臨床医が臨床疑問を持ってから論文化するまでの一連の流れ

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臨床医は患者さんの治療がメインなのでみながみな臨床研究をする必要はないわけです。しかし最近は特に大学においては臨床医も研究を行うことが重要視されてきているように思います。助教、講師、准教授、教授と昇進していくためには論文業績が欠かせません。もちろん臨床研究を行う理由は昇進に必要だからというだけではないのですが。

この記事では全く研究がどういうものかわからない臨床医向けに、どうやって研究テーマを見つけ、研究計画を立てて研究を実施するか、さらにそれを論文化するかという一連の流れを解説したいと思います。まず最初に、臨床研究はどんな順序でどんなステップで進んでいくものなのかを簡単に説明します。

  1. 日常の臨床において、習った通りでない、あるいは習ったことがないことに遭遇し、さまざまな疑問(臨床疑問;クリニカル・クエスチョン;Clinical Question)を抱く。
  2. PubMedなどの文献データベースにあたって、自分の疑問が既に研究報告されていないかどうか、先行研究を調べる
  3. 論文報告がないクリニカル・クエスチョンであれば、それを研究によって答えられるような「リサーチ・クエスチョン(Research Question)」の形にまとめる。
  4. 研究のデザインを考える。
  5. リサーチ・クエスチョンと研究のデザインに基づき、より具体的な研究計画書を作成する。
  6. 所属する機関の倫理委員会に研究計画書を提出して承認を得る。
  7. 必要に応じて患者さんからインフォームド・コンセントを得る。
  8. 実験を実施する。患者さんからのデータの収集、分析を行う。
  9. 論文を作成する。データの分析結果を図表にまとめ、本文を執筆する。
  10. 論文を投稿する。査読者のコメントに従い論文を改訂し、再投稿して、最終的に論文受理(アクセプト)に漕ぎ着ける。

さらに細かいステップに分けようと思えば分けられますが、だいたい上記のようなステップを考えることになります。

なぜ臨床医が研究をするのか 臨床研究の意義

論文の形に仕上げることが臨床研究の基本です。いったん文献の形となると、その表現は時空を超えます。(17ページ 第1章 臨床研究の意義 『臨床研究アウトプット術 中外医学社 2020年』

エビデンスの本質を知るには、どのようにそのエビデンスが作られているのかを知らなければいけません。そのあめに臨床研究を行う必要があるのです。(8ページ 原正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意 金芳堂 2017年』

クリニカル・クエスチョンをどうやって見つけるか

独立した記事に纏めました ⇒ クリニカル・クエスチョン(Clinical Question; 臨床疑問)を見つける方法

先行研究を調べる方法

独立した記事に纏めました ⇒ 先行研究を調べる方法

研究のデザインはどれを選ぶか

記事 ⇒ 臨床研究のデザイン:介入研究、観察研究、横断研究、縦断研究、前向きコホート研究、症例対照研究、ほか

多くの医学研究は観察研究である。(中略)臨床専門の学術雑誌に掲載された論文のうち約10分の9は、観察研究による研究を記したものである。

(観察的疫学研究報告の質改善(STROBE)のための声明:解説と詳細)

 

単刀直入に言います。先生個人が単一施設で行う研究デザインとしては

2群比較の観察研究

に的を絞って研究を行っていくのがよいと思います。(中略)さらに言うと、新規に患者さんをエントリーして今を起点として将来にわたってデータを取得していく前向き(prospective)研究ではなく、過去に遡って既にカルテに記載のあるデータを取得していく後ろ向き(retrospective)観察研究がより初学者向けでおススメです。

(原 正彦『臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意』2017年 金芳堂 41ページ)

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