した。A群(正常11匹、失調マウス10匹)では、10Hz刺激を10秒間与えた。B群(正常11匹、失調マウス10匹)では、3Hzを60秒間与えた。C群(正常10匹、失調マウス11匹)には磁気刺激を与えなかった。オープンフィールド法で、運動回数と転倒率を測定した。失調群は対照群に比べ有意に運動回数が低下した(p<0.05)。rTMSは対照群でも失調群でもこの運動回数に影響しなかった。転倒率は、失調A群(10Hz×10秒)では平均36%の転倒率で、磁気刺激をしない失調C群(59%)に比べ有意の低下を示した(p<0.05)。長期効果は認めなかった。また、B群(3Hz×60秒)は、非刺激C群との差違を認めなかった。以上、失調マウスに対する反復経頭蓋磁気刺激の治療効果を確認した。
    平成11年度には、大学の倫理委員会の承認を得て、rTMSを、薬物療法、運動療法、心理療法などで充分な効果がなく、意欲が下十分であった6名のパーキンソニズム、不随意運動を呈する患者に試みた。rTMSのパラメーターは低頻度(0.3Hz)、30回を1日2回、刺激強度は運動閾値の110〜120%、一週間に5日間で2週間、平円形コイルを用いて行った。1例の脳波モニターで一側大脳にrTMS時に3Hzのslow waveが出現し、長くrTMSを続けるとそれは延長する傾向があった。日をかえて同様なslow waveを認めたため、以後この症例へのrTMSは中止した。臨床症状の改善は除外した1例を除く5例中4例にみられた。改善内容ではうつスケールは3例に、パーキンソン病スコア(UPDRS)は2例で改善、痴呆を呈した1例では長谷川式痴呆スケールでの著明な改善があった。UPDRSでの改善では抑うつ、意欲などの改善は著明であり、運動機能評価も軽度〜中等度の改善を認めた。 研究成果の概要:研究実績の概要:
  80. 運動失調症に対するリハビリテーションの研究(磁気刺激を用いた研究) 1998 – 1999 中馬 孝容 北海道大学, 医学部, 助手 (70281805) 基盤研究(C) 研究開始時の概要: 研究概要:平成10年度は、うつ症状に効果があるといわれている経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)の安全性について正常マウスを用いて検討し、臨床応用への可能性について検討した。rTMSを10Hz、100回投与群と3Hz、180回投与群とrTMS非投与群の3群に分け、各群に刺激閾値の130%、90%の2種類の刺激強度で磁気刺激を行い、学習・記憶能への影響について検討した。学習.記憶能の検討には、Morris水迷路試験を用いた。結果は、rTMS投与した群では、一過性に影響がみられるものの、記憶の保持には影響はみられなかった。また、実験中にけいれんがみられたマウスはいなかった。rTMSは、磁気刺激の強度、頻度、回数、一連の反復刺激を繰り返す回数を検討することにより、安全に臨床応用が行なうことができると考えられた。
    平成11年度は、健常者に反復磁気刺激を行ない、臨床応用について検討した。上腕二頭筋を磁気刺激し、筋収縮パターンを記録し、収縮時間、弛緩半減時間を測定した。次に、50Hz、0.5秒間の反復磁気刺激を行ない、強縮性収縮を起こさせ、その前後にて単収縮を行なった時の筋収縮パターンにおける張力の変化について検討した。結果は、男性では出力50%の時に張力比は最大に達し、女性では出力70%の時に最大に達した。収縮時間では男女差はみられなかったが、弛緩半減時間では女性の方が有位に長く、これは、slow twitsh unitとfast twitch unitの比率が男女間で差が見られるためと考えられた。強縮性収縮前後での単収縮の張力比は、男女ともに反復磁気刺激後において単収縮の張力は増大していたが、これは男性においてより増大傾向であった。この現象は、Post-tetanic potentiationを示していると考えられた。連続磁気刺激は、ヒトの近位筋の生理学的解析に有用な方法であり、臨床応用に発展させることができると考えられた。 研究成果の概要:研究実績の概要: