CROとは、Contract Research Organization の略で、日本語では「開発業務受託機関(かいはつぎょうむじゅたくきかん)」と呼ばれます。
製薬会社や医療機器メーカー、あるいは大学などの研究機関(アカデミア)から依頼を受け、医薬品や医療機器の「開発」に関わる業務の一部を、専門的に代行・支援する企業のことです。
💊 CROが「何をする場所か」
CROは、新薬や新しい医療機器が厚生労働省から「薬事承認」を得るために必要な、前臨床研究(非臨床試験)から臨床研究(治験)、さらには市販後の調査に至るまで、開発プロセスのほぼ全域をサポートします。
製薬会社が自社ですべての業務を行う代わりに、高度な専門知識を持つCROに業務を委託(アウトソーシング)することで、開発のスピードアップと品質の担保、コストの効率化を図っています。
1. 前臨床研究 (非臨床試験) のサポート
薬の候補物質を「ヒト」に投与する前に行う、動物や細胞を用いた試験のサポートです。
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安全性試験(毒性試験)
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薬物動態試験(薬が体内でどう吸収・分布・代謝・排泄されるかの試験)
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薬理試験(薬の有効性を評価する試験)
2. 臨床研究 (治験) のサポート
CROの最も中核となる業務で、「ヒト」を対象とした試験(治験)のサポートです。業務は多岐にわたります。
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試験の企画・準備
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治験実施計画書(プロトコル)の作成支援
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治験を実施する医療機関(病院)の選定・契約
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モニタリング業務
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CRA(臨床開発モニター)と呼ばれる専門職が、医療機関を訪問します。
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治験がルール(GCP)や計画書通りに正しく行われているかを確認(監視)し、データの品質を保証します。
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データ管理・統計解析
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医療機関から集められた症例データ(CRF)を管理・クリーニングします。
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データを統計的に解析し、薬の有効性や安全性を科学的に評価します。
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申請業務
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治験で得られた全データをまとめ、厚生労働省(PMDA)に提出する「承認申請資料」を作成します。(メディカルライティングとも呼ばれます)
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3. 製造販売後調査 (PMS) のサポート
薬が承認されて市場に出た後(市販後)のサポートです。
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実際に多くの患者さんに使われた際の有効性や安全性の情報を収集・評価する調査(副作用情報収集など)を支援します。
主なCRO企業
日本のCRO(開発業務受託機関)市場は、「内資系(日系)」と「外資系(グローバルCRO)」の企業に大きく分けられます。
特に業界内で「大手」とされる代表的な企業をご紹介します。
🇯🇵 内資系(日系)CRO
日本の規制や医療環境を熟知していることが強みです。
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シミック (CMIC) グループ
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1992年に日本で最初に設立されたCROであり、国内CROのパイオニアです。
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CRO事業だけでなく、医薬品の製造(CMO)や販売支援(CSO)など、医薬品開発から販売までを幅広くサポートする国内最大手のグループです。
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イーピーエス (EPS) グループ
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シミックと並ぶ内資系の大手です。EPSホールディングスの中核企業となります。
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特に「がん領域」の治験に強い実績を持つことで知られています。
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🌎 外資系(グローバル)CRO
世界規模で実施される国際共同治験(グローバルスタディ)に強みを持つ企業群です。
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IQVIA (アイキューヴィア)
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世界最大手のCROであり、日本国内でもトップクラスの規模を誇ります。
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(旧クインタイルズとIMSヘルスが統合して誕生しました)
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膨大な医療データとテクノロジーを駆使した開発支援が強みです。
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ICON (アイコン)
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IQVIAに次ぐ世界有数の大手グローバルCROです。(過去にPRA Health Sciencesを買収しました)
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Parexel (パレクセル)
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こちらも世界的に展開する大手グローバルCROの一つとして、日本国内でも大きな存在感があります。
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📊 業界の構図
日本のCRO業界は、大まかに以下の3社が「大手3強」と呼ばれることが多いです。
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IQVIA (外資系トップ)
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シミック (内資系トップ)
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イーピーエス (内資系大手)
上記以外にも、PPD(新日本科学との合弁)、Fortrea(フォートレア)、サイネオス・ヘルスなどの大手外資系や、エイツーヘルスケア、リニカル、インテリムといった特色ある中堅の内資系企業も多数存在し、業界を形成しています。